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イアソー山を臨んで
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砂漠の朝を『極寒の夜と灼熱の昼が愛しあった名残』と、ある民族は歌ったという。
一日の内で二度訪れる寒さと暑さが程よく同居するこの時間、俺達は北へ向けて旅経つ準備を終え、あとは出発するのみとなっていた。
一晩寝ずに行われた改造の末、飛空艇は機体の上と左右にコンテナを取り付けられ、通路と保持アームを兼ねた太いパイプで船内との行き来が可能な、旅客機仕様へと姿を変えていた。
さっき少し動かしたところ、重量バランスが大分変わっていたが、船の制御システムの方で設定を少しいじって対応できたのはよかった。
イアソー山脈までは風次第だが五日ほどの行程と見込んでおり、途中で野営を挟んでの強行軍になることだろう。
先遣隊の兵士は既に搭乗を開始しており、立ち居振る舞いから感じられる練度にはバラつきはあるものの、いずれも高い戦闘能力を有した猛者ばかりと分かる。
彼らには脅威としての巨人のことは教えられており、それを相手取って得られる武功を想像してか、士気の高さも十分なようだ。
中には手柄を上げて懇意の相手と結婚するんだと気炎を吐いている奴もいて、フラグ的に危なっかしくて見てられなかったが。
「皆、やる気に満ちてますね。俺の知るソーマルガの兵士と比べても、顔つきが違う」
「当然だ。アシャドル王国と言えば長年の友好国、その助けになれるのならと逸っている。それに、彼らの中には武功の得られる機会を与えられない者も少なくない。誰もが気概に満ちているのさ」
人を飲み込んでいく飛空艇を外から眺めつつ、俺の隣に立つ偉丈夫へと声をかけると、彼もまたやる気に満ちた声で答えた。
今俺の隣にいる彼は、この先遣隊の指揮官なのだが、ありがたいことに俺と顔見知りだった。
全くの他人よりも多少見知った相手の方が俺達の気も楽だと、ハリム辺りが配慮してくれたのかもしれない。
ちなみにこの先遣隊、正式な呼称は『ソーマルガ皇国先遣支援隊』というのだが、長いので誰もが先遣隊と呼んでいる。
「しかし意外でした。まさかミルリッグ卿が共に行くとは。近衛騎士が城を離れてもいいもんなんですか?」
「なに、私も所詮は一人の騎士にすぎん。王より一度命が下れば、城を離れて任を果たすのもやぶさかではない」
朗らかに笑いながら言う指揮官、アルベルト・ジャール・ミルリッグは、この任務に臨むのに否はないと言い切るほど、彼もまたやる気に満ちている。
てっきり俺は適当に騎士団からそれらしい地位のある人間を選ぶと思っていたが、近衛騎士を隊長として寄こすぐらい、ソーマルガ側も本気度が高いようだ。
昨夜、精霊から聞いたことをグバトリア達に伝えたところ、二度ほど正気を疑われつつも、パーラと共に直訴するような勢いが功を奏したようで、巨人の脅威と倒すべき意義をある程度は分かってもらえ、急遽派遣する兵士に近衛騎士の手練れが何人か混ざる結果となった。
近衛の仕事は城内での王族警護が主であり、当然ながら実力は騎士の中でも抜きんでた人間が集められる。
単純な戦闘に限れば、近衛騎士一人は一般兵士の十人に伍するとされ、それが先遣隊にいる意義は大きい。
光の精霊についてはグバトリア達もお伽噺程度には知っているため、それをある意味で助けることに、一国の王として貢献すべきという使命のようなものがあるらしい。
ことの大きさもあって大々的な発表は出来ないが、アシャドル王国への支援はより強固なものを決意したほどだ。
今は近衛を少数送り出すしかしていないが、後発の本隊は派兵数を大幅に増員し、巨人打倒へ強くまい進すると鼻息を荒くしていた。
大々的に外へ発表することはできなくとも、この情報はアシャドル王国の上層部には共有すべきと、今朝方、大鳥を使って手紙を送ったという。
これでイアソー山麓での巨人討伐にも、こちらの意を汲んで協力してもらえる可能性が出来た。
向こうとしてもとりあえず巨人を倒せればいいはずなので、最悪協力はしてくれなくとも妨害はしてこないはずだ。
「隊長!先発派遣隊二百名!総員、搭乗完了しました!」
装備品と食料、人員の搭乗が終わり、副官と思われる女性兵士がそう声をかけてくると、アルベルトもそちらへ手を挙げて応える。
「報告ご苦労。すぐに出発する。君も自分の席につきたまえ」
「は!失礼します!」
キビキビとした動きで兵士が去っていくのを見送り、アルベルトが俺の方へと向き直る。
「さて、こちらの準備は完了したが、君の方はどうかな?」
「こちらも準備は出来てますよ。パーラも操縦席についてます」
「結構。では行こうか」
鎧こそ外しているが、近衛の嗜みとして身に着けているマントを翻し、アルベルトは貨物室側のハッチから飛空艇内に入っていく。
ここを使うのは、コンテナの取り付けによって出入り口がカーゴ側のハッチのみとなっているためだ。
中へ入ると、貨物室には武器や鎧、糧食の類が所狭しと詰め込まれており、これが外国へと赴く先遣隊の生命線となる。
それらの間を抜け、リビングスペースへと入ると、そこは用意できるだけの座席を並べた、旅客仕様へと姿を変えていた。
以前、84号遺跡へ行ったときに使われた座席がそのまま流用されており、ここには先遣隊の幹部クラスが主に集まっている。
近衛騎士もここを宛がわれているため、アルベルトの席もこっちに用意してある。
コンテナもこのリビングと似た配置で座席が用意されているが、こちらと違ってあちらは空調設備が貧弱なので、劣悪とまでは言わないまでも快適とは言い辛い。
そんなところに詰め込まれる兵士達のストレスはいかばかりかと心配になるが、実は先遣隊のほとんどは飛空艇に乗るのが初めてという人間ばかりで、初めて空を飛べる興奮ですし詰め状態でも文句はないそうだ。
急遽コンテナの一部に穴を空け、観音開きの木窓を取り付けて外の景色を楽しませるという粋な計らいをしたのは誰あろう、このアルベルトだ。
おかげで飛行中は高度をあまりとれなくなったが、兵士達の精神衛生は保たれるのでよしとしよう。
アルベルトと別れ、俺は操縦室へと向かう。
そこではパーラが操縦桿を握っており、入室してきた俺を一瞥だけしてすぐに前を向く。
「どう?全員乗り込んだ?もう出発していいの?」
「ああ、荷物と人員、全部飛空艇に入った。さっさと出発しよう」
サブのシートに座り、パーラへそう指示を出してから伝声管を引っ張り出してその中へと声を吹き込む。
『出発の準備が整ったので、これより出発します。総員、座席について姿勢を固定してください。危険ですので、上空で飛行が安定してから、窓の外の景色をお楽しみください』
この伝声管は船内と、コンテナへも臨時で繋いでおり、乗っている人間にはこれで指示が届けられた。
恐らくは飛び立つ瞬間を見ようと窓にかじりついている人間もいただろうから、注意喚起だけはしておかなくては。
目でパーラに指示を出し、飛空艇がゆっくりと浮かび上がる。
