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森は歌う
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再び森へ分け入って歩くこと暫く。
体感では三十分ほど経っただろうか。
やや速足気味で移動しているためか、もうかなり森の奥深いところへと来ていた。
やはりというか意外というか、あれだけ気が乗らないから歌わないと言ったのに、リッカはすぐに鼻歌を歌いだしていた。
今回も無意識に出ているようだが、狼を引き寄せるのに役立つので特に指摘せずにいる。
そうしていると、不意にリッカの声が止む。
ジッと一点を見つめ、その場で滞空する姿は、今朝にも見たものだ。
「…来たぞ」
囁くような小さい声のリッカに、俺達も前方へと視線を送る。
今日だけで二度の遭遇だが、少し離れた先に狼の姿があった。
相変わらずのプレッシャーに加え、何の感情も読み取れない目を向けられ、思わず後ずさりしそうになる足を叱咤する。
少し離れた場所に佇む狼は、これまでに遭遇した時と同様、観察するような無機質な目をしており、敵意も好意も感じられないのが逆に怖い。
「よし、いい具合にこっちに興味を持ってる。二人共、準備出来てるか?」
「おう、俺はいいぞ」
リッカの言葉に、俺は背負っていた荷物からマンドリンを取り出し、弦を軽く弾く。
調律にも問題はなく、このまますぐに演奏を始められるだろう。
その時、弦の音に反応してか、狼の耳がピクリと大きく動いた。
この反応は何となも犬っぽい感じで、少しだけ親近感を覚える。
少しの音にも敏感に反応したあたり、やはり音楽に対する感受性は相当なものかもしれない。
「ん゛ん゛…あー、あー……。よし、私も準備いいよ」
パーラも喉の調子を整え、いつでも歌えるという状態を伝えてきた。
「んじゃ後はアンディ、お前のきっかけで始めろ。あたいは少し離れて様子を見てっから、何かあったら逃げる隙くらいは作ってやる」
そう言ってリッカは飛び上がると、近くの木の枝へと腰を下ろす。
俺達と狼の両方を視界に捉えられる丁度いい位置にある枝だ。
狼も一度だけリッカを視線で追いかけるが、すぐに興味を無くしたように俺とパーラへと視線を戻した。
何かあったらというのは少し不安だが、万が一の備えはしてくれるようだ。
「…パーラ、始めるぞ。いいな?」
「うん、いつでも」
パーラの返答に合わせ、一度大きく息を吸ってからマンドリンの弦を弾いていく。
最初は一本ずつ爪弾いていき、しめやかなメロディーを辺りに響かせる。
マンドリンの音色はパーラの風魔術によって音を増幅させており、それなりに離れた距離にいる狼にもきちんと届いている。
その証拠に狼の反応は上々で、マンドリンが鳴りはじめてからは耳をしきりに動かし、積極的に音を拾おうとしているようだ。
ただ、その目にはまだ何の感情も窺えず、とりあえず興味は惹けたというところか。
次第に演奏は弦を全て使ったものへと移っていき、そろそろパーラの歌のパートだ。
目線でタイミングを伝えると、それを受けてパーラが高らかに歌いだす。
この曲自体の入りは穏やかなものだったが、歌の方はそうではない。
最初から力強く、腹の底から撃ちだすような歌いだしは、聞く側に中々のインパクトを与える。
歌声も風魔術で増幅されており、大型のスピーカーから出ているかのような大きな歌声となっていた。
リッカから伝授されたこの歌は、スローテンポの曲にパワーのある歌い方という組み合わせの少し変わったものだそうで、妖精のリッカからしても大分毛色の違う歌であるらしい。
元々、即興で作った曲だったのだが、こうしてあれと向き合って歌ってみると、妙にしっくりくるというか、この場で最もふさわしい曲なのではないかと思えるのだから不思議なものだ。
歌詞の方も、本来は妖精独自の言語を使うらしいが、そこはリッカが気を利かせて共通語で揃えてくれた。
