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天人回廊
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無窮の座での日暮れは早い……こともなく、睡眠欲も疲労も感じられないこの場所では、朝まで起きていることもよくあるが、習慣というのは抜けないもので、日が落ちると何となく横になってしまう。
借りている小屋にはベッドはなく、寝具としても使える厚手の布はそこそこの数があるので、それに包まりながら横になって目を瞑れば、奇妙なことに眠気はなくとも眠れてしまい、朝になると自然と目が覚める。
疲労回復などはしないが、それでも人間としての精神が癒されるのか、一晩眠るとなんだか頭がすっきりするので不思議だ。
今日もまた朝が来ると目が覚め、少し離れたところで鼻提灯のパーラを起こさないようにコッソリと小屋を出る。
小屋の周りにはまばらに木が生えており、その中のいくつかが実をつけていて、それを朝日とともに収穫するのがここ何日かですっかり日課になっていた。
高さ三メートルほどの木は、腕を横に広げるようにして枝が伸びており、そのいくつかには実がなっている。
一応木の周囲に蛇がいないかを確認してしまったのは、キリスト教が伝えるエデンの園を知っているせいだ。
この確認も朝の習慣だ。
何もないことを確かめたら、木の棒で幹を叩いて実を落とし、すかさず拾っていく。
このいい感じの木の棒は、まるでこれで実をとれと言わんばかりに小屋に置かれていたもので、正しくそれはこうして役に立ってくれていた。
実を五つほど手にしたところで、今朝の収穫は終わり。
一つを皮ごとかじりながら小屋へと戻っていく。
ツプリという堅めの張りがある皮が歯に負けてその中身を溢れさせ、口の中に広がるなめらかな甘さを舌で楽しみながら、今日もいいのが採れたと満足感を覚える。
薄緑色したこの実は一見すると小ぶりな青リンゴのようだが、齧ると柿のような味がするというちょっと不思議な果実だ。
下界にはリンゴも普通にあるのだが、柿だけは見たことがなかった。
そのため、初めて食べたときは青りんごの見た目の柿というその味に驚いたものだ。
腹が減らないのであくまでも味を楽しむだけと、少量を口にするだけでいいのだが、パーラはこの味がすこぶる気に入ったらしく、最近は毎朝これを三つは平らげている。
それだけのペースで食べていたら、小屋の周りの木から実が採りつくされるのではないかと危惧していたが、ここはやはり不思議な空間だけあって、実を採ってから二日経つとすぐに次の実ができていた。
成長速度が凄いのかとも思ったがそういうわけではなく、一つの木になる実の数は決まっているようで、それが減ると二日後には元に戻るが、しかしそれ以上に増えることはないという何とも都合のいい木だったりする。
奇妙な植物だと思わなくもないが、特にこっちが困ることでもないし、そういうものだと思って受け入れている。
「ただいま」
「あ、おかえりアンディ」
小屋に戻り、扉を開けて中へ声をかけるとパーラのそんな声が俺を出迎えた。
「おう、起きてたか。ほれ、朝飯だ」
「とっとっと、あんがと」
取れたての実を二つ放ってやると、危なげなくキャッチしたパーラがその流れで手の中の果実に齧り付く。
「…んー、やっぱりおいしいね、これ。リンゴみたいな酸味がないのは少し変な感じだけど、優しい甘さっていうの?他にはない味だよ」
「そりゃよかったな」
柿を知らないパーラにしてみれば、全く未知の甘さをもたらすこの果実への傾倒ぶりはすごいもので、朝から饒舌な語り口を見せた。
空腹感はないはずだが、飢えたように食べ進めていき、あっという間に一つを平らげると次を口に運ぶ。
食欲などと無縁のこの世界でも、パーラの健啖家ぶりは変わらないところになぜか安心感を覚えてしまう。
違う環境の中でも変わらない何かがあると、人の心は穏やかになれるものだ。
残りの実は皮を剥いて皿に盛り、パーラのほうへとくれてやった。
俺はさっき食べた一つで十分だし、パーラも毎朝これぐらいの量を食べている。
それよりも、余った皮の方が今の俺には重要だ。
少し前から考えていたのだが、この皮を使って果物茶を作ろうと思う。
今日のエスティアンと会う時のために、せっかくなら昨日よりもいいお茶を用意したいと考え、こうした果物の皮からお茶を作るつもりだ。
地球には果物の風味を生かしたお茶というのが数多くあるのだが、世界が変わるとそれも一般的ではなくなる。
下界ではお茶自体が貴重品なため、嵩増し分として乾燥させた果物の実や皮を混ぜることぐらいはやりそうなものだが、何故かそういったことはあまり行われておらず、果物茶はある意味異端として俺が最初に生み出すこととなるかもしれない。
前々から乾燥させていた分と合わせて、このフレッシュな皮と合わせてお湯で煮出せば、いったいどんな味になるのか。
流石に味見もしないでエスティアンに出すのは躊躇われるので、少量をとりあえず試飲してみる。
小鍋にたった今用意した皮と乾燥済みだった皮を入れ、お湯で煮出していく。
元々香りが強い果物ではないのだが、お湯にくぐらせると中々香りが立つもので、小屋の中に青葉のような爽やさと微かな甘さが混ざる匂いが満ちていく。
「へぇ、いい匂い。なになに?なんか作ってんの?」
用意していた果物を食べ終えたのか、指先をペロリと舐りながらパーラが俺の手元をのぞき込んでくる。
「お茶だよ。さっき剥いて残った皮を煮出してるんだ」
「皮ぁ?そんなのでお茶になるの?」
「ぽくはなるってだけだ。正確にはお茶とは違うし、人によっちゃ好みも分かれる。…よし、出来た。ちょっと飲んでみるか?」
普通に茶葉を使うよりもやや長めに煮だすと、色も匂いもしっかりとついた果物茶の出来上がりだ。
青緑色の皮を使ったからか、出来上がりの色は真っ黄色となんとも変わっている。
一口飲んでみると、フルーティな香りと甘みと酸味が何とも言えず涼やかでいい。
最後に残る渋みは柿っぽいからか?
