17 / 30
第17話 少年
しおりを挟む
屋敷から遠く離れた村で一人暮らしを始めた私、カミル。
一人暮らしというのは思っていたより大変だ。
「うわ……!! 火がついた! 」
フライパンを焦がす私。
「洗濯物、ぐしゃぐしゃだ……」
洗濯物をし忘れて溜めまくる私。
「洗濯物取り込み忘れた……!! 」
せっかく洗濯物を干していたのに雨に降られて台無しにされる私。
毎日何らかの失敗をしてしまう。
お手伝いさんというのはとても大変な仕事だったのだと今さら気が付いた。
毎日毎日焦げた炭のような物体を食べる日々だ。
「美味しくない……」
一口噛むとじゃりじゃりという砂のような音がする。
屋敷にいた頃は毎日ご馳走だったな……。それが当たり前だと思っていたけどそれは間違いだ。
ううむ、これは料理の腕を磨かなければなるまい。
このままだと早死にしてしまいそうだ。
やらなきゃいけないことは山積みだ。一つ一つ片付けていこう。
すると、ピンポーンとインターホンが鳴った。
誰だろう? ミルファだろうか?
それともリクか?
「はーい」
玄関を開けると……誰もいない。
「あれっ? でも今確かに……」
辺りを見回してみるが誰もいない。そして視線を下に向けたとき、私は思わずあっ! と声をあげた。
そこには泥だらけになった少年が倒れていた。
「ちょっと君! 大丈夫!? 」
声をかけ、体を軽く揺すってみるが返事はない。
ただうっすらと瞼を上げてくれた。
青く透き通る瞳は光がない。
「大変……!! 」
私は少年を自宅のベッドにひとまず寝かせると、ユキトを呼びに勢いよく走った。
◇◇◇
「随分酷いのう……」
少年を診察するユキトの顔が曇る。
少年はかろうじて息はしているが、今にも止まりそうなほどか細いものであった。
上質そうな服を着ているが、爪で抉られたように破れている。
「おそらく野犬にでも襲われたんやろ。傷が深いわ」
「そんな……でもこの子は一体どこから? 村の子どもかしら」
「いや見たことないなぁ……。喋れるようになれば何か分かるかもしれんけど今は無理や」
「そうね……」
「よしその為には命を救わないかんな。カミル、温かい湯とこれとこれとこの薬をわしの診療所から持ってきてくれ」
ユキトは私に薬の名前が書かれたメモを渡すと、忙しそうに少年を治療し始めた。
「分かった! 」
私は力強く頷くと、再び薬を取りに走ったのだった。
ユキトも知らない少年、一体彼は何者でどこから来たのだろうか? いや、今はそんなことを考えている場合ではない。
彼の命を救うことが何よりも大事なのだから。
一人暮らしというのは思っていたより大変だ。
「うわ……!! 火がついた! 」
フライパンを焦がす私。
「洗濯物、ぐしゃぐしゃだ……」
洗濯物をし忘れて溜めまくる私。
「洗濯物取り込み忘れた……!! 」
せっかく洗濯物を干していたのに雨に降られて台無しにされる私。
毎日何らかの失敗をしてしまう。
お手伝いさんというのはとても大変な仕事だったのだと今さら気が付いた。
毎日毎日焦げた炭のような物体を食べる日々だ。
「美味しくない……」
一口噛むとじゃりじゃりという砂のような音がする。
屋敷にいた頃は毎日ご馳走だったな……。それが当たり前だと思っていたけどそれは間違いだ。
ううむ、これは料理の腕を磨かなければなるまい。
このままだと早死にしてしまいそうだ。
やらなきゃいけないことは山積みだ。一つ一つ片付けていこう。
すると、ピンポーンとインターホンが鳴った。
誰だろう? ミルファだろうか?
それともリクか?
「はーい」
玄関を開けると……誰もいない。
「あれっ? でも今確かに……」
辺りを見回してみるが誰もいない。そして視線を下に向けたとき、私は思わずあっ! と声をあげた。
そこには泥だらけになった少年が倒れていた。
「ちょっと君! 大丈夫!? 」
声をかけ、体を軽く揺すってみるが返事はない。
ただうっすらと瞼を上げてくれた。
青く透き通る瞳は光がない。
「大変……!! 」
私は少年を自宅のベッドにひとまず寝かせると、ユキトを呼びに勢いよく走った。
◇◇◇
「随分酷いのう……」
少年を診察するユキトの顔が曇る。
少年はかろうじて息はしているが、今にも止まりそうなほどか細いものであった。
上質そうな服を着ているが、爪で抉られたように破れている。
「おそらく野犬にでも襲われたんやろ。傷が深いわ」
「そんな……でもこの子は一体どこから? 村の子どもかしら」
「いや見たことないなぁ……。喋れるようになれば何か分かるかもしれんけど今は無理や」
「そうね……」
「よしその為には命を救わないかんな。カミル、温かい湯とこれとこれとこの薬をわしの診療所から持ってきてくれ」
ユキトは私に薬の名前が書かれたメモを渡すと、忙しそうに少年を治療し始めた。
「分かった! 」
私は力強く頷くと、再び薬を取りに走ったのだった。
ユキトも知らない少年、一体彼は何者でどこから来たのだろうか? いや、今はそんなことを考えている場合ではない。
彼の命を救うことが何よりも大事なのだから。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説


今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

高いお金と引き換えに家族から売られた私ですが、どうやら最終的には過去一の幸せが待っているようです。
加集 奈都
恋愛
「2つも同じ顔など、我が家に必要はない。」
そう言われ、高いお金と引き換えに子供好きと噂される変態伯爵の元へと売られた男爵令嬢のアイヴィ。
幸せとは程遠い生活を送り、いやらしい要求を嫌々のむ毎日。
まだ愛玩動物としての価値があるだけ喜ばしいことなのか。それとも愛玩動物としての価値しかないことに絶望するべきなのか。
そんなことを考えていたアイヴィだったが、助けは突如としてやって来た。
助けられたことをきっかけに、高名な公爵家とされるウィンストン家の養女となったアイヴィ。そしてそこで出会う、3人の兄弟+1人の王太子。
家族に捨てられ、変態伯爵に可愛がられてしまったことで、すっかり感情を表に出すことが苦手になってしまったアイヴィと、そんなアイヴィを可愛がりたい兄弟達+王太子+大人達の物語。

大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる