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この道を行けばどうなるものか

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めっきり寒さが強まって来た朝、いつものようにギルドに顔を出すと、イムルから手招きされて窓口に行った。
このパターンにいい予感がしないのは俺だけか?

「はいこれ、アンディ君に指名依頼だって」
ギルドの窓口に着いて早々、イムルから渡された依頼書を読む。
確かに俺を指名しての依頼だ。
しかも領主直々で。

「俺はまだ黒ランクですよ。指名依頼は来ないんじゃないんですか?」
これは説明を受けたわけではないが、通例としてそうだと他の人から聞いていた。

「普通はそうだよ。でも別にギルドから禁止してるわけじゃないの。黒ランクってまだ見習いって感じを受ける人が多いから、あんまり指名する人はいないのよ。もちろんギルド側が危険と判断すれば止めるけど」
「つまり、相手の実力を知っていればランクに関係なく指名依頼を出される場合もあると?」
「そういうこと」
依頼書には王都までの護衛と子供の世話で依頼がされていた。
子供の世話は黒ランクの依頼としては割とあり得る内容だが、護衛は普通はもっと上のランクからやるものなのだ。

「あとさー、アンディ君。いい加減昇格申請出してよ」
「申請は強制ではないはずですよ」
最近イムルはことある事にこうやって昇格申請の話をしてくる。
級は依頼をこなせば上がっていくが、色ランクは試験をパスしなければ昇格できない。
各色の1級になれば申請が可能だが、試験を受けるかは個人の自由だ。
1級に上がってから即申請してもいいのだが、実力がまだ足りていないと思えばそのままのランクに留まり力を蓄える。

俺はというと単純に経験を積むためと、試験を受けるのがなんか嫌でスルーしている。
「そうだけど、最近ヘルガさんが愚痴ってたよ。アンディ君に任せたい依頼があるのにランクが足りなくて困るって。だからさー、早くランク上げようよ」
「いやいや、まだ未熟者なので。じゃあ依頼人に会いに行くので。失礼します」
これ以上の追求を恐れてサッサとギルドを後にする。
後ろからイムルの制止の声が聞こえるが聞こえないふりだ。

「待っておったぞ、アンディ」
領主の館に着いた俺は早速執務室へ通された。
ソファーに座り執事からお茶を用意してもらい、依頼の内容を聞く。
「では早速、依頼の件ですが、子供の世話というのはともかく、護衛は私の実力では不足します。指名相手の変更をどうかご再考下さい」
「それには及ばん。護衛の方はあくまでもついでだ。本当の目的はその子守の方にある」
ルドラマが執事に目で合図を送ると、執事が入り口ではない方のドアを開いていく。
開いたドアの前に立っていたのは一人の男の子だった。
俺と同じぐらいの身長だから10歳くらいか。
サラサラの金髪をおかっぱにしているが、目はルドラマと同じエメラルドグリーンをしている。
普通に血の繋がりを考えて、ルドラマの息子というところだろう。
「マクシム、こっちへ来なさい」
「はい、父上」
そう言ってルドラマのいるソファーの右手に立つマクシム。

「紹介しよう、わしの息子のマクシムだ」
マクシムが軽く礼をする。
「彼はアンディといって、次の王都への旅の間の護衛に雇った冒険者だ。なかなか頭の切れる男だ。そこを買っている」
ルドラマの評価が高すぎてつらい。
あとこれで断れなくなった。
信頼されて出した依頼を断ったらルドラマの顔に泥を塗ってしまうからな。
「お初にお目にかかります、マクシム様。私はアンディと申します。旅の間、護衛の任に就くことになります。どうぞお見知りおきを」
立ち上がって頭を下げる。
相手は子供とはいえ伯爵の嫡男だ。
失礼があっては俺の首が(物理的に)飛ぶ。

