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ちわーっす、米屋でーす

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恐らくこの世界初であろう米の栽培に成功し、収穫までこぎつけたことで早速村人たちとその恵みを分かち合う。
夕食時に広場に集まり、米料理が並べられたテーブルに村人が着き始める。
聞こえてくる声はどれも楽し気なものばかりで、久しぶりに食す米料理に期待は膨らみ続けているようだ。
俺もパーラと一緒に席に着き、出来上がってくる料理を今か今かと待っていた。

村の女性たちの手によって作られた料理が運ばれてくると、誰ともなく歓声が上がり、皿目掛けて次々と手が伸ばされていく。
チャーハンにおにぎりから始まり、俺の拙い言葉から想像して作ったと思われる米粉パンらしきものも並んでいた。
だがそれ以上に俺を感動させたのは、棒状に成形された米が火で炙られたきりたんぽのようなものがあったことだ。
全くノーヒントから米料理の代表格であるきりたんぽに辿り着いた村人たちの研鑽に胸が熱くなる。

ここまで米料理が揃うと、醤油の存在が恋しくなってしまう。
焼きおにぎりを作るのに醤油は欠かせないし、調味料としては味・香りともに至高の評価を与えてもいいぐらいだ。
旅を続けていればいつか見つかると思っていたのだが、未だに出会うことが無いため、いっそのこと自分で作ってしまおうかとすら思い始めている。
とはいえ作り方などぼんやりとしか知らないため、完全に手探り状態からのスタートになる。
まあこれはその内やることとして頭の隅に置いておくとしよう。

収穫を祝い、再び味わった米に感動し通しだった食事会は、結局宴会へと様変わりしていった。
何人か俺を目で追う村人がいたが、流石に俺も学習したので、新しい料理を披露しようという気にはならない。
一向に調理場に行こうとしない俺に残念そうな雰囲気を出す者もいたが、毎回俺が新作を作るとは思わないことだ。



次の日になるとバイクに繋いだリヤカーに米の入った袋を3つほど積み、王都を目指して旅立つ。
俺としてはこんなに大量にはいらないと言ったのだが、村長をはじめとした村人たちにとっては新しい税の口となり得るので、不足があってはいけないということで説得されてしまった。
まああって困ることは無いのでありがたく受け取って村を後にした。

既に何度か往復したことがある道は珍しいことがあるわけでもないので、サクサクと進んでいく。
「別に速度は出さなくていいぞ。急ぎの旅でもないからな。それよりもすれ違う馬車とかがあったら気を付けろ。なるべく大きく距離を開けてやれ。向こうがバイクを不審がれば不意の行動もあり得るし、何よりも馬が驚くかもしれないしな」
「わかった」
バイクを運転するパーラにアドバイスを送りながら、久しぶりに運転に集中することなく景色を眺めるのを楽しめている。

王都までの道のりで、パーラに経験を積ませるためにバイクの運転を任せて、俺は後ろで牽かれているリヤカーの荷台に座っていた。
本当はパーラのすぐ後ろのシートに着くのだが、今回は荷物が重要であるため、万が一にも荷物が落ちないように見張りとしての役割も負っていた。

こうして見てもパーラの運転は問題なく、安心して任せることが出来る。
途中ですれ違う馬車もアドバイス通りに距離を開けてすれ違うし、前方を走る馬車を追い越すのも驚かさないように大きく外を回りこむようにしていた。
バイクを見ても驚かない人がいるのは、恐らく街道を高速で走る馬なしの乗り物という噂でも広まっているからだろうか。
まあそれでも普通に驚いて声をあげる人はいるので、あくまでも人伝に広まっている噂程度の認識しかされていないのではないか。


道中に大きな問題も無く王都へ無事到着し、伝家の宝刀、エイントリア伯爵お墨付きのメダルを見せて門を優先的に通過する。
エイントリア伯爵邸へと向かい、すっかり顔見知りとなっていた門番に面会の申請をお願いする。
相手は貴族である上に王国内でも政治の中枢に食い込んでいる人物であるため、行ってすぐに会えるというわけではない。
こちらから面会を望む場合は、正規の手続きを踏んで向こうの予定にこちらが合わせる形で日を改めて訪ねるのが普通で、これが貴族と平民のあるべき姿なのだ。

