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第3話 吸血
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きゃ、なんて可愛らしいものではない、本気の悲鳴をあげる妹。
なんだ、そんな声出せるんじゃん。
いつもは猫被ってたのね。
しかし私はがっちり彼女の腕を掴むと、牙をたてる。
彼女の温かな血を吸い込んでいく。
人間の血を吸うのは初めてかもしれない。
「痛い……!!! 痛い!! お姉様!!やめて!! 」
やめるもんか。
やはり処女の血は美味しい。
お父様は私のことを化け物と呼んだ。実はこれ、あながち間違ってはいない。
私の亡くなった母親は死に際、私にこう言った。
「ーーカミル、貴女は吸血鬼の娘。もし何か困ったことがあったら、血を吸いなさい」
と。
記憶の中の母はとても美しい人だった。
絹のように美しい黒髪に、陶器のように白い肌。
深紅の瞳はルビーのようだった。
私が幼いときに死んでしまったけど、彼女が吸血鬼ということは本当だったのだ。
そして魔法を使える、のは本当だ。
暇潰しに風の魔法を起こして部屋の掃除をしていた。
ただその現場をミストに見られたのは失態だった。
充分に血を吸った私は牙を抜いた。彼女の白い腕にはぽつんと赤い点が二つ浮かんでいる。
「いやっ……お姉様、どうして……」
ただ思っていたよりミストは嫌そうではなかった。頬は紅潮し、まるで性的に興奮してるかのような様子だ。
「ごめんね、力を取り戻すには血が必要だったの」
口に滴る血を手で拭う私。
「血が……? お姉様何を言うの、それじゃあまるで吸血鬼みたい……」
「正解。私が化け物って言うの、あれ本当よ。残念ながら魔女ではないけど」
まあ魔法を使える女という意味で魔女と言うならあながち間違いではないかもしれない。
「嘘……」
呆然と震えるミスト。
私は怯える彼女の腕を強く引く。
「ありがとうミスト。貴方の血、結構美味しかったよ」
「お、お父様……!! 」
助けを呼ぼうとした彼女の動きを魔法で引き留める。
「別に何もしないわよ、おとなしくしてなさいよ」
そしてそのまま牢獄の壁を殴る私。吸血鬼の腕力は普通の人間の何百倍にもなる。壁を壊すのぐらい、朝飯前だ。
そして何より、私は普通よりちょっと強い吸血鬼なのである。
「待ちなさい……!! 」
ミストがじだばたともがいている。その様子がおかしくて私は思わずくすっと笑みを浮かべる。
「ご機嫌よう、ミスト。もう二度と会いませんように」
暗闇の中なら私は好きなところに移動が出来る。地上だの地下だの、そんなものは関係ない。
そして妹の怒ったような泣いたような顔を見た私は、そのまま闇に溶けたのだった。
なんだ、そんな声出せるんじゃん。
いつもは猫被ってたのね。
しかし私はがっちり彼女の腕を掴むと、牙をたてる。
彼女の温かな血を吸い込んでいく。
人間の血を吸うのは初めてかもしれない。
「痛い……!!! 痛い!! お姉様!!やめて!! 」
やめるもんか。
やはり処女の血は美味しい。
お父様は私のことを化け物と呼んだ。実はこれ、あながち間違ってはいない。
私の亡くなった母親は死に際、私にこう言った。
「ーーカミル、貴女は吸血鬼の娘。もし何か困ったことがあったら、血を吸いなさい」
と。
記憶の中の母はとても美しい人だった。
絹のように美しい黒髪に、陶器のように白い肌。
深紅の瞳はルビーのようだった。
私が幼いときに死んでしまったけど、彼女が吸血鬼ということは本当だったのだ。
そして魔法を使える、のは本当だ。
暇潰しに風の魔法を起こして部屋の掃除をしていた。
ただその現場をミストに見られたのは失態だった。
充分に血を吸った私は牙を抜いた。彼女の白い腕にはぽつんと赤い点が二つ浮かんでいる。
「いやっ……お姉様、どうして……」
ただ思っていたよりミストは嫌そうではなかった。頬は紅潮し、まるで性的に興奮してるかのような様子だ。
「ごめんね、力を取り戻すには血が必要だったの」
口に滴る血を手で拭う私。
「血が……? お姉様何を言うの、それじゃあまるで吸血鬼みたい……」
「正解。私が化け物って言うの、あれ本当よ。残念ながら魔女ではないけど」
まあ魔法を使える女という意味で魔女と言うならあながち間違いではないかもしれない。
「嘘……」
呆然と震えるミスト。
私は怯える彼女の腕を強く引く。
「ありがとうミスト。貴方の血、結構美味しかったよ」
「お、お父様……!! 」
助けを呼ぼうとした彼女の動きを魔法で引き留める。
「別に何もしないわよ、おとなしくしてなさいよ」
そしてそのまま牢獄の壁を殴る私。吸血鬼の腕力は普通の人間の何百倍にもなる。壁を壊すのぐらい、朝飯前だ。
そして何より、私は普通よりちょっと強い吸血鬼なのである。
「待ちなさい……!! 」
ミストがじだばたともがいている。その様子がおかしくて私は思わずくすっと笑みを浮かべる。
「ご機嫌よう、ミスト。もう二度と会いませんように」
暗闇の中なら私は好きなところに移動が出来る。地上だの地下だの、そんなものは関係ない。
そして妹の怒ったような泣いたような顔を見た私は、そのまま闇に溶けたのだった。
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