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第25話 願い
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意識を失ったアルが目を覚ましたのは次の日の昼頃であった。
ユキトから貰っていた飲み薬は良く効く。心臓の病に効果があるらしい。
ただ完治させるほどの効果はないので彼いわく気休めにしかならないようだ。
「おはよう」
目を覚ましたアルにそう言うと、アルはガバッと起き上がった。
「動いちゃダメよ、また発作が……」
「すいません、僕……また……」
「良いのよ。お医者さんから薬を貰っているの。これを飲んでゆっくり休んでね」
ありがとうございます、と深々とお辞儀をしたアルは何か言いたげに私の顔をチラチラ見る。
「アルくん? 」
「あの、僕、幼い頃から心臓が悪いんです。……多分」
多分とはどういうことなのだろうか。
「あ、多分というのは記憶がないから確証はないんです。でも朧気ですけど、僕はずっと白い部屋で寝ていたことを思い出しました」
「そうなんだ……」
とすると、何らかの事情で病弱な少年が逃げ出してきたという訳だろうか。更に騎士様まで出動するとなればかなりの身分だろう。
「それで、カミルさんにお願いがあります」
「なぁに? 私に出来ることなら何でもするわ」
アルはぎゅっと拳を握ると、声を絞り出した。
「僕を吸血鬼にして貰えませんか」
「……へ? 」
思わず変な声を出す私。
い、い、い、い、い、今なんと!?
「びっくりさせてしまってすいません。でももう嫌なんです。まともに走れもしないこの体が……!! 」
「お、落ち着いてよアルくん。病院に行った方が……」
「病院なんて意味はありません。どうせこのままでは僕は死にます」
子どもとは思えない剣幕に私は思わずたじろいた。
「治らない病で死ぬぐらいならカミルさんの傍で吸血鬼として生きていきたいんです」
「アルくん……」
どうすれば良いのだろう。
アルを吸血鬼にするのは簡単だ。ほんの数分血を吸えば彼は吸血鬼として永遠(多分)の命を得る。
でもおそらく彼は誰かの子どもだ。両親の意見も聞かず、私が勝手に彼をどうにかする権利なんてあるのだろうか?
「カミルさん……! 」
泣きそうな顔で私のことを見上げるアル。私は彼の顔を見ることが出来なかった。
「ごめんねアルくん。もう少し、考えさせて……」
「分かりました。無理を言ってごめんなさい」
私はそう言い残すと、アルを残して部屋を出た。
この彼の願いは簡単に叶えてはいけないような気がした。
「どうしよう……」
私はアルの部屋のドアに寄り掛かると、必死に頭を働かせる。
ああそうだ。アルの正体を探るために騎士様を吸血鬼にしたんじゃないか。
私は深く目を閉じると、カイルの五感を手繰り寄せた。
ユキトから貰っていた飲み薬は良く効く。心臓の病に効果があるらしい。
ただ完治させるほどの効果はないので彼いわく気休めにしかならないようだ。
「おはよう」
目を覚ましたアルにそう言うと、アルはガバッと起き上がった。
「動いちゃダメよ、また発作が……」
「すいません、僕……また……」
「良いのよ。お医者さんから薬を貰っているの。これを飲んでゆっくり休んでね」
ありがとうございます、と深々とお辞儀をしたアルは何か言いたげに私の顔をチラチラ見る。
「アルくん? 」
「あの、僕、幼い頃から心臓が悪いんです。……多分」
多分とはどういうことなのだろうか。
「あ、多分というのは記憶がないから確証はないんです。でも朧気ですけど、僕はずっと白い部屋で寝ていたことを思い出しました」
「そうなんだ……」
とすると、何らかの事情で病弱な少年が逃げ出してきたという訳だろうか。更に騎士様まで出動するとなればかなりの身分だろう。
「それで、カミルさんにお願いがあります」
「なぁに? 私に出来ることなら何でもするわ」
アルはぎゅっと拳を握ると、声を絞り出した。
「僕を吸血鬼にして貰えませんか」
「……へ? 」
思わず変な声を出す私。
い、い、い、い、い、今なんと!?
「びっくりさせてしまってすいません。でももう嫌なんです。まともに走れもしないこの体が……!! 」
「お、落ち着いてよアルくん。病院に行った方が……」
「病院なんて意味はありません。どうせこのままでは僕は死にます」
子どもとは思えない剣幕に私は思わずたじろいた。
「治らない病で死ぬぐらいならカミルさんの傍で吸血鬼として生きていきたいんです」
「アルくん……」
どうすれば良いのだろう。
アルを吸血鬼にするのは簡単だ。ほんの数分血を吸えば彼は吸血鬼として永遠(多分)の命を得る。
でもおそらく彼は誰かの子どもだ。両親の意見も聞かず、私が勝手に彼をどうにかする権利なんてあるのだろうか?
「カミルさん……! 」
泣きそうな顔で私のことを見上げるアル。私は彼の顔を見ることが出来なかった。
「ごめんねアルくん。もう少し、考えさせて……」
「分かりました。無理を言ってごめんなさい」
私はそう言い残すと、アルを残して部屋を出た。
この彼の願いは簡単に叶えてはいけないような気がした。
「どうしよう……」
私はアルの部屋のドアに寄り掛かると、必死に頭を働かせる。
ああそうだ。アルの正体を探るために騎士様を吸血鬼にしたんじゃないか。
私は深く目を閉じると、カイルの五感を手繰り寄せた。
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