「うん、よろしく頼むよ、アンディ。けど、僕に対して敬語はいらないよ。同じ年だろうし、友達のように対等に接してほしいんだ」
その言葉を受けて、ルドラマの方を見ると頷いているので構わないということだろう。
これで失礼な言葉遣いの免罪符を手に入れた。
「わかった。そういうことなら俺も対等に行かせてもらう。マクシムって呼んでいいよな?」
「うん!もちろん!よかった、僕同い年の友達って初めてなんだ」
どうやらぼっちだったようだ。
だが俺もこの世界で初めての同年代の友達が出来た。
まあ精神年齢は30超えなんだけど。

出発は明後日の早朝に街の門前に集合ということになり、俺は準備にとりかかることにした。
宿泊場所や食事は領主側が用意するとのことなので、俺が持って行くものは特にないそうだが、一応念の為に野営の道具と何日分かの食料は持って行こうと思う。
マクシムはもっと話をしたそうだったが、俺も準備があると言って帰らせてもらった。

宿に戻り、しばらく依頼で街を離れることを女将さんに告げて、明後日以降の先払い分の宿代を払い戻してもらった。
持って行く荷物も食料と調理道具だけのちょっとしたものだ。
それほど時間もかからず準備が終わり、余った時間で情報収集に走った。
ここから王都までの地理から道中の村の名産や治安など、集め始めたらきりがなく、結局出発のギリギリまで情報を集めていた。



ガラガラと5台の馬車が王都への道を進んでいく。
石畳が敷かれたこの道はアシャドル王国初代国王が整備したもので、王都を基点に東西南北に伸びている物の一本だ。
盛んに人と物の行き来が行われる道だけに、賊の被害もそれなりにあるため、定期的に見回りがされており、治安の維持にも注力されている。
ヘスニルは元々この道の終点にあった村が発展していったもので、今の様な街の姿になったのはルドラマの曽祖父の代だったそうだ。

今俺はマクシムと同じ馬車に同乗して馬車に揺られていた。
先頭の馬車にルドラマが乗っており、その次に俺たちの乗った馬車が続き、残りの3台には使用人や護衛の人間などが乗っていた。
馬車の周りを馬に乗った騎士6名が直衛として付いている。
こんな馬車に攻撃を仕掛けてくる命知らずはいないと思うが、一応護衛として雇われている身である以上は周囲の警戒を怠るわけにはいかない。
シックな内装で本来は4人が座る席が進行方向と対面にそれぞれあり、護衛の俺は進行方向に背を向ける形で座っている。
順調に進んでいるため、対面に座るマクシムと和やかに会話を楽しむ余裕はあった。

「マクシムは今年で11歳か。その年なら王都でやることもあるじゃないか?」
貴族の嫡男ともなると子供の内から色々な方面に顔を売るためにパーティーやらお茶会やらで忙しいだろう。
「うん、だから今年こそは王都の社交場に顔を出さないといけなくてね」
話を聞くと、この旅の目的はマクシムの社交界デビューだそうだ。
こういうことは10歳になる前までには済ませておくのだが、体の弱かったマクシムはこれまで見送られていた。
だが成長していくと段々体も丈夫になってきたため、今まで見送っていた顔見せを行うことにしたらしい。

「王都まではどれくらいかかるものなんだ?」
「特に何も起きなければ9日か10日で着くって聞いたよ」
大抵こういう話をすると何かが起こって遅れるってのが定石なんだよな。
話をしていると馭者から昼休憩の声が掛かった。
道の途中に馬車を止められる広さの広場があり、そこが休憩や野営などを行う場所となっている。
俺たちはそこで昼食を摂るために準備に取り掛かった。

食事は同行している使用人が用意するので、俺はマクシムの傍で護衛っぽく佇んでいる。
流石は普段からやっているだけあって、見ている内に使用人たちの手でテキパキと作業が進んでいく。
野外とはいえ貴族の食事だ。
何が出てくるかと思っていたら、用意されたのは意外にも普通の品ばかりだった。
スープとサンドイッチという簡単なものだが、スープの具材はたっぷり入っているし、サンドイッチには野菜と分厚い肉が挟まっている。
「思ったより普通なんだな」
思わず口をついて言葉にマクシムが苦笑を浮かべて応えてくれた。
「いくら貴族でも野外で食べるものを贅沢にしては旅の邪魔になるだけだからね。うちはこれが普通だよ」
ルドラマの方を見ると俺たちのやり取りを聞いていたようで頷いていた。
俺のイメージする貴族とは大分違うな。
これがこの世界の貴族の価値観なのか、この一家が違うのかはわからないが、こちらの方が俺には好ましい。