すると、船内から歓声が上がったのが、開放状態の伝声管から聞こえて来た。
初めて空を飛ぶ人間というのは、こんな具合に大体同じ反応をする。
恐れる者も喜ぶ者も等しく声を上げている。
「パーラ、どうだ?船体の反応は」
一方乗客達とは違い、操縦室の俺達は飛空艇の状態を確認するために気を抜けない状況にあった。
重量バランスが変わったことで、飛空艇の挙動にも少なからず変化があるため、操縦感覚のズレがいかほどのものかをパーラに確認する。
「今のところ大丈夫。設定を変えたのが上手く効いてる。ただ、操縦桿の手ごたえが粘ついてるみたいに重いね。これは急な動きは無理かも」
「重さがいつもと違い過ぎるからな。とりあえず姿勢制御に気を配れ。傾きにさえ気を付ければ真っ直ぐには進める」
「了ー解」
酸素濃度と気温が人間への影響が少ないギリギリの高度まで上がると、飛空艇はゆっくりと進みだす。
重さがあるおかげで滑り出しは遅いが、それでもこの飛空艇の主機出力は高いため、徐々に加速していき、普段より少し遅い程度の巡航速度まで到達する。
この重さでこれだけの速度となれば、減速にかかる手間と時間が少し気になるものの、先を急ぐ俺達にはゆっくりとした飛行は選択できない。
高度の関係上、山越えは無理なため、関所の上空を通過して進むことになるが、イアソー山までは大体四・五日で到着するはずだ。
最後に出されたギルドからの情報だと、巨人はまだイアソー山の山肌に留まっていたそうで、まだ余所へ移動していないのはよかったが、そこへ釘付けするために一体どれだけの人間と物資が消費されたのだろうか。
これから向かう先でどんな惨状があるのか、覚悟を決めておく必要もありそうだ。
飛空艇での移動は順調だった。
他国の軍隊を大勢輸送している関係上、大っぴらにアシャドルの町や村に宿を借りるのは躊躇われたため、専ら野営続きではあったが、質のいい食料と少量ながら飲酒も許されていたおかげで、不満を口にする兵士はまずいなく、穏やかな旅だと言っていい。
山を越えると冬にふさわしい天気にも出くわし、初めて見る雪にはしゃぐ姿も見られたが、年中暑いソーマルガの兵にとっては冬の野営は厳しいものであったため、その辺りの不満は絶えなかったが。
途中、飛空艇とコンテナを繋いでいるアタッチメントから異音と振動が発生することがあったが、着陸しての点検と簡単な調整だけで重大な事故にはつながらずに済んだ。
元々どの飛空艇にもオプションパーツを取り付けるためと思われるアタッチメントが存在している。
当然、俺達の飛空艇にもあるのだが、このアタッチメントではコンテナを取り付けることを想定していないため、ソーマルガではコンテナ用のアダプターを開発し、それによって飛空艇と連結していたのだ。
そもそもこのコンテナ用のアダプターは耐久試験などをクリアしてはいたが、それはソーマルガで運用している標準的な飛空艇を使ってのものであり、それ以上の速度では試験を行っていなかったらしい。
だが今回、俺達の飛空艇では実験時以上の速度で移動を行った結果、アタッチメントとの接続部分に緩みが出来てしまった。
すぐに破損するレベルではなかったが、激しい振動がコンテナにいる人間の乗り心地に直結するため、急遽ありあわせの道具でアダプター部分を締め直し、事なきを得ている。
むしろ、これは後の改良につながるいい機会だとアルベルトは喜んでいたほどだ。
流石技術大国だけあって、不具合を好機ととらえる精神性は騎士にまでも根付いているようだ。
ちょっとしたトラブルもありつつ、北へ飛び続けること三日。
上手く追い風が掴めたこともあって、予定よりずっと早くイアソー山を遠目にとらえることができた。
途中に見かけた平原では、イアソー山を睨むようにして簡易陣地が布かれているのを確認できた。
恐らく、巨人を警戒して置かれている部隊だと思うが、規模を見た限りではあくまでも警戒のためであって、迎撃目的ではないと分かる。
巨人が出現してから今日で十日弱は経っているとしても、この警戒線がイアソー山にかなり近い位置にあることから、現地にて巨人の足止めは十分行われているようだ。
そうして飛び続けることしばし。
高度の関係からはるか遠くの空に夕陽の指先が仄かに見える時間に、飛空艇はイアソー山麓の目前へとたどり着き、そして少し前から遠目には見えていた巨人の姿を、ようやく間近に捉えることができた。
冬のアシャドルは辺り一面に雪が積もっており、イアソー山脈も麓からてっぺんまで白一色に染められている。
そんな中に、巨人の姿はあった。
麓の裾野に身を預けるようにして倒れている姿は、その周辺の地形が雪や土などで荒れている様子から、何かしらの戦闘があっての状態と分かる。
大の字に天を仰ぐ巨人は、目測でだが全長は5・60メートルはあろうか。
ひょろ長い手足と頭があることから、辛うじて人型とも言えなくもないが、顔はのっぺらぼうのようにツルリとしていて、体も起伏がほとんどなく、出来損ないの粘土細工かのような印象を持つ。
体色は雪のように白いと表現できるが、周りの雪と比べるとどこか不自然な白さに思え、見る者に不気味さを植え付ける何かという印象が強い。
「あれが巨人かぁ。確かに大きいね。身長だけなら私らの飛空艇よりもあるんじゃない?」
操縦桿を握るパーラは、初めて見る巨人に驚いているが、恐怖はそれほど感じていないようで、その操縦にブレはない。
とりあえず飛空艇のスピードを落とさせ、巨人の様子を窺ってみる。
「想像してたのより体格は貧弱に見えるな。まぁデカさがとんでもないから、物差しが違うかもしれんが」
「そうだね、足なんかあれで立てんの?って感じだし。あ、だからああして倒れてるとか?」
「それもないとは言わないが、山肌の中腹辺りに足跡もあるし、絶対立てないってことじゃなさそうだ」
あのサイズから考えるに、二足歩行するには足の太さはあまりにも心細く、自重に潰されてもおかしくはないが、ここは物理法則を乗り越える魔術がある世界だし、それにあれには光の精霊が封印されているのだから、何かしらの不思議パワーで欠点を克服している可能性はある。
「…アンディ、あそこ見て。人がいる」
パーラが指さす先、巨人から少し離れた場所に、普通の人間サイズの人影が集団となって巨人に対峙しているのが見えた。
距離があるせいではっきりとはしないが、装備がバラバラな人間が多く混ざっている。
ざっと見たところ三・四百人といった規模だが、巨人を相手にその数で十分なのか未知数なのがまた怖い。
「多分、アシャドル王国の兵士と、傭兵やら冒険者の混成部隊だろう。結構近いところまで寄ってるな。しかし、攻撃の手を止めてるのはなんでだ?」
「ほんとだ。投石器とかは流石にないけど、弓はあるみたいなのに。魔術師とかいないのかな?」
「傭兵の方はともかく、正規軍なら魔術師も連れてきてるはずだが…」
魔術師は数が少ないとはいえ、傭兵や冒険者にも一定数がいるように、正規の軍隊にはそれなりの数が在籍しているものだ。
倒れている巨人に対し、魔術の一つも放っていないのはどうしたことか。
ひょっとしたら、巨人はもう死んでいるとかなのだろうか?
