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槍ってずるいよな
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最近は朝の寒さも気になり始め、普段着の甚平も厚手の布の長袖長ズボンにして新しく作った物を愛用している。
今日も朝早くからギルドへと来ている。
掲示板の確認に行こうかとしたところ、イムルに止められた。
「アンディ君!ちょっとこっち来て」
そう言われて窓口の前へと手招きされた。
「おはようございます、イムルさん。なにか用でも?」
「はい、おはよう。私じゃなくてうちの上司がね。君が来たら連れて来いって言われてるの。だから悪いんだけど一緒に来てくれる?」
「はあ、構いませんけど。何の用事か聞いてないんですか?」
窓口横の柵を開けて俺を中に招き入れたイムルに聞いた。
「さあ?私は何も聞いてないけど。アンディ君こそ心当たりはないの?」
先導するイムルに続いて歩き、思い出そうとするが、まったく身に覚えがない。
首を傾げながら進んでいくと、とある机の前に着いた。
そこでは一人の女性が仕事をしていた。
邪魔にならない程度に切り揃えただけだと思われるブロンドのショートカットで、真面目そうな雰囲気の、いかにも秘書といった感じだ。
眼鏡でもかけていれば完璧だっただろう。
そこに着いた途端にイムルが緊張しだしたので、恐らくこの人がイムルの上司で俺を呼んだ人なんだろう。
「ヘルガさん、アンディ君をお連れしました」
真面目な言葉遣いのイムルとは貴重なものを見た気分だ。
その言葉に反応して、書きかけだった書類の手を止め、筆を脇にどけてこちらに向き直った。
「ご苦労様です、イムル。あとはこちらで引き受けますので、業務に戻って下さい」
「はい、失礼します」
イムルが去っていくと、俺とヘルガだけが残された。
「はじめまして、アンディ様。私は当ギルドの統括統括補佐をしています、ヘルガと申します。お見知りおきを」
そう言って軽く頭を下げられた。
「これはご丁寧に。ご存知でしょうが、俺はアンディと申します。こちらこそよろしくお願いします」
俺も軽く礼をして答えた。
「早速ですが、呼び出しの用を済ませましょう。こちらへ」
そう言って前に立ち先導していく。
左右にいくつか扉の並んだ通路を抜けた先の階段を登っていく。
無言で歩くのもなんなので話しかけてみる。
「ヘルガさん、俺はどこへ連れていかれるんです?なんとなく想像できますけど」
「恐らく想像通りだと思いますが、どこだと思いますか?」
俺の質問に質問で返すとは。
ヘルガのような偉い人を動かせて、しかも今歩いている場所を考えると容易に推測ができる。
「ギルドマスターの所でしょう?ここは建物を外から見たときにあった塔みたいですし、そこの上にいるのは一番偉い人と相場が決まっていますから」
「ふふっ、言われてみると、大抵の権力者は高い所にいますね。ええ、確かにギルドマスターからの呼び出しです。内容までは存じませんが、悪いように考えなくてもよろしいかと」
俺の言葉が面白かったのか、ヘルガが笑いながら答えた。
話すとわかるが、この人は思ったより茶目っ気がありそうだ。
あくまで俺の勘だが。
それきり黙ってしまったので、俺からも話しかけることはしなかった。
正確には解らないが、およそ6階分は上ったところで最上階に着く。
目の前には黒くて重厚そうな木で出来た両開きのドアがあった。
ギルドマスターの執務室なのだろうと思わせるだけの雰囲気はある。
「失礼します。ヘルガです。アンディ様をお連れしました」
「入りなさい」
呼びかけに答える老人の声に招かれ、ヘルガがドアを開けて横にずれて、俺を中へと招いた。
中は20畳ほど広さのある部屋で、入ってすぐに応接セットが置かれ、一番奥には立派な執務机が構えられている。
余り飾り付けない性格なのか、調度品はそれほど多くない。
数少ない品も豪華さよりも堅実さを窺わせる物ばかりだ。
執務机で仕事中の老人がギルドマスターだろう。
見た目は白髪に白髭の、物語の中の魔法使い然とした姿だ。
どこぞの魔法学校の校長と言われても信じちゃうね。
手元の書類から目を上げてこちらを見る青い目は、俺の正体を探ろうとしているかのように深く感じ、感情を読めそうにない。
「よう来た、アンディ。さあ、そこへ掛けなさい。ヘルガ、ご苦労じゃった。下がってよいぞ」
そう言ってソファーを勧めてくれたので腰掛けると、対面にギルドマスターが座った。
ヘルガは退出を許可されて深い礼でその場を後にした。
「何か飲むかの?大したものではないが、お茶ぐらいは淹れよう」
そう言ってテーブルの上に用意してあった茶器でお茶を淹れ始めた。
慣れた手つきで淹れられたお茶を自分と相手の前に置いた。
「頂きます」
断って口を付けると、ミントの様な香りと微かな酸味が感じられた。