共通語で歌うことが本来の歌と大分違ってしまい、狼にウケが悪くなる可能性も考えたが、思いが籠ってれば問題ないという、リッカの論を信じるとしよう。
曲はそろそろ、サビに当たる部分へ差し掛かろうとしている。
ここまで、狼に対して人間との友好を歌ってきたが、まだまだフリのようなものだ。
本当に伝えたいことは、やはりサビの部分に込められている。
一際声を張り、歌い上げるのは狼に対して選択を迫るものだ。
傲慢に思えるかもしれないが、隔絶した存在の狼に対して脆弱な人間が示せる選択肢は、共に生きるか、さもなくば互いに距離を置いて生きていくかの二つ。
俺にはリッカの言う、歌に思いが籠っているかどうかは分からないが、歌詞でそれを訴えかけて、そこにパーラが思いを乗せて歌っているとすれば、向こうからのリアクションをそろそろ期待したいところだ。
あの狼も耳を頻繁に動かしていることから、歌自体は聞こえているはずだが、こちらの意図がどれだけ伝わるかは、パーラにかかっている。
そろそろサビも終わるという頃だが、相変わらず狼の方はジッとこちらを見るだけで、特に他のリアクションは無い。
こっちの意図が十分に伝われば、向こうが同意にしろ拒否にしろ、何かしら分かりやすい反応を返すとリッカからは聞いている。
だが、未だ狼は彫像のように佇むのみだ。
いや、耳はしきりに動いているから、彫像のようには適切ではないか。
「…リッカ!」
何となく不安を覚えた俺は、演奏の手を止めずにリッカを呼び寄せる。
腰かけていた枝から飛び上がり、こちらへとやってきたリッカは俺の肩へと座った。
「なぁリッカ。今んとこどうなんだ?俺には今一つ、手応えがない気がするんだが」
今この場では、狼と対話しているのはパーラなのだが、歌っているのを中断させてここまでの手応えを尋ねるわけにもいかず、次いで一番そういうのに敏感そうなリッカに現状を尋ねることにした。
「正直、あんましよくねぇな。いや、パーラの歌はいいんだ。昨夜の練習より、しっかり思いも込められてる。意図は十分伝わってるはずなんだが…」
「はずなんだが?」
「向こうの反応が全く無いってのが妙だ。普通、こんぐらいの歌を聞けば、何かしらの感情の揺らぎみたいなもんは絶対に出るはずなんだが」
それはつまり、歌が向こうの魂に響いていないということになるのではないだろうか。
リッカもパーラの歌には問題は無いというし、そうなると向こうの方に原因があると考えてしまう。
「転真体だから、やっぱり普通のやり方じゃダメだったりとかはどうだ?」
「…転真体つっても、結局は落ちたる種の延長みたいなもんだ。やり方は同じでいいはず。もし違うってんなら、あたいの手に負えねぇ。逃げるのもそろそろ考えた方がいいかもな」
歌で意思疎通をするというのはリッカ発案なので、その言い様は少し無責任な気もするが、一番詳しい者の言葉である以上、従うしかない。
パーラがサビまで歌い終わり、そのタイミングで狼の様子を窺うが、やはり反応はないまま。
今歌った曲は一番のみで二番以降はなく、ここまでを一つの区切りともできるため、一旦演奏をやめるなら今がちょうどいい。
「パーラ、どうも反応が今一だし、ここは一旦下がって仕切り直し―」
「だめ、演奏を止めないで。もう一回頭からやるよ」
最前に立つパーラへ近付き、仕切り直しを提案しかけた俺の言葉を、パーラの低く抑えた声が遮る。
俺の位置からはパーラの横顔しか見えないが、声の調子には何か確信めいたものが籠められている。
「いやしかしな、こうも反応がないと…。歌が届いてるかも怪しくないか?」
「そんなことはないよ。こいつは私の歌を聞いてる。だってこいつの目、ギラギラしてるもん」
それを聞き、俺も狼と目を合わせてみるが、パーラが言うギラギラとしたものというのは今一つ分からない。
これはもしや、歌を通じてパーラなりに何かの手ごたえでも感じているのか?