俺は面会の申請だけして、予定を決めてもらってからまた別の日に来るつもりだったのだが、何故かその場に留め置かれ、屋敷に走っていった門番の一人がセレンを連れて戻ってきた時には全てを察してしまった。
大方セレンが俺、というよりもパーラが訪ねてきたらすぐに自分に知らせるようにとでも言い含めておいたのだろう。
俺達の方へと歩いてくるセレンの顔はそれはもう満面の笑みで、視線は完全にパーラにロックオンされていた。

「いらっしゃいパーラちゃん。あとアンディも」
「俺はおまけですか。いいですけどね」
笑顔でパーラと抱擁を交わすセレンがチラリと俺を見るだけというこの扱いの差に思う所はあるが、まあセレンとパーラの仲の良さを知っている身としてはいまさらといった感じではある。

「お久しぶりです、セレン様」
「あら!まあまあまあまあ!パーラちゃん、あなた声が出せるようになったの?」
「はい、アンディのおかげで」
「あぁっ、なんてことなの。こんなにいい報告は久しぶりだわ。本当に…よかったわね」
腕の中にいたパーラから発せられた声に気付き、驚きの感情をあらわにして、より力強い抱擁をした。

「盛り上がってるところ悪いんですが、ルドラマ様は今こちらに?」
俺の声で渋々といった様子で抱擁を解き、向き直ったセレンからルドラマへの取次ぎを頼みたい旨を匂わせる。
「ええ、いるわよ。夫に用があるの?なら案内させるから執務室へ行ってごらんなさい。パーラちゃんは私が預かるからゆっくりお話しなさい」
そう言って玄関に一緒に向かい、使用人に先導してもらって俺は執務室へ向かう。
パーラはセレンが連れて行くことになり、しばしのお別れだ。

「久しぶりだなアンディ。前に屋敷に来た時は少々立て込んでいたせいで顔を合わせる事も出来なかったな」
「ええまあ、そうですね」
執務室ではルドラマが何やら書類仕事をしている最中だったようで、一段落するまでソファーでお茶を啜って待つことになった。

「待たせたな。最近新しく見つかった遺跡のせいでやることが多すぎて困る」
疲労が滲んだ口調には、どこか忌々し気な気配も混じっており、それは恐らく余計な仕事を増やしてくれた遺跡の発見者に対するものだろう。
「…へぇーそうだったんですかー大変ですねー」
対面のソファーに腰かけながら忙しさに対するルドラマの愚痴を聞く。
あの遺跡の発見者に俺が含まれていることは知られていないようで、もしここで俺がそうだとバレると愚痴を吐き出す対象とされかねないので黙っておこう。

「それで、今日はどんな用だ?」
「実は今俺はべスネー村と言うところを拠点にしてるんですけど、今日は新しい特産物を代替税に認めてもらうためにルドラマ様に御助力を頂ければと。ちなみに、べスネー村はご存知ですか?」
「いや、聞いたことは無いな。だが代替税にはわしはあまり関わっておらんから力にはなれんぞ。そもそも税に関することはわしではなく、もっと上の立場か専用の部署が決めることだ。あまり期待はして欲しくないな」
この答えには十分予想できていたので落ち込むことは無い。

「ええ。ですのでどなたか他の方を紹介していただければ俺が直接説明をします」
「簡単に言うな。税関連で伝手など…いや、一人いたか。だがあ奴は今…ふーむ…」
なにやら思考の海に沈んだルドラマの考えがまとまるのをしばし待つ。

室内にルドラマの唸る声と俺がお茶を啜る音だけが響く時間が暫く過ぎ、うつむき加減だったルドラマの顔が上げられた同時に口を開いた。
「わしの知り合いにパーバスという男がいるんだが、こいつは税務に関してはかなりの権限を持つ地位に食い込んでいたはずだ。だが、今は家庭に問題を抱えたせいで職務を休止していてな。普段の奴なら簡単に税のことで折れることは無いが、悩みを解決してやるともしかすればお前の話も通しやすいかもしれん。望むなら紹介するが、どうする?」