大したものじゃないとは言っていたが、これは中々うまい。
しばらくお茶を飲む音だけの時間が続いた。
その時間を終わらせたのは、目の前の老人だった。
「まずは名乗ろうか。わしはこのギルドのマスターをしておる、ローガン・ラートドルじゃ。ああ、お主のことは知っておるから名乗らんでもよろしい。…それで、今回呼び出した用件じゃがのう」
そう言われて佇まいを正し、用件を聞く体勢をとる。
それを見て、ギルドマスターも表情をやや真剣みを帯びたものに変えた。
「昨日御主が持ち込んだザラスバードの件で、聞きたいことがある」
そう言って席を立ち、部屋の隅に置かれていた木箱を持ってきて、テーブルの上に置いた。
箱を開けると、中には塩漬けにされたザラスバードの首が入っていた。
僅かに覗く傷痕から俺の倒した奴の首だとわかるが、これが一体どうしたというのだろうか。
その疑問が顔に出ていたのか、ギルドマスターが説明を始めた。
「これはお主の持ち込んだザラスバードの首じゃ。ほれ、ここ。首の切断面が妙なことになっておっての。このことを聞かせてもらいたくて呼んだのじゃよ」
そう言って首を持ち上げて、断面をこちらに向けてくる。
あまり見て気持ちのいいものじゃないが、何が言いたいのかは分かった。
つまりこの首を切断した方法がわからないということだろう。
首の真ん中を円状に刳り貫いた様な跡は、確かに通常の切断面とは言えないだろう。
どうしようか。
誤魔化そうにもこの老獪そうなギルドマスターの追求から完全に逃れられるとは思えない。
よくよく考えたら、今更隠すのも面倒くさくなってきた今日この頃。
いっそバラしちまったら、俺のランクも上げてもらえるんじゃないか?
悩んでいる俺をよそに、ギルドマスターの独演会が始まる。
「魔術でやったにしては綺麗に穴が開きすぎておる。これだけの威力を出せるのは火魔術であろうが、それではこの断面の周囲が焼けていないことの説明がつかん。となれば他にこれをやるとしたら、風魔術での切断ぐらいじゃろう。だが、こんな円形状に切るのはまず出来んし、威力も足りん」
これは俺が他の方法でやったことを確信して、逃げ道を塞ぎにかかってるな。
言葉の裏側からとっとと白状しろという副音声が聞こえてくるようだ。
もう、ゴールしてもいいよね?
「わかりました、順を追って説明します」
そういうとギルドマスターは目を輝かせて先を促して来た。
どうやら単純に自分の好奇心からの行動だったようだ。
歳の割に子供っぽい所が強すぎるんじゃないか?
雷を使った攻撃法で倒したことと、その道中の土魔術での野営方法まで白状させられた。
この爺、誘導尋問が上手過ぎるんだが。
実際に指先から放電するところを見せ、静電気程度の電気をその身で体験させることで興奮していたが、段々沈んだ表情になっていった。
「ギルドマスター?どうかしたんですか?」
その感情の落差が気になり、尋ねてみたが腕を組んで何かを考えているようで、しばらくの沈黙の後、重い口を開いた。
「わしもギルドマスターとして長いこと人を見てきたが、これはあまりにも異質過ぎる。雷を魔術で操るなど見たことも聞いたこともない。魔術協会に嗅ぎ付けられたら面倒事に巻き込まれかねんぞ」
そうだろうな。
雷を理解して術で再現出来る人間がこの世界で俺以外にいるとは到底思えない。
俺だけのオリジナル魔術と言って過言ではないだろう。
めっちゃかっこいい。
とは言っても、これは厄介事の種であると同時に、この世界で生きる上での大きなアドバンテージでもある。
無闇にひけらかす必要はないが、隠し続けるのも限界がある。
僅かな葛藤を抱く俺に、ギルドマスターが突然提案をしてきた。
「のう、アンディよ。わしと一つ勝負をせんか?」
そんなことを言うギルドマスターの目は、俺に嫌な予感を抱かせた。
あ、これ前にあったヤツだ。
場所は変わって、ギルドの裏手に広がる演習場。
普段は冒険者たちの訓練や、たまにある決闘などで使われている。
周りを3メートルくらいの壁に囲まれた、陸上競技場位の広さの真ん中に俺は立っていた。
正面にはウキウキ顔のギルドマスターがいる。
ギルドマスターの手には豪華な装飾が施された、使い込まれた感のある槍が握られている。
先端の刃の部分に複雑な紋様が見えるが、何らかの意味があると考えて警戒した方がいいだろう。
てっきりギルドマスターの風貌から魔術師かと思い込んでいたが、バリバリの槍使いだった。
さっきそのことを突っ込んだら、皆第一印象で騙されるのが面白くて、わざとやっているそうだ。
周りにはこの騒ぎを聞きつけて、暇な職員から冒険者の姿まで、結構な数が確認できる。
早速賭けが始まっているようで視界の端ではちょっとした騒ぎになっている。
俺は武器など持っていないので演習所に備え付けの刃の潰れた剣を使う。
長年酷使されてきたのか、かなり傷んでいる。
これで槍を受けたら折れるんじゃないか?