「どうなんだ?リッカ」
「うーん…こういうのは歌ってる奴の感覚だからな。言われればそうかもって程度だ」
歯切れの悪い言葉だと思うが、リッカがそう言うのならそうなのだろう。
ことあれに関するとなれば、リッカの言葉を信頼するしかない。
「けど、パーラがそう言うのならもう一回やってみようや。あたいが思うに、もしかしたら、何回か歌を聞かせる必要があるかもしれない」
「…わかった。パーラ、何か所か飛ばしていきなり歌に入るぞ。気を付けろ」
「うん、それでいいよ。その代わり、半分の速さでお願い!」
この間もマンドリンの音は止まっていなかったが、その甲斐あって狼はまだこっちに興味を持っているようだ。
再び演奏を頭からに戻し、今度は前奏を短縮していきなりパーラの歌が入る。
オーダー通り、演奏の速度は半分にしてあるが、そうすることで今まで歌っていた曲と雰囲気がガラリと変わるのだから、音楽というのは実に面白い。
バラード感が大分強まった曲に、パーラも情感を込めた歌い方に変わり、先程よりも歌に感情が乗っているのが俺でも分かる。
しかし狼の様子は変わらず、虫でも観察しているのかというぐらい、無機質な目をしている。
まぁ実際、奴にとっては俺達なんか虫けら同然なので、そういう目をするのはおかしくないが。
もうじきサビに突入するという頃、このままさっきの繰り返しかと、思わずため息を吐きそうになったその時だ。
狼が天を仰ぐような動きを見せ、遠吠えをするように甲高い音が一瞬聞こえたすぐ後、ドーンという、尾を引くような長い爆音が辺りに響いた。
それは何かが破裂したというような生易しいものではなく、隕石が落ちたかのような途轍もない音と、辺りの木々を揺らす激しい爆風が、狼から生み出されていた。
「演奏を止めるなアンディ!」
あまりにも突然のことに、マンドリンの手も止まってその場に蹲りかけた俺だったが、爆風に混じって耳に届いたリッカの叫び声で持ちなおす。
ハッとして演奏を続けるが、同時に狼と一番近いパーラの様子が気になった。
恐らく狼が発生源であるこの荒れ狂う風を、パーラは俺よりも強く受けているはずで、どこかに吹っ飛んでいったのではないかと不安を覚える。
だがその不安は杞憂となり、パーラがしっかりと大地に足をつけて立っている姿が確認できた。
下手をすれば吹き飛びそうな風の中、何かに魅入られたように只管歌い続けるパーラの顔は、楽し気なものだ。
まるで歌を通して狼と遊んでいるようなその様子から、転真体との意思疎通がちゃんと出来ていると思わされた。
せっかくいい方向に動き出した歌での意思疎通が、中断されて欲しくないとリッカも考えたのだろう。
隕石落下のようなこの爆風は、これまでと異なる動きを見せた狼が引き起こしたことは明らかで、狼の方はまだ遠吠えを続けており、それに合わせて断続的な爆風が発生している。
ライオンの咆哮なぞ目でもない、声自体が力を持っているかのようなそれに、転真体が持つ強大な力の一端を垣間見た気がした。
果たしてこの風が騒がしい中でマンドリンの音がパーラに届いているかは疑問だが、パーラの歌声が俺の耳でしっかりと聴こえているので、風魔術での増幅はまだ効いているようだ。
「は…ははっ…はははは!すげぇ!転真体が歌に答えるとこういう風になるのかよ!凄すぎるじゃあねぇか!」
リッカが興奮したように笑い声をあげ、今起きていることの凄さを体全体で表すように、暴風の中を飛び回っている。
竜巻の中を錯覚させる風の中も自在に動き回れるのは、流石妖精と言っていいものやら。
「リッカ!これは上手くいってるのか!?」