俺の分も用意された昼食を早速いただいた。
スープは味付けが濃く、香辛料もしっかり使われているのが嬉しい。
サンドイッチはボリュームの多さと素材の良さで非常に満足できる。
なによりもいいのはパンが柔らかいのだ。
聞くと特別な竈で焼いているらしく、これを用意できるのは貴族や一部の金持ちぐらいなのだそうだ。
毎日食べたいが、一介の冒険者の身である俺では無理か。

食事が終わり、早々に片付けて出発となった。
夕方には今日の宿泊予定地の村に着くとのことなので、おとなしく馬車に揺られる。
あまりに何も無い為、暇を持て余した俺はマクシムと話が弾む。
本人の事から始まり、家族のことまで色々話してくれた。
個人情報の漏洩も甚だしい。
まあそれだけ信頼してくれているのだろうが。

夕暮れ前には今日宿泊する村に着いた。
村の名前はスーロと言い、農耕以外の産業は無く、牧歌的な雰囲気がある村だ。
20戸ほどの家々が不規則に並んでいる周りを、グルリと1メートルほどの高さの木の柵が囲っている。
柵の向こうには畑が広がっているが、収穫時期は過ぎているのか綺麗に片付いている。
俺達の今日の宿は村長の家を借りることになった。
他の家より比較的大きいとはいえ、一行全員を泊めることはできず、最低限の使用人以外は他の家に散らばって世話になる。

「村長、世話になるぞ。面倒は掛けないつもりだが、なにかあったら遠慮なく言ってくれ。一晩よろしく頼む」
目の前には70歳ほどに見える老人がルドラマの対面に立っている。
170㎝ほどの身長は歳の割に筋肉が付いており、風雨に耐えた古木の様な落ち着きが感じられる。
見た目はハ○ジのオ○ジだな。

長年農作業に従事してきた者特有の、関節が太く節くれだった手でルドラマと握手が交わされる。
「恐れ多いことです。ご自分の家と思い…とまではいかないでしょうが、どうかお寛ぎください」
礼をして俺達に部屋の割り振りを説明する。

ルドラマとマクシムが同じ部屋で、使用人は一纏めにされ、俺はというと一人個室を与えられた。
特別扱いというわけではなく、普段使っていない部屋を急遽掃除して使えるようにしたため、物がまだ入ったままの部屋はあまり広くなく、子供の身長の俺に丁度良かったからだそうだ。
ある意味特別扱いではあるか。

ともかく屋根の下で寝れるだけでも有難いのだから、部屋に文句をつけるほど器の小さいことはしない。
案内された部屋は確かに荷物があったが、3畳ほどのスペースが確保されていたので俺には十分だった。
寝具もしっかり運び込まれていて寝るのに何ら問題は無い。

その後の夕食は精一杯のもてなしをしてくれたようで、デカイ肉の塊り焼きが出された。
今日の領主の夕食に出そうと、村の狩人が獲って来たそうだ。
単純な味付けながら新鮮な肉本来の味を楽しめる食事に腹一杯になるまで食べてしまった。
食後のお茶は領主側が用意した茶葉を使い、村長とその妻も招いて食後の一杯を楽しんだ。

「村長、今年の刈り入れはどうであった?何か問題があったら遠慮無く言ってくれて構わんぞ」
お茶の合間にルドラマからふとこぼされた言葉に村長の顔が暗くなる。

ここで言う刈り入れとは麦の事を指す。
刈り取った麦の4割をルドラマに納めて、残りを村人が手にする。
こう見ると6割が手元に残るということだが、これが丸々村人の腹に入るわけではない。
当然、麦を売って生活に必要なものを揃える必要があるし、来年の種に回す分も必要だ。
そのため最終的に手元に残るのは半分ほどとなる。
ここからさらに冬の蓄えも捻出しなくてはならない。
慎重な運用が求められるのだ。