抜き身の槍は危険じゃないのかと思ったが、寸止めでやるから大丈夫だと言われた。
「どちらかの降参か戦闘続行不能で勝敗を決める。武器、魔術何を使ってもよしとする。…わしは寸止めじゃが、お主は全力で掛かってくるがよい」
そう言って槍を構えるギルドマスターの姿は歴戦の猛者の風格を感じさせるもので、隙を見つけられず、睨み合っている。
アデス・ハルア団長とやった時とは違い、奇策が通じるような気がしない。
なにをやっても見破られそうだ。
試しにギルドマスターの足元に落とし穴を作って様子を見ると、自然な動きであっさりと横に避けられ、逆に俺の隙を突いて、槍の石突で足元の石を弾いてこちらに飛ばして来た。
顔に向かって飛んできたので、首を傾げることで躱したが、今の一瞬で小手先の技は通じないことが証明されてしまった。
俺の手札で通じそうなのはどれも殺傷能力が高すぎて、使っていいのか判断できない。
ザラスバードを倒したレールガン擬きを使った日には、風穴の開いた老人の死骸を作ることになる。
困っていると、ギルドマスターから仕掛けてきた。
「このまま睨み合っても埒が明かんのう。…こちらから仕掛けるぞ。ほれ」
そう言って、一気に間合いを詰められた。
ローブの裾のせいで足さばきが見えないので、滑るように近づかれて、防御が遅れる。
石突で鳩尾を狙われて、それを防御できず、喰らってしまうが、一瞬早く後ろに跳ぶことで衝撃を和らげる。
「ふむ、よい反応じゃ。ではこれはどうかの?」
そう言ってさらに一歩踏み込みつつ槍を払い、俺の左から迫って来た一撃を剣を立てて防ぐ。
老人の一撃とは思えない重さに足が浮きそうになる。
「ほれ、足元」
返す一撃で足を払われる。
転びそうになるのに逆らわず、そのまま地面を強く蹴って転がり、距離を取ったと判断したら地面を手と足の両方で思いっきり叩いて、飛び上がって体勢を戻す。
てっきり追撃があると思っていたが、ギルドマスターはさっきの場所に立っていた。
剣を正面に向けて対峙して急襲に注意して息を整える。
「思い切りのいい判断じゃ。あのまま踏ん張っていれば腹に一撃を入れて終わったんじゃがのぅ」
槍でトントンと地面を叩きながら話しかけてくる。
一撃とは?寸止めはどうした?
「ふぅー……、しかし息一つ乱さないとは…。…見た目通りの年じゃないんですか?」
80歳位にしか見えないのに、あれだけの動きが出来るのに脱帽する。
今の一連の攻防だけで分かるのは、ギルドマスターの技量がとんでもなく高い次元で完成されているということだ。
さっきの剣で受けた槍の一撃も、フェイントと本命が即座に入れ替わって防げなかったのだ。
雷魔術で攻撃しようとする隙すら与えられず、転がされたのは結構ショックだな。
「これでも鍛錬は欠かしていないのでな。まだまだ若造に追い抜かれるほど老いぼれておらんわ」
「年寄りの冷や水という言葉もありますよ?」
息が戻ったので、言葉の応酬に付き合う。
時間を稼いで手を考えなくては。
「冷や水?意味はようわからんが、なにやら小馬鹿にされているのはわかるぞ」
まあ通じないか。この世界だと何て言うんだ?
舌戦はおしまいなのか、ギルドマスターが攻め手を取る。
先程より鋭く踏み込まれて、胴を突かれ、左右の足をそれぞれ別々に払いに来るが、今度は全部を剣で弾いて防ぐ。
一本の槍での攻撃なのに、まるで3人が同時に攻撃してくるような連撃は先ほどの比ではない。
一瞬でも気を抜くと強烈な攻撃が襲い掛かってくるだろう。
…さっきの言葉に怒ったんじゃないよね?
防がれたのが意外だったのか、ギルドマスターが眉を上げて驚いた表情のまま、速度を上げてさらに攻めてくる。
突き、薙ぎ、払い、絡めとあらゆる方法で攻めてくるが、それを俺は防ぎ、弾き、避け、抜きとその都度最適な方法で防ぐ。
「ほっほっ!急に動きが良くなったのう!さっきまで手を抜いておったか?」
そう言ってさらに速度を上げてくるが、攻撃が通ることは無い。
ギルドマスターは息もつかせぬ連撃だが、俺はそれを最小限の動きだけで捌いていく。
周りで見ている人からすると激流のような攻撃を、こちらも流れるような動きで受け流しているように見えただろう。
並みの冒険者なら目の前で繰り広げられる攻防で使われている技量の高さに、隔絶した差を感じて自信を失ってしまうのではないか?