俺にはなんとも判断しにくい現状だが、分かっているように騒ぐリッカへ大声で尋ねる。
「上々さ!あの狼野郎、パーラの歌にちゃんと答えた!それどころか、すげぇ喜んでるぞ!ははっ!見ろよこの光景!森が歌ってやがる!わかるか!?アンディ!森が歌ってんだ!ははははははは!」
どうやら上手くいったようだが、それ以上に、リッカの狂ったような笑い声が少し不安だ。
なにやら森が歌うというのがリッカにとっては予想外のことのようだが、言われて周りの様子を窺ってみれば、森の木々が爆風以外にも動きを見せているのが分かる。
心なしか、木々が薄く光って見えるほどで、明らかに普通の光景じゃない。
これがリッカの言う、森が歌うというやつなのか、なるほど、確かにパーラの歌に合わせて森全体が揺れ動いているようにも見えないこともない。
いまだ風は強いが、不思議なことに荒々しさは徐々に無くなっていき、今ではパーラの歌声に合わせて遠吠えと木々のざわめくような音がしっかりと聴こえるようになっていた。
まるでパーラと狼、森の三つが呼吸を合わせて歌っているような光景は、奇妙なことにしっくりくるものがある。
最後まで歌い終わり、パーラがその声を止めるのに合わせ、狼の方も遠吠えをやめる。
それまでのフェス染みた合唱から、一瞬で凪いだように静まるのは、パーラと狼が言葉を交わさずともそうすると分かり合ったからだろうか。
ジッと狼と見つめ合うパーラ。
しかし次の瞬間、狼がパーラに覆いかぶさるようにして飛び掛かってきた。
喉元を食いちぎろうとするように、大きく開いた口がパーラの顔に寄せられたのを見て、俺はマンドリンを手放して魔術の準備をする。
友好関係の構築は失敗したというのと、あの牙が突き立つよりも先に俺の魔術が届くかどうかという二重の焦りに、震える俺の腕へ小さな手が添えられる。
「やめろ、アンディ。大丈夫だ。今のあれなら、パーラに害はねぇよ」
いつの間にか俺の傍へやってきていたリッカが、魔力を纏っている俺の手を宥めるようにさすった。
「あっひゃひゃひゃひゃ!くすぐっ……ぅべわ!」
リッカの言う通り、狼はパーラを害することなく、親愛を表すようにパーラの顔を舐めまわし始めた。
パーラもされるがままにしているが、くすぐったさから笑い声を堪えきれず、また力が強いのか、ほっぺが波打つような激しいお舐めを受けている。
あの恐ろしい狼がペットのようにじゃれついている姿には驚くが、これはつまり、パーラと狼の間で信用が築けたと見ていいのかもしれない。
現に、あの指向性を持って放たれていたプレッシャーのようなものはなくなっており、その点では警戒が解かれたという見方もできる。
「よーしゃよしゃよしゃよしゃ」
「クゥーン…ぶしゅっ」
ワシャワシャと狼の顎下をさするパーラに、甘えた声を出す狼の姿は、この短い時間でもう野生を手放したのかと思わされる。
そしてそれを見てウンウンと頷いているリッカは、何故かしたり顔だ。
まぁこの光景を作り出したのはリッカの尽力は大きいので、その態度をとれる資格はあるが。
「上手くいったみたいだな。そいつ、完全にパーラを友達だと思ってるぞ」
「うん、そうみたいだね。分かるよ」
狼の耳の裏を掻いてやりながら、リッカの言葉にパーラが楽しげな様子で応える。
分かると言うのは、やはり意思の疎通が出来ているということになるが、歌っていない今の状態でも狼の考えか感情を汲み取れるのは、俺には分からない何かをパーラが掴んでいるからだろうか。
「それでどうなんだ?ちゃんと人間は敵じゃないって伝わったんだよな?」
