世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実

文字の大きさ
上 下
77 / 449

奴はずるいものを持っていた

しおりを挟む


 ハンドルを握るマサトシがため息をつきながら、「水曜日が定休日だってことぐらい、ちゃんと調べといてくれよな」と言うと、助手席のキョウコは前を向いたまま「はいはい、すみませんでした」といかにもふてくされた口調で返してきた。
「何だよ、その言い方。自分がチェックを怠っておいて、逆ギレかよ」
「行くことが決まったのって、出発する直前だったよね。マサトシも、おう行こう行こうって賛成したよね。だから私はてっきり、今日は営業してるってマサトシは知ってるんだって思ったのよっ」
「何年も前に一度行ったことがあるだけの洋食屋の定休日なんか知るわけないだろう。スマホでちょっと調べりゃ済んだことだろうに」
「それはマサトシもね」キョウコは相変わらずこちらを見ることなく、前を向いたまま続けた。「二人で行こうってことになったんだから、定休日のチェックを怠ったことについては、お互い様でしょ」
「へいへい、左様ですね、悪うござんした」

 マサトシは医療機器メーカーで営業の仕事をしており、キョウコは生命保険の外交員をしている。子どもはもう少しおカネを貯めてから、という合意のもと、共働き生活が続いている。
 普段は互いの休日が合わないことが多く、また帰宅時間もバラバラなため、今ではすれ違いの生活が常態化していた。また、互いに仕事のストレスが蓄積して、最近はしなくてもいい八つ当たり的な口論が増えていた。
 これではよくない、ということで昨夜二人で話し合い、翌日にどちらも有給休暇を取ってどこかに出かけようということになった。そして今朝、会社に電話をかけて休暇取得の了解が取れたところでキョウコが「ねえ、あそこに行かない? ほら、前に行ったことがある老舗の洋食屋さん。あそこのプレーンオムレツ、すっごく美味しかったのよね」と提案し、マサトシも賛成したのだった。自宅の賃貸マンションからだと四十キロほど離れた場所にあることも、ちょうどドライブも兼ねることができていいと思った。

 洋食店に到着するまでは、久しぶりに会話が弾んだ。マサトシは以前行ったときはオムライスを頼んだのだが、チキンライスの上に乗った卵はまさにふわふわとろとろで、卵もバターも、ものが違うことは明らかだった。あのとき、テーブルの向かいにいたキョウコはプレーンオムレツとミニパスタを食べていたのだが、それも旨そうで、次に来たときはそっちを頼もうと思ったものである。
 そう、あのときは数週間後にでも再訪するつもりだったのだ。ところが休日が食い違うことが多くなり、そのうちに、と思っていたら五年近くが経ってしまっていたのだ。
 マサトシはさきほど見た、シャッターが下りて〔定休日〕のプレートがかけられていた老舗洋食店を思い出し、小さく舌打ちした。せっかくの休日なのに。
 ノープランの状態で、来た道を戻っているところだった。この後、どうするか……。
 キョウコはスマホを出していじり始めた。その態度はあからさまに、話しかけてくるな、と言わんばかりだった。
 新婚当初は、こんなに悪い空気になったりはしなかった。どちらもトゲのあるもの言いをしないよう気をつけていたし、口論になったときも互いに謝ってすぐに仲直りができた。いつからこんな感じになってしまったのだろうか。
 キョウコがあの老舗洋食店に行こうと提案したのは、今よりもずっと仲がよかったあの頃の思い出の場所だったからなのかも。そのことに思い至ったマサトシは、なのにさっきのようなきつい言い方をしてしまったことを後悔した。
 早めに仲直りをするきっかけを作らないと……。

 突然、キョウコが「あっ」と言ったので「どうした?」と尋ねた。
「右の方に山が見えるでしょ。その山道を上がっていったら、だし巻き卵専門の人気料理店があるみたい」
「何ていう店?」
「だし巻き本舗だって」キョウコはスマホ画面を見ながら言った。「えーと、ここからだと七キロぐらい。お店の外観の写真もあるけど、古民家風の感じ」
「定休日は?」
「木曜日。つまり、今日は営業してるってこと」
「だし巻き卵専門って、どういうことよ」
「メニューがだし巻き卵定食しかないんだって。ご飯に豚汁と野菜のおひたしがついてて、メインは、結構な大きさのだし巻き卵。今、そのだし巻き卵定食の写真を見てるんだけど、お寿司とかを載せる板みたいなの、何て言うんだっけ?」
「寿司げた?」
「あ、そうそう。その寿司げたの上にだし巻き卵がでんと載ってる。お客さんのコメントを見る限り、ハズレじゃなさそうだよ。ふわふわで口の中でほろりと崩れて、だしがじゅわっと出てきて、一般家庭ではまず作れない柔らかさだってさ。だし汁も作り方も秘伝とされてて、近郊でたっぷり運動させて育ててる地鶏の卵を使ってるって」
 聞いただけでつばが湧いてきた。
 マサトシは「よし、じゃあそこに行こう」とうなずきながら、これで険悪な雰囲気も解消できそうだなと、ほっと胸をなで下ろした。