ご安心を。実は俺、ズルをしてます。
先程の会話の最中に、剣に電磁石を作るイメージで電気を流して、磁石の剣を作っていたのだ。
電流の強さで磁力が変わるので、ギルドマスターの攻撃が来る瞬間に電流を強めることで、槍に磁石が吸い付き、そのまま力を籠めて押すと、攻撃の向きを変えれる。
一見すると俺がギルドマスターの攻撃を完璧に見切って捌いているように見えているだろう。
だが実際は俺が見切っているのは攻撃の始点のみで、電磁石化した剣が槍の一撃をオートで迎撃しているだけ。
見た目より力のこもった槍の一撃は、力の向きを変えてやるだけで見事に俺を避けていく。
槍の刃は素材が鉄じゃないようで、磁石の反応が悪く、剣身は柄の部分に吸い付いていくが、それだけでも十分に攻撃を受け流すのには効果を発揮していた。
もちろん、他にもタネは仕込んである。
ギルドマスターの攻撃の速度を見切るために、強化魔術を動体視力と身体能力に7:3で使ってみると、ぶっつけ本番にしては上手くいって、ちょっと驚いた。
攻撃が止まって見えるとはいわないが、初速を見抜くぐらいには目が良くなっているおかげで、なんとかこうして防ぐことが出来る。
そのおかげで、今のところ俺の実力を高く誤魔化し、互角の状況を作ることに成功していた。
この攻防はギルドマスターの体力を一方的に消費させて、動きが鈍ったところを俺の攻撃が止めを刺すという、非常にスマートなやり方だ。
考えた俺、マジ天才。
…しかし、この爺さん全然疲れる様子がないんだが。
それに心なしか、まだ速度が上がっている気がする。
ギルドマスターの方が疲労は大きいはずだが、こちらも全く疲れないわけじゃない。
延々と続けられるほど集中力も持たない。
早いとこ終わってもらいたい、そう考えていた瞬間、持っていた剣が中ほどから折れてしまった。
「ほっ?」
「あ?」
一瞬、気を取られたのが悪かった。
電磁石化していた剣が折れた拍子に、電流を切ってしまったのだ。
ギルドマスターは剣で弾かれた後の対応を織り交ぜて動いていたため、剣が折れても石突がそのまま鳩尾に吸い込まれて行き、一瞬で2連撃が叩き込まれた俺は10メートルほど吹き飛んで、そのまま意識を失った。
寸止めとは一体何だったのか。
SIDE: ローガン・ラートドル
あの後、気絶したアンディを職員に頼んでわしの執務室に運んでもらった。
現在はソファの上で眠っている。
ざっと見てみたが、特に怪我らしいものも見当たらず、ただ気絶しているだけの様だった。
眠っているアンディの向かいに座って一息つき、お茶を入れる。
一杯飲み終わる頃には大分落ち着いた。
模擬戦終了後は気分が高ぶっていたが、落ち着いてくると罪悪感に襲われる。
寸止めを約束していたのに、いいのが入ってしまうとは。
いや、あれだけ防がれていると、連続で攻撃を組み立てるから、剣が折れたのに気付いても、一瞬で止められるものではないのだと言いたい。
言い訳に聞こえるかもしれんが、仕方ないはず。
わし、悪くない。
だが、思い返してみると、とんでもない子供だと思う。
最初の一連の攻撃だけでも非凡なものを感じさせたが、その後の攻防は長い人生の中でも久しぶりにわしの心胆寒からしめた。
あのまま武器が壊れなければ、負けていたのはわしの方だったろう。
いや、そもそも訓練用の剣でわしの槍を受けて、壊れないはずがないか。
むしろ、よくあそこまで剣のダメージを抑えて戦っていたものだ。
それだけ戦闘中に余裕があったということか?
わしも老いたか…?