簡単に話は進まないと思ったが、税関連となると尚更複雑な権力が絡んでいるようで、ルドラマでもおいそれと手を出すことが出来ないと思われる。
税のことなら専門家に任せるのが一番いいのは理解できるのだが、どうもそのパーバスとやらが抱えている問題を解決しないと次のステップへと進めないと感じ、かといって他に頼る伝手も持たない俺としてはルドラマの提案に乗るしかないだろう。

「…わかりました。では紹介をお願いできますか?」
「うむ。相手からの返事を待つことになるから暫くはここに留まるといい。セレンもパーラと一緒に居たいというだろうしな」
「はい、お世話になります。…それで、宿代というわけではありませんが、今回代替税の見本として用意して来た物で一つ料理を作りたいと思いますが、いかがでしょうか?」
べスネー村の皆から託された米を無駄に使うことは出来ないが、今回俺達のために便宜を図ってもらうルドラマには、米を振る舞うのは礼儀として当然だと思う。
実際に試食をした方がパーバスへの口添えもよくなりそうだしな。
「ほう、それは興味があるな。よし、厨房へ案内させよう」

使用人に案内されて厨房へ行くと、そこは流石伯爵の料理を作るだけあって、かなり立派なもので、衛生的にもかなり気を使っているように感じる。
おまけに料理に毒を盛られるのを警戒するためか、部屋の隅には兵士が2人、椅子に腰かけて厨房全体を見張っているのもあって、妙な緊張感を覚えた。

「料理長、アンディ様をお連れしました。これから厨房をお使いになるそうです」
使用人の女性が厨房の中へと声を掛けると、怒鳴るわけではないのに妙に通る声が返ってくる。
「おう、話は聞いてるぜ。珍しい料理を作るって聞いたが、見学させてもらっても構わねーか?」
厨房には数人の料理人と、それらを束ねる立場にいる恰幅のいい男がいて、俺の姿を見ると声をかけてきた。
恐らく人伝に俺が料理することを聞いて、料理人としての興味から見学を申し出たようだ。

この料理長、実は以前ルドラマに同行して王都へと向かった時の人員の中にいた人で、その際に俺が柔らかいパンの作り方などを聞いたりしたところ、元々の気さくな性格も相まって旅の間にすっかりと打ち解けていた。
なので今こうして新しい料理を子供である俺から教えられるというのも、彼のプライドを傷付けることは無いはずだ。

「もちろん構いませんよ。といっても別段珍しい調理法というわけではないので、あまり楽しめないと思いますけど」
「いいんだよ。これでも料理人やって随分歳もとったが、新しい食材に出会うのにはまだまだ胸が躍るもんさ。後ろのこいつらも一緒に勉強させてもらうぜ」
職人気質というのはこういう時にはわかりやすいもので、実力を示せば子供であろうとも認められるし、初見のものにはとことん興味を抱く。

早速調理台の上に並べられた食材と対面する。
バイクの荷台から持ってきてもらった米袋と、卵に鶏肉に野菜といったものが並べられているが、やはり伯爵という地位にいる人間の料理を作る場所だけあって品質も実にいいものばかりだ。

まずは米を炊く作業から始めよう。
時間がないので、今回は鍋に米と水を入れて一気に沸騰させ、その後火が消えるまで放置する。
ずぼらな炊き方ではあるが、このやり方でも普通に米は炊き上がるので時間がない人にはお勧めだ。
ただ、やはりちゃんとした手順で炊いた方が味はいいので、できればしっかりと作ってほしい。

米が出来上がるまでの間に卵を器に割りいれ、よくかき混ぜる。
「アンディ、その棒みたいなのは何だ?2本も使ってるが」
卵をかき混ぜている手元を覗き込んだ料理長から質問がされる。
「これは箸というものです。こうやってかき混ぜるのはもちろん、食材を掴んだりできるので便利なんですよ」
そう言って小玉ねぎを何個か箸で摘んで皿の上へ並べていくと、周囲の人間が感嘆の声を上げる。

