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第4回 魯達、げんこ三つを振るうこと
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史進はどんどん歩いて、やがて渭州にたどり着きます。
このまちの往来で、懐かしい人物に出会えました。王進のまえに棒術を教えてくれた、膏薬売りの李忠という男です。
「やあ、こんなところで教え子に出くわすとはな。俺は相変わらず貧乏してるよ、わはは」
ふたり連れ立って歩けば、目抜き通りは人でいっぱいです。
「なかなか大きな街じゃないか、城も立派だ。そうだ、王師匠だってわざわざ長旅するこたない、ここの軍営に仕官してるかも知れん」
街道ばたの茶店に入ると、小僧さんにたずねます。
「ちょっと聞くが、このまちに王進という軍の教官はいるかね?」
「さあ、軍人さんは多いからねえ。あっ、あの人に聞いてみたらどうです?」
言われた方を振り返った史進、ちょうど入ってきた大柄な憲兵と目が合いました。ちょっと見ないほどの巨漢、“雲をつく”とは彼のための言葉でしょうか、それに肩口からは入れ墨がこぼれ出しています。
「なんだ、ワシに用事か」
魯達と名乗るこの憲兵、見た目はいかついですが、胸を割って相談すればあんがい親切な男です。話しがはずむうちに三人はすっかり意気投合。史進は自分の事情を残らず打ち明けてしまいましたが、魯達は「そりゃ世ン中がわるい」と捕まえようともしません。
「気持ちのいい兄貴だ!三人の出会いに乾杯!」
と。。。どこからともなくすすり泣きが聞こえます。魯達、パリンと盃を叩きつけ「やめてくれそういう不景気なのは!酒がまずくなるだろが!」と怒鳴りますと、声の主の父娘がまろび出てまいりました。
事情をきけばなんとも可哀想な境遇です。
「ははあ、なるほど。すると商売に失敗して都から流れてきたが、おっかさんは亡くなり路銀も尽きて困っていたと。そこをあくどい金貸しにだまされて借金ばかりふくらんでいると。そりゃああれだ、金貸しがまるごと悪い!」魯達というひとは万事この調子、竹を割ったような考え方です。
「よし!ちょっとその金貸しを殺してくる」といきり立つものだから、史進も李忠もしがみついて止めます。
「まあまあ、まずはこの親子を助けてあげないと」
「そうだった!ワシとしたことが順序があべこべだ。お父っさんに娘さん、こんな不当な取り立て相手にするこたないよ。いますぐ渭州を離れなさい。なに?路銀がない。そうだった!ならこいつを使うといい」
ふところをまさぐると、手持ちのお金五貫をそっくり与えてしまいます。くるりとむき直ると、
「すまん兄弟、今日は持ち合わせがこれだけしかない。悪いが少し貸してくれんか」
史進わらって十貫を出します。「貸すだなんて水くさい。差し上げますよ」
李忠はというと、ブツブツいいながらだいぶ時間かけて二貫を取り出しました。
「なんだ、けちんぼ!キリがわるいと恥ずかしいだろ!」と魯達、二貫のほうはつっかえし、親子には十五貫わたして宿に戻らせて、酒代がないのでこの日はお開きとなりました。
あくる日。父娘がじゅうぶん街を離れたころ合いを見て、魯達はひとり肉市場に向かいます。
いつの時代もそうですが、悪党というのはだいたい表の顔をもっているもの。陝西一帯に名を知られた金貸し“鎮関西の旦那”とは肉屋の主人、鄭に他ならないのです。
「よう、鄭。暑いなかご苦労だなあ」
「これはこれは憲兵さま、なにかご用で」
「用がなけりゃ来ねえよ。上等の肉を十斤ばかし切ってくれ」
「上司と宴会でもするんかな?」と思った鄭、「はいはい、承ります。おおい!」
「他でもないワシの注文だぞ、手下まかせにせず自分で切れ。ちっとでもあぶら身が入っちゃいけねえぜ」
「へいへい、そういたします」目上にはかしずく、下々には酷薄、それが鄭の、いや人間一般の本性でございましょう。