一つの極みとも思っていた槍捌きも、膂力に任せた一撃もまるでこちらの心を覗いているかのように全て対応されていた。
一撃放つ度に、受け流されては疲労が蓄積されていき、まるで風に揺れる枝葉を相手にしているようだった。
吸い寄せられるようにわしの槍を弾く技量は感嘆を通り越して恐怖を抱いたほどだ。
あれだけの戦闘能力を見せられては、ザラスバードを単独撃破したのも納得だ。
さらにアンディにはザラスバードの首を削り飛ばした魔術もある。
これでまだ年齢制限付きの黒4級とは。
まったく、末恐ろしい子供だ。
戦闘能力だけを見れば年齢制限を付ける意味が無いが、その辺はアンディが起きてから話すとしよう。
SIDE: OUT
今日も朝早くからギルドへと来ている。
掲示板の確認に行こうかとしたところ、イムルに止められた。
「アンディ君!ちょっとこっち来て」
そう言われて窓口の前へと手招きされた。
「おはようございます、イムルさん。なにか用でも?」
「はい、おはよう。私じゃなくてうちの上司がね。君が来たら連れて来いって言われてるの。だから悪いんだけど一緒に来てくれる?」
「はあ、構いませんけど。何の用事か聞いてないんですか?」
窓口横の柵を開けて俺を中に招き入れたイムルに聞いた。
「さあ?私は何も聞いてないけど。アンディ君こそ心当たりはないの?」
先導するイムルに続いて歩き、思い出そうとするが、まったく身に覚えがない。
首を傾げながら進んでいくと、とある机の前に着いた。
そこでは一人の女性が仕事をしていた。
邪魔にならない程度に切り揃えただけだと思われるブロンドのショートカットで、真面目そうな雰囲気の、いかにも秘書といった感じだ。
眼鏡でもかけていれば完璧だっただろう。
そこに着いた途端にイムルが緊張しだしたので、恐らくこの人がイムルの上司で俺を呼んだ人なんだろう。
「ヘルガさん、アンディ君をお連れしました」
真面目な言葉遣いのイムルとは貴重なものを見た気分だ。
その言葉に反応して、書きかけだった書類の手を止め、筆を脇にどけてこちらに向き直った。
「ご苦労様です、イムル。あとはこちらで引き受けますので、業務に戻って下さい」
「はい、失礼します」
イムルが去っていくと、俺とヘルガだけが残された。
「はじめまして、アンディ様。私は当ギルドの統括統括補佐をしています、ヘルガと申します。お見知りおきを」
そう言って軽く頭を下げられた。
「これはご丁寧に。ご存知でしょうが、俺はアンディと申します。こちらこそよろしくお願いします」
俺も軽く礼をして答えた。
「早速ですが、呼び出しの用を済ませましょう。こちらへ」
そう言って前に立ち先導していく。
左右にいくつか扉の並んだ通路を抜けた先の階段を登っていく。
無言で歩くのもなんなので話しかけてみる。
「ヘルガさん、俺はどこへ連れていかれるんです?なんとなく想像できますけど」
「恐らく想像通りだと思いますが、どこだと思いますか?」
俺の質問に質問で返すとは。
ヘルガのような偉い人を動かせて、しかも今歩いている場所を考えると容易に推測ができる。
「ギルドマスターの所でしょう?ここは建物を外から見たときにあった塔みたいですし、そこの上にいるのは一番偉い人と相場が決まっていますから」
「ふふっ、言われてみると、大抵の権力者は高い所にいますね。ええ、確かにギルドマスターからの呼び出しです。内容までは存じませんが、悪いように考えなくてもよろしいかと」
俺の言葉が面白かったのか、ヘルガが笑いながら答えた。
話すとわかるが、この人は思ったより茶目っ気がありそうだ。
あくまで俺の勘だが。
それきり黙ってしまったので、俺からも話しかけることはしなかった。
正確には解らないが、およそ6階分は上ったところで最上階に着く。
目の前には黒くて重厚そうな木で出来た両開きのドアがあった。
ギルドマスターの執務室なのだろうと思わせるだけの雰囲気はある。
「失礼します。ヘルガです。アンディ様をお連れしました」
「入りなさい」
呼びかけに答える老人の声に招かれ、ヘルガがドアを開けて横にずれて、俺を中へと招いた。
中は20畳ほど広さのある部屋で、入ってすぐに応接セットが置かれ、一番奥には立派な執務机が構えられている。
余り飾り付けない性格なのか、調度品はそれほど多くない。
数少ない品も豪華さよりも堅実さを窺わせる物ばかりだ。
執務机で仕事中の老人がギルドマスターだろう。
見た目は白髪に白髭の、物語の中の魔法使い然とした姿だ。
どこぞの魔法学校の校長と言われても信じちゃうね。
手元の書類から目を上げてこちらを見る青い目は、俺の正体を探ろうとしているかのように深く感じ、感情を読めそうにない。
「よう来た、アンディ。さあ、そこへ掛けなさい。ヘルガ、ご苦労じゃった。下がってよいぞ」
そう言ってソファーを勧めてくれたので腰掛けると、対面にギルドマスターが座った。
ヘルガは退出を許可されて深い礼でその場を後にした。
「何か飲むかの?大したものではないが、お茶ぐらいは淹れよう」
そう言ってテーブルの上に用意してあった茶器でお茶を淹れ始めた。