もう既にペット状態ではあるが、それがパーラ限定であるとも限らないため、本来の目的である人間という種族との友好はどうなったのかをパーラに尋ねる。
「そっちは大丈夫。しっかり人間は友達って思ってくれたよ。けど、住む場所を移るのは受け入れられなかった。ここは自分の縄張りだからって」
バウリ〇ガルもびっくりの意思疎通だな。
「そうか。まぁ人間を襲わないってんならそれでいいか。…襲わないよな?」
「だから大丈夫だよ。この森はこの子の棲み処ではあるけど、派手に荒らさなきゃ森の恵みを手にするのは別にいいってさ」
あの歌だけでそこまでの取り決めがなされたとは、歌というのは意外と伝達能力の高い手段なのかもしれない。
あるいは、パーラの交渉力がすごかったかのどちらかだが、まぁ前者だろう。
「そりゃあいい。これでタミン村の人達も薬草採取に来れるな。…どれ」
あまりにも犬っぽいため、俺も触ってみようかと手を伸ばしてみる。
すると、それまで目を細めてパーラとくっついていた狼が、俺の方へと視線を向けてきた。
ジッとこちらを見つめる目は、敵意こそないが俺という存在を品定めしているような、そんな雰囲気だ。
それを見てしまっては、撫でるのが少し躊躇われ、伸ばした手もそのままになったが、一度指先をスンスンと嗅いだ狼は、やれやれと言ったように首を大きく横に振り、俺の方へと頭を差し出してきた。
そのいかにも仕方なくといった様子に、さきほどまでのパーラとじゃれていた姿との温度差が見え、この時点で俺とパーラでは信頼度が違っているのもよく分かる。
それはともかくとして、向こうが差し出してきた頭を撫でないのは犬好きに非ず。
顎下から頬、耳の裏へと指の先でシャンプーするように撫でていくと、思わず漏れたという感じで欠伸をし始め、狼の目が徐々に蕩けるようにして細められていく。
妖精に近い存在と言われるが、こうして触れてみると普通の犬とそう変わらぬ手応えだ。
むしろ、想像していたごわごわ感はなく、ベルベットのような触感が心地いい。
抱き枕に欲しいくらいだ。
「ォオン…バフッ…」
ふっふっふ、たまらんだろう。
ここか?ここがええのんか?
日本にいた頃、俺は犬を飼っていたため、イヌ的な動物を垂らし込むのにはちょっとした自負がある。
この様子を見るに、この狼も俺の手に堕ちたも同然だ。
でかかろうとも所詮はイヌ科よ。
愛い奴め。
「手慣れてんなぁ、アンディ。お前、狼を手懐ける仕事でもしてたのか?」
その様子を見て、リッカが感心して俺の手元を覗き込んできた。
パーラも、蕩け始めた犬顔を面白そうに眺めている。
「まぁ狼って言うか、昔犬飼ってたからな。それと同じ要領だ」
この世界にも狼と犬はどちらも存在しているが、基本的に両方とも野生にいるもので、人に懐くことはそうない。
ただ、全く無い事ではないので、犬か狼を飼う人もそれなりにいたりする。
俺もその口だと思ってもらいたい。
「へぇ、色々やってんだな。ちょっとあたいにも撫でさせ―」
何気なくリッカが手を伸ばした瞬間、狼はその手を振り払うようにして大きく体を震わせ、後ろへと下がってリッカから距離を取ってしまった。
牙を剥くことはしないが、リッカをジトっとした目で見ているのは何故なのか。
そんな目を向けられても、もう一度リッカは撫でようと狼に近付くが、手を伸ばすとまた先程と同じことの繰り返しになる。
犬に好かれにくい人というのはいるが、ここまでの拒絶は初めて見た。
手を伸ばして固まるリッカが、哀れに見えてしまう。
「……おい!てめぇどういうつもりだよ!あたいが撫でてやろうってんだぞ!この愛らしい妖精のあたいが!」
自分で言うか。
