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令嬢生活のはじまり
第4話 ユリウスの悩み
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私、ユリウス=ロイマンには最近悩みがありました。
それは幼い頃から親に決められていた婚約者の様子が少しおかしいのです。
その婚約者の名前はユノ=ルーンベルグ。ルーンベルグ家の一人娘である彼女は我儘で高慢で、高飛車な女です。
「はぁ、わたくしは王家に嫁ぎたかったのに……どうしてこんなしがない貴族の妻なんかにならなきゃいけないんですの」が口癖の、一言で言い表すと嫌な女でした。
しかし最近のユノはまるで人格が変わってしまったようでした。私のことを忘れたのはただのあてつけなのだと思っていたのですが、本気で彼女は今までの記憶を失っているようです。
朝起きれば屋敷を飛び出して山に入り、夕方泥だらけになって戻ってくるわ、部屋にいたかと思えばトレーニングで一日を過ごし、あれだけ好きだった甘いものも一切やめ、お肉ばかり食べていると彼女のお母様が嘆いていた。
何か悩みでもあるのでしょうか? 私は彼女のことが分からなくなっていた。
今日は騎士としての訓練校に入る前日、買い出しに来たのですがあまり捗ってはいません。
すると、武器屋の正面でなにやら人だかりが出来ていました。
「おい来いよ! ルェンをボコボコにされてるらしいぞ! 」
「あの伝説の格闘家ルェンより強いやつが現れたってのか? 」
「ああ、挑戦者はそれも華奢な女だとか! 」
華奢な女……。
嫌な予感がします。
まさかね、と思いつつ、私も人をかき分けてそれを観戦することにしました。
「よっしゃあああああ、大勝利! 」
大男を尻に敷き、ガッツポーズをしているのは……。
嫌な予感的中です……。
「ユノじゃないか!! 」
見慣れた婚約者の姿でした。
「あれ!? えっと……ユ、あ、ユリウスさん!! 」
……絶対忘れてかけていたでしょう。
「何やってるんですかこんなところで! 」
「ええと、その、お小遣い稼ぎといいますか……」
きまり悪げに目を反らす彼女。
「お小遣い!? なんて野蛮な……貴女はルーンベルグ家の令嬢なのですよ、きちんとたしなみを持ってですね……」
「やったー1万Gゲット! ありがとう! 」
私の小言をよそに、ホクホク顔でその格闘家からお金を受け取るユノ。
「お嬢さん強いなー、まさかこの俺がこんな可憐な少女に負けるとは思わなかったよ」
「これで大陸一最強は私のもの! うふふふふ……」
不気味に笑みを浮かべる婚約者の姿に、少々私は引いてしまう。
「ユノあなた最近どうしたんですか……っていない!! 」
さっきまでそこにいたはずのユノの姿がなくなっていました。
「あのねぇちゃんなら武器屋に走ってったぜ」
近くにいた観客がぽつりと教えてくれました。
武器屋……?
武器? なんて下品なのでしょう! もう私にそんなもの見せないで! と私の愛剣ですら目の敵にしていたユノが武器屋……?
もう何が起こっているのか私には訳が分かりませんでした。
それは幼い頃から親に決められていた婚約者の様子が少しおかしいのです。
その婚約者の名前はユノ=ルーンベルグ。ルーンベルグ家の一人娘である彼女は我儘で高慢で、高飛車な女です。
「はぁ、わたくしは王家に嫁ぎたかったのに……どうしてこんなしがない貴族の妻なんかにならなきゃいけないんですの」が口癖の、一言で言い表すと嫌な女でした。
しかし最近のユノはまるで人格が変わってしまったようでした。私のことを忘れたのはただのあてつけなのだと思っていたのですが、本気で彼女は今までの記憶を失っているようです。
朝起きれば屋敷を飛び出して山に入り、夕方泥だらけになって戻ってくるわ、部屋にいたかと思えばトレーニングで一日を過ごし、あれだけ好きだった甘いものも一切やめ、お肉ばかり食べていると彼女のお母様が嘆いていた。
何か悩みでもあるのでしょうか? 私は彼女のことが分からなくなっていた。
今日は騎士としての訓練校に入る前日、買い出しに来たのですがあまり捗ってはいません。
すると、武器屋の正面でなにやら人だかりが出来ていました。
「おい来いよ! ルェンをボコボコにされてるらしいぞ! 」
「あの伝説の格闘家ルェンより強いやつが現れたってのか? 」
「ああ、挑戦者はそれも華奢な女だとか! 」
華奢な女……。
嫌な予感がします。
まさかね、と思いつつ、私も人をかき分けてそれを観戦することにしました。
「よっしゃあああああ、大勝利! 」
大男を尻に敷き、ガッツポーズをしているのは……。
嫌な予感的中です……。
「ユノじゃないか!! 」
見慣れた婚約者の姿でした。
「あれ!? えっと……ユ、あ、ユリウスさん!! 」
……絶対忘れてかけていたでしょう。
「何やってるんですかこんなところで! 」
「ええと、その、お小遣い稼ぎといいますか……」
きまり悪げに目を反らす彼女。
「お小遣い!? なんて野蛮な……貴女はルーンベルグ家の令嬢なのですよ、きちんとたしなみを持ってですね……」
「やったー1万Gゲット! ありがとう! 」
私の小言をよそに、ホクホク顔でその格闘家からお金を受け取るユノ。
「お嬢さん強いなー、まさかこの俺がこんな可憐な少女に負けるとは思わなかったよ」
「これで大陸一最強は私のもの! うふふふふ……」
不気味に笑みを浮かべる婚約者の姿に、少々私は引いてしまう。
「ユノあなた最近どうしたんですか……っていない!! 」
さっきまでそこにいたはずのユノの姿がなくなっていました。
「あのねぇちゃんなら武器屋に走ってったぜ」
近くにいた観客がぽつりと教えてくれました。
武器屋……?
武器? なんて下品なのでしょう! もう私にそんなもの見せないで! と私の愛剣ですら目の敵にしていたユノが武器屋……?
もう何が起こっているのか私には訳が分かりませんでした。
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