「動いた!あいつ、立つ気なんじゃない!?」
首を傾げる俺達が見つめる先では、倒れて動かなかった巨人が、その長大な腕をゆっくりと持ち上げ、自分の体を支えるために地面を押すようにして叩く。
上体が起き上がり、目のない顔が足元の方へいる人間達へと向けられたかのようにも見える。
それまで横になっていた巨体が、上半身だけとはいえ起き上がる光景は見ている側を圧倒させる迫力があり、俺もパーラも言葉もなく見守ってしまう。
そのまま足も動き出し、立ち上がるかと思われた次の瞬間、混成部隊の方から一筋の光が飛び出し、体を支えていた巨人の右腕を強烈に払い打ち、上半身が倒れるまでに態勢を崩させる。
まるで蛇のようにうねって伸び、稲妻のように激しく素早い一撃は、その目的を果たしたと言わんばかりにまた混成部隊の方へと戻っていった。
「うわっ、今の何?巨人の腕をああまで弾くって、結構凄くない?」
「…だろうな。俺も初めて見たが、あれがあいつの本気の一撃ってことか。しかし隣国とはいえ、随分と早く駆け付けたもんだ」
今の光景に、純粋な驚きを見せるパーラに対し、俺の方はというとあの攻撃を放った人間に対する感情がまだいいものとは言えないため、自然と忌々しさが籠った声になってしまう。
「ん?アンディ、今の攻撃の正体知ってんの?」
「そうか、お前はあれ見るの初めてか。ありゃあグロウズの鞭による攻撃だ。前に俺が食らった時より射程も威力も上だが、あの軌跡は間違いない」
よっぽどの達人でもない限り、一度食らった攻撃を見破り、しかも放った術者も見分けるなどかなり難しいのだが、幸いと言っていいかグロウズの鞭での攻撃は特徴があり、それで俺は見分けることができた。
勿論、同じ武器で同じ流派の別人という可能性もあるが、あれほどの攻撃を繰り出せる人間がグロウズ以外にワンサカといるとは思えない。
「あいつか…」
俺の反グロウズ教育の賜物か、やられたことを大袈裟かつ捏造気味に教え込んでいたおかげで、パーラもその名前を聞いて不快そうな顔を見せた。
感心するほど見事な攻撃を見せた人間が、実はゲロ以下のビチグソ野郎だったのだからパーラの心情はいかばかりか。
何とも言えない空気になる操縦室だが、そんな時でもグロウズの操る鞭が再び動き出したのが見えている。
先程の攻撃で地面に横たわった巨人を、跳ね回るスーパーボールのように鞭の軌跡が襲っていく。
当たる度に巨人の四肢に衝撃が伝わり、痙攣するような動きがあることから、向こうの方では衝撃波と轟音の大盤振る舞いとなっていることだろう。
俺達は距離があることと飛空艇の中ということもあって、そういったものが感じられないのは幸いだ。
『アンディ殿、少しよいか?』
「おや、ミルリッグ卿。どうかしましたか?」
「うむ、先程から見えていた―おぉ…」
操縦室の扉越しに声をかけて来たアルベルトを、室内に招き入れて訪問の理由を尋ねるが、彼はそれを言うよりも初めて足を踏み入れたであろう飛空艇のコックピットの様子に目移りしてしまっているようだ。
近衛と言えば基本的に城から離れないので、飛空艇に乗る機会もまずなく、ましてやコックピットなどこれが初めてになるのだろう。
アルベルトはもういい大人だが、コックピットというのはいつの時代、どこの世界であっても男の子を惹きつけてやまないのかもしれない。
「ミルリッグ卿?」
「あ、あぁ、すまない。ここからも見えていたようだが、今まさに戦闘が起きている。急ぎ我らも参戦―」
「いやぁ、そりゃ無理ですよ」
窓からでも見ていたのか、既に巨人との戦闘が始まっていることに焦りのようなものを覚えているのかもしれない。
援軍としてきている以上、見ているだけというのは我慢出来ないのだろう。
しかし、それには俺から待ったを掛けさせてもらう。
「…何故だ?」
「参戦するにもまず武具を準備する必要がありますよね?」
「当然だ。生身で戦えるほど、あれは容易い相手ではなかろう」
「そうですね。じゃあその武具は今どうなってますか?」
「それなら厳重に封をして、貨物室に……あ」
どうやらアルベルトも内心では焦っていたようで、俺の言葉に呆けたような顔を見せた。
彼らが使う武具は貨物室にあるのだが、限られたスペースを有効活用するため、木箱への梱包は効率重視で隙間なくギッチリとしたものとなっている。
また、飛行中における破損や紛失を避けるため、これまた厳重に封が施されていた。
勿論、緊急時に備えていつでも使える程度の最低限の武器はすぐに手に出来るが、本格的な武器や防具といったものは簡単には取り出せない。
着陸した上で落ち着いて封を解くならいざ知らず、飛行中の狭い貨物室で木箱を開けるのは流石に難しい。
「まずは飛空艇を安全に降ろしてから、武具を整えた上で支援に向かわれるのが最善でしょう」
「そうではあるが、助けるべき相手が戦っているというのに、見ているだけというのはどうにも…」
「お二人さん、話してるところに悪いけど、向こうが引いてってるよ」
パーラに言われて、視線を巨人との戦いへと向けてみると、巨人を襲う攻撃は未だ続いているのに、奇妙なことに混成部隊の方では後方の人間から徐々に後退し始めていた。
鞭の一撃によって痛めつけられた巨人は、もう既にされるがままといった様子で、立ち上がろうとする気配も見えない。
だが鞭による攻撃の手は未だ緩められていない様子から、あれだけやられても巨人は健在なのだと分かる。
「なんだ?なぜ後退する?」
「攻撃はまだ続いてますね。もうじき日が暮れますが、それでですかね?」
「確かに夜間の戦闘は困難の極みではあるが、巨人を倒しきれていない状態で後退などするだろうか?」
夜間でも月や星の光である程度見えはするが、大規模な戦闘をするには敵味方共に危険なのはどこの世界でも同じだ。
魔術や身体強化などでもある程度克服は出来るが、避けるに越したことは無い。
あの巨人が暗闇でどれだけ動けるかは分からないが、今後退したら暗闇の中で追撃されるのではないだろうか。
そんなことを考えている間に、もうほとんどの人間は巨人の下から離れており、残っているのはグロウズ(と思われる人影)とその周囲の何人かだけだ。
だが何かの合図があったのか、嵐のように繰り出されていた鞭が突然ピタリと収まり、残っていた人間も後退を始める。
巨人の方は、遠ざかっていく集団へ顔だけを起こして向けるが、攻撃することはなく、ただ見送るだけだ。
パッと見た限りでは体にはさほど目立つ傷などもなく、そのまま巨人が追撃を加えるかと思ったのだがそれもしないとは、もしかしたら見た目よりもダメージは深刻なのかと思わされる。