「あははは、なんかリッカのことをあんまり好きじゃなさそうだね。なんかしたの?」
「なんもしてねぇよ。ちぇっ、別にいいや。そこまで撫でたいと思ってねーし!」
なんという捨て台詞感。
不貞腐れたようにリッカはそう言い捨て飛び去っていく。
まさかいじけてどこかに行ってしまうのかと思ったら、適当な木の枝に座り込み、頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。
興味ない風に言っていたが、それでも気にはしているようだ。
チラチラとこちらの様子を伺っているのがその証拠だ。
「そういやこいつって、普段どこにいるんだ?」
ねだるように頭を擦り透けてくる狼の首元を掻いてやりながら、ふと疑問に思ったことを口に出してみる。
意思疏通ができたパーラなら知っているのかもしれないと思ったが、首を振るパーラの様子に、そうホイホイと話ができている訳ではないようだ。
考えてみれば、歌でこちらの考えを伝えたのだから、今のような普通の状態では会話ができているわけがないか。
となれば、一番わかってそうな奴に聞いてみるとしよう。
枝の上で頬を膨らませているリッカに、視線で尋ねてみる。
「あん?…どこって、どっか適当なとこだろ。言っとくが、そいつは狼じゃなくて落ちたる種だぞ。一つの場所を寝床にしてるわけじゃあねぇんだ」
「そうなのか?てことは、朝から晩まで森の中をさまよってるってことか?」
「さまよってるって言い方はどうかと思うが、森と一体になって生きるってのが正しいな。そいつが眠くなりゃあ森が寝るのに適した振る舞いをするし、腹が減ったら適当な果物やら獲物やらの場所まで誘導する。落ちたる種が森で生きるってのはそういうことなんだよ」
そういえば、リッカからは自然が落ちたる種を守るように振る舞う特性ってのを聞いていたな。
この狼も、転真体ではあるが落ちたる種でもある。
森自体が落ちたる種のために快適な場所を作ってやるというわけか。
なんという上げ膳据え膳か。
羨ましい。
話のついでというわけではないが、先ほどリッカが言った森が歌うという表現にも言及してみる。
何やらかっこよさ気な表現だし、聞かずにいられない。
「あれな。文字通り、森が歌ったんだ…っつってもわかんねぇよな。あー、どう説明したらいいんだ?つまりなー」
説明に困って顔をしかめながらリッカが言うには、妖精が森の中で本気の全力で歌うと、木にしろ花にしろ、植物が反応するのたまにあることだと言う。
ただし、それはあくまでもちょっと変化がある程度で、花が舞ったり木がにょきにょき生えたりするようなことはなく、そう大したものではないそうだ。
だが今日、パーラが転真体を相手にして歌うという、妖精史の中でも恐らく初の試みで、植物がちょっと反応するなどというちゃちなもんじゃなく、森全体が荒ぶるような、まるで森自体が歌うかのような現象を見て大興奮したという。
「ちゃんとした話で残っちゃいねぇけど、すげぇ昔にいた妖精の王が似たようなことをやったってお伽話がある」
お伽噺でしか残っていないということは、それだけ古い昔に起きた非常にレアな現象だということか。
「そのお伽噺ってどんなのだ?簡単でいいから教えてえくれよ」
「うーん、簡単にか。…大分端折って言うと、大昔になんかの災害があって、この星のマナが無くなりかけたときがあったんだけど……マナってわかるよな?」
「魔力とは別に、このあらゆるものに宿る命の根元たる力ってやつだろ?大昔にそういう災害があったってはじめて聞くな」