こうしてルドラマが尋ねるのも、問題があって収穫が減ることになれば、ルドラマの領地に入る税収にも関わってくるので、何かあるのならこのタイミングで聞いておきたいというのが今の気持ちだろう。

「お気遣い有難く存じます。今年はなんとか余裕をもって冬を越せます。…ですが、他の作物の方に問題がありまして―」
話を聞くと麦は問題ないのだが、家畜の餌用の豆をどうにかしなくてはならなくなったらしい。
と言っても足りないのではなく、むしろ余るのが問題らしい。
どういうわけかここ最近は麦より豆の方が大量に採れてしまい、家畜の餌以外に使う予定のない作物の処分に困ってるそうだ。
畑に植えてある分の処分に今から頭を悩ませているとのこと。

元々、昔からの知恵による連作障害対策の一環だったため、豆を全く作らない年というのが殆ど無かった。
一応人間も食べることは食べるのだが、あまり味がいいものではなく、今ではよほど食うものに困らない限り口にすることは無いそうだ。
幾らかは近隣の村々に家畜の食料として譲渡したのだが、そもそも他の村でも豆を作っているのだからあまり解決になっていない。
そのまま放置するわけにはいかず、仕方なく村の外れに掘った穴に埋めていたという。



これと似た話は俺にも前世で聞いた覚えがある。
いわゆる出荷調整というやつだ。
俺は個人で細々とやってたが、大手の農場を経営してた人なんかは採れ過ぎた野菜をそのまま機械で砕いて土中に埋めたり、畑の隅に野積みにして放置するなどの光景がよく見られた。
まさかこの世界で似たような問題に出会うとは。
元農業従事者としては解決してやりたいと思うが…。

「村長さん、その豆の植えてある場所に案内してもらえますか?」
「はあ、構いませんが、…よろしいので?」
この場で最上位者であるルドラマに確認すると頷きを返されたので畑へと案内をしてくれた。
ルドラマの目に面白いものを見つけた子供特有の気配がする。
あまり期待しないでほしいのだが。

村長を先頭に俺とルドラマとマクシム、その護衛の騎士を連れて村の外れにある畑に到着した。
4反分の畑が2面広がっているが、他に同じような規模の畑が村の反対側にあるそうだ。
植えてある物はどれも青々としていて、あと1・2カ月で収穫する予定とのこと。
村長に断りを入れて一房収穫してみた。
まだ全体が青く未成熟に見えて手応えも硬いが、皮に産毛のようなものが生えて身は膨らみがある。
いけそうだな。

「村長さん、これをいくらか収穫していいですか?」
「ええ、もちろんです。どうぞ、お好きなだけ」
許可も得たことだし、手の空いている護衛にも手伝ってもらって収穫する。
途中で興味を持ったルドラマとマクシムも作業に加わろうとしたが、それは流石に押しとどめた。
どこの世界に畑仕事をする伯爵がいるというのか。

早速収穫したものを抱えて村長の家に戻り、鍋一杯に湯を沸かしてもらう。
大き目な鍋に枝から外した豆を皮付きのまま入れて、塩を多めに投入する。
しばらく茹でて、何度か柔らかさを確認して、良きところで引き上げる。
笊に入れて、村長の奥さんに手伝ってもらい、時々上下を入れ替えるように混ぜながら扇いで冷ます。
充分冷えたらテーブルで待つルドラマたちへと持って行く。
「出来ましたよ。枝成り豆の塩ゆで、略して枝豆です」

俺が考えた豆の有効利用は収穫時期を早めて、枝豆として食っちまおうかというものだ。
豆は熟していく段階で徐々に甘みと独特の香りが薄れていく。
なのでこの村では普通に大豆として食べていたのだろうが、それはそのままではあまり旨くないのも納得だ。

