外れ職業の旅芸人(LV.15)だったけれど、呪いの装備を使いこなせるチートに目覚めました

寿司

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幼馴染たちとパーティーを組んだものの…

第7話 謎の少女リオン

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 今日も光の女神、ファリアス様に祈りを捧げることから私の一日は始まる。

 邪神ニュクスを倒し、この世界に光を取り戻したとされるファリアス様のお陰で、私たちは陽の光を浴びることが出来るのだ。---と、ジハリマのシスターである私は思う。

 ジハリマは勇者様が使ったとされる剣が眠ると言われる竜の墓場を守るように栄えた街で、日々高レベルの冒険者たちで活気が溢れている。しかし彼らが剣を手に入れたという話は未だに聞かない。
 やはりそれだけ難しいのだろう。そう言えば、と、ふととあるパーティのことを思い出した。アスベルという素敵な青年がリーダーを務めているパーティーで、仲間たちも皆強者揃いでそこらの平凡な人たちとは一線を画していた。

 彼らは上手くいっただろうか? 個人の願望としてはあのアスベル様こそ勇者にふさわしい人格と力量を兼ね備えていると見受けられるので、彼に剣を持っていて欲しいな、なんて思う。

 おっと、神に仕える者たるもの、下心なんていけないいけない。

「すいませーん! 」

 すると、まだ夜が明けたばかりだというのにドンドンと扉を叩く音がした。でもまぁこの辺りでは珍しくない。早朝この街に辿り着いた冒険者が、お祈りをしに来るのだ。

「迷える子羊よ、何の用です……」

 扉を開き、入ってきた客人を見て私は思わず動きを止めてしまった。

「こんな時間にすいません。出発前にお祈りしようかと思いまして」

 こげ茶色の髪に人畜無害そうな顔立ち。照れたようにはにかむ青年がそこにいた。彼自身に悪意は感じられない。むしろ彼を見た百人中百人が良い人そうだと答えるだろう。
 しかし、彼が背負っているそれは口にするのも恐ろしい。ーー尋常じゃないレベルの呪いを彼はその身に背負っていた。それも一つや二つではなく、そのどれもが即死級の呪いだ。

「シスターさん? どうしましたか? 」

 自分の体から血の気が引いていくのが分かった。こんな強大な呪い、私も目にしたことがない。近くにいるだけで気が変になってしまいそうだ。しかしこの青年、今こうして立っていられるのが不思議なぐらいだ。もしかして魔族の類なのだろうか?

「あ……」

 喉が締め付けられたように声が出ない。今すぐ浄化しなければ彼どころかこの街中の人間が危ない。
 ジハリマの修道女の名に懸けて、この者を救わなければならない。
 
 しかし

 彼が宿している無数の呪いを前に、全身の震えが止まらない。こんな恐ろしいもの、今までどうして放置していたのだろうか。

 私は慌てて神の目ハイアナライズを小声で唱える。これは神に仕える者だけが使える聖なる魔法で、対象者の職業やステータスを見ることが出来る。
 そして、浮かんできた彼のステータスは……。

名前:ノア=ディフェンシオ
性別:男
年齢:18
職業:旅芸人
レベル:15

-ステータス-
HP:80
MP:30(自動回復)
力:20
魔力:999(呪い反転)
守備力:999(呪い反転)
素早さ:20
運:40

 何なの……このデタラメなパラメータは。
 レベル相応な数字の箇所もあるけれど、カンストしているパラメータもある。
 それに呪い反転という見たことのないスキル。

 この青年は一体何者なのだろうか……?

「……て」

「え? 」

「……出て行きなさい」

 何とか絞りだした声は悲しいぐらい震えていた。
 青年は面食らったような顔で固まる。私はチャンスだとばかりに言葉を叩きつけた。

「出て行きなさい!! 二度とこのジハリマの街に顔を出さないで! 」

 私の大きな声にびっくりしたのであろう青年は、ごめんなさいと一言謝ると、弾丸のように外に飛び出していった。
 後に残された私は思わず床に座り込んでしまう。全身の毛穴から嫌な汗が噴き出していた。

「ごめんなさい、私に貴方を救うことは出来ない……」

 ああ、ファリアス様、どうかあの呪われし青年をお救い下さいませ。
 私はしばらくそうして神に祈り続けていた。

◇◇◇
 
「ノア、おかえり。どうしたの変な顔して」

 何故か発動した呪いのアイテムの効果ですっかり回復した少女が、僕の姿を見つけるや否や駆け寄ってきた。
 すっかり顔色も良くなり、金色の瞳がくるくると良く動く美少女だった。

「ただいま。いや、変なシスターに会っちゃって。この街を出る前に祈りの一つでもしてこうと思ったんだけど、怒鳴り返された」

「ふぅん」

「ああ、君もお祈り行く? あんまりここのオススメしないけど」

 私は良いよ、と少女が首を振る。

「ノアは神様って信じてるの? 」

 少女がぽつりと問いかけた。

「え? 」

 そう言えば考えたこともなかったな、この世界では生まれたときからファリアス様というものを教え込まれる。
 神を信じる人間が普通で、これに背く者は異教徒として迫害を受けているそうだ。

「あんまり考えたことないけど、まぁお祈りは習慣みたいなもんかな。今日も一日元気に過ごせますように~っていうおまじない」

「そっか」

 納得したように少女が頷いた。

「そうだ、それで君の名前は何て言うの? お父さんやお母さんは? 」

「名前……? 分かんない」

「記憶喪失ってこと!? 」

 コクリと少女が頷いた。

「参ったな……」

 流石に女の子を連れて冒険する訳にも行かないし、だからといってここに置き去りにするのも気が引ける。
 教会にでも預けようかと思ったのだが、彼女は酷く街に入るのを嫌がった。

「この街は記憶にないけど、海が見えるところに住んでいた気がする」

「海か……この辺りで海が見えるというとミネラの村かな? 」

 まぁ僕もこれからのことを何も考えてないし、独りは寂しい。しばらく小さな同行者と旅をするのも良いだろう。

「じゃあ僕が君をご両親の元に送っていってあげる。それまでよろしくね、リオン」

「リオン? 」

「名前がなきゃ不便だろ、どっかの国の言葉で気高き獅子って意味らしいよ……駄目かな? 」

 リオンがふわっと笑った。いつも余り表情が変わらない女の子だが、笑うと大変可愛らしい。おっと、僕はロリコンではないので悪しからず。

「良い名前。ありがとう」

 こうして、僕とリオンの旅は始まったのである。
 
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