しかし嫌味な渋さではなく、後味を引き締めるような感じがして悪くない。
うん、結構イケるんじゃないか?これ。
「ほふぅ…うん、いいね、これ。ちゃんとしたお茶とは言えないにしても、かなりおいしいよ。少なくとも、いつも飲んでるあの草のお茶よりはこっちのほうが断然私は好きだよ」
パーラの方も一口で蕩けたような顔に変わるほど、気に入ってくれたようだ。
この分だと、エスティアンに出しても恥ずかしくはないお茶だと自信を持ってもいいだろう。
その会心の出来に、飲んだ時にエスティアンがどういうリアクションをしてくれるのかが少しだけ楽しみになってくる。
今日の合流する時間は特に指定されていないが、先に行って果物茶を淹れて待つのも吝かではない。
「む、どうやら待たせたようだな」
人と神の時間間隔にはそれなりに隔たりがあるもので、約束の場所で待つこと半日、日が落ちるのもそう遠くない時間になって、ようやくエスティアンが姿を見せた。
いつエスティアンが来てもいいように茶の準備はしていたが、それでも半日も待つとは思っていなかったので、パーラなんかは待ちくたびれていつの間にか眠りこけていた。
しっかり敷物まで使っているほどだ。
「いや、半日ほど待っただけだ。…そちらの方は?てっきり、一人で来るものとばかり思ってたんだが」
地面から染み出るようにして現れたエスティアンは、一人の女性を伴っていた。
子供のような身長のエスティアンに比べ、女性は成人女性の平均からは幾分か背が高く、ウェイブがかったショートボブの金髪からのぞく耳は横に尖るようにして長く、整った顔立ちからもエルフだと思われる。
「うむ、ワイはそのつもりだったが、お前さんらには直接話したいというのでな。こうして一緒にきてもらった」
「久しぶりだな、アンディ。あの宴会からまだそう経っていないというのに、もうエスティアンの助力を得ていたことには驚いたぞ」
「はあ、それはどうも。というか、そちらは俺を知ってるようですが、あなたの名前を教えてもらえますか?」
宴会とは恐らく十日程前に開かれた俺達の歓迎パーティのことを言っているのだろう。
あそこには多くの存在がいたので、その中の誰かだとしても生憎見覚えはない。
感情が希薄でありながら、どこか親し気に話しかけてくるエルフの女性に少し戸惑い、まずは名前を尋ねてみた。
「…何を言っている、私だ。ガルジャパタだ」
「…は?いや……はぁ?」
表情は変わらず、しかし呆れが含まれた声音で告げられたのは意外な名前だった。
知っている名前と目の前の女性がどうしても一致せず、思わず二度聞き返してしまう。
「いや、俺が知るガルジャパタはあんたみたいなエルフの女じゃないんだが」
「……あぁ、そういうことか。前に言ったはずだが、私が今とっているこの姿はただの容れ物に過ぎない。その時々によって姿は変わるが、本質としての私は変わらないというだけの話だ」
「…何やらわかったようなわからないような感じだが、一先ず今はそれでいいとして。で、なぜ今回はエルフの女性に?」
「性別の選択に他意はない。どんな姿になるかは、特に決めずに選ぶ。このエルフ種の女も、君達の歴史で言うと九千年前に実在した者の情報を借りたまで」
目を伏せてそう語るガルジャパタは、男性だった時の姿を知るだけに俺からすれば変な感じだ。
口調は変わっていないのに、声が変わると途端に男女の差がハッキリとわかるあたり、見た目から得る情報の偉大さを改めて思い知らされた気分だ。
「うむ、ガルジャパタ殿の姿が変わるのはようあることゆえ、ワイらは波動で見分けちょる。アンディはそれができんから混乱しとるようだな」
見た目ではなく波動で見分けるというのは、きっと神なる身だからこその芸当だろう。
俺にはできそうもない。
「波動云々はともかく、あなたがガルジャパタだというのは理解した。まぁ、理解しなければならないというべきか。しかし、こうして直接やってきたってことは、天人回廊の件について色よい返事を期待してもいいのか?」
大抵の場合、偉い人が直接足を運ぶ時は重要な話であることが多いが、果たしてそれはこの超常の存在にも当てはまるのやら。
天人回廊を使わせないというのなら、エスティアンにその旨を預けて俺達に伝えればいい話なので、自分の口から直接となれば、単純にダメということはないはず。
「さて、君の期待がどれほどかは私には図りかねるが、天人回廊の件についてはっきりとした返事だけはできることを約束しよう。それよりも、エスティアンから聞いたぞ?何やら変わったお茶を出すそうだな。せっかくだ、一つそれを馳走になりながら話そうじゃあないか」
「お茶を?…まぁ用意はしてあるから構わないが。一応聞くが、カップなんかは」
「おう!今日は持って来とるで!ワイとガルジャパタ殿の分、二つじゃ!」
俺が最後まで言うよりも早く、エスティアンが蓑の中からカップを二つ取り出してこちらへ差し出してきた。
陶器製だろうか、真っ白なそれは磁器のような艶がある見事なもので、正式な会食の場にでも使えそうな気品がある。
果物茶の用意も、いまさら一人分が増えたところで大した手間でもないため、さっそく二人分を用意してやった。
「…ふむ、確かにうまい。エスティアンが言うだけのことはある。この香り、これはグッコの実か?」
「グッコ?」
「知らないで使ったのか?ここらによく生えている木になる実だ。君達に貸している小屋の近くにもあっただろう。そのまま食べることはあるが、まさか茶にしてしまうとはな。中々面白いことを考える」
ガルジャパタに言われて初めてあの実の名前を知ったが、ここらでは特に珍しくもない果実が茶になったことが面白いようだ。
「これも悪ぅないが、ワイは昨日のお茶の方がええなぁ。アンディ、あっちのは無いのか?」
「いや、一応用意はしてあるが」
「ほいだらそれも頼む。ガルジャパタ殿にもの」
エスティアンも変わっているな。
両方の味を知ってなお、あの雑草のお茶の方が好みとは。
まぁ味覚は人それぞれだし、それが悪いとは言わない。
とりあえず雑草を煮出したお茶を二人分用意し、それぞれに手渡す。
「おぉ、これを待っちょったわ。…うまい!」
「む…これはまた」
嬉しそうに飲むエスティアンに対し、一瞬匂いを嗅いで眉を寄せてしまったガルジャパタという対比が面白い。
やはり果物茶のフルーティな香りに比べ、青臭さが強いのが気になるようだ。
「どうだ?ガルジャパタ殿。この強烈な草の香りがたまらと思わぬか?」
「…まぁ悪いとは言わないが、私はグッコの茶の方がいい」
「なんと!?」
遠慮するようにカップを置いたガルジャパタに、信じられぬと言わんばかりの声を上げるエスティアンだが、俺はガルジャパタの気持ちがよくわかるので、口直しというわけではないが、彼女に新しく果物茶を淹れてやった。
「……んがっ…あれ、エスティアン来てたのね。……どちら様?」
茶の匂いに誘われてか、大口を開けて眠りこけていたパーラが目を覚まし、目をしょぼ付かせながらエスティアンを見つけ、次にその隣に座るガルジャパタに目が留まる。
起き抜けに知らない顔があれば当然の反応だろう。
「私だ。ガルジャパタだ」
「…は?え……はぁ?」
そのくだりもうやったわ。
