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令嬢生活のはじまり
第8話 悪役令嬢と主人公
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Dクラスの証である緑色のネクタイを受けとった私は、大急ぎで嘆きの谷とやらに行こうとした。……のだが。
「……どこだここ」
気が付くと、私は学園の中でも人気のない別館へと迷い込んでいたようだ。
さっきまでいた新館とはうって変わり、ボロい別館には誰もいない。
無駄に広くいり組んだ構造をしたこの学園は私には迷路のようなものであった。
すると、女子トイレの中からヒソヒソと声が聴こえてくる。
ラッキー、誰かいるっぽい。せっかくだし出口を教えて貰おうと私は女子トイレへと足を運んだ。
するとそこで見たのは、びしょ濡れで床に座り込むマリーと、それを取り囲むようにして笑っている数人の女子生徒たち。
私の存在に気が付いていないらしく、女子生徒たちはクスクスと笑っている。
「まぁ、庶民のマリーさんにはお似合いのお姿ですわ! 」
金髪をくるんくるんに巻いたテンプレみたいな意地悪女が高らかに笑う。
えー……こんな女本当に存在するんだ。
「あなた、ちょっと能力が良かったからって調子に乗ってるんじゃなくて!? 」
巻髪女の取り巻きらしき、そばかすが目立つ女子生徒が声をあげた。
「下民の癖にSクラスのネクタイなんて生意気だわ! 」
そう言ったのはもう一人の取り巻き。えーっと特に特徴がないのでモブ女とでも呼ぼう。
モブ女の手には金色のネクタイが握りしめられている。どうやらマリーから取り上げたようだ。
マリーは俯いたままじっとしている。が、不意に口を開いた。
「……さい」
「何ですって? 声が小さくって聞こえないわ! 」
「返してください!!! 」
なんとマリーはモブ女に掴みかかり、ネクタイを取り上げた。
不意を突かれたモブ女はよろけ、倒れ込む。
へー、儚げな美少女だと思っていたが意外とガッツのある子なんだな。
「この……下民の癖に!! 貴族である私たちに逆らうなんて! 」
そばかす女が傍にあった箒を掴み、マリーに向かって振り下ろそうとした。
え、これは流石にまずいんじゃない?
私は思わずマリーの前に飛び出すと、その箒を片手で難なく受け止める。
「こらこら! 丸腰相手に武器持ちだすのは反則だよ! 」
武器を使って戦うならお互い持たなきゃ! これこそブシド―? キシドー? ってものである。
というか丸腰な相手に武器を持って勝てるのは当たり前。一体何が面白いのだろうか。
「何ですのあなた……って、ユノ=ルーンベルグ様!! 」
私の顔を見た取り巻き二人がひっと悲鳴をあげた。
え、そんな私怖い顔してたかなぁ。
「ち、ち、違いますの、これは下民風情に力関係を教えてあげようと思って……」
テンプレ女が引きつった笑いを浮かべて私に話かけてきた。
「力関係? そんなの私が最強に決まってるじゃない」
ちょっと違う気がするがま、気にしない気にしない。
「それはそうなんですけど……」
「で、マリーちゃんだっけ? ここに箒があるけど……」
「え? あ、はい? 」
うん! マリーも武器を持てば公平な戦いになりそうだ!