枝豆にはそれに向いた種類はあるのだが、この村で作られている豆がそれかどうかはわからなかった。
そこで直接畑に出向いて確認した所、なんということでしょう。
枝豆としては最も旨い種の一つ、毛豆に酷似しているではないか。
これを成熟させたものを大豆として家畜に食わせていたとはなんと勿体ない。

早速村長が手を伸ばしジッと枝豆を凝視している。
基本的に完熟していない物を食べる習慣が無いのだろう。
疑問を隠せず、踏ん切りがつかないでいるようなので、失敬して先に一つ頂く。
村長に注目していた他の人達が、俺の一瞬の行動に反応できないでいた。
気付いた時には既に豆は俺の口の中。

鞘から弾けるように口中に飛び出した身は、独特の青臭さと微かな塩気を伝えてくる。
噛むと薄皮を破いて一気に甘みが広がる。
噛んでいく度に甘みがじんわりと舌を撫でて行き、名残惜しさだけを残して胃の中へと消えて行った。
満足感と空虚さが同居したため息が口を突いて出た時、注視していた他の人たちが一斉に豆に食らいついた。

皆一様に驚愕の顔を浮かべ、次に目を細めて味わっている。
一つ食べると次々と手が延ばされて行き、皆が一心不乱に食べ続けた。
俺もひさしぶりに味わう枝豆に夢中になり、ひたすら貪っていた。
笊に山盛りにあった物が10分ほどで全部無くなってしまった。

「つい夢中になって食ってしまったな。恐ろしいくらいに止まらない旨さだ」
お茶を飲みながらつぶやくルドラマの言葉に全員が同意する。
「まったくです。まさか熟していない豆があれほどの旨さとは思いもしませんでした。これなら村の者にも受け入れられます。早速村の者にも伝えましょう」
村長の礼を受け、いくつか助言をしておく。
どの程度まで成長した物なら大丈夫なのかという目安と、植え付ける時期をずらして最適な時期を見極める試みを進めてみるといいかもしれない。

村長はその間に俺の発言を聞いてしっかり覚えておくために、木の板にナイフで文字を刻んでいた。
紙では紛失や破損のリスクが高いので木の板を使うのは年の功か。
時々ルドラマも口を挟み手引書の様な物が出来上がった。

「しかしアンディよ。よくこのような食い方を知っていたな?」
そう言えばルドラマは団長から俺の話を聞いていたはず。
なら記憶喪失の下りも耳に入っているだろう。
枝豆の知識を知っているのはおかしく思われたか。
仕方ない、ここは口八丁で躱すしかない。

「以前森で暮らしていた時に食うものにも困り、自生していた青い状態の豆を食ったことがあります。それで今回もいけると踏んでやってみました。まさかこれほどうまくなるとは思いませんでしたけど」
「なるほど、森でか。確かに森で食料を得るのは容易いことではないからな。偶然の幸運というやつだな」
上手く追及を誤魔化せたようで、他の皆も感心した顔をしている。

「この枝豆ですが酒、とりわけエールと相性がいいと思いますよ。味もそうですが、豆には体内に溜まった酒精を流す効果があるそうです」
追及の手をさらに逃れようとしたこの一言が良くなかった。
「……ほう?それはぜひ試さねばな」
「そうですな、人に勧める為にもまず身をもって知らねばなりませんからな」
ルドラマと村長がそれに乗って、颯爽と外へと出かけて行った。
慌てて護衛も続いて行き、残された俺とマクシムは村長の奥さんにお茶を勧められるまで呆然としていた。

俺たち子供組は早々に眠ったために知らなかったが、あの後は村長が村人を集めて豆を一気に刈り取り、枝豆としての食い方と酒の相性を切々と説き、村の集会所でルドラマ主催の酒の席が設けられ、深夜までの大騒ぎ。
枝豆の他にルドラマが村人に伝えたカクテルもドンドン振る舞われ、次の日の村は昼頃まで静かなものだった。
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