姿も性別すらも変わっているガルジャパタに、ついさっきの俺と同じリアクションをとるパーラは、俺に確認の意を込めた目を向けてきたので、それに頷いてやると半信半疑ながら飲み込んだらしい。
パーラにもお茶を淹れてやり、しばし静かに飲んでいると、ふいにガルジャパタが口を開く。
「エスティアンから聞いた。天人回廊で下界に戻るつもりらしいな」
「ああ、俺達が地上に戻るにはそれしかないらしいんでな」
「そうか。君達もここで暮らすものだとばかり思っていたのだが…どうしても戻るのか?」
感情の希薄な中にも、惜しむような気配を見せるガルジャパタの言葉には、俺達が下界に戻るのをあまり歓迎はしないというのが読み取れる。
「ワイもそう言うたのだがな。下界では飢えや病で死ぬこともあると聞きよるが、それでも気持ちは変わらんか?」
言葉を継いだエスティアンに、俺とパーラがそろって頷くと溜息が二つ、目の前で生まれた。
確かにここは飢えや死から遠い、まさに理想郷と呼べる素晴らしい場所だ。
縁もしがらみもなければここで暮らすのも悪くないだろう。
だが俺もパーラも、下界への執着を捨てきるほど、また世界の全てに絶望しちゃいない。
願うことは一つ、ただ戻りたいだけなのだ。
「…天人回廊を使うのは許そう。しかし今すぐにと使えるものではない。何事にも準備というものがある」
少し考えこむ仕草を見せ、しかしすぐに許可する旨を口にした。
「もともと天人回廊は人の身に耐えられる場所ではない故、手を加えて君達にも使えるようにせねばなるまい。少し時間をもらおう」
「少しってどれくらい?私とアンディは、あんまり待ちすぎると退屈で死んじゃうよ?」
「なんで俺もなんだよ」
繊細な小動物ぶるんじゃあない。
「少なくとも今日明日にどうこうなるものではない。…丁度いい。パーラよ、準備が終わるまで君はベラオス達に会いに行ってはどうだ?あの者達も君に会いたがっていたぞ」
「私に?…の割には、今日まで一回も会いに来ないけど」
「それは仕方あるまい。あれらも中々忙しい身でな、自分の領域からそう気軽に抜け出せぬのだ。だからこそ、君が尋ねれば喜ぶだろう。どうせ下界に戻るのなら、別れの挨拶も兼ねて行ってやれ」
ベラオスとシアザは係累としてのパーラを可愛がっていたが、今日まで一度も姿を見せなかった。
その理由が忙しいというのは少し意外だったが、同時にパーラに自分達の下を訪ねてきてほしいという願いが秘かにあったというのは、なんだか孫が来るのを待つ老夫婦のようで少し面白い。
「まぁ、そこまで言うなら行ってみてもいいかな…。あ、でも私、領域の間を渡れないんだけど」
「ほいだら、ワイが送ってやるわ。ベラオス殿とは馴染みでもあるしの。ほれ、行くぞ」
そう言って立ち上がり、パーラの肩に手を乗せたエスティアンが一瞬ガルジャパタに意味ありげな視線を送ると同時に、二人の体が足元の影に沈み込んでいく。
「え、あ、ちょっと!アンディは!?一緒に来な―」
俺が一緒ではないことにパーラは焦った声を上げたが、あっという間に地面に消えていってしまい、俺もただ見送るしかできなかった。
ちょっとあの移動手段には興味はあったが、置いて行かれては仕方ない。
「さて、我らだけが残ったな。アンディよ、私に何か聞きたいことがあるのではないか?今ならば余人を交えずに話せるぞ」
何気なくかけられた声に、思わず俺も顔がこわばる。
先程、消える間際のエスティアンの目配せもそうだが、どうやら俺がサシで話がしたいというのは見抜かれていたようだ。
俺はガルジャパタに尋ねなくてはならないことがあり、今日までその機会をうかがっていた。
直接の連絡ができないでいた中で、色んな手を使って呼び掛けてはいたのだ。
ガルジャパタが何かの折に見つけるようにと、地面にメッセージを刻んだり、雷魔術を天に向けて何度か放ったりもしている。
まぁ結果としては、今日エスティアンが連れてくるまで梨の礫だったわけだが。
「…そいつは願ってもないことだが、そう言うってことは俺が今日まであんたに接触しようとしていた動きは知ってたんだな?」
「無窮の座の中で私が知らないことはない。度々君が私への接触を図っていたのも当然気付いていた。パーラが寝た後にそれをしていたとなれば、他の誰かを抜いた二人での話が望みだろうと判断したまで」
「気付いてたんならもっと早く接触してくれよ」
「私にも事情があったまでのこと。それで、何が聞きたい?」
「へぇ、今回はチェスを持ち出さないんだな」
「あれはあの時だけの戯れだ」
「…そうかい。聞きたいのはそのチェスについてだ。最初に会った時、あんたはチェスをもって『本場の人間』と俺を呼んだ。だが、俺の知る限りでは下界にチェスはない。これは俺の憶測だが、あのチェスは地球からあんた達神の手で持ち込まれたものなんじゃないのか?」
ずっと気になっていた。
地球のものと寸分違わぬチェスが、下界にはなくて天界にあるというのは、何やらそこに意味が込められている気がしてならない。
あのチェスを打った場所、まるで宇宙空間に浮いているような光景も今にして思えば、全てがそこで始まり終わるような神秘と恐ろしさを覚えるものだった。
神レベルの派手なサロンというわけでもなかろう。
「ほう、なるほど、我々があれを地球からな。全くないとは言わんが、それがどうした?」
「その口ぶりからすると地球は知ってるようだな?」
「勿論知っている。こことは異なる世界、異なる時間、異なる次元に存在するが、しかし、確かな繋がりもある星だ」
あっさりと告げられたその言葉に、自分の体がブルリと震えた。
とっくに諦めたはずの地球へのつながりが、こんなところで再び手繰り寄せられようとは。
しかし、これはいくつか予想していた答えの一つなので、さほど動揺はない。
俺が本当に聞きたいのはここからだ。
「その地球から、こっちに俺を転生させたのはあんたか?」
突然始まった異世界での人生、何が原因でそうなったのかを知ろうとあがいたのは一度や二度じゃない。
ただ、尋常ではない力や存在が関与しているであろうことは想像に難くなかった。
こうしてこの場に立っている今なら、目の前の存在の仕業か、そうでなくともいくらか俺が転生した事情を知っていると思えてならない。
「ふぅむ、その問いには少し答え辛いものがあるな。そうであるとも言えるし、そうでないとも言える」
「どっちだよ。そうやってけむに巻いて、はぐらかそうとしてんじゃあないだろうな」
ガルジャパタのその口ぶりから、転生に関与したという疑いは黒に限りなく近いグレーから、黒も黒の真っ黒へと変わった。
こいつは俺が地球からの転生者だということを知ったうえで、チェスの対局を言い出したはずだ。
「そう怖い顔をするな。君の転生については、確かに一部だが私は関わった。しかし、そもそものこちらへやってくることとなる切っ掛けには、私は関与していない」
「切っ掛け?どういうことだ?」
「転生というのは、同じ世界の中で魂が循環して行われるもの…というのは分かるか?」
「ああ、地球での…俺の知る転生ってのはそういうもんだしな」
「こちらの世界でもそれは同じだ。魂はそれが生まれ、死んだ世界を巡り転生していく。だが、極稀に異なる世界から来るものもある。アンディ、君の場合もこれだ」
異世界への転生自体、かなり異質なものだというわけか。
それに加え、記憶を持ったままの転生となれば、なおのことかもしれない。