夏の日差しがさし込む縁台で、鄭はきっちり十斤、サイの目に切り蓮の葉っぱにくるみます。「へい、おまちどうさま!」
「おいおい、これで終わりとだれが言った?あと十斤、こんどはあぶら身ばかり切ってもらおうか。赤いのがちっとでも入っちゃダメだぞ」
鄭、「おかしいなあ、なんの宴会だ?」首をかしげながらまた十斤、切って渡したころにはスッカリ汗みずくになっていました。
「よおし、こんどは軟骨ばかり十斤だ」
「お役人さま、馬鹿いっちゃいけねえ!さては俺をからかってるな」
「ようやくわかったか!」と魯達、肉のつつみを鄭の顔面めがけ投げつけるや、肥えた体をつかみ上げて表どおりに蹴り出します。
「ちくしょう、俺になんのうらみがある!」鄭もいまは必死、肉切り包丁をふりあげ威嚇します。魯達はといえば寸鉄も帯びていませんが、恐れることなくずんずん間合いをつめると、ポカリと拳骨をくわせました。その怪力の凄まじいこと、鄭の巨大は吹っ飛んでゆきます。
「こいつはてめえのために泣かされた親父と娘さんの怒りだ!」
こぶしを固めてもう一発、鄭はたまらず、
「まて!俺がわるかった!かんべんしてくれえ!」
「いいや、まだワシの気が済んどらん。これでも食らえ!」さいごに特大のげんこを見舞うと、鄭のあたまはひしゃげてしまいました。これはどう見てもお陀仏です。
殺してしまったことに気づいた魯達、「しまった!ワシはどうしてこうも力加減が不得手なんだろう!」
嘆いてみても後の祭り、とっさの機転で「へっ。死んだマネなんぞしやがって」と捨て台詞のこして風のようにたち去ると、荷物をまとめて渭州をずらかることにいたします。
そこから先の逃亡生活といったら、なかなか大変なものでした。王進や史進とちがい、彼の人相風態は分かりやすいのです。
草を枕に野宿の日々を半年もくり返したでしょうか、彼のすがたは山西は雁門県の県城にありました。久かたぶりに都会にやって来たのは、彼ほどな豪傑でも人が恋しかったからか、あるいはここまで逃げれば大丈夫だとタカをくくったか。しかし四ツ辻の高札にはちゃんとお触れ書きがありました。
「人を殺したる者、魯達。渭州の産。身の丈九尺、捕まえたらば、賞金一千貫……」
まるで他人ごとの様に読んでいると、ぐいぐいとたもとを引っ張るものがあります。
「あっ。親父さん!なんでこんなところに」
「しぃっ、こっちに来なされ」
なんと、渭州で助けた父親ではありませんか。きけばあの後、みやこ目指して帰るとちゅう、娘さんがこの雁門で立派な商家の旦那に見染められて後添えに入り、いまじゃ何不自由ない暮らしを得ているとのこと。
「よかったなあ!ワシもひと暴れしたかいがあったというもんよ」
落魄した自分の身のうえなんてお構いなし、多いによろこぶ魯達でしたが、こうも全土に指名手配されては進退きわまった感があります。
娘さんの夫、趙の大旦那に相談すると流石にいいひと、親身になって世話を焼いてくれました。
「あなたの面相では、ちょっとやそっと職業を変えたところで天下に身の置き場がないでしょう。どうです、この近くに五台山という大きな禅寺がある。そこで剃髪してみては」
「ええ!坊主になれってことですかい!?」
びっくり仰天の策ですが、このくらいしないと身を隠せないのも事実です。
趙旦那の口ぞえでお山に登った魯達。「坊さんにしてください」とお願いしますが、長老たちはすぐにピンと来るものがあったようで。
「お上人さま、こやつを寺に入れてはなりません。ご覧なさい、あの顔、あのからだ。てっきり殺人か強盗でもして逃げ口を探しておるのでしょう。おお怖い」
しかし“生き仏”とあがめられる智真上人、ゆっくりかぶりを振りまして、
「いや、それでもよい。匿ってあげようではないか」
「とんでもない!こやつは獣とおんなじ、修行なんて無理です。ひとつまみの仏性だって有りはしますまい」
「いまはそうじゃろうな。しかしいずれ日月満ちたとき、わしらには到底およびもつかぬ巨大な悟りを得るであろう」
などとおっしゃって、嫌がる長老衆を説得して結局魯達をお山に入れてやりました。