「…もう日が落ちてるね。アンディ、どうする?」
パーラに言われ、改めて空を見れば、確かにもう暗い色に変わっていた。
『冬の夜は駆け足』とはよく言ったものだ。
このまま空に留まるわけにもいかず、かといって巨人の的になるかもしれないあの集団に近付くべきなのか悩むところだ。
「俺達は援軍としてきたからな。あの部隊と合流して、ここらを仕切ってるお偉いさんに繋ぎをとってもらうのがいいとは思うが…ミルリッグ卿はどう考えますか?」
この先遣隊の指揮官はアルベルトなので、どうするかを決めるのは彼の仕事だ。
俺がこうしたらいいと提案は出来るが、それを採用するかはアルベルトの判断による。
「うむ、私もそうした方がいいと思う。アシャドル王国に請われて来たのだ。到着の挨拶はせねばな。それに、まずは現地での情報も欲しい」
「ではそのように。パーラ、さっきの連中がどの方角に向かうか見定めてくれ。確認したら、そっちの方に飛空艇を飛ばせ」
「あの人達の近くに飛空艇で降りたらよくない?そんで指揮官あたりに聞けば手っ取り早いよ?」
「まぁそれもいいが、連中がいる場所はあの巨人にまだ近い。なんかあったら、巻き込まれるかもしれないだろ」
「それもそっか」
自分達から危険を遠ざけるために、あそこにいる連中を囮にするかのようではあるが、それに対してパーラもアルベルトも特に嫌悪感を示すことは無い。
俺達は今、二百人の命を預かっている。
面識のない大勢と比較したら、どちらの安全を優先するかは考えるまでもない。
勿論、いざとなればただ見捨てるつもりもなく、出来得る限りのことはするつもりだが、今がその時でない以上、選択肢を多くするためにこういうスタンスをとることが大事だ。
ただ、俺達が危惧す巨人の追撃だが、俺の勘では恐らくは今日はもうないとみている。
何故なら、陽が落ちてから巨人はその動きを完全に止め、ここへ来た時に見たのと同じような大の字で寝そべる姿を晒していたからだ。
遠ざかっていく敵を見ていた顔も、枕に埋めるようにして倒されており、まるで今日はもう寝るのだという意思を派手に示しているようにすら思える。
これもまた勘だが、さっきまで巨人と戦っていた連中も、陽が落ちるのと合わせてその場を離れたのではないだろうか。
俺達が来るよりも前から巨人と戦っていたであろう彼らには、陽が落ちてから、つまり夜に巨人は活動をしないという確信があったからこそ、グロウズを殿にしてああもあっさりと後退したのかもしれない。
グロウズの攻撃でも倒しきれないが、足止めは出来ているのは、夜になると巨人が動きを止めていたからと思えてきている。
よくよく考えれば、あの巨人は光の精霊が封印されているのだから、太陽をエネルギー源として活動するのは十分にあり得る話だ。
太陽光発電で動く巨人とでも言おうか。
このあたり、先に巨人と交戦して情報を蓄積しているここらの人間から色々聞いてみたい。
撤退していく部隊の行く先を、暗い中で何とか突き止め、飛空艇をそこへと向けて移動させる。
恐らく彼らが向かう先には、巨人と戦う人間が拠点としている場所があるはず。
案の定、移動する先へ回り込んでみれば、丘を盾にして巨人から隠れるような場所にちょっとした集落のようなものがあった。
以前、よく俺達が足を運んでいたあの麓に出来た集落とは違うようだが、こちらはこちらで巨人に対抗する前線基地として、かなりの規模を誇っているようだ。
周囲を囲む壁などは流石に急造感は否めないが、数多くのテントが犇めくようにして建ち、多くの人間が動き回っている様子は、前線基地として活気があるといっていい。
そんな人間の中に、上空で滞空する飛空艇に気付いた人間が出始め、上空を指さしながら騒ぎだした。
「ん~、めっかっちった」
「そらそうだろ」
デカい飛行物体が自分達の頭の上に来たのだ。
それなりに暗くとも、見上げれば誰だって気付く。
「なんか言ってるみたいだね。このまま着陸しちゃう?」
「いや、俺が単独で降りて話を聞いてこよう。着陸するにしても、どこに降りるか指示してもらわないとな」
生憎声までは聞こえないが、かなりの剣幕で身振り手振りから何かを伝えようとしているようなので、こちらから出向いて話を聞くとしよう。
飛空艇が下りるのにちょうどいい広さの空き地も見当たらないし、向こうの都合のいい場所を紹介してもらいたい。
噴射装置を身に着け、乗客に見守られながら貨物室へ向かうと、ハッチを解放して外へ飛び出す。
元々高度もそれほどではなかったこともあって、二度ほど装置を吹かして着陸すると、飛空艇を指して騒いでいた男のちょうど目の前でかち合うこととなった。
「うぉ!?何も…あれ?あんたアンディか?」
降ってきたのが俺だと分かると、警戒していた表情が緩む。
俺は見覚えはないが、向こうは俺のことを知っていたようだ。
「ええ、まぁ確かに俺はアンディです。俺を知っているってことは、あの飛空艇のことも知ってますね。ソーマルガ皇国からの援軍を運んできました。ここの責任者の方にお会いしたいのですが」
「おぉ!そうか!やっと来てくれたのか!ちょっと待ってくれ、今―」
「何事ですか!あの飛空艇はどこの…―アンディさん?」
「あ、セインさん」
目の前の男に取次ぎを頼もうとしたところ、割り込んできたのはなんとセインだった。
向こうも飛空艇のことを聞いて駆けつけてきたようで、俺の姿を見て一瞬呆けた顔を見せる。
まさかこんなところでセインに遭遇するとは。
彼女の仕事を考えると、イアソー山麓の出張所で采配を振るっていると思っていたのだがな。
セインは根っからの文官肌であるため、巨人と戦う最前線には出てこないと持っていただけに、意外なところでの再会だ。
とはいえ、恐らくここの責任者はセインだと思われるため、彼女とこのタイミングで顔を合わせたのはありがたい。
丁度いいので飛空艇の停泊場所と、アルベルト達の身の振り方をまずは相談するとしよう。
一日の内で二度訪れる寒さと暑さが程よく同居するこの時間、俺達は北へ向けて旅経つ準備を終え、あとは出発するのみとなっていた。
一晩寝ずに行われた改造の末、飛空艇は機体の上と左右にコンテナを取り付けられ、通路と保持アームを兼ねた太いパイプで船内との行き来が可能な、旅客機仕様へと姿を変えていた。
さっき少し動かしたところ、重量バランスが大分変わっていたが、船の制御システムの方で設定を少しいじって対応できたのはよかった。
イアソー山脈までは風次第だが五日ほどの行程と見込んでおり、途中で野営を挟んでの強行軍になることだろう。