「話の途中で悪いが、転生以外で地球から来る奴はいたのか?下界には五人の御使いって伝承があるんだが、どうも地球から来たと思えてならないんだ」
「あれか。あれに関しては私ではなく、地球側の管理者が戯れに送り込んだものだ。転生というより転移というべきだな。当時はこちらに何の通告もなく一方的に行われたせいで、その後の始末やら調整やらで色々と困らされた」
そうではないかと思っていたが、この言いようから五人の御使いが地球からやってきた者達だというのは確定したな。
いまさらではあるが。
「言葉の印象から一応何となく想像はできるが、そもそも管理者ってのはなんだ?」
「君の考えている通りのもので合っていると思うぞ。私のように、ある世界を管理している者のことだ。誰に任されたかは聞くなよ?それは教えられんのでな」
神や精霊の上位に位置するガルジャパタを、管理者として任命させられる何者かの存在は匂わされたが、流石にそれは教えられないか。
まぁ目の前にいる存在のさらに上位となれば、恐らく俺が知る必要のないほどに高次元の何かということだろう。
そんなもの、おっかなくて知りたくもない。
「世界の数だけ管理者はいるが、その力や性質は様々だ。星一つだけ任されている者もいれば、光が届く先にある宇宙の果てまでを任されている者もいる。当然、力もその広さに比例していく。それに当てはめれば、私と地球側の管理者では、向こうのほうが断然力は上になる」
仮にガルジャパタが管理しているのが星一つだとして、地球側の管理者は一体どれほどの範囲を管理しているのだろうか。
あの言いようだと、銀河系を丸っと管理下にはおいてそうな気もするな。
「参考までに、どれぐらいの開きがあるんだ?」
「ふむ、そうだな…例えるなら砂粒と岩ぐらいは差がある。当然、私が砂粒の方だ」
隔絶しすぎてて耳がキーンてなるわ。
「…まぁ管理者の話はこのぐらいにしておくとして。それよりも、その御使いが存在したのは大分昔のようだが、伝承にあるものを鑑みるに、どうも地球での俺が生きていた時代に近いところから来たように思える。時間のズレとでもいうのか、そういうのはどうなんだ?」
御使いが某アイドル兼農家の名を騙っていたり、重機が共にあったような言い伝えも残っていることから、ほぼ俺と同じ時代から呼び出されたと思っている。
しかし、こっちの世界では神話と呼べるほどに昔のこととなって伝承が残っているくらいで、今の俺とはかなり時間が離れているのが気になっていた。
「時間のズレというのなら、地球側の管理者が意図してやったのだろうな。あやつは性格はあれだが、時空を操る術が抜きんでていた。人間を別世界のどの時間に送るのも自在にできたはず。なぜそうしたかはわからぬが、何となくでそうしたと言われても納得できてしまう。あれはそういう質なのでな。恐らく、君が記憶をもって転生したのも、奴の戯れだろう」
確たる原因や理由は明かされないが、何やらその管理者の性格が悪いというのだけは伝わった。
加えて、時空を超えて人間を別世界に送るというのも地球側の管理者が勝手にしたことで、ガルジャパタは単に自分の世界で受け入れたに過ぎないのかもしれない。
こうなると、俺を転生させたのは地球側の管理者であり、ガルジャパタではないという結論となるか。
あくまでもガルジャパタの言い分を信じるならの話だが、この流れで嘘を言う理由も利もないことを考えれば、真実だと思っていいだろう。
「ここまで聞いた感じだと、俺が何でこっちに転生したかの大本の理由をあんたに聞いても意味はないってことか」
俺を異世界転生させた当事者に会ったら、まず一発殴ってから『なぜ無意味にハーレムが作れるほど女に好かれる体質にしなかったのか』『なぜ見たり聞いたりしただけでスキルを習得できる設定を与えなかったのか』『なぜ銀髪オッドアイの中二イケメンにしてくれなかったのか』など、言いたいことは山ほどあったのだが、目の前の人物にはそれを言っても仕方がないようだ。
そして、目の前の存在を殴ったところで、お門違いで俺の気も晴れないということでもある。
「そうなるな。そもそもの原因というべきか理由というべきか、そういったものは私には何も伝えられず、君の魂だけが突然送られてきたのだ。私はそれを、魂が失われていた肉体にそのまま移したのだ。こちらの世界で生と死を経ねば、君の魂が永劫の闇に囚われると思うと忍びなくてな」
さらっと怖いことを言われた気がする。
永劫の闇に囚われるとは一体どういうことか、俺は想像するしかないが、それでもその言葉から受ける恐怖は決して小さなものではない。
急に送られてきた魂を放置せず、ちゃんと生きれるように手配してくれた慈悲には感謝したい。
「俺のこの肉体は、元々死体だったと?」
「正確には魂が失われただけで、生命活動はまだ行われていた。そのまま時間が経てば死体となっていただろうがな。付け加えるなら、元の持ち主の魂は次に向けて旅立っているので、その体はもう完全に君だけのものだ」
今の今まで、俺は誰かの魂を押しのけて肉体を乗っ取ったと思っていた。
自分の魂が宿ったせいで、元の持ち主は死んだとか、あるいは元の意識を肉体の奥底に押し込めているのではないかとか色々と考えたことがある。
そういったことに対し、罪悪感を覚えなかったといえば嘘になる。
俺を慰めるつもりなど一ミリもなかっただろうが、ガルジャパタのこの言葉に少しだけ罪悪感が薄れた気がする。
「気になったんだが、俺が使える魔術はこの肉体が元から使えたものなのか?それとも転生したことによる特典みたいなものか?」
他の人間と比べて恵まれた魔術の才があると自負しているだけに、それが果たしてこの肉体によるものか、もしくは俺自身の魂によるものなのかは気になるところだ。
「それもまたどちらでもあると言える。その体には確かに類稀なる魔術の才があった。それに加え、君の魂がこの世界にとっては異質だったことにより、新たに宿った肉体に変化を引き起こしたのだろう。特に雷魔術がそうだな」
元に肉体が水か土どちらか、或いは両方の魔術的な才能があり、そこに俺という要素が加わって雷魔術の資質が開花したという感じなのだろう。
少しずつ、しかし確かに俺自身の謎が明らかになっていくと、己が何者なのかという哲学的な問いに蒙が開かれた気分になり、ちょっと興奮を覚えてしまう。
「さて、悪いがそろそろ私は行かねば。天人回廊の準備にとりかかるのでな」
ある程度の聞きたいことは聞けたので、ガルジャパタが立ち去るのを呼び止める強い理由がない。
何より、俺達が下界に帰るための手段の準備となれば、さっさと取り掛かってくれと言いたいぐらいだ。
「そうか。次に会うときは天人回廊の準備が終わった時になるか?」
「ああ。まだ質問があるのなら、その時に聞こう。ではな」
そう言って、まるでランプの灯が消えるような唐突さでガルジャパタの姿が消えた。
エスティアンのとは違う立ち去り方に、神それぞれに瞬間移動にも特徴があるのかと好奇心がくすぐられる。
ガルジャパタが去ったことで、俺一人だけがこの場に残された形になるが、こうなるとパーラがいつ帰ってくるのかが気になる。
ベラオスかシアザのどちらかに挨拶しに行ったようだが、まさか今日はもう帰ってこないとかはないだろうな?