これより魯達、髪もヒゲもそり落とし、仏徒のひとりとして「智深」なるありがたい法名を授かります。背中に彫りものした坊さんなど珍しいので、“花和尚 魯智深”と呼ばれることになりました。
このまちの往来で、懐かしい人物に出会えました。王進のまえに棒術を教えてくれた、膏薬売りの李忠という男です。
「やあ、こんなところで教え子に出くわすとはな。俺は相変わらず貧乏してるよ、わはは」
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「さあ、軍人さんは多いからねえ。あっ、あの人に聞いてみたらどうです?」
言われた方を振り返った史進、ちょうど入ってきた大柄な憲兵と目が合いました。ちょっと見ないほどの巨漢、“雲をつく”とは彼のための言葉でしょうか、それに肩口からは入れ墨がこぼれ出しています。
「なんだ、ワシに用事か」
魯達と名乗るこの憲兵、見た目はいかついですが、胸を割って相談すればあんがい親切な男です。話しがはずむうちに三人はすっかり意気投合。史進は自分の事情を残らず打ち明けてしまいましたが、魯達は「そりゃ世ン中がわるい」と捕まえようともしません。
「気持ちのいい兄貴だ!三人の出会いに乾杯!」
と。。。どこからともなくすすり泣きが聞こえます。魯達、パリンと盃を叩きつけ「やめてくれそういう不景気なのは!酒がまずくなるだろが!」と怒鳴りますと、声の主の父娘がまろび出てまいりました。
事情をきけばなんとも可哀想な境遇です。
「ははあ、なるほど。すると商売に失敗して都から流れてきたが、おっかさんは亡くなり路銀も尽きて困っていたと。そこをあくどい金貸しにだまされて借金ばかりふくらんでいると。そりゃああれだ、金貸しがまるごと悪い!」魯達というひとは万事この調子、竹を割ったような考え方です。
「よし!ちょっとその金貸しを殺してくる」といきり立つものだから、史進も李忠もしがみついて止めます。
「まあまあ、まずはこの親子を助けてあげないと」
「そうだった!ワシとしたことが順序があべこべだ。お父っさんに娘さん、こんな不当な取り立て相手にするこたないよ。いますぐ渭州を離れなさい。なに?路銀がない。そうだった!ならこいつを使うといい」
ふところをまさぐると、手持ちのお金五貫をそっくり与えてしまいます。くるりとむき直ると、
「すまん兄弟、今日は持ち合わせがこれだけしかない。悪いが少し貸してくれんか」
史進わらって十貫を出します。「貸すだなんて水くさい。差し上げますよ」
李忠はというと、ブツブツいいながらだいぶ時間かけて二貫を取り出しました。
「なんだ、けちんぼ!キリがわるいと恥ずかしいだろ!」と魯達、二貫のほうはつっかえし、親子には十五貫わたして宿に戻らせて、酒代がないのでこの日はお開きとなりました。
あくる日。父娘がじゅうぶん街を離れたころ合いを見て、魯達はひとり肉市場に向かいます。
いつの時代もそうですが、悪党というのはだいたい表の顔をもっているもの。陝西一帯に名を知られた金貸し“鎮関西の旦那”とは肉屋の主人、鄭に他ならないのです。
「よう、鄭。暑いなかご苦労だなあ」
「これはこれは憲兵さま、なにかご用で」
「用がなけりゃ来ねえよ。上等の肉を十斤ばかし切ってくれ」
「上司と宴会でもするんかな?」と思った鄭、「はいはい、承ります。おおい!」
「他でもないワシの注文だぞ、手下まかせにせず自分で切れ。ちっとでもあぶら身が入っちゃいけねえぜ」
「へいへい、そういたします」目上にはかしずく、下々には酷薄、それが鄭の、いや人間一般の本性でございましょう。
夏の日差しがさし込む縁台で、鄭はきっちり十斤、サイの目に切り蓮の葉っぱにくるみます。「へい、おまちどうさま!」
「おいおい、これで終わりとだれが言った?あと十斤、こんどはあぶら身ばかり切ってもらおうか。赤いのがちっとでも入っちゃダメだぞ」
鄭、「おかしいなあ、なんの宴会だ?」首をかしげながらまた十斤、切って渡したころにはスッカリ汗みずくになっていました。
