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第29話 求婚
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唇を離すと、カイルは呆然とした表情で私の顔を見つめていた。
わなわなと震えている彼の唇は何かを言いたげであった。
吸血衝動は治まったようで良かった良かった。
どうやら同じ吸血鬼でも必要な血の量は違うらしい。
「あら、もしかして初めてだった? 」
何だか面白くなってからかってみる私。
しかしカイルの反応は意外なものであった。
「な、な、……」
壊れたかおもちゃのように「な」という単語を繰り返すカイル。
「カイルさん? 」
異様な反応に流石に心配になる私。
「よ、よ、嫁入り前の女性が何ということを!!! 」
「へ……? 」
思わずぽかんとカイルを見つめる私。
そして思わず噴き出す。
「私の結婚を心配してくれるの? 面白い人ね貴方」
「な、なんで笑うんだ! 重要なことだぞ……。俺はどうすれば良いんだ……いやでも責任は取らなきゃ……」
顔を真っ赤にして何やらオタオタし始めるカイル。その堅物というか生真面目なところは流石騎士様といったところだ。
「えーっと、カイルさん……? 」
口付けといってもただ血を飲ませただけなんだけどな……。
カイルが想像しているような美しいものではなくただの食事なんだけど……。
「分かった……」
「何がですか? 」
カイルは急に私の手を掴むと、こう言い放った。
「化け物だろうが何だろうか君は女性で俺は男だ。責任を取って婚約しよう」
「……は? 」
「夫婦として上手くやっていける自信はないが……それも仕方あるまい」
「いやいやいやいやいやどうしたんですかカイルさん!? 貴方と私はいわば言わば敵ですよ!? 」
「そうは言っても仕方ないだろ! 望んだことではないとは言え、接吻をしたのは事実なんだ」
「え~……真面目すぎるよ」
流石にここまで行くと怖いよカイル!!
騎士道精神というやつなのか、彼の生真面目さなのか分からないが流石にいきすぎだと思うぞ。
「け、結婚と言っても一体どうすれば良いんだ……? 指輪か……? 式か……? 」
やり方はよく知らないんかい!
思わず心のなかでツっこんでしまう私。
「いや良いですってそこまでしてくれなくても! 」
しかし……とガッチリ私の手を掴んで離さないカイル。
どうしたものか……と悩んでいると、まるで弾丸のように私とカイルの間に何者かが割り込んだ。
「な、なんだ!? 」
吹き散らされる砂嵐。そしてそこには小さな人影。
「ア、アルくん!? 」
私は思わず目を見開いた。
「カミルさんに手を出すな」
そこには深紅の瞳を光らせた、あの少年が立っていた。
わなわなと震えている彼の唇は何かを言いたげであった。
吸血衝動は治まったようで良かった良かった。
どうやら同じ吸血鬼でも必要な血の量は違うらしい。
「あら、もしかして初めてだった? 」
何だか面白くなってからかってみる私。
しかしカイルの反応は意外なものであった。
「な、な、……」
壊れたかおもちゃのように「な」という単語を繰り返すカイル。
「カイルさん? 」
異様な反応に流石に心配になる私。
「よ、よ、嫁入り前の女性が何ということを!!! 」
「へ……? 」
思わずぽかんとカイルを見つめる私。
そして思わず噴き出す。
「私の結婚を心配してくれるの? 面白い人ね貴方」
「な、なんで笑うんだ! 重要なことだぞ……。俺はどうすれば良いんだ……いやでも責任は取らなきゃ……」
顔を真っ赤にして何やらオタオタし始めるカイル。その堅物というか生真面目なところは流石騎士様といったところだ。
「えーっと、カイルさん……? 」
口付けといってもただ血を飲ませただけなんだけどな……。
カイルが想像しているような美しいものではなくただの食事なんだけど……。
「分かった……」
「何がですか? 」
カイルは急に私の手を掴むと、こう言い放った。
「化け物だろうが何だろうか君は女性で俺は男だ。責任を取って婚約しよう」
「……は? 」
「夫婦として上手くやっていける自信はないが……それも仕方あるまい」
「いやいやいやいやいやどうしたんですかカイルさん!? 貴方と私はいわば言わば敵ですよ!? 」
「そうは言っても仕方ないだろ! 望んだことではないとは言え、接吻をしたのは事実なんだ」
「え~……真面目すぎるよ」
流石にここまで行くと怖いよカイル!!
騎士道精神というやつなのか、彼の生真面目さなのか分からないが流石にいきすぎだと思うぞ。
「け、結婚と言っても一体どうすれば良いんだ……? 指輪か……? 式か……? 」
やり方はよく知らないんかい!
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「いや良いですってそこまでしてくれなくても! 」
しかし……とガッチリ私の手を掴んで離さないカイル。
どうしたものか……と悩んでいると、まるで弾丸のように私とカイルの間に何者かが割り込んだ。
「な、なんだ!? 」
吹き散らされる砂嵐。そしてそこには小さな人影。
「ア、アルくん!? 」
私は思わず目を見開いた。
「カミルさんに手を出すな」
そこには深紅の瞳を光らせた、あの少年が立っていた。
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