それならこんなところで待っていないで、小屋に帰ったほうがいいのだが、エスティアンもガルジャパタもその辺り何も言ってなかったので動きようがない。
仕方ないので、とりあえず日が沈むまではここで待って、その後は小屋に帰ってパーラを待つとしよう。
なんだかんだと今日は色々と新しく知ったことも多いし、頭の中を整理するにもこの時間はちょうどいい。
特に喉は乾いていないが、何か飲みたい気分でもあるし、とりあえずお茶を淹れるか。
借りている小屋にはベッドはなく、寝具としても使える厚手の布はそこそこの数があるので、それに包まりながら横になって目を瞑れば、奇妙なことに眠気はなくとも眠れてしまい、朝になると自然と目が覚める。
疲労回復などはしないが、それでも人間としての精神が癒されるのか、一晩眠るとなんだか頭がすっきりするので不思議だ。
今日もまた朝が来ると目が覚め、少し離れたところで鼻提灯のパーラを起こさないようにコッソリと小屋を出る。
小屋の周りにはまばらに木が生えており、その中のいくつかが実をつけていて、それを朝日とともに収穫するのがここ何日かですっかり日課になっていた。
高さ三メートルほどの木は、腕を横に広げるようにして枝が伸びており、そのいくつかには実がなっている。
一応木の周囲に蛇がいないかを確認してしまったのは、キリスト教が伝えるエデンの園を知っているせいだ。
この確認も朝の習慣だ。
何もないことを確かめたら、木の棒で幹を叩いて実を落とし、すかさず拾っていく。
このいい感じの木の棒は、まるでこれで実をとれと言わんばかりに小屋に置かれていたもので、正しくそれはこうして役に立ってくれていた。
実を五つほど手にしたところで、今朝の収穫は終わり。
一つを皮ごとかじりながら小屋へと戻っていく。
ツプリという堅めの張りがある皮が歯に負けてその中身を溢れさせ、口の中に広がるなめらかな甘さを舌で楽しみながら、今日もいいのが採れたと満足感を覚える。
薄緑色したこの実は一見すると小ぶりな青リンゴのようだが、齧ると柿のような味がするというちょっと不思議な果実だ。
下界にはリンゴも普通にあるのだが、柿だけは見たことがなかった。
そのため、初めて食べたときは青りんごの見た目の柿というその味に驚いたものだ。
腹が減らないのであくまでも味を楽しむだけと、少量を口にするだけでいいのだが、パーラはこの味がすこぶる気に入ったらしく、最近は毎朝これを三つは平らげている。
それだけのペースで食べていたら、小屋の周りの木から実が採りつくされるのではないかと危惧していたが、ここはやはり不思議な空間だけあって、実を採ってから二日経つとすぐに次の実ができていた。
成長速度が凄いのかとも思ったがそういうわけではなく、一つの木になる実の数は決まっているようで、それが減ると二日後には元に戻るが、しかしそれ以上に増えることはないという何とも都合のいい木だったりする。
奇妙な植物だと思わなくもないが、特にこっちが困ることでもないし、そういうものだと思って受け入れている。
「ただいま」
「あ、おかえりアンディ」
小屋に戻り、扉を開けて中へ声をかけるとパーラのそんな声が俺を出迎えた。
「おう、起きてたか。ほれ、朝飯だ」
「とっとっと、あんがと」
取れたての実を二つ放ってやると、危なげなくキャッチしたパーラがその流れで手の中の果実に齧り付く。
「…んー、やっぱりおいしいね、これ。リンゴみたいな酸味がないのは少し変な感じだけど、優しい甘さっていうの?他にはない味だよ」
「そりゃよかったな」
柿を知らないパーラにしてみれば、全く未知の甘さをもたらすこの果実への傾倒ぶりはすごいもので、朝から饒舌な語り口を見せた。
空腹感はないはずだが、飢えたように食べ進めていき、あっという間に一つを平らげると次を口に運ぶ。
食欲などと無縁のこの世界でも、パーラの健啖家ぶりは変わらないところになぜか安心感を覚えてしまう。
違う環境の中でも変わらない何かがあると、人の心は穏やかになれるものだ。
残りの実は皮を剥いて皿に盛り、パーラのほうへとくれてやった。
俺はさっき食べた一つで十分だし、パーラも毎朝これぐらいの量を食べている。
それよりも、余った皮の方が今の俺には重要だ。
少し前から考えていたのだが、この皮を使って果物茶を作ろうと思う。
今日のエスティアンと会う時のために、せっかくなら昨日よりもいいお茶を用意したいと考え、こうした果物の皮からお茶を作るつもりだ。
地球には果物の風味を生かしたお茶というのが数多くあるのだが、世界が変わるとそれも一般的ではなくなる。
下界ではお茶自体が貴重品なため、嵩増し分として乾燥させた果物の実や皮を混ぜることぐらいはやりそうなものだが、何故かそういったことはあまり行われておらず、果物茶はある意味異端として俺が最初に生み出すこととなるかもしれない。
前々から乾燥させていた分と合わせて、このフレッシュな皮と合わせてお湯で煮出せば、いったいどんな味になるのか。
流石に味見もしないでエスティアンに出すのは躊躇われるので、少量をとりあえず試飲してみる。
小鍋にたった今用意した皮と乾燥済みだった皮を入れ、お湯で煮出していく。
元々香りが強い果物ではないのだが、お湯にくぐらせると中々香りが立つもので、小屋の中に青葉のような爽やさと微かな甘さが混ざる匂いが満ちていく。
「へぇ、いい匂い。なになに?なんか作ってんの?」
用意していた果物を食べ終えたのか、指先をペロリと舐りながらパーラが俺の手元をのぞき込んでくる。
「お茶だよ。さっき剥いて残った皮を煮出してるんだ」
「皮ぁ?そんなのでお茶になるの?」
「ぽくはなるってだけだ。正確にはお茶とは違うし、人によっちゃ好みも分かれる。…よし、出来た。ちょっと飲んでみるか?」
普通に茶葉を使うよりもやや長めに煮だすと、色も匂いもしっかりとついた果物茶の出来上がりだ。
青緑色の皮を使ったからか、出来上がりの色は真っ黄色となんとも変わっている。
一口飲んでみると、フルーティな香りと甘みと酸味が何とも言えず涼やかでいい。
最後に残る渋みは柿っぽいからか?