先遣隊の兵士は既に搭乗を開始しており、立ち居振る舞いから感じられる練度にはバラつきはあるものの、いずれも高い戦闘能力を有した猛者ばかりと分かる。
彼らには脅威としての巨人のことは教えられており、それを相手取って得られる武功を想像してか、士気の高さも十分なようだ。
中には手柄を上げて懇意の相手と結婚するんだと気炎を吐いている奴もいて、フラグ的に危なっかしくて見てられなかったが。
「皆、やる気に満ちてますね。俺の知るソーマルガの兵士と比べても、顔つきが違う」
「当然だ。アシャドル王国と言えば長年の友好国、その助けになれるのならと逸っている。それに、彼らの中には武功の得られる機会を与えられない者も少なくない。誰もが気概に満ちているのさ」
人を飲み込んでいく飛空艇を外から眺めつつ、俺の隣に立つ偉丈夫へと声をかけると、彼もまたやる気に満ちた声で答えた。
今俺の隣にいる彼は、この先遣隊の指揮官なのだが、ありがたいことに俺と顔見知りだった。
全くの他人よりも多少見知った相手の方が俺達の気も楽だと、ハリム辺りが配慮してくれたのかもしれない。
ちなみにこの先遣隊、正式な呼称は『ソーマルガ皇国先遣支援隊』というのだが、長いので誰もが先遣隊と呼んでいる。
「しかし意外でした。まさかミルリッグ卿が共に行くとは。近衛騎士が城を離れてもいいもんなんですか?」
「なに、私も所詮は一人の騎士にすぎん。王より一度命が下れば、城を離れて任を果たすのもやぶさかではない」
朗らかに笑いながら言う指揮官、アルベルト・ジャール・ミルリッグは、この任務に臨むのに否はないと言い切るほど、彼もまたやる気に満ちている。
てっきり俺は適当に騎士団からそれらしい地位のある人間を選ぶと思っていたが、近衛騎士を隊長として寄こすぐらい、ソーマルガ側も本気度が高いようだ。
昨夜、精霊から聞いたことをグバトリア達に伝えたところ、二度ほど正気を疑われつつも、パーラと共に直訴するような勢いが功を奏したようで、巨人の脅威と倒すべき意義をある程度は分かってもらえ、急遽派遣する兵士に近衛騎士の手練れが何人か混ざる結果となった。
近衛の仕事は城内での王族警護が主であり、当然ながら実力は騎士の中でも抜きんでた人間が集められる。
単純な戦闘に限れば、近衛騎士一人は一般兵士の十人に伍するとされ、それが先遣隊にいる意義は大きい。
光の精霊についてはグバトリア達もお伽噺程度には知っているため、それをある意味で助けることに、一国の王として貢献すべきという使命のようなものがあるらしい。
ことの大きさもあって大々的な発表は出来ないが、アシャドル王国への支援はより強固なものを決意したほどだ。
今は近衛を少数送り出すしかしていないが、後発の本隊は派兵数を大幅に増員し、巨人打倒へ強くまい進すると鼻息を荒くしていた。
大々的に外へ発表することはできなくとも、この情報はアシャドル王国の上層部には共有すべきと、今朝方、大鳥を使って手紙を送ったという。
これでイアソー山麓での巨人討伐にも、こちらの意を汲んで協力してもらえる可能性が出来た。
向こうとしてもとりあえず巨人を倒せればいいはずなので、最悪協力はしてくれなくとも妨害はしてこないはずだ。
「隊長!先発派遣隊二百名!総員、搭乗完了しました!」
装備品と食料、人員の搭乗が終わり、副官と思われる女性兵士がそう声をかけてくると、アルベルトもそちらへ手を挙げて応える。
「報告ご苦労。すぐに出発する。君も自分の席につきたまえ」
「は!失礼します!」
キビキビとした動きで兵士が去っていくのを見送り、アルベルトが俺の方へと向き直る。
「さて、こちらの準備は完了したが、君の方はどうかな?」
「こちらも準備は出来てますよ。パーラも操縦席についてます」
「結構。では行こうか」
鎧こそ外しているが、近衛の嗜みとして身に着けているマントを翻し、アルベルトは貨物室側のハッチから飛空艇内に入っていく。
ここを使うのは、コンテナの取り付けによって出入り口がカーゴ側のハッチのみとなっているためだ。
中へ入ると、貨物室には武器や鎧、糧食の類が所狭しと詰め込まれており、これが外国へと赴く先遣隊の生命線となる。
それらの間を抜け、リビングスペースへと入ると、そこは用意できるだけの座席を並べた、旅客仕様へと姿を変えていた。
以前、84号遺跡へ行ったときに使われた座席がそのまま流用されており、ここには先遣隊の幹部クラスが主に集まっている。
近衛騎士もここを宛がわれているため、アルベルトの席もこっちに用意してある。
コンテナもこのリビングと似た配置で座席が用意されているが、こちらと違ってあちらは空調設備が貧弱なので、劣悪とまでは言わないまでも快適とは言い辛い。
そんなところに詰め込まれる兵士達のストレスはいかばかりかと心配になるが、実は先遣隊のほとんどは飛空艇に乗るのが初めてという人間ばかりで、初めて空を飛べる興奮ですし詰め状態でも文句はないそうだ。
急遽コンテナの一部に穴を空け、観音開きの木窓を取り付けて外の景色を楽しませるという粋な計らいをしたのは誰あろう、このアルベルトだ。
おかげで飛行中は高度をあまりとれなくなったが、兵士達の精神衛生は保たれるのでよしとしよう。
アルベルトと別れ、俺は操縦室へと向かう。
そこではパーラが操縦桿を握っており、入室してきた俺を一瞥だけしてすぐに前を向く。
「どう?全員乗り込んだ?もう出発していいの?」
「ああ、荷物と人員、全部飛空艇に入った。さっさと出発しよう」
サブのシートに座り、パーラへそう指示を出してから伝声管を引っ張り出してその中へと声を吹き込む。
『出発の準備が整ったので、これより出発します。総員、座席について姿勢を固定してください。危険ですので、上空で飛行が安定してから、窓の外の景色をお楽しみください』
この伝声管は船内と、コンテナへも臨時で繋いでおり、乗っている人間にはこれで指示が届けられた。
恐らくは飛び立つ瞬間を見ようと窓にかじりついている人間もいただろうから、注意喚起だけはしておかなくては。
目でパーラに指示を出し、飛空艇がゆっくりと浮かび上がる。
すると、船内から歓声が上がったのが、開放状態の伝声管から聞こえて来た。
初めて空を飛ぶ人間というのは、こんな具合に大体同じ反応をする。
恐れる者も喜ぶ者も等しく声を上げている。
「パーラ、どうだ?船体の反応は」
一方乗客達とは違い、操縦室の俺達は飛空艇の状態を確認するために気を抜けない状況にあった。
重量バランスが変わったことで、飛空艇の挙動にも少なからず変化があるため、操縦感覚のズレがいかほどのものかをパーラに確認する。