慣れた手つきで淹れられたお茶を自分と相手の前に置いた。
「頂きます」
断って口を付けると、ミントの様な香りと微かな酸味が感じられた。
大したものじゃないとは言っていたが、これは中々うまい。
しばらくお茶を飲む音だけの時間が続いた。
その時間を終わらせたのは、目の前の老人だった。
「まずは名乗ろうか。わしはこのギルドのマスターをしておる、ローガン・ラートドルじゃ。ああ、お主のことは知っておるから名乗らんでもよろしい。…それで、今回呼び出した用件じゃがのう」
そう言われて佇まいを正し、用件を聞く体勢をとる。
それを見て、ギルドマスターも表情をやや真剣みを帯びたものに変えた。
「昨日御主が持ち込んだザラスバードの件で、聞きたいことがある」
そう言って席を立ち、部屋の隅に置かれていた木箱を持ってきて、テーブルの上に置いた。
箱を開けると、中には塩漬けにされたザラスバードの首が入っていた。
僅かに覗く傷痕から俺の倒した奴の首だとわかるが、これが一体どうしたというのだろうか。
その疑問が顔に出ていたのか、ギルドマスターが説明を始めた。
「これはお主の持ち込んだザラスバードの首じゃ。ほれ、ここ。首の切断面が妙なことになっておっての。このことを聞かせてもらいたくて呼んだのじゃよ」
そう言って首を持ち上げて、断面をこちらに向けてくる。
あまり見て気持ちのいいものじゃないが、何が言いたいのかは分かった。
つまりこの首を切断した方法がわからないということだろう。
首の真ん中を円状に刳り貫いた様な跡は、確かに通常の切断面とは言えないだろう。
どうしようか。
誤魔化そうにもこの老獪そうなギルドマスターの追求から完全に逃れられるとは思えない。
よくよく考えたら、今更隠すのも面倒くさくなってきた今日この頃。
いっそバラしちまったら、俺のランクも上げてもらえるんじゃないか?
悩んでいる俺をよそに、ギルドマスターの独演会が始まる。
「魔術でやったにしては綺麗に穴が開きすぎておる。これだけの威力を出せるのは火魔術であろうが、それではこの断面の周囲が焼けていないことの説明がつかん。となれば他にこれをやるとしたら、風魔術での切断ぐらいじゃろう。だが、こんな円形状に切るのはまず出来んし、威力も足りん」
これは俺が他の方法でやったことを確信して、逃げ道を塞ぎにかかってるな。
言葉の裏側からとっとと白状しろという副音声が聞こえてくるようだ。
もう、ゴールしてもいいよね?
「わかりました、順を追って説明します」
そういうとギルドマスターは目を輝かせて先を促して来た。
どうやら単純に自分の好奇心からの行動だったようだ。
歳の割に子供っぽい所が強すぎるんじゃないか?
雷を使った攻撃法で倒したことと、その道中の土魔術での野営方法まで白状させられた。
この爺、誘導尋問が上手過ぎるんだが。
実際に指先から放電するところを見せ、静電気程度の電気をその身で体験させることで興奮していたが、段々沈んだ表情になっていった。
「ギルドマスター?どうかしたんですか?」
その感情の落差が気になり、尋ねてみたが腕を組んで何かを考えているようで、しばらくの沈黙の後、重い口を開いた。
「わしもギルドマスターとして長いこと人を見てきたが、これはあまりにも異質過ぎる。雷を魔術で操るなど見たことも聞いたこともない。魔術協会に嗅ぎ付けられたら面倒事に巻き込まれかねんぞ」
そうだろうな。
雷を理解して術で再現出来る人間がこの世界で俺以外にいるとは到底思えない。
俺だけのオリジナル魔術と言って過言ではないだろう。
めっちゃかっこいい。
とは言っても、これは厄介事の種であると同時に、この世界で生きる上での大きなアドバンテージでもある。
無闇にひけらかす必要はないが、隠し続けるのも限界がある。
僅かな葛藤を抱く俺に、ギルドマスターが突然提案をしてきた。
「のう、アンディよ。わしと一つ勝負をせんか?」
そんなことを言うギルドマスターの目は、俺に嫌な予感を抱かせた。
あ、これ前にあったヤツだ。
場所は変わって、ギルドの裏手に広がる演習場。
普段は冒険者たちの訓練や、たまにある決闘などで使われている。
周りを3メートルくらいの壁に囲まれた、陸上競技場位の広さの真ん中に俺は立っていた。
正面にはウキウキ顔のギルドマスターがいる。
ギルドマスターの手には豪華な装飾が施された、使い込まれた感のある槍が握られている。
先端の刃の部分に複雑な紋様が見えるが、何らかの意味があると考えて警戒した方がいいだろう。
てっきりギルドマスターの風貌から魔術師かと思い込んでいたが、バリバリの槍使いだった。
さっきそのことを突っ込んだら、皆第一印象で騙されるのが面白くて、わざとやっているそうだ。
周りにはこの騒ぎを聞きつけて、暇な職員から冒険者の姿まで、結構な数が確認できる。
早速賭けが始まっているようで視界の端ではちょっとした騒ぎになっている。
俺は武器など持っていないので演習所に備え付けの刃の潰れた剣を使う。
長年酷使されてきたのか、かなり傷んでいる。
これで槍を受けたら折れるんじゃないか?