しかし嫌味な渋さではなく、後味を引き締めるような感じがして悪くない。
うん、結構イケるんじゃないか?これ。
「ほふぅ…うん、いいね、これ。ちゃんとしたお茶とは言えないにしても、かなりおいしいよ。少なくとも、いつも飲んでるあの草のお茶よりはこっちのほうが断然私は好きだよ」
パーラの方も一口で蕩けたような顔に変わるほど、気に入ってくれたようだ。
この分だと、エスティアンに出しても恥ずかしくはないお茶だと自信を持ってもいいだろう。
その会心の出来に、飲んだ時にエスティアンがどういうリアクションをしてくれるのかが少しだけ楽しみになってくる。
今日の合流する時間は特に指定されていないが、先に行って果物茶を淹れて待つのも吝かではない。
「む、どうやら待たせたようだな」
人と神の時間間隔にはそれなりに隔たりがあるもので、約束の場所で待つこと半日、日が落ちるのもそう遠くない時間になって、ようやくエスティアンが姿を見せた。
いつエスティアンが来てもいいように茶の準備はしていたが、それでも半日も待つとは思っていなかったので、パーラなんかは待ちくたびれていつの間にか眠りこけていた。
しっかり敷物まで使っているほどだ。
「いや、半日ほど待っただけだ。…そちらの方は?てっきり、一人で来るものとばかり思ってたんだが」
地面から染み出るようにして現れたエスティアンは、一人の女性を伴っていた。
子供のような身長のエスティアンに比べ、女性は成人女性の平均からは幾分か背が高く、ウェイブがかったショートボブの金髪からのぞく耳は横に尖るようにして長く、整った顔立ちからもエルフだと思われる。
「うむ、ワイはそのつもりだったが、お前さんらには直接話したいというのでな。こうして一緒にきてもらった」
「久しぶりだな、アンディ。あの宴会からまだそう経っていないというのに、もうエスティアンの助力を得ていたことには驚いたぞ」
「はあ、それはどうも。というか、そちらは俺を知ってるようですが、あなたの名前を教えてもらえますか?」
宴会とは恐らく十日程前に開かれた俺達の歓迎パーティのことを言っているのだろう。
あそこには多くの存在がいたので、その中の誰かだとしても生憎見覚えはない。
感情が希薄でありながら、どこか親し気に話しかけてくるエルフの女性に少し戸惑い、まずは名前を尋ねてみた。
「…何を言っている、私だ。ガルジャパタだ」
「…は?いや……はぁ?」
表情は変わらず、しかし呆れが含まれた声音で告げられたのは意外な名前だった。
知っている名前と目の前の女性がどうしても一致せず、思わず二度聞き返してしまう。
「いや、俺が知るガルジャパタはあんたみたいなエルフの女じゃないんだが」
「……あぁ、そういうことか。前に言ったはずだが、私が今とっているこの姿はただの容れ物に過ぎない。その時々によって姿は変わるが、本質としての私は変わらないというだけの話だ」
「…何やらわかったようなわからないような感じだが、一先ず今はそれでいいとして。で、なぜ今回はエルフの女性に?」
「性別の選択に他意はない。どんな姿になるかは、特に決めずに選ぶ。このエルフ種の女も、君達の歴史で言うと九千年前に実在した者の情報を借りたまで」
目を伏せてそう語るガルジャパタは、男性だった時の姿を知るだけに俺からすれば変な感じだ。
口調は変わっていないのに、声が変わると途端に男女の差がハッキリとわかるあたり、見た目から得る情報の偉大さを改めて思い知らされた気分だ。
「うむ、ガルジャパタ殿の姿が変わるのはようあることゆえ、ワイらは波動で見分けちょる。アンディはそれができんから混乱しとるようだな」
見た目ではなく波動で見分けるというのは、きっと神なる身だからこその芸当だろう。
俺にはできそうもない。
「波動云々はともかく、あなたがガルジャパタだというのは理解した。まぁ、理解しなければならないというべきか。しかし、こうして直接やってきたってことは、天人回廊の件について色よい返事を期待してもいいのか?」
大抵の場合、偉い人が直接足を運ぶ時は重要な話であることが多いが、果たしてそれはこの超常の存在にも当てはまるのやら。
天人回廊を使わせないというのなら、エスティアンにその旨を預けて俺達に伝えればいい話なので、自分の口から直接となれば、単純にダメということはないはず。
「さて、君の期待がどれほどかは私には図りかねるが、天人回廊の件についてはっきりとした返事だけはできることを約束しよう。それよりも、エスティアンから聞いたぞ?何やら変わったお茶を出すそうだな。せっかくだ、一つそれを馳走になりながら話そうじゃあないか」
「お茶を?…まぁ用意はしてあるから構わないが。一応聞くが、カップなんかは」
「おう!今日は持って来とるで!ワイとガルジャパタ殿の分、二つじゃ!」
俺が最後まで言うよりも早く、エスティアンが蓑の中からカップを二つ取り出してこちらへ差し出してきた。
陶器製だろうか、真っ白なそれは磁器のような艶がある見事なもので、正式な会食の場にでも使えそうな気品がある。
果物茶の用意も、いまさら一人分が増えたところで大した手間でもないため、さっそく二人分を用意してやった。
「…ふむ、確かにうまい。エスティアンが言うだけのことはある。この香り、これはグッコの実か?」
「グッコ?」
「知らないで使ったのか?ここらによく生えている木になる実だ。君達に貸している小屋の近くにもあっただろう。そのまま食べることはあるが、まさか茶にしてしまうとはな。中々面白いことを考える」
ガルジャパタに言われて初めてあの実の名前を知ったが、ここらでは特に珍しくもない果実が茶になったことが面白いようだ。
「これも悪ぅないが、ワイは昨日のお茶の方がええなぁ。アンディ、あっちのは無いのか?」
「いや、一応用意はしてあるが」
「ほいだらそれも頼む。ガルジャパタ殿にもの」
エスティアンも変わっているな。
両方の味を知ってなお、あの雑草のお茶の方が好みとは。
まぁ味覚は人それぞれだし、それが悪いとは言わない。
とりあえず雑草を煮出したお茶を二人分用意し、それぞれに手渡す。
「おぉ、これを待っちょったわ。…うまい!」
「む…これはまた」
嬉しそうに飲むエスティアンに対し、一瞬匂いを嗅いで眉を寄せてしまったガルジャパタという対比が面白い。
やはり果物茶のフルーティな香りに比べ、青臭さが強いのが気になるようだ。
「どうだ?ガルジャパタ殿。この強烈な草の香りがたまらと思わぬか?」
「…まぁ悪いとは言わないが、私はグッコの茶の方がいい」
「なんと!?」
遠慮するようにカップを置いたガルジャパタに、信じられぬと言わんばかりの声を上げるエスティアンだが、俺はガルジャパタの気持ちがよくわかるので、口直しというわけではないが、彼女に新しく果物茶を淹れてやった。
「……んがっ…あれ、エスティアン来てたのね。……どちら様?」
茶の匂いに誘われてか、大口を開けて眠りこけていたパーラが目を覚まし、目をしょぼ付かせながらエスティアンを見つけ、次にその隣に座るガルジャパタに目が留まる。
起き抜けに知らない顔があれば当然の反応だろう。
「私だ。ガルジャパタだ」
「…は?え……はぁ?」
そのくだりもうやったわ。
姿も性別すらも変わっているガルジャパタに、ついさっきの俺と同じリアクションをとるパーラは、俺に確認の意を込めた目を向けてきたので、それに頷いてやると半信半疑ながら飲み込んだらしい。
パーラにもお茶を淹れてやり、しばし静かに飲んでいると、ふいにガルジャパタが口を開く。