「今のところ大丈夫。設定を変えたのが上手く効いてる。ただ、操縦桿の手ごたえが粘ついてるみたいに重いね。これは急な動きは無理かも」
「重さがいつもと違い過ぎるからな。とりあえず姿勢制御に気を配れ。傾きにさえ気を付ければ真っ直ぐには進める」
「了ー解」
酸素濃度と気温が人間への影響が少ないギリギリの高度まで上がると、飛空艇はゆっくりと進みだす。
重さがあるおかげで滑り出しは遅いが、それでもこの飛空艇の主機出力は高いため、徐々に加速していき、普段より少し遅い程度の巡航速度まで到達する。
この重さでこれだけの速度となれば、減速にかかる手間と時間が少し気になるものの、先を急ぐ俺達にはゆっくりとした飛行は選択できない。
高度の関係上、山越えは無理なため、関所の上空を通過して進むことになるが、イアソー山までは大体四・五日で到着するはずだ。
最後に出されたギルドからの情報だと、巨人はまだイアソー山の山肌に留まっていたそうで、まだ余所へ移動していないのはよかったが、そこへ釘付けするために一体どれだけの人間と物資が消費されたのだろうか。
これから向かう先でどんな惨状があるのか、覚悟を決めておく必要もありそうだ。
飛空艇での移動は順調だった。
他国の軍隊を大勢輸送している関係上、大っぴらにアシャドルの町や村に宿を借りるのは躊躇われたため、専ら野営続きではあったが、質のいい食料と少量ながら飲酒も許されていたおかげで、不満を口にする兵士はまずいなく、穏やかな旅だと言っていい。
山を越えると冬にふさわしい天気にも出くわし、初めて見る雪にはしゃぐ姿も見られたが、年中暑いソーマルガの兵にとっては冬の野営は厳しいものであったため、その辺りの不満は絶えなかったが。
途中、飛空艇とコンテナを繋いでいるアタッチメントから異音と振動が発生することがあったが、着陸しての点検と簡単な調整だけで重大な事故にはつながらずに済んだ。
元々どの飛空艇にもオプションパーツを取り付けるためと思われるアタッチメントが存在している。
当然、俺達の飛空艇にもあるのだが、このアタッチメントではコンテナを取り付けることを想定していないため、ソーマルガではコンテナ用のアダプターを開発し、それによって飛空艇と連結していたのだ。
そもそもこのコンテナ用のアダプターは耐久試験などをクリアしてはいたが、それはソーマルガで運用している標準的な飛空艇を使ってのものであり、それ以上の速度では試験を行っていなかったらしい。
だが今回、俺達の飛空艇では実験時以上の速度で移動を行った結果、アタッチメントとの接続部分に緩みが出来てしまった。
すぐに破損するレベルではなかったが、激しい振動がコンテナにいる人間の乗り心地に直結するため、急遽ありあわせの道具でアダプター部分を締め直し、事なきを得ている。
むしろ、これは後の改良につながるいい機会だとアルベルトは喜んでいたほどだ。
流石技術大国だけあって、不具合を好機ととらえる精神性は騎士にまでも根付いているようだ。
ちょっとしたトラブルもありつつ、北へ飛び続けること三日。
上手く追い風が掴めたこともあって、予定よりずっと早くイアソー山を遠目にとらえることができた。
途中に見かけた平原では、イアソー山を睨むようにして簡易陣地が布かれているのを確認できた。
恐らく、巨人を警戒して置かれている部隊だと思うが、規模を見た限りではあくまでも警戒のためであって、迎撃目的ではないと分かる。
巨人が出現してから今日で十日弱は経っているとしても、この警戒線がイアソー山にかなり近い位置にあることから、現地にて巨人の足止めは十分行われているようだ。
そうして飛び続けることしばし。
高度の関係からはるか遠くの空に夕陽の指先が仄かに見える時間に、飛空艇はイアソー山麓の目前へとたどり着き、そして少し前から遠目には見えていた巨人の姿を、ようやく間近に捉えることができた。
冬のアシャドルは辺り一面に雪が積もっており、イアソー山脈も麓からてっぺんまで白一色に染められている。
そんな中に、巨人の姿はあった。
麓の裾野に身を預けるようにして倒れている姿は、その周辺の地形が雪や土などで荒れている様子から、何かしらの戦闘があっての状態と分かる。
大の字に天を仰ぐ巨人は、目測でだが全長は5・60メートルはあろうか。
ひょろ長い手足と頭があることから、辛うじて人型とも言えなくもないが、顔はのっぺらぼうのようにツルリとしていて、体も起伏がほとんどなく、出来損ないの粘土細工かのような印象を持つ。
体色は雪のように白いと表現できるが、周りの雪と比べるとどこか不自然な白さに思え、見る者に不気味さを植え付ける何かという印象が強い。
「あれが巨人かぁ。確かに大きいね。身長だけなら私らの飛空艇よりもあるんじゃない?」
操縦桿を握るパーラは、初めて見る巨人に驚いているが、恐怖はそれほど感じていないようで、その操縦にブレはない。
とりあえず飛空艇のスピードを落とさせ、巨人の様子を窺ってみる。
「想像してたのより体格は貧弱に見えるな。まぁデカさがとんでもないから、物差しが違うかもしれんが」
「そうだね、足なんかあれで立てんの?って感じだし。あ、だからああして倒れてるとか?」
「それもないとは言わないが、山肌の中腹辺りに足跡もあるし、絶対立てないってことじゃなさそうだ」
あのサイズから考えるに、二足歩行するには足の太さはあまりにも心細く、自重に潰されてもおかしくはないが、ここは物理法則を乗り越える魔術がある世界だし、それにあれには光の精霊が封印されているのだから、何かしらの不思議パワーで欠点を克服している可能性はある。
「…アンディ、あそこ見て。人がいる」
パーラが指さす先、巨人から少し離れた場所に、普通の人間サイズの人影が集団となって巨人に対峙しているのが見えた。
距離があるせいではっきりとはしないが、装備がバラバラな人間が多く混ざっている。
ざっと見たところ三・四百人といった規模だが、巨人を相手にその数で十分なのか未知数なのがまた怖い。
「多分、アシャドル王国の兵士と、傭兵やら冒険者の混成部隊だろう。結構近いところまで寄ってるな。しかし、攻撃の手を止めてるのはなんでだ?」
「ほんとだ。投石器とかは流石にないけど、弓はあるみたいなのに。魔術師とかいないのかな?」
「傭兵の方はともかく、正規軍なら魔術師も連れてきてるはずだが…」
魔術師は数が少ないとはいえ、傭兵や冒険者にも一定数がいるように、正規の軍隊にはそれなりの数が在籍しているものだ。
倒れている巨人に対し、魔術の一つも放っていないのはどうしたことか。
ひょっとしたら、巨人はもう死んでいるとかなのだろうか?