抜き身の槍は危険じゃないのかと思ったが、寸止めでやるから大丈夫だと言われた。
「どちらかの降参か戦闘続行不能で勝敗を決める。武器、魔術何を使ってもよしとする。…わしは寸止めじゃが、お主は全力で掛かってくるがよい」
そう言って槍を構えるギルドマスターの姿は歴戦の猛者の風格を感じさせるもので、隙を見つけられず、睨み合っている。
アデス・ハルア団長とやった時とは違い、奇策が通じるような気がしない。
なにをやっても見破られそうだ。
試しにギルドマスターの足元に落とし穴を作って様子を見ると、自然な動きであっさりと横に避けられ、逆に俺の隙を突いて、槍の石突で足元の石を弾いてこちらに飛ばして来た。
顔に向かって飛んできたので、首を傾げることで躱したが、今の一瞬で小手先の技は通じないことが証明されてしまった。
俺の手札で通じそうなのはどれも殺傷能力が高すぎて、使っていいのか判断できない。
ザラスバードを倒したレールガン擬きを使った日には、風穴の開いた老人の死骸を作ることになる。
困っていると、ギルドマスターから仕掛けてきた。
「このまま睨み合っても埒が明かんのう。…こちらから仕掛けるぞ。ほれ」
そう言って、一気に間合いを詰められた。
ローブの裾のせいで足さばきが見えないので、滑るように近づかれて、防御が遅れる。
石突で鳩尾を狙われて、それを防御できず、喰らってしまうが、一瞬早く後ろに跳ぶことで衝撃を和らげる。
「ふむ、よい反応じゃ。ではこれはどうかの?」
そう言ってさらに一歩踏み込みつつ槍を払い、俺の左から迫って来た一撃を剣を立てて防ぐ。
老人の一撃とは思えない重さに足が浮きそうになる。
「ほれ、足元」
返す一撃で足を払われる。
転びそうになるのに逆らわず、そのまま地面を強く蹴って転がり、距離を取ったと判断したら地面を手と足の両方で思いっきり叩いて、飛び上がって体勢を戻す。
てっきり追撃があると思っていたが、ギルドマスターはさっきの場所に立っていた。
剣を正面に向けて対峙して急襲に注意して息を整える。
「思い切りのいい判断じゃ。あのまま踏ん張っていれば腹に一撃を入れて終わったんじゃがのぅ」
槍でトントンと地面を叩きながら話しかけてくる。
一撃とは?寸止めはどうした?
「ふぅー……、しかし息一つ乱さないとは…。…見た目通りの年じゃないんですか?」
80歳位にしか見えないのに、あれだけの動きが出来るのに脱帽する。
今の一連の攻防だけで分かるのは、ギルドマスターの技量がとんでもなく高い次元で完成されているということだ。
さっきの剣で受けた槍の一撃も、フェイントと本命が即座に入れ替わって防げなかったのだ。
雷魔術で攻撃しようとする隙すら与えられず、転がされたのは結構ショックだな。
「これでも鍛錬は欠かしていないのでな。まだまだ若造に追い抜かれるほど老いぼれておらんわ」
「年寄りの冷や水という言葉もありますよ?」
息が戻ったので、言葉の応酬に付き合う。
時間を稼いで手を考えなくては。
「冷や水?意味はようわからんが、なにやら小馬鹿にされているのはわかるぞ」
まあ通じないか。この世界だと何て言うんだ?
舌戦はおしまいなのか、ギルドマスターが攻め手を取る。
先程より鋭く踏み込まれて、胴を突かれ、左右の足をそれぞれ別々に払いに来るが、今度は全部を剣で弾いて防ぐ。
一本の槍での攻撃なのに、まるで3人が同時に攻撃してくるような連撃は先ほどの比ではない。
一瞬でも気を抜くと強烈な攻撃が襲い掛かってくるだろう。
…さっきの言葉に怒ったんじゃないよね?
防がれたのが意外だったのか、ギルドマスターが眉を上げて驚いた表情のまま、速度を上げてさらに攻めてくる。
突き、薙ぎ、払い、絡めとあらゆる方法で攻めてくるが、それを俺は防ぎ、弾き、避け、抜きとその都度最適な方法で防ぐ。
「ほっほっ!急に動きが良くなったのう!さっきまで手を抜いておったか?」
そう言ってさらに速度を上げてくるが、攻撃が通ることは無い。
ギルドマスターは息もつかせぬ連撃だが、俺はそれを最小限の動きだけで捌いていく。
周りで見ている人からすると激流のような攻撃を、こちらも流れるような動きで受け流しているように見えただろう。
並みの冒険者なら目の前で繰り広げられる攻防で使われている技量の高さに、隔絶した差を感じて自信を失ってしまうのではないか?