「エスティアンから聞いた。天人回廊で下界に戻るつもりらしいな」
「ああ、俺達が地上に戻るにはそれしかないらしいんでな」
「そうか。君達もここで暮らすものだとばかり思っていたのだが…どうしても戻るのか?」
感情の希薄な中にも、惜しむような気配を見せるガルジャパタの言葉には、俺達が下界に戻るのをあまり歓迎はしないというのが読み取れる。
「ワイもそう言うたのだがな。下界では飢えや病で死ぬこともあると聞きよるが、それでも気持ちは変わらんか?」
言葉を継いだエスティアンに、俺とパーラがそろって頷くと溜息が二つ、目の前で生まれた。
確かにここは飢えや死から遠い、まさに理想郷と呼べる素晴らしい場所だ。
縁もしがらみもなければここで暮らすのも悪くないだろう。
だが俺もパーラも、下界への執着を捨てきるほど、また世界の全てに絶望しちゃいない。
願うことは一つ、ただ戻りたいだけなのだ。
「…天人回廊を使うのは許そう。しかし今すぐにと使えるものではない。何事にも準備というものがある」
少し考えこむ仕草を見せ、しかしすぐに許可する旨を口にした。
「もともと天人回廊は人の身に耐えられる場所ではない故、手を加えて君達にも使えるようにせねばなるまい。少し時間をもらおう」
「少しってどれくらい?私とアンディは、あんまり待ちすぎると退屈で死んじゃうよ?」
「なんで俺もなんだよ」
繊細な小動物ぶるんじゃあない。
「少なくとも今日明日にどうこうなるものではない。…丁度いい。パーラよ、準備が終わるまで君はベラオス達に会いに行ってはどうだ?あの者達も君に会いたがっていたぞ」
「私に?…の割には、今日まで一回も会いに来ないけど」
「それは仕方あるまい。あれらも中々忙しい身でな、自分の領域からそう気軽に抜け出せぬのだ。だからこそ、君が尋ねれば喜ぶだろう。どうせ下界に戻るのなら、別れの挨拶も兼ねて行ってやれ」
ベラオスとシアザは係累としてのパーラを可愛がっていたが、今日まで一度も姿を見せなかった。
その理由が忙しいというのは少し意外だったが、同時にパーラに自分達の下を訪ねてきてほしいという願いが秘かにあったというのは、なんだか孫が来るのを待つ老夫婦のようで少し面白い。
「まぁ、そこまで言うなら行ってみてもいいかな…。あ、でも私、領域の間を渡れないんだけど」
「ほいだら、ワイが送ってやるわ。ベラオス殿とは馴染みでもあるしの。ほれ、行くぞ」
そう言って立ち上がり、パーラの肩に手を乗せたエスティアンが一瞬ガルジャパタに意味ありげな視線を送ると同時に、二人の体が足元の影に沈み込んでいく。
「え、あ、ちょっと!アンディは!?一緒に来な―」
俺が一緒ではないことにパーラは焦った声を上げたが、あっという間に地面に消えていってしまい、俺もただ見送るしかできなかった。
ちょっとあの移動手段には興味はあったが、置いて行かれては仕方ない。
「さて、我らだけが残ったな。アンディよ、私に何か聞きたいことがあるのではないか?今ならば余人を交えずに話せるぞ」
何気なくかけられた声に、思わず俺も顔がこわばる。
先程、消える間際のエスティアンの目配せもそうだが、どうやら俺がサシで話がしたいというのは見抜かれていたようだ。
俺はガルジャパタに尋ねなくてはならないことがあり、今日までその機会をうかがっていた。
直接の連絡ができないでいた中で、色んな手を使って呼び掛けてはいたのだ。
ガルジャパタが何かの折に見つけるようにと、地面にメッセージを刻んだり、雷魔術を天に向けて何度か放ったりもしている。
まぁ結果としては、今日エスティアンが連れてくるまで梨の礫だったわけだが。
「…そいつは願ってもないことだが、そう言うってことは俺が今日まであんたに接触しようとしていた動きは知ってたんだな?」
「無窮の座の中で私が知らないことはない。度々君が私への接触を図っていたのも当然気付いていた。パーラが寝た後にそれをしていたとなれば、他の誰かを抜いた二人での話が望みだろうと判断したまで」
「気付いてたんならもっと早く接触してくれよ」
「私にも事情があったまでのこと。それで、何が聞きたい?」
「へぇ、今回はチェスを持ち出さないんだな」
「あれはあの時だけの戯れだ」
「…そうかい。聞きたいのはそのチェスについてだ。最初に会った時、あんたはチェスをもって『本場の人間』と俺を呼んだ。だが、俺の知る限りでは下界にチェスはない。これは俺の憶測だが、あのチェスは地球からあんた達神の手で持ち込まれたものなんじゃないのか?」
ずっと気になっていた。
地球のものと寸分違わぬチェスが、下界にはなくて天界にあるというのは、何やらそこに意味が込められている気がしてならない。
あのチェスを打った場所、まるで宇宙空間に浮いているような光景も今にして思えば、全てがそこで始まり終わるような神秘と恐ろしさを覚えるものだった。
神レベルの派手なサロンというわけでもなかろう。
「ほう、なるほど、我々があれを地球からな。全くないとは言わんが、それがどうした?」
「その口ぶりからすると地球は知ってるようだな?」
「勿論知っている。こことは異なる世界、異なる時間、異なる次元に存在するが、しかし、確かな繋がりもある星だ」
あっさりと告げられたその言葉に、自分の体がブルリと震えた。
とっくに諦めたはずの地球へのつながりが、こんなところで再び手繰り寄せられようとは。
しかし、これはいくつか予想していた答えの一つなので、さほど動揺はない。
俺が本当に聞きたいのはここからだ。
「その地球から、こっちに俺を転生させたのはあんたか?」
突然始まった異世界での人生、何が原因でそうなったのかを知ろうとあがいたのは一度や二度じゃない。
ただ、尋常ではない力や存在が関与しているであろうことは想像に難くなかった。
こうしてこの場に立っている今なら、目の前の存在の仕業か、そうでなくともいくらか俺が転生した事情を知っていると思えてならない。
「ふぅむ、その問いには少し答え辛いものがあるな。そうであるとも言えるし、そうでないとも言える」
「どっちだよ。そうやってけむに巻いて、はぐらかそうとしてんじゃあないだろうな」
ガルジャパタのその口ぶりから、転生に関与したという疑いは黒に限りなく近いグレーから、黒も黒の真っ黒へと変わった。
こいつは俺が地球からの転生者だということを知ったうえで、チェスの対局を言い出したはずだ。
「そう怖い顔をするな。君の転生については、確かに一部だが私は関わった。しかし、そもそものこちらへやってくることとなる切っ掛けには、私は関与していない」
「切っ掛け?どういうことだ?」
「転生というのは、同じ世界の中で魂が循環して行われるもの…というのは分かるか?」
「ああ、地球での…俺の知る転生ってのはそういうもんだしな」
「こちらの世界でもそれは同じだ。魂はそれが生まれ、死んだ世界を巡り転生していく。だが、極稀に異なる世界から来るものもある。アンディ、君の場合もこれだ」
異世界への転生自体、かなり異質なものだというわけか。
それに加え、記憶を持ったままの転生となれば、なおのことかもしれない。
「話の途中で悪いが、転生以外で地球から来る奴はいたのか?下界には五人の御使いって伝承があるんだが、どうも地球から来たと思えてならないんだ」
「あれか。あれに関しては私ではなく、地球側の管理者が戯れに送り込んだものだ。転生というより転移というべきだな。当時はこちらに何の通告もなく一方的に行われたせいで、その後の始末やら調整やらで色々と困らされた」