「動いた!あいつ、立つ気なんじゃない!?」
首を傾げる俺達が見つめる先では、倒れて動かなかった巨人が、その長大な腕をゆっくりと持ち上げ、自分の体を支えるために地面を押すようにして叩く。
上体が起き上がり、目のない顔が足元の方へいる人間達へと向けられたかのようにも見える。
それまで横になっていた巨体が、上半身だけとはいえ起き上がる光景は見ている側を圧倒させる迫力があり、俺もパーラも言葉もなく見守ってしまう。
そのまま足も動き出し、立ち上がるかと思われた次の瞬間、混成部隊の方から一筋の光が飛び出し、体を支えていた巨人の右腕を強烈に払い打ち、上半身が倒れるまでに態勢を崩させる。
まるで蛇のようにうねって伸び、稲妻のように激しく素早い一撃は、その目的を果たしたと言わんばかりにまた混成部隊の方へと戻っていった。
「うわっ、今の何?巨人の腕をああまで弾くって、結構凄くない?」
「…だろうな。俺も初めて見たが、あれがあいつの本気の一撃ってことか。しかし隣国とはいえ、随分と早く駆け付けたもんだ」
今の光景に、純粋な驚きを見せるパーラに対し、俺の方はというとあの攻撃を放った人間に対する感情がまだいいものとは言えないため、自然と忌々しさが籠った声になってしまう。
「ん?アンディ、今の攻撃の正体知ってんの?」
「そうか、お前はあれ見るの初めてか。ありゃあグロウズの鞭による攻撃だ。前に俺が食らった時より射程も威力も上だが、あの軌跡は間違いない」
よっぽどの達人でもない限り、一度食らった攻撃を見破り、しかも放った術者も見分けるなどかなり難しいのだが、幸いと言っていいかグロウズの鞭での攻撃は特徴があり、それで俺は見分けることができた。
勿論、同じ武器で同じ流派の別人という可能性もあるが、あれほどの攻撃を繰り出せる人間がグロウズ以外にワンサカといるとは思えない。
「あいつか…」
俺の反グロウズ教育の賜物か、やられたことを大袈裟かつ捏造気味に教え込んでいたおかげで、パーラもその名前を聞いて不快そうな顔を見せた。
感心するほど見事な攻撃を見せた人間が、実はゲロ以下のビチグソ野郎だったのだからパーラの心情はいかばかりか。
何とも言えない空気になる操縦室だが、そんな時でもグロウズの操る鞭が再び動き出したのが見えている。
先程の攻撃で地面に横たわった巨人を、跳ね回るスーパーボールのように鞭の軌跡が襲っていく。
当たる度に巨人の四肢に衝撃が伝わり、痙攣するような動きがあることから、向こうの方では衝撃波と轟音の大盤振る舞いとなっていることだろう。
俺達は距離があることと飛空艇の中ということもあって、そういったものが感じられないのは幸いだ。
『アンディ殿、少しよいか?』
「おや、ミルリッグ卿。どうかしましたか?」
「うむ、先程から見えていた―おぉ…」
操縦室の扉越しに声をかけて来たアルベルトを、室内に招き入れて訪問の理由を尋ねるが、彼はそれを言うよりも初めて足を踏み入れたであろう飛空艇のコックピットの様子に目移りしてしまっているようだ。
近衛と言えば基本的に城から離れないので、飛空艇に乗る機会もまずなく、ましてやコックピットなどこれが初めてになるのだろう。
アルベルトはもういい大人だが、コックピットというのはいつの時代、どこの世界であっても男の子を惹きつけてやまないのかもしれない。
「ミルリッグ卿?」
「あ、あぁ、すまない。ここからも見えていたようだが、今まさに戦闘が起きている。急ぎ我らも参戦―」
「いやぁ、そりゃ無理ですよ」
窓からでも見ていたのか、既に巨人との戦闘が始まっていることに焦りのようなものを覚えているのかもしれない。
援軍としてきている以上、見ているだけというのは我慢出来ないのだろう。
しかし、それには俺から待ったを掛けさせてもらう。
「…何故だ?」
「参戦するにもまず武具を準備する必要がありますよね?」
「当然だ。生身で戦えるほど、あれは容易い相手ではなかろう」
「そうですね。じゃあその武具は今どうなってますか?」
「それなら厳重に封をして、貨物室に……あ」
どうやらアルベルトも内心では焦っていたようで、俺の言葉に呆けたような顔を見せた。
彼らが使う武具は貨物室にあるのだが、限られたスペースを有効活用するため、木箱への梱包は効率重視で隙間なくギッチリとしたものとなっている。
また、飛行中における破損や紛失を避けるため、これまた厳重に封が施されていた。
勿論、緊急時に備えていつでも使える程度の最低限の武器はすぐに手に出来るが、本格的な武器や防具といったものは簡単には取り出せない。
着陸した上で落ち着いて封を解くならいざ知らず、飛行中の狭い貨物室で木箱を開けるのは流石に難しい。
「まずは飛空艇を安全に降ろしてから、武具を整えた上で支援に向かわれるのが最善でしょう」
「そうではあるが、助けるべき相手が戦っているというのに、見ているだけというのはどうにも…」
「お二人さん、話してるところに悪いけど、向こうが引いてってるよ」
パーラに言われて、視線を巨人との戦いへと向けてみると、巨人を襲う攻撃は未だ続いているのに、奇妙なことに混成部隊の方では後方の人間から徐々に後退し始めていた。
鞭の一撃によって痛めつけられた巨人は、もう既にされるがままといった様子で、立ち上がろうとする気配も見えない。
だが鞭による攻撃の手は未だ緩められていない様子から、あれだけやられても巨人は健在なのだと分かる。
「なんだ?なぜ後退する?」
「攻撃はまだ続いてますね。もうじき日が暮れますが、それでですかね?」
「確かに夜間の戦闘は困難の極みではあるが、巨人を倒しきれていない状態で後退などするだろうか?」
夜間でも月や星の光である程度見えはするが、大規模な戦闘をするには敵味方共に危険なのはどこの世界でも同じだ。
魔術や身体強化などでもある程度克服は出来るが、避けるに越したことは無い。
あの巨人が暗闇でどれだけ動けるかは分からないが、今後退したら暗闇の中で追撃されるのではないだろうか。
そんなことを考えている間に、もうほとんどの人間は巨人の下から離れており、残っているのはグロウズ(と思われる人影)とその周囲の何人かだけだ。
だが何かの合図があったのか、嵐のように繰り出されていた鞭が突然ピタリと収まり、残っていた人間も後退を始める。