ご安心を。実は俺、ズルをしてます。
先程の会話の最中に、剣に電磁石を作るイメージで電気を流して、磁石の剣を作っていたのだ。
電流の強さで磁力が変わるので、ギルドマスターの攻撃が来る瞬間に電流を強めることで、槍に磁石が吸い付き、そのまま力を籠めて押すと、攻撃の向きを変えれる。
一見すると俺がギルドマスターの攻撃を完璧に見切って捌いているように見えているだろう。
だが実際は俺が見切っているのは攻撃の始点のみで、電磁石化した剣が槍の一撃をオートで迎撃しているだけ。
見た目より力のこもった槍の一撃は、力の向きを変えてやるだけで見事に俺を避けていく。
槍の刃は素材が鉄じゃないようで、磁石の反応が悪く、剣身は柄の部分に吸い付いていくが、それだけでも十分に攻撃を受け流すのには効果を発揮していた。
もちろん、他にもタネは仕込んである。
ギルドマスターの攻撃の速度を見切るために、強化魔術を動体視力と身体能力に7:3で使ってみると、ぶっつけ本番にしては上手くいって、ちょっと驚いた。
攻撃が止まって見えるとはいわないが、初速を見抜くぐらいには目が良くなっているおかげで、なんとかこうして防ぐことが出来る。
そのおかげで、今のところ俺の実力を高く誤魔化し、互角の状況を作ることに成功していた。
この攻防はギルドマスターの体力を一方的に消費させて、動きが鈍ったところを俺の攻撃が止めを刺すという、非常にスマートなやり方だ。
考えた俺、マジ天才。
…しかし、この爺さん全然疲れる様子がないんだが。
それに心なしか、まだ速度が上がっている気がする。
ギルドマスターの方が疲労は大きいはずだが、こちらも全く疲れないわけじゃない。
延々と続けられるほど集中力も持たない。
早いとこ終わってもらいたい、そう考えていた瞬間、持っていた剣が中ほどから折れてしまった。
「ほっ?」
「あ?」
一瞬、気を取られたのが悪かった。
電磁石化していた剣が折れた拍子に、電流を切ってしまったのだ。
ギルドマスターは剣で弾かれた後の対応を織り交ぜて動いていたため、剣が折れても石突がそのまま鳩尾に吸い込まれて行き、一瞬で2連撃が叩き込まれた俺は10メートルほど吹き飛んで、そのまま意識を失った。
寸止めとは一体何だったのか。
SIDE: ローガン・ラートドル
あの後、気絶したアンディを職員に頼んでわしの執務室に運んでもらった。
現在はソファの上で眠っている。
ざっと見てみたが、特に怪我らしいものも見当たらず、ただ気絶しているだけの様だった。
眠っているアンディの向かいに座って一息つき、お茶を入れる。
一杯飲み終わる頃には大分落ち着いた。
模擬戦終了後は気分が高ぶっていたが、落ち着いてくると罪悪感に襲われる。
寸止めを約束していたのに、いいのが入ってしまうとは。
いや、あれだけ防がれていると、連続で攻撃を組み立てるから、剣が折れたのに気付いても、一瞬で止められるものではないのだと言いたい。
言い訳に聞こえるかもしれんが、仕方ないはず。
わし、悪くない。
だが、思い返してみると、とんでもない子供だと思う。
最初の一連の攻撃だけでも非凡なものを感じさせたが、その後の攻防は長い人生の中でも久しぶりにわしの心胆寒からしめた。
あのまま武器が壊れなければ、負けていたのはわしの方だったろう。
いや、そもそも訓練用の剣でわしの槍を受けて、壊れないはずがないか。
むしろ、よくあそこまで剣のダメージを抑えて戦っていたものだ。
それだけ戦闘中に余裕があったということか?
わしも老いたか…?
一つの極みとも思っていた槍捌きも、膂力に任せた一撃もまるでこちらの心を覗いているかのように全て対応されていた。
一撃放つ度に、受け流されては疲労が蓄積されていき、まるで風に揺れる枝葉を相手にしているようだった。
吸い寄せられるようにわしの槍を弾く技量は感嘆を通り越して恐怖を抱いたほどだ。
あれだけの戦闘能力を見せられては、ザラスバードを単独撃破したのも納得だ。
さらにアンディにはザラスバードの首を削り飛ばした魔術もある。
これでまだ年齢制限付きの黒4級とは。
まったく、末恐ろしい子供だ。
戦闘能力だけを見れば年齢制限を付ける意味が無いが、その辺はアンディが起きてから話すとしよう。
SIDE: OUT
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