そうではないかと思っていたが、この言いようから五人の御使いが地球からやってきた者達だというのは確定したな。
いまさらではあるが。
「言葉の印象から一応何となく想像はできるが、そもそも管理者ってのはなんだ?」
「君の考えている通りのもので合っていると思うぞ。私のように、ある世界を管理している者のことだ。誰に任されたかは聞くなよ?それは教えられんのでな」
神や精霊の上位に位置するガルジャパタを、管理者として任命させられる何者かの存在は匂わされたが、流石にそれは教えられないか。
まぁ目の前にいる存在のさらに上位となれば、恐らく俺が知る必要のないほどに高次元の何かということだろう。
そんなもの、おっかなくて知りたくもない。
「世界の数だけ管理者はいるが、その力や性質は様々だ。星一つだけ任されている者もいれば、光が届く先にある宇宙の果てまでを任されている者もいる。当然、力もその広さに比例していく。それに当てはめれば、私と地球側の管理者では、向こうのほうが断然力は上になる」
仮にガルジャパタが管理しているのが星一つだとして、地球側の管理者は一体どれほどの範囲を管理しているのだろうか。
あの言いようだと、銀河系を丸っと管理下にはおいてそうな気もするな。
「参考までに、どれぐらいの開きがあるんだ?」
「ふむ、そうだな…例えるなら砂粒と岩ぐらいは差がある。当然、私が砂粒の方だ」
隔絶しすぎてて耳がキーンてなるわ。
「…まぁ管理者の話はこのぐらいにしておくとして。それよりも、その御使いが存在したのは大分昔のようだが、伝承にあるものを鑑みるに、どうも地球での俺が生きていた時代に近いところから来たように思える。時間のズレとでもいうのか、そういうのはどうなんだ?」
御使いが某アイドル兼農家の名を騙っていたり、重機が共にあったような言い伝えも残っていることから、ほぼ俺と同じ時代から呼び出されたと思っている。
しかし、こっちの世界では神話と呼べるほどに昔のこととなって伝承が残っているくらいで、今の俺とはかなり時間が離れているのが気になっていた。
「時間のズレというのなら、地球側の管理者が意図してやったのだろうな。あやつは性格はあれだが、時空を操る術が抜きんでていた。人間を別世界のどの時間に送るのも自在にできたはず。なぜそうしたかはわからぬが、何となくでそうしたと言われても納得できてしまう。あれはそういう質なのでな。恐らく、君が記憶をもって転生したのも、奴の戯れだろう」
確たる原因や理由は明かされないが、何やらその管理者の性格が悪いというのだけは伝わった。
加えて、時空を超えて人間を別世界に送るというのも地球側の管理者が勝手にしたことで、ガルジャパタは単に自分の世界で受け入れたに過ぎないのかもしれない。
こうなると、俺を転生させたのは地球側の管理者であり、ガルジャパタではないという結論となるか。
あくまでもガルジャパタの言い分を信じるならの話だが、この流れで嘘を言う理由も利もないことを考えれば、真実だと思っていいだろう。
「ここまで聞いた感じだと、俺が何でこっちに転生したかの大本の理由をあんたに聞いても意味はないってことか」
俺を異世界転生させた当事者に会ったら、まず一発殴ってから『なぜ無意味にハーレムが作れるほど女に好かれる体質にしなかったのか』『なぜ見たり聞いたりしただけでスキルを習得できる設定を与えなかったのか』『なぜ銀髪オッドアイの中二イケメンにしてくれなかったのか』など、言いたいことは山ほどあったのだが、目の前の人物にはそれを言っても仕方がないようだ。
そして、目の前の存在を殴ったところで、お門違いで俺の気も晴れないということでもある。
「そうなるな。そもそもの原因というべきか理由というべきか、そういったものは私には何も伝えられず、君の魂だけが突然送られてきたのだ。私はそれを、魂が失われていた肉体にそのまま移したのだ。こちらの世界で生と死を経ねば、君の魂が永劫の闇に囚われると思うと忍びなくてな」
さらっと怖いことを言われた気がする。
永劫の闇に囚われるとは一体どういうことか、俺は想像するしかないが、それでもその言葉から受ける恐怖は決して小さなものではない。
急に送られてきた魂を放置せず、ちゃんと生きれるように手配してくれた慈悲には感謝したい。
「俺のこの肉体は、元々死体だったと?」
「正確には魂が失われただけで、生命活動はまだ行われていた。そのまま時間が経てば死体となっていただろうがな。付け加えるなら、元の持ち主の魂は次に向けて旅立っているので、その体はもう完全に君だけのものだ」
今の今まで、俺は誰かの魂を押しのけて肉体を乗っ取ったと思っていた。
自分の魂が宿ったせいで、元の持ち主は死んだとか、あるいは元の意識を肉体の奥底に押し込めているのではないかとか色々と考えたことがある。
そういったことに対し、罪悪感を覚えなかったといえば嘘になる。
俺を慰めるつもりなど一ミリもなかっただろうが、ガルジャパタのこの言葉に少しだけ罪悪感が薄れた気がする。
「気になったんだが、俺が使える魔術はこの肉体が元から使えたものなのか?それとも転生したことによる特典みたいなものか?」
他の人間と比べて恵まれた魔術の才があると自負しているだけに、それが果たしてこの肉体によるものか、もしくは俺自身の魂によるものなのかは気になるところだ。
「それもまたどちらでもあると言える。その体には確かに類稀なる魔術の才があった。それに加え、君の魂がこの世界にとっては異質だったことにより、新たに宿った肉体に変化を引き起こしたのだろう。特に雷魔術がそうだな」
元に肉体が水か土どちらか、或いは両方の魔術的な才能があり、そこに俺という要素が加わって雷魔術の資質が開花したという感じなのだろう。
少しずつ、しかし確かに俺自身の謎が明らかになっていくと、己が何者なのかという哲学的な問いに蒙が開かれた気分になり、ちょっと興奮を覚えてしまう。
「さて、悪いがそろそろ私は行かねば。天人回廊の準備にとりかかるのでな」
ある程度の聞きたいことは聞けたので、ガルジャパタが立ち去るのを呼び止める強い理由がない。
何より、俺達が下界に帰るための手段の準備となれば、さっさと取り掛かってくれと言いたいぐらいだ。
「そうか。次に会うときは天人回廊の準備が終わった時になるか?」
「ああ。まだ質問があるのなら、その時に聞こう。ではな」
そう言って、まるでランプの灯が消えるような唐突さでガルジャパタの姿が消えた。
エスティアンのとは違う立ち去り方に、神それぞれに瞬間移動にも特徴があるのかと好奇心がくすぐられる。
ガルジャパタが去ったことで、俺一人だけがこの場に残された形になるが、こうなるとパーラがいつ帰ってくるのかが気になる。
ベラオスかシアザのどちらかに挨拶しに行ったようだが、まさか今日はもう帰ってこないとかはないだろうな?
それならこんなところで待っていないで、小屋に帰ったほうがいいのだが、エスティアンもガルジャパタもその辺り何も言ってなかったので動きようがない。
仕方ないので、とりあえず日が沈むまではここで待って、その後は小屋に帰ってパーラを待つとしよう。
なんだかんだと今日は色々と新しく知ったことも多いし、頭の中を整理するにもこの時間はちょうどいい。
特に喉は乾いていないが、何か飲みたい気分でもあるし、とりあえずお茶を淹れるか。
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