 だし巻き卵本舗を後にして山道を下りながら、マサトシは余計なことは言わないでおくことにした。どんな言葉も今はさらなる負のループを招く。キョウコも同じ感覚らしく、車を発進させたときに「残念だったね。仕方ないよ、こればっかりは」と言っただけで、怒りよりもなぐさめるような言葉を口にした。
 今日は確かに営業していた。だが、マサトシたちが到着したときには、既に売り切れによる閉店作業中だった。
 ――すみません。平日にしては今日は早い時間からお客さんが多くて。
 頭に手ぬぐいを巻いた調理服姿の店主らしきおじさんと、女将さんらしき女性はそんな言葉と共に丁寧に謝っていた。直後にキョウコがスマホで確認したところ、売り切れたら店じまい、というのがこの店のルールだということが判った。
 最初からここに来ていれば食べられた。
 だが、それを口にしたところで仕方がない。最初はあの老舗洋食店に行くことが決まっていたのだから。
 運転しながら「また行けばいい。早い時間に行けば大丈夫」と言うと、キョウコは感情がこもらない声で「うん」と答えた。その後、マサトシが「なんとなく卵料理という前提でここまで来たけど、こだわらないでどこか目についた店に入ってもいいんじゃないか?」と言ってみると、キョウコは「そうだね」と同意した。だがその言い方には、怒りを静めようと我慢している雰囲気が感じられた。
「何ならコンビニのおでんコーナーで味卵を多めに買って帰るか?」とも提案してみたが、キョウコは「それはいつでも食べられるでしょ」とけだるそうに言った。
「じゃあどうしようか?」と聞くと、しばらく無言の間があってから、「ふわふわ卵の親子丼はどうかな。駅前の」と言った。
「それは半年前に行ったんじゃなかった?」
「じゃあいいよ、別に」
 キョウコは明らかにキレかけていた。マサトシは、余計なことを言ってしまったことに気づいて、心の中で舌打ちした。

 山道を下りる途中で、山菜料理店の小さな案内看板を見つけた。停止して確かめると、少し先の分かれ道を右折してしばらく進むだけ。ヤマメの塩焼きと山菜おこわの定食を出してくれるらしい。キョウコもそれでいいと言ったので、マサトシはハンドルを切って右の山道を進んだ。
 結果、道に迷った。進んでも進んでもそれらしい店はなく、左は川が流れる谷、右は木々が茂る斜面が延々と続いた。キョウコがスマホを取り出して調べ、怒りを殺した機械的な声で「その店、だいぶ前になくなっちゃってるみたいよ」と教えてくれた。
 来た道を引き返そうにも車を切り返すようなスペースが見つからず、このまま進むしかなかった。カーナビがないので、キョウコにスマホで道を調べてもらったところ、もう少しで国道に出られることが判った。
 と、そんなときに、傾斜が緩くなった道沿いに古い民家が一軒だけ、ぽつんとあった。
「あそこでトイレ借りたい」とキョウコがぶっきらぼうに言った。

 八十前後と思われるおばあさんが一人で暮らしている家だった。快くトイレを貸してくれ、マサトシたちが礼の言葉と共に頭を下げると、おばあさんは「せっかくのご縁だし、よかったらちょっと休憩していかんかね」と愛想よく言ってくれ、それに甘える形で、テレビや座卓がある和室でお茶を飲ませてもらった。
 そんなときにマサトシのおなかがぐーっと鳴り、おばあさんから「あら、おなかがすいとるんかね。うちにあるもんでよかったら食べていかんかね」と言われた。
 マサトシは「いえいえ、とんでもない」と手を振ったが、キョウコが「せっかくだからいただいちゃおうよ」と妙な笑顔で言い、おばあさんも「そうそう、年寄りの申し出を遠慮するもんやないよ」とたたみかけられた。キョウコはどうやら、半ばやけっぱち状態で、居直って流れに身を任せることにしたようだった。
 おばあさんから「じゃあ、ちょっとついて来てくれるかね」と言われ、三人で家の裏に回った。そこには畑だけでなく、納屋を改造して作ったらしい鶏小屋もあって、数羽の赤鳥がコッコッコッと小さく鳴きながらエサをついばんでいた。
 おばあさんから「卵、自分で取ってみるかね?」と笑って言われた。
 キョウコは「えーっ、怖いよ」と言うので、マサトシが鶏小屋に入って卵を探した。敷かれたわらやもみの上のあちこちに卵が産み落とされていて、探すのに苦労はしなかった。おばあさんは、好きなだけ取っていいと言ってくれたが、四個を手にして鶏小屋を出た。
 産みたての卵を目にした瞬間から、マサトシは決めていた。これは卵かけご飯だと。キョウコも「私も卵かけご飯がいい」と言い、おばあさんは「そんなもんでええのかね」と苦笑しながら、ご飯と、自家製だというキュウリの浅漬けを出してくれた。