私が差し出した箒をマリーちゃんは受け取ると、テンプレ女たちに向かって構えた。
「あ、でもそもそも1対3って不公平だ……、よし分かった! 私がマリーちゃんに加勢してあげよう」
私は流石に強すぎるからハンデとして目を瞑ったまま戦ってあげよう。私は結構甘いのだ。
「え、えっとその」
あれだけやる気満々だったのに急に元気がなくなる意地悪女たち、あ! そっか大事なことを忘れてた。
「あ、ルールが分かんないかんじ? そうだな~、急所狙うのはナシで……仲間呼ぶのはまぁアリでもいいかな」
「あ~~~~~、すいません、私たち用事を思い出しましたわ!!! 」
逃げるようにして飛び出していく3人、え~、せっかく戦えると思って期待したのに。
残された私とマリーはお互い顔を見合わせて首を傾げた。
「……どこだここ」
気が付くと、私は学園の中でも人気のない別館へと迷い込んでいたようだ。
さっきまでいた新館とはうって変わり、ボロい別館には誰もいない。
無駄に広くいり組んだ構造をしたこの学園は私には迷路のようなものであった。
すると、女子トイレの中からヒソヒソと声が聴こえてくる。
ラッキー、誰かいるっぽい。せっかくだし出口を教えて貰おうと私は女子トイレへと足を運んだ。
するとそこで見たのは、びしょ濡れで床に座り込むマリーと、それを取り囲むようにして笑っている数人の女子生徒たち。
私の存在に気が付いていないらしく、女子生徒たちはクスクスと笑っている。
「まぁ、庶民のマリーさんにはお似合いのお姿ですわ! 」
金髪をくるんくるんに巻いたテンプレみたいな意地悪女が高らかに笑う。
えー……こんな女本当に存在するんだ。
「あなた、ちょっと能力が良かったからって調子に乗ってるんじゃなくて!? 」
巻髪女の取り巻きらしき、そばかすが目立つ女子生徒が声をあげた。
「下民の癖にSクラスのネクタイなんて生意気だわ! 」
そう言ったのはもう一人の取り巻き。えーっと特に特徴がないのでモブ女とでも呼ぼう。
モブ女の手には金色のネクタイが握りしめられている。どうやらマリーから取り上げたようだ。
マリーは俯いたままじっとしている。が、不意に口を開いた。
「……さい」
「何ですって? 声が小さくって聞こえないわ! 」
「返してください!!! 」
なんとマリーはモブ女に掴みかかり、ネクタイを取り上げた。
不意を突かれたモブ女はよろけ、倒れ込む。
へー、儚げな美少女だと思っていたが意外とガッツのある子なんだな。
「この……下民の癖に!! 貴族である私たちに逆らうなんて! 」
そばかす女が傍にあった箒を掴み、マリーに向かって振り下ろそうとした。
え、これは流石にまずいんじゃない?
私は思わずマリーの前に飛び出すと、その箒を片手で難なく受け止める。
「こらこら! 丸腰相手に武器持ちだすのは反則だよ! 」
武器を使って戦うならお互い持たなきゃ! これこそブシド―? キシドー? ってものである。
というか丸腰な相手に武器を持って勝てるのは当たり前。一体何が面白いのだろうか。
「何ですのあなた……って、ユノ=ルーンベルグ様!! 」
私の顔を見た取り巻き二人がひっと悲鳴をあげた。
え、そんな私怖い顔してたかなぁ。
「ち、ち、違いますの、これは下民風情に力関係を教えてあげようと思って……」
テンプレ女が引きつった笑いを浮かべて私に話かけてきた。
「力関係? そんなの私が最強に決まってるじゃない」
ちょっと違う気がするがま、気にしない気にしない。
「それはそうなんですけど……」
「で、マリーちゃんだっけ? ここに箒があるけど……」
「え? あ、はい? 」
うん! マリーも武器を持てば公平な戦いになりそうだ!
私が差し出した箒をマリーちゃんは受け取ると、テンプレ女たちに向かって構えた。
「あ、でもそもそも1対3って不公平だ……、よし分かった! 私がマリーちゃんに加勢してあげよう」
私は流石に強すぎるからハンデとして目を瞑ったまま戦ってあげよう。私は結構甘いのだ。
「え、えっとその」
あれだけやる気満々だったのに急に元気がなくなる意地悪女たち、あ! そっか大事なことを忘れてた。
「あ、ルールが分かんないかんじ? そうだな~、急所狙うのはナシで……仲間呼ぶのはまぁアリでもいいかな」
「あ~~~~~、すいません、私たち用事を思い出しましたわ!!! 」
逃げるようにして飛び出していく3人、え~、せっかく戦えると思って期待したのに。
残された私とマリーはお互い顔を見合わせて首を傾げた。
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