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1年生・春
第27話 悪役令嬢は執念深い
しおりを挟むタイマンを断られてからというもの、私はどーしてもヤナギと拳を交えることを諦めきれず、度々戦士科のSクラスに顔を出していた。
一応鼻の利くコロッケも連れて、準備は万端だ。この前借りたハンカチの匂いを頼りに探して貰おうと思う。
周りから奇異な目で見られるが気にしない気にしない。
しかし、いつ来てもヤナギの姿はない……。
「今日もいないよね? コロッケ」
「ワン! 」
扉から少し顔を覗かせて、クラス内を見渡したが、やはり彼の姿はない。
「あ、お前あんときの」
すると、後ろから誰かに声をかけられた。
振り向くと、そこにはいつぞやのコスモくんがそこにいた。
久々に会ったが、あのときの高慢さは鳴りを潜め、ごく普通の好青年になっていた。
よっぽどあの経験で肝を冷やしたのだろう。
「あ、女の子置いて逃げた例の……」
まあハルは女の子じゃないけども。
「お、おい人聞きの悪いこと言うんじゃねえよ! 」
焦りまくるコスモ。うん、やっぱりからかいがいのある奴だ。
「ガルルルル」
コスモに気がついたコロッケが低く唸る、するとさっとコスモの顔色が変わった。
いや、このデカさでなぜ今まで気がつかなかったのかと逆に問いたい……。
「お、お、おお、おお、こいつ! あのときのデカ狼! どういうことだ……!? 」
「いやー、訳あって今私が飼ってるんですよ。コロッケって言います、よろしくね」
「飼ってる!? この化け物を!? 」
「化け物じゃないよ! あんまり悪口言うと噛みつくよ」
ひっとコスモが低く呻いた。
「そ、そうか。そんなもん手なずけるなんてお前ほんと何者なんだよ………」
いやー、まあ通りすがりの犬好きですね。
「で、何しにこんなとこまで来たんだ? お前僧侶科だろ、こんなとこに用ないだろ」
「そーなんだけど、ヤナギさんって方を探してまして」
「ヤナギ!? 」
さらーにコスモの顔色が青白くなった。え、そんなに恐れられてる人だったかな……?
「知ってるの? 」
「知ってるも何も、俺様を差し置いて戦士科1位の座に君臨してる男だよ。認めたくないが、俺様はあいつには勝てない」
「へえ……」
良いね、ますます楽しみになってきたよ。
「あいつの戦い方は普通じゃない。相手を殺すつもりで……本気で殺りに来てるんだ……」
ガクガクと震えだすコスモ。あ、こりゃ経験談だな。
「で、今どこに彼はいるの? 」
「あいつは一定の周期で学校に来なくなるんだ。多分……城下町の裏路地にいるんじゃないかな」
「一定の周期で? どういうこと
なの? 」
するとコスモは俺様にも分からない、と首を横に振った。
「ただ奴の目が赤いときは注意だ、とは聞いたな」
「目が赤い? 」
私が会ったときはエメラルドグリーンの色だったけど……。マリーもそんなこと言ってたな。
「ヤナギの目が赤いときは悪魔が乗り移ってるとか魔獣になって夜な夜な女を襲ってるって噂だぞ」
何だそりゃ……。もう何でもありだな。
「ま、ありがとう! じゃーね」
「何を企んでるのかしらないが、あいつには関わらない方が良い。俺様は忠告したからな」
私はにこっと笑って返事すると、すぐさま城下町にヤナギ探しの旅に出たのだった!
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