「はぁー器用なもんだな。俺には出来そうにないわ」
その場の意見を代表してそういう料理長の言葉に周りの見学者たちも同意の頷きをしていた。
まあこの箸も俺が使うためだけに密かに作った物だから普及はあまり期待していない。

野菜の中からトマトを選び、それを細かくしていき、塩とハーブで味付けをした即席のトマトケチャップを作成する。
2つのフライパンに油を馴染ませ、温めている間に玉ねぎと鶏肉を刻む。
もうこの時点で分かったと思うが、俺が作ろうとしているのはオムライスだ。
チャーハンと並んで米を使った料理としては誰もが知っている物であるため、それだけに万人受けを狙うのならこれしかないという気になる。

米が炊きあがったのを確認したところで、フライパンの一つで玉ねぎを炒め、透き通った所で鶏肉とケチャップを投入してよく火を通す。
このお手製ケチャップは酸味はあまりきつく無いが、それでも熱を通すことで酸味はさらに和らぐので、この後の工程では必要な処理だ。
ここにご飯を入れてチキンライスを作ると皿に盛る。

もう一方のフライパンが温まったのを確認したら、一旦火から降ろして濡らしておいた布巾にフライパンの底を当てて少し冷ます。
こうするとフライパンの熱が多少収まるため、卵が焦げすぎずに綺麗に焼けるのだ。
そこへ先にといておいた卵を流しいれる。
ジュッという音と共に、卵が固まり始めるのと同時に、箸でかき混ぜながらフライパンも小刻みに揺らすことで卵に均一に火を通していく。

フライパンの余熱で固まった卵の膜で半熟の部分を内側に包むようにして形を整えてオムレツを作り、チキンライスの上に乗せる。
プロの料理人ではない俺の腕では少し形が悪いのと、焦げ目がちらほらと見えるのが残念だが、味は問題ないだろう。
乗せられたオムレツの中央線に沿って縦にナイフで切れ目を入れると、その切れ目から溢れるようにして半熟の卵が流れ出し、下のチキンライスに纏わりついて行く。
テレビで見たやり方を真似しただけだが、この世界では画期的な演出なようで、見学者の中から感嘆の声が漏れてた。

「はい完成。アンディ特製、オムライスです。おあがりよ」
『おぉ~!』
見学者たちの前にオムライスの乗った皿を置く。
これは見学だけでは流石に米の魅力は伝わらないので、試食してもらってプロの意見を聞かせてもらおうという考えからだ。
「ほう、卵の黄色が赤い色に映えて色合いがいいな。では早速……ムムッ!」
スプーンで一掬いして口に運んだ料理長の一挙手を見ていた者達は、突然動きを止めた料理長に不安げな顔になるが、次の瞬間にはその心配も失せる。

「…んんまい!トロトロの卵がトマトの味と溶け合って見事な調和が口の中に広がる。しかもこの、米というやつが実にいい味をしている。噛むほどに甘味が出てくるくせに、色んな味と喧嘩しないのが素晴らしい」
料理長の言葉を受けて生唾を呑む音がそこかしこから聞こえてくると、それが耳に届いたのか料理長が皿の前から脇にどいた瞬間、我先にと群がるようにしてオムライスに無数のスプーンが突き刺さっていく。

「こりゃあすげー!」
「なんだよこれ!こんな料理があるのか!」
「麦とはまた違った食べ応えだ。うん、いいじゃないか」

口々に称賛の声が上がるのを聞き、どうやらこの世界でも問題なくオムライスは受け入れられそうだと胸をなでおろす。
そうと分かればすぐに調理を再開する。
ルドラマやセレンに食わせるのならやはり見栄えもよいものを用意しなくてはならない。
さっきのはあくまでも試食用なので、味を優先して見た目には少し妥協した。
旨いものを食い慣れているだろう貴族に出すのなら目と舌で味わってもらわなくては。

