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1年生・春
第18話 ハルの秘密
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脳みそが筋肉で出来たような下らない男、私が一番嫌いなタイプの男である。
と、私ハル=ヴァイオレテスは思う。
あれだけ私は結界の外に出るのはやめておけと言ったのに、この隣でビクついている大男ははんば強引に私たちを連れだしたのだ。回復役の二人の姿が見えないが、上手く逃げ出せていると良いのだが。
「なぁ、ハルちゃん。早く回復魔法かけてくれよ……」
先ほどまでの威勢はどこへやら、コスモは怯えを隠すこともせず、フラフラと私の後を付いてくる。
「もうちょっと敵から離れてからの方が良いです」
出来れば結界の中に戻れれば良いんだけれど……。流石は迷いの森と言うだけあって、どこから来たのかももう分からない。
私は気休め程度に火炎球を天空に撃ち出した。これで先生たちが異常事態に気が付いてくれることを祈っている。
「おい! そんな無駄なことしてんなら俺様をさっさと回復しろよ! 」
「きゃ! 」
コスモに強く腕を掴まれ、私は思わず身をのけぞる。
このでくの坊、まだ力を残していたのか……。
「早く助けを呼ぶのが先決です! それにユノさんとゼノさんのことも心配です」
「そんなんどうでもいいだろ!!! 俺様はいてーーんだよ!! さっさとしろ!! 」
「ですから! 」
びっくりするぐらい話の通じない男だ。虫唾が走る。
すると、不意にコスモに物凄い力で押し倒された。
その拍子に頭を強く打ったのか痺れるような感覚を覚えた。
「はやくしねーと、お前をめちゃくちゃにしてやっても良いんだぜ? お前だって傷物にされたかねーよな」
おそらく極度の緊張と恐怖で正気を失っているのだろう、その目はもはや人間のそれではない。
コスモは私の右頬に触れると、するりと右目を隠すように長く垂らしていた髪をかき上げる。
「やめ……! 」
顕わになった私の右の目、それは私が一番見られたくない箇所だった。
薄桃色の左目とは違い、怪しいぐらいどぎついピンク色をしたその瞳は、まさに全ての人間を魅了する悪魔の目であった。
この瞳を見てしまった者は、私を性的に求めずにはいられなくなる。
「なぁハルちゃん……」
いかつい見た目に似合わない甘えた声を出すコスモ。どんなにツンケンした人間も、瞳を見ただけで私の言いなりだ。
醜い。醜い。汚い。汚い。
情欲を剥き出しにした人間ほど汚らわしいものはない。
汚らわしい手で私に触るな!!!
思わずぎゅっと目を瞑ったそのとき、大地を揺るがすような轟音が鳴り響いた。
「何だ!? 」
音に驚いたコスモは、ぱっと私から離れる。
自由になった私は音のした方向に頭を向けた。
「ひっ……」
そこにいたのは、軽く私を一飲みに出来そうなぐらい大きな狼。きっと縄張りに入り込んできた私たちを排除しようと姿を現したのだろう。
純白のその体毛はキラキラと輝いていて美しい、しかしその不機嫌そうに開かれた口からは寒気がするぐらいの牙がずらりと並んでいた。
私は思わず悲鳴をあげた。しかしそれが狼を刺激してしまったのだろうか、狼は唸り始めた。
「うわああああ、助けてくれ~!!! 」
先ほど辛そうにしていたのは嘘だったのか、コスモが一目散に逃げ出した。
大きな狼は彼に目をくれることなく、ただ私を真っすぐに見据えている。
何で!? どうして私なの!?
あまりの恐怖で体が動かない。
ゆっくりと近づいてくる狼、今にもその大きな爪を振り下ろしてきそうな殺意を感じる。
「やだ……、来ないで!! 」
狼は歩みを止めない。
もう駄目だ、そう思った時、この場に似合わない明るい声が響き渡った。
と、私ハル=ヴァイオレテスは思う。
あれだけ私は結界の外に出るのはやめておけと言ったのに、この隣でビクついている大男ははんば強引に私たちを連れだしたのだ。回復役の二人の姿が見えないが、上手く逃げ出せていると良いのだが。
「なぁ、ハルちゃん。早く回復魔法かけてくれよ……」
先ほどまでの威勢はどこへやら、コスモは怯えを隠すこともせず、フラフラと私の後を付いてくる。
「もうちょっと敵から離れてからの方が良いです」
出来れば結界の中に戻れれば良いんだけれど……。流石は迷いの森と言うだけあって、どこから来たのかももう分からない。
私は気休め程度に火炎球を天空に撃ち出した。これで先生たちが異常事態に気が付いてくれることを祈っている。
「おい! そんな無駄なことしてんなら俺様をさっさと回復しろよ! 」
「きゃ! 」
コスモに強く腕を掴まれ、私は思わず身をのけぞる。
このでくの坊、まだ力を残していたのか……。
「早く助けを呼ぶのが先決です! それにユノさんとゼノさんのことも心配です」
「そんなんどうでもいいだろ!!! 俺様はいてーーんだよ!! さっさとしろ!! 」
「ですから! 」
びっくりするぐらい話の通じない男だ。虫唾が走る。
すると、不意にコスモに物凄い力で押し倒された。
その拍子に頭を強く打ったのか痺れるような感覚を覚えた。
「はやくしねーと、お前をめちゃくちゃにしてやっても良いんだぜ? お前だって傷物にされたかねーよな」
おそらく極度の緊張と恐怖で正気を失っているのだろう、その目はもはや人間のそれではない。
コスモは私の右頬に触れると、するりと右目を隠すように長く垂らしていた髪をかき上げる。
「やめ……! 」
顕わになった私の右の目、それは私が一番見られたくない箇所だった。
薄桃色の左目とは違い、怪しいぐらいどぎついピンク色をしたその瞳は、まさに全ての人間を魅了する悪魔の目であった。
この瞳を見てしまった者は、私を性的に求めずにはいられなくなる。
「なぁハルちゃん……」
いかつい見た目に似合わない甘えた声を出すコスモ。どんなにツンケンした人間も、瞳を見ただけで私の言いなりだ。
醜い。醜い。汚い。汚い。
情欲を剥き出しにした人間ほど汚らわしいものはない。
汚らわしい手で私に触るな!!!
思わずぎゅっと目を瞑ったそのとき、大地を揺るがすような轟音が鳴り響いた。
「何だ!? 」
音に驚いたコスモは、ぱっと私から離れる。
自由になった私は音のした方向に頭を向けた。
「ひっ……」
そこにいたのは、軽く私を一飲みに出来そうなぐらい大きな狼。きっと縄張りに入り込んできた私たちを排除しようと姿を現したのだろう。
純白のその体毛はキラキラと輝いていて美しい、しかしその不機嫌そうに開かれた口からは寒気がするぐらいの牙がずらりと並んでいた。
私は思わず悲鳴をあげた。しかしそれが狼を刺激してしまったのだろうか、狼は唸り始めた。
「うわああああ、助けてくれ~!!! 」
先ほど辛そうにしていたのは嘘だったのか、コスモが一目散に逃げ出した。
大きな狼は彼に目をくれることなく、ただ私を真っすぐに見据えている。
何で!? どうして私なの!?
あまりの恐怖で体が動かない。
ゆっくりと近づいてくる狼、今にもその大きな爪を振り下ろしてきそうな殺意を感じる。
「やだ……、来ないで!! 」
狼は歩みを止めない。
もう駄目だ、そう思った時、この場に似合わない明るい声が響き渡った。
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