 座卓に着いて二人して「いただきます」と手を合わせると、おばあさんが「卵かけご飯やったら、しょうゆをご飯にかけて混ぜてから卵を割り入れるとええよ」と言った。おばあさん自身がいろいろ試した結果だという。
 言われたとおり、しょうゆ飯を作ってから、卵を割り入れた。
 キョウコが「わあ、宝石みたい」と目を丸くした。確かにその生卵は、黄身がぷっくりと膨らんでいて、つやつやしていて、その周りを取り囲む透明な白身も立体感があって、その辺のただの生卵ではないことは明らかだった。
 箸を伸ばして黄身を潰そうとしたが、その前にあれをやってみたくなった。
 箸で黄身をそっとつまんで、ゆっくりと持ち上げると、黄身は潰れることなく浮いた。箸を通じて黄身の弾力が手に伝わった。
 それを見たキョウコが「わっ、すごい」と目を丸くし、それから「あーっ、私もそれやりたかったー」と悔しそうに言った。彼女は早々に端の先で黄身を潰してしまっていた。
 黄身をそっとしょうゆ飯の上に戻し、ごくんとつばを飲み込みながらかき混ぜた。卵の黄身としょうゆが混ざり合った、いい匂いが鼻腔に届いた。

 そして、できあがった卵かけご飯を口にかき込んだ。
 おおーっ。卵かけご飯って、こんなに旨かったのか。
 熱々すぎでないご飯のお陰で、新鮮な卵の味がよく判る。しょうゆを後でかけると、しょうゆの味しかしない部分があったりして味にむらができてしまうが、先にしょうゆ飯を作っておくと、確かにずっと卵の風味を損なうことなく食べることができる。キュウリのぬか漬けの味と食感がこれまた、卵かけご飯と相性のいいこと。
 キョウコが天井に向かって「あー、幸せ」とつぶやいた。
 あれほど不機嫌で、いつキレるか判らない状態だったキョウコの、この緩んだ表情。
 このおばあさんは魔法使いなのか。半ば本気でそんなことを思った。
 今日、洋食店やだし巻き卵の店が空振りに終わったのは、実はここに至るためのお膳立てだったのではないか――マサトシはそんなことを半ば本気で思いながら、漬物をポリポリと咀嚼し、さらに卵かけご飯をかき込んだ。
 あー、空腹だったせいで旨さ倍増。
 そして、さっきまで沸点に近づいていたイライラ感が、きれいに消えた。
 マサトシが「ふう」と息をついて茶碗を座卓の上に戻すと、おばあさんがすかさず「はい」と笑って手を差し出した。「お代わり、するんでしょ」
「あ、すみません、お願いします」
 マサトシは苦笑しつつ、茶碗をおばあさんに渡した。
 キョウコと目が合い、自然と笑ってうなずき合った。
 帰りの車中、キョウコが興奮してしゃべりまくる様子が浮かんだ。

しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ

壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。 幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。 「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」 泣きじゃくる彼女に、彼は言った。 「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」 「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」 そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。 ※2019年10月、完結しました。 ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。

オカン公爵令嬢はオヤジを探す

清水柚木
ファンタジー
 フォルトゥーナ王国の唯一の後継者、アダルベルト・フォルトゥーナ・ミケーレは落馬して、前世の記憶を取り戻した。  ハイスペックな王太子として転生し、喜んだのも束の間、転生した世界が乙女ゲームの「愛する貴方と見る黄昏」だと気付く。  そして自身が攻略対象である王子だったと言うことも。    ヒロインとの恋愛なんて冗談じゃない!、とゲームシナリオから抜け出そうとしたところ、前世の母であるオカンと再会。  オカンに振り回されながら、シナリオから抜け出そうと頑張るアダルベルト王子。  オカンにこき使われながら、オヤジ探しを頑張るアダルベルト王子。  あげく魔王までもが復活すると言う。  そんな彼に幸せは訪れるのか?   これは最初から最後まで、オカンに振り回される可哀想なイケメン王子の物語。 ※ 「第15回ファンタジー小説大賞」用に過去に書いたものを修正しながらあげていきます。その為、今月中には完結します。 ※ 追記 今月中に完結しようと思いましたが、修正が追いつかないので、来月初めに完結になると思います。申し訳ありませんが、もう少しお付き合い頂けるとありがたいです。 ※追記 続編を11月から始める予定です。まずは手始めに番外編を書いてみました。よろしくお願いします。

偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。 隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

処理中です...