「これからルドラマ様達の分を作るんだろ?作業は見てたから手伝おう」
未だにオムライスの談義を続ける料理人連中から離れて俺の所へ来た料理長が手伝いを申し出てくれた。
「本当ですか?助かります」
「旨いものを食わしてくれたんだ。これぐらいはするさ。俺は炒めるのを担当するから、アンディは米を頼む。正直そっちはまだ勝手がわからんからな」
流石は本職の料理人だけあって、俺のやり方を一度見ただけで完璧に覚えており、手早く調理を進めていく。
おまけに火の扱いも俺なんかよりもよっぽど慣れているので、あっという間にオムライスが出来上がる。
焦げ一つない綺麗な黄色のオムレツは、やはり年季の差もあるのだろうが、明らかに俺が作った時よりもフワフワ感が伝わってくる。

4人分のオムライスが出来た所で食堂へと運んでいく。
使用人がそれぞれ一つずつお盆に乗せて食堂へと向かう後ろに俺も着いて行く。
食堂では既に4人の人物が席について、食事が運ばれてくるのを待っていた。
その内の一人である線の細い少年が俺の姿を見て驚きに目を見開いている。
「久しぶりだな、マクシム。元気そうで何よりだ」
「アンディこそ。父上から客人が来ているって聞かされてたけど、まさか君だとはね」

最後に見たのは随分前なのだが、少し痩せたように思えるのはそれだけ忙しい日々を送っているということなのだろう。
ルドラマとマクシムの前にそれぞれお盆が運ばれ、対面に座っているセレンとパーラの前にもお盆が置かれると、その場の全員の視線が俺に集まる。
謎の注目に首を傾げると、ルドラマから呆れたような声でその理由が明かされた。

「アンディ、お前の口から料理の説明をしてくれ。新しい料理を披露するときは作った者が最初に料理についての説明をするものだ」
なるほど、言われてみれば納得の理由だな。
だがそうすると説明をするのは料理長の役目のはずだが、今この場にはいないし、そもそもの発案者が俺となっているのだから説明は俺がしなくてはならない。

そんなわけで、使われている材料から調理法までを説明し、早速食べてもらう。
この中ではパーラは俺の料理を何度か食べているため味に心配はしていないようで、笑顔でバクバクと食べ進む。

ルドラマはチキンライスの部分に注目しており、米がどういったものかが気になっているといったところで、セレンとマクシムはパーラに触発されて口に含んだところで動きが止まり、一拍置いてスプーンの動きが早くなった。
心の中でガッツポーズを取りながら食事風景を見守る。

「これ美味しいわ。トマトと卵の組み合わせは知っていたけど、こんな形で食べるのは初めてね。でも、女性には少し量が多いかしら?」
「母上は元々小食だからでしょう。僕達男性やパーラのような女性でも子供ならこれぐらいは食べますよ。ね?」
「うん、これぐらいなら余裕」
セレンとマクシムが話し、パーラが応える声音は気安いもので、どうやらマクシムとも親しくなれたようだ。
オムライスを調べているルドラマは静かなものだが、他の3人は珍しい料理に話が弾んでいる。
貴族の食事の席としては少々行儀が悪いかもしれないが、硬い席でもないのだからルドラマもうるさく言うことは無い。

やがて食べ終わったルドラマが口を開く。
「米…、こういうのもあるのか…。これなら税として麦と同列かそれ以上の価値は望めそうだな」
「麦よりも収量は期待できそうなので、税として認められれば王国の税収の向上もあるかもしれませんよ」
一応国政の重鎮であるルドラマに国益を匂わせることで米の代替税から主要税へのシフトも頭の隅に置いてもらう様に誘導する。

「アンディ、久しぶりに2人で話さないか?旅のことも聞かせてよ」
「それはいいけど…」
どうやら久しぶりの再会にマクシムはテンションが上がっているようで、ルドラマとの話が終わっていないのに割り込んできて大丈夫なのかとルドラマの方を見ると、溜息を吐きながら仕方ないといった雰囲気で頷いた。
「構わん。積もる話もあるだろうから、ここはいいから行ってこい。マクシム、あまりはしゃぎすぎるなよ」
「はい!失礼します、父上。アンディ、こっちだ」

先導する形のマクシムの後ろに続き、食堂を出る際にチラリとパーラを見ると、セレンと楽しそうに話をしている様子だった。
こうして見ると親子といっても不自然は無いような仲の良さだな。
パーラのことはセレンに任せて、俺は俺で自由に動かせてもらうとしよう。
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