最強目指す脳筋令嬢は婚約破棄されたい

寿司

文字の大きさ
上 下
7 / 29
令嬢生活のはじまり

第7話 かしこさ:2

しおりを挟む
 
 肝心の能力測定は私がぼーっとしている間にてきぱきと検査員の人が終わらせてくれた。

 
「ユノさんはあのルーンベルグ家の一人娘ですものね、心配せずとも素晴らしい数値が得られるでしょう」

 私の間抜けな表情を何か勘違いしてるらしい検査員のおばちゃんが微笑む。
 すいません、別に数値の結果が気になっているわけではなくどうやって魔王の住むところに行こうか考えてたんです。
 それにえっと、あのルーンベルグ家と言われてもピンと来ないのですが……。
 さっきの生徒たちの反応を見るに、有名なのだろうか?

「はははー、そうですかー」

 当たり障りなく笑って見せると、突然目の前にホログラムのようなものが浮き出てきた。

「さあ結果が出ましたよ、えっと……え? 」

 おー、凄いこれが魔法の世界なのか。どれどれと結果を見てみる私。


名前:ユノ=ルーンベルグ

年齢:17

性別:女

職業:聖女候補

Lv:測定不能

体力:測定不能

魔力:測定不能

かしこさ:2


  あれれ……ほとんどの項目が測定不能なんですけど。それにかしこさ2って……あまり良くない結果なのは私にも分かる。

「えーっと、このかしこさが2というのは」

「五歳児の平均が大体50ですね」

 つまり、私めっちゃ馬鹿ってこと?

 まぁ確かに高校生だった頃は赤点ばっかり進級ギリギリではあったが……。

 すると、隣の測定ブースから歓声があがった。

 思わずそちらに視線を移すと、腰の辺りまである金色の髪をさらさらとなびかせ、人形のように整った顔立ちの少女が唖然とした表情で検査を受けていた。

「魔力、かしこさ共に999!? まさかこんな人間がいるなんて……」

 彼女の検査をしていたらしき男がでかい声で叫ぶ。個人情報ぐらい黙っとけと思うのは私だけだろうか。

「999……!? 嘘だろ、いったい誰が……」

「マリーという女らしいぞ、ほらあの平民の」

 モブたちがざわざわと話をしている。

 マリー……。

 ああ、聞いたことあると思ったら乙女ゲームの主人公でこの世界の主役の女の子か。流石は主人公補正、ステータスもぶっ飛んでる。

 で、本当はこの子をいじめるのが私の役割なんだろうけど……。

 めんどくさい。

 なんで私がそんな生産性のないことをしなきゃいけないのか……。人をいじめる暇があるなら素振りの100回でもした方が良い。

 マリーは視線を集めていることに気づいてか、顔を真っ赤にして目線を泳がせた。

 うん、注目を集めるのは主人公として仕方ないことだよね、大変そうだけど頑張って!

「で、私のクラスは……」

「もちろんDです」

 デスヨネー。こうして私の聖女への道は無事に閉ざされたのである! めでたしめでたし。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

真実の愛は、誰のもの?

ふまさ
恋愛
「……悪いと思っているのなら、く、口付け、してください」  妹のコーリーばかり優先する婚約者のエディに、ミアは震える声で、思い切って願いを口に出してみた。顔を赤くし、目をぎゅっと閉じる。  だが、温かいそれがそっと触れたのは、ミアの額だった。  ミアがまぶたを開け、自分の額に触れた。しゅんと肩を落とし「……また、額」と、ぼやいた。エディはそんなミアの頭を撫でながら、柔やかに笑った。 「はじめての口付けは、もっと、ロマンチックなところでしたいんだ」 「……ロマンチック、ですか……?」 「そう。二人ともに、想い出に残るような」  それは、二人が婚約してから、六年が経とうとしていたときのことだった。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

元妻からの手紙

きんのたまご
恋愛
家族との幸せな日常を過ごす私にある日別れた元妻から一通の手紙が届く。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

処理中です...