「よおし、こんどは軟骨ばかり十斤だ」
「お役人さま、馬鹿いっちゃいけねえ!さては俺をからかってるな」
「ようやくわかったか!」と魯達、肉のつつみを鄭の顔面めがけ投げつけるや、肥えた体をつかみ上げて表どおりに蹴り出します。
「ちくしょう、俺になんのうらみがある!」鄭もいまは必死、肉切り包丁をふりあげ威嚇します。魯達はといえば寸鉄も帯びていませんが、恐れることなくずんずん間合いをつめると、ポカリと拳骨をくわせました。その怪力の凄まじいこと、鄭の巨大は吹っ飛んでゆきます。
「こいつはてめえのために泣かされた親父と娘さんの怒りだ!」
こぶしを固めてもう一発、鄭はたまらず、
「まて!俺がわるかった!かんべんしてくれえ!」
「いいや、まだワシの気が済んどらん。これでも食らえ!」さいごに特大のげんこを見舞うと、鄭のあたまはひしゃげてしまいました。これはどう見てもお陀仏です。
殺してしまったことに気づいた魯達、「しまった!ワシはどうしてこうも力加減が不得手なんだろう!」
嘆いてみても後の祭り、とっさの機転で「へっ。死んだマネなんぞしやがって」と捨て台詞のこして風のようにたち去ると、荷物をまとめて渭州をずらかることにいたします。
そこから先の逃亡生活といったら、なかなか大変なものでした。王進や史進とちがい、彼の人相風態は分かりやすいのです。
草を枕に野宿の日々を半年もくり返したでしょうか、彼のすがたは山西は雁門県の県城にありました。久かたぶりに都会にやって来たのは、彼ほどな豪傑でも人が恋しかったからか、あるいはここまで逃げれば大丈夫だとタカをくくったか。しかし四ツ辻の高札にはちゃんとお触れ書きがありました。
「人を殺したる者、魯達。渭州の産。身の丈九尺、捕まえたらば、賞金一千貫……」
まるで他人ごとの様に読んでいると、ぐいぐいとたもとを引っ張るものがあります。
「あっ。親父さん!なんでこんなところに」
「しぃっ、こっちに来なされ」
なんと、渭州で助けた父親ではありませんか。きけばあの後、みやこ目指して帰るとちゅう、娘さんがこの雁門で立派な商家の旦那に見染められて後添えに入り、いまじゃ何不自由ない暮らしを得ているとのこと。
「よかったなあ!ワシもひと暴れしたかいがあったというもんよ」
落魄した自分の身のうえなんてお構いなし、多いによろこぶ魯達でしたが、こうも全土に指名手配されては進退きわまった感があります。
娘さんの夫、趙の大旦那に相談すると流石にいいひと、親身になって世話を焼いてくれました。
「あなたの面相では、ちょっとやそっと職業を変えたところで天下に身の置き場がないでしょう。どうです、この近くに五台山という大きな禅寺がある。そこで剃髪してみては」
「ええ!坊主になれってことですかい!?」
びっくり仰天の策ですが、このくらいしないと身を隠せないのも事実です。
趙旦那の口ぞえでお山に登った魯達。「坊さんにしてください」とお願いしますが、長老たちはすぐにピンと来るものがあったようで。
「お上人さま、こやつを寺に入れてはなりません。ご覧なさい、あの顔、あのからだ。てっきり殺人か強盗でもして逃げ口を探しておるのでしょう。おお怖い」
しかし“生き仏”とあがめられる智真上人、ゆっくりかぶりを振りまして、
「いや、それでもよい。匿ってあげようではないか」
「とんでもない!こやつは獣とおんなじ、修行なんて無理です。ひとつまみの仏性だって有りはしますまい」
「いまはそうじゃろうな。しかしいずれ日月満ちたとき、わしらには到底およびもつかぬ巨大な悟りを得るであろう」
などとおっしゃって、嫌がる長老衆を説得して結局魯達をお山に入れてやりました。
これより魯達、髪もヒゲもそり落とし、仏徒のひとりとして「智深」なるありがたい法名を授かります。背中に彫りものした坊さんなど珍しいので、“花和尚 魯智深”と呼ばれることになりました。
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