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第14話 掃除
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あの後、ルイスも目を覚まし、特に健康状態も問題ないようだった。
リクが吸血鬼になったということを知って驚いてはいたが、それ以上特に何も言わなかった。
うん、皆幸せになって良かった。
心の底からそう思う。
そして今日は村長から貰った家の大掃除だ。その家は村からちょっと離れた場所にある大きな家で、何年も空き家らしく、中は埃まみれだった。
ただそこに並んでる家具はまだ使えそうで、何ともラッキーだった。
村長曰く、客人を泊まらせるための家だったらしいがここ最近は訪ねてくる人もいないので私にくれたそうだ。
「……埃っぽいな」
そしてミルファ、リクの二人が大掃除を手伝ってくれると言うのでお言葉に甘えることにした。
ルイスもぜひ手伝いたいと言っていたのだが、彼はまだ完全に回復してる訳ではなかったので気持ちだけ貰うことにした。
「お兄ちゃんほらマスクして」
掃除に馴れてるらしいミルファがてきぱきと作業を進める。
……お屋敷時代からろくに家事をしたことがない私は手探り状態だ。
「ありがとう、っと」
棚を掴んだ拍子にヒビを入れるリク。未だに力の使い方が分からないらしい。
「もうお兄ちゃん! カミルさんが使うんだから壊さないでよ! 」
「……すまん、力加減が難しくてな」
「いえいえ気にしないで下さい。元はと言えば私が……」
「いいのよカミルさん。お兄ちゃんは元々ドジなんだから。それにしても吸血鬼って大変なのね、夜道もばっちり見えるのは羨ましいけど」
「空飛んだりも出来ないしな。特に元の生活と変わらないぞ。日光が少し眩しく感じはするがな」
淡々と答えるリク。
早くも吸血鬼ライフに順応してるんですけど……。意外とタフなんだな。
「血が飲みたいとは思わないの? 」
順応と言えば妹ミルファも中々に肝が据わっている。兄が吸血鬼になったと知らされたときもあらあら、と微笑を浮かべて終わりだった。
お兄ちゃんがどんな姿になっても変わらない、とは彼女の言だ。
「思わないな。普通に人間の食べ物を食べればお腹一杯だ」
「へえ、吸血鬼と言ってもほとんど変わらないのね」
感心したように頷くミルファ。
「リクさん、もし何か変わったことが起こりましたらすぐに教えて下さいね!! 私、何でもしますから」
こんなことになってしまったのは私のせいだ。出来ることなら何でもする。
「お兄ちゃんはタフですから平気ですよ、さあさあ掃除をしましょう! 」
「何でお前が答えるんだよ……まあそうだな」
リクが呆れたようにミルファを見つめる。
この二人は本当に仲が良いようだ。微笑ましいその様子に私も思わず目を細める。
私も昔は妹とこんなやり取りをしてたんだけどなー。と思い出を脳の片隅から引っ張り出す。
おっといけない、私はもう一般人だ。お屋敷のことは忘れなければ。
「カミルさん、私は二階を掃除してきますね、二人は一階をお願いします」
ミルファはそう言うと、パタパタと階段を掛け上がっていった。
残された私とリク。
気まずい時間が流れる。
「……あ、あのリクさん」
耐えきれなくなった私が声を掛ける。すると、リクはフラフラ私に近付いてくる。
「カミルさ、……」
何だか様子がおかしい。
息は荒いし、頬が紅潮している。
高熱にうなされているみたいだ。
「リクさん……!? 大丈夫ですか!? 」
「……たい」
「ん? 今、何て言いました……? 」
リクは泣きそうな顔をしてこう絞り出した。
「……血が、血が吸いたい」
リクが吸血鬼になったということを知って驚いてはいたが、それ以上特に何も言わなかった。
うん、皆幸せになって良かった。
心の底からそう思う。
そして今日は村長から貰った家の大掃除だ。その家は村からちょっと離れた場所にある大きな家で、何年も空き家らしく、中は埃まみれだった。
ただそこに並んでる家具はまだ使えそうで、何ともラッキーだった。
村長曰く、客人を泊まらせるための家だったらしいがここ最近は訪ねてくる人もいないので私にくれたそうだ。
「……埃っぽいな」
そしてミルファ、リクの二人が大掃除を手伝ってくれると言うのでお言葉に甘えることにした。
ルイスもぜひ手伝いたいと言っていたのだが、彼はまだ完全に回復してる訳ではなかったので気持ちだけ貰うことにした。
「お兄ちゃんほらマスクして」
掃除に馴れてるらしいミルファがてきぱきと作業を進める。
……お屋敷時代からろくに家事をしたことがない私は手探り状態だ。
「ありがとう、っと」
棚を掴んだ拍子にヒビを入れるリク。未だに力の使い方が分からないらしい。
「もうお兄ちゃん! カミルさんが使うんだから壊さないでよ! 」
「……すまん、力加減が難しくてな」
「いえいえ気にしないで下さい。元はと言えば私が……」
「いいのよカミルさん。お兄ちゃんは元々ドジなんだから。それにしても吸血鬼って大変なのね、夜道もばっちり見えるのは羨ましいけど」
「空飛んだりも出来ないしな。特に元の生活と変わらないぞ。日光が少し眩しく感じはするがな」
淡々と答えるリク。
早くも吸血鬼ライフに順応してるんですけど……。意外とタフなんだな。
「血が飲みたいとは思わないの? 」
順応と言えば妹ミルファも中々に肝が据わっている。兄が吸血鬼になったと知らされたときもあらあら、と微笑を浮かべて終わりだった。
お兄ちゃんがどんな姿になっても変わらない、とは彼女の言だ。
「思わないな。普通に人間の食べ物を食べればお腹一杯だ」
「へえ、吸血鬼と言ってもほとんど変わらないのね」
感心したように頷くミルファ。
「リクさん、もし何か変わったことが起こりましたらすぐに教えて下さいね!! 私、何でもしますから」
こんなことになってしまったのは私のせいだ。出来ることなら何でもする。
「お兄ちゃんはタフですから平気ですよ、さあさあ掃除をしましょう! 」
「何でお前が答えるんだよ……まあそうだな」
リクが呆れたようにミルファを見つめる。
この二人は本当に仲が良いようだ。微笑ましいその様子に私も思わず目を細める。
私も昔は妹とこんなやり取りをしてたんだけどなー。と思い出を脳の片隅から引っ張り出す。
おっといけない、私はもう一般人だ。お屋敷のことは忘れなければ。
「カミルさん、私は二階を掃除してきますね、二人は一階をお願いします」
ミルファはそう言うと、パタパタと階段を掛け上がっていった。
残された私とリク。
気まずい時間が流れる。
「……あ、あのリクさん」
耐えきれなくなった私が声を掛ける。すると、リクはフラフラ私に近付いてくる。
「カミルさ、……」
何だか様子がおかしい。
息は荒いし、頬が紅潮している。
高熱にうなされているみたいだ。
「リクさん……!? 大丈夫ですか!? 」
「……たい」
「ん? 今、何て言いました……? 」
リクは泣きそうな顔をしてこう絞り出した。
「……血が、血が吸いたい」
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