巨人の方は、遠ざかっていく集団へ顔だけを起こして向けるが、攻撃することはなく、ただ見送るだけだ。
パッと見た限りでは体にはさほど目立つ傷などもなく、そのまま巨人が追撃を加えるかと思ったのだがそれもしないとは、もしかしたら見た目よりもダメージは深刻なのかと思わされる。
「…もう日が落ちてるね。アンディ、どうする?」
パーラに言われ、改めて空を見れば、確かにもう暗い色に変わっていた。
『冬の夜は駆け足』とはよく言ったものだ。
このまま空に留まるわけにもいかず、かといって巨人の的になるかもしれないあの集団に近付くべきなのか悩むところだ。
「俺達は援軍としてきたからな。あの部隊と合流して、ここらを仕切ってるお偉いさんに繋ぎをとってもらうのがいいとは思うが…ミルリッグ卿はどう考えますか?」
この先遣隊の指揮官はアルベルトなので、どうするかを決めるのは彼の仕事だ。
俺がこうしたらいいと提案は出来るが、それを採用するかはアルベルトの判断による。
「うむ、私もそうした方がいいと思う。アシャドル王国に請われて来たのだ。到着の挨拶はせねばな。それに、まずは現地での情報も欲しい」
「ではそのように。パーラ、さっきの連中がどの方角に向かうか見定めてくれ。確認したら、そっちの方に飛空艇を飛ばせ」
「あの人達の近くに飛空艇で降りたらよくない?そんで指揮官あたりに聞けば手っ取り早いよ?」
「まぁそれもいいが、連中がいる場所はあの巨人にまだ近い。なんかあったら、巻き込まれるかもしれないだろ」
「それもそっか」
自分達から危険を遠ざけるために、あそこにいる連中を囮にするかのようではあるが、それに対してパーラもアルベルトも特に嫌悪感を示すことは無い。
俺達は今、二百人の命を預かっている。
面識のない大勢と比較したら、どちらの安全を優先するかは考えるまでもない。
勿論、いざとなればただ見捨てるつもりもなく、出来得る限りのことはするつもりだが、今がその時でない以上、選択肢を多くするためにこういうスタンスをとることが大事だ。
ただ、俺達が危惧す巨人の追撃だが、俺の勘では恐らくは今日はもうないとみている。
何故なら、陽が落ちてから巨人はその動きを完全に止め、ここへ来た時に見たのと同じような大の字で寝そべる姿を晒していたからだ。
遠ざかっていく敵を見ていた顔も、枕に埋めるようにして倒されており、まるで今日はもう寝るのだという意思を派手に示しているようにすら思える。
これもまた勘だが、さっきまで巨人と戦っていた連中も、陽が落ちるのと合わせてその場を離れたのではないだろうか。
俺達が来るよりも前から巨人と戦っていたであろう彼らには、陽が落ちてから、つまり夜に巨人は活動をしないという確信があったからこそ、グロウズを殿にしてああもあっさりと後退したのかもしれない。
グロウズの攻撃でも倒しきれないが、足止めは出来ているのは、夜になると巨人が動きを止めていたからと思えてきている。
よくよく考えれば、あの巨人は光の精霊が封印されているのだから、太陽をエネルギー源として活動するのは十分にあり得る話だ。
太陽光発電で動く巨人とでも言おうか。
このあたり、先に巨人と交戦して情報を蓄積しているここらの人間から色々聞いてみたい。
撤退していく部隊の行く先を、暗い中で何とか突き止め、飛空艇をそこへと向けて移動させる。
恐らく彼らが向かう先には、巨人と戦う人間が拠点としている場所があるはず。
案の定、移動する先へ回り込んでみれば、丘を盾にして巨人から隠れるような場所にちょっとした集落のようなものがあった。
以前、よく俺達が足を運んでいたあの麓に出来た集落とは違うようだが、こちらはこちらで巨人に対抗する前線基地として、かなりの規模を誇っているようだ。
周囲を囲む壁などは流石に急造感は否めないが、数多くのテントが犇めくようにして建ち、多くの人間が動き回っている様子は、前線基地として活気があるといっていい。
そんな人間の中に、上空で滞空する飛空艇に気付いた人間が出始め、上空を指さしながら騒ぎだした。
「ん~、めっかっちった」
「そらそうだろ」
デカい飛行物体が自分達の頭の上に来たのだ。
それなりに暗くとも、見上げれば誰だって気付く。
「なんか言ってるみたいだね。このまま着陸しちゃう?」
「いや、俺が単独で降りて話を聞いてこよう。着陸するにしても、どこに降りるか指示してもらわないとな」
生憎声までは聞こえないが、かなりの剣幕で身振り手振りから何かを伝えようとしているようなので、こちらから出向いて話を聞くとしよう。
飛空艇が下りるのにちょうどいい広さの空き地も見当たらないし、向こうの都合のいい場所を紹介してもらいたい。
噴射装置を身に着け、乗客に見守られながら貨物室へ向かうと、ハッチを解放して外へ飛び出す。
元々高度もそれほどではなかったこともあって、二度ほど装置を吹かして着陸すると、飛空艇を指して騒いでいた男のちょうど目の前でかち合うこととなった。
「うぉ!?何も…あれ?あんたアンディか?」
降ってきたのが俺だと分かると、警戒していた表情が緩む。
俺は見覚えはないが、向こうは俺のことを知っていたようだ。
「ええ、まぁ確かに俺はアンディです。俺を知っているってことは、あの飛空艇のことも知ってますね。ソーマルガ皇国からの援軍を運んできました。ここの責任者の方にお会いしたいのですが」
「おぉ!そうか!やっと来てくれたのか!ちょっと待ってくれ、今―」
「何事ですか!あの飛空艇はどこの…―アンディさん?」
「あ、セインさん」
目の前の男に取次ぎを頼もうとしたところ、割り込んできたのはなんとセインだった。
向こうも飛空艇のことを聞いて駆けつけてきたようで、俺の姿を見て一瞬呆けた顔を見せる。
まさかこんなところでセインに遭遇するとは。
彼女の仕事を考えると、イアソー山麓の出張所で采配を振るっていると思っていたのだがな。
セインは根っからの文官肌であるため、巨人と戦う最前線には出てこないと持っていただけに、意外なところでの再会だ。
とはいえ、恐らくここの責任者はセインだと思われるため、彼女とこのタイミングで顔を合わせたのはありがたい。
丁度いいので飛空艇の停泊場所と、アルベルト達の身の振り方をまずは相談するとしよう。
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