「あったんだよ、あたいらが生まれるよりずっと昔にな。で、その時に妖精の王が同胞に安心して生きられる土地を生み出そうと、わずかに残ってた森を歌で妖精の理想郷に作り変えたって話だ。その話に、森が歌ったって表現があったのさ」
そういうことか。
リッカがあんなにも騒いだのも、そこに理由があったわけだ。
お伽話にもなった超常現象を、自らの目で見て体験したら、誰だってそうなる。
俺だってそうなる。
「ま、そんなわけで、あたいはすげー貴重な体験をしたけど、それはお前らも同じだ。人間であれに遭遇したのって、もしかしたらお前らが初めてかもよ?」
「まじか」
芸能人に会ったとか、蕎麦屋の出前がこけて頭から蕎麦を被ってる場面とか、それぐらいにレアなのだろうか。
こりゃいい冥途の土産が出来たかもしれん。
そんなことを話していると、突然狼が軽く吠えた。
俺達の注意を引いた狼が、パーラと俺にそれぞれ頭を擦りつけたと思ったら、そのまま森の奥の方へと走り去っていってしまった。
「……え?あ、ちょっと!」
その動きがあまりにも急なことで、思わずと言った感じでパーラが制止の声をあげるのみで、俺達はただ見送るしかできなかった。
「行っちまったな。もう俺達に用はねぇってか。まぁ実際そうなんだろうけど」
「あの野郎、あたいにだけなんも挨拶してねぇじゃねぇか。なんなんだよ」
あの頭すりすりが別れの挨拶だったようで、俺とパーラだけがそれを受け、リッカは見向きもされなかったことに不満を零すが、本当になぜこうも無視されるのか俺も不思議でならない。
ただ、敵意を向けられているとか嫌われているというようでもなく、何となく距離を取っているような感じなのは、もしかしたら妖精と転真体の組み合わせでは、そうなってしまう何かがあるのかもしれない。
知らんけど。
「まぁまぁ。私達の言いたいことはちゃんと伝わったし、向こうも理解を示してくれた。今回の目的は果たしたってことでいいじゃん」
「そうだな。これもリッカのおかげだし、今晩はなんか美味いものを用意するよ。だから機嫌なおせよ。な?」
また頬を膨らませ始めたリッカを宥めながら、俺達は森の外へと移動を開始した。
本音を言えば、あの狼には一緒にタミン村まで来てもらって、面通し的なことをしたかったが、その隙も無く去られてしまっては仕方がない。
とりあえず、この森に関してタミン村の人間が抱えていた問題は一先ず解決したと見て、後は村まで戻ってこのことを説明するだけだ。
どうせだし、この不機嫌なリッカをタミン村の説明に同席させてみるとしよう。
今回の件をありのまま話し、あの狼を森のヌシ的な形に据える方向で話をまとめるとして、リッカを使えば説明に説得力を持たせられる。
こんなのでも、妖精というのは土地によって崇められるほどに神聖な存在である。
こんなのでもだ。
あの狼がとんでもない存在だということを証明するためにも、リッカの証言は有用だ。
まぁとにかく、それもリッカの機嫌が直ってからの話になるが、こいつは美味いもので機嫌が直るチョロい奴だし、大丈夫だろう。
「お、そうだ。リッカ、干果は好きか?」
「…嫌いじゃない」
「そうか。なら、俺のとこにいい干果があってな。そりゃあもうあんむぁーいのでよ。それも食後に出してやろう」
「ゴクッ…」
リッカが喉を鳴らし、口元が緩みだしたのを見て俺は勝利を確信する。
この時点で、もう不機嫌さは半分ぐらい直っている。
ここに甘味でとどめとなるだろ。
その後に、上機嫌になるであろうリッカに先の話を持ち掛けるとしよう。
妖精、マジチョロい。
体感では三十分ほど経っただろうか。
やや速足気味で移動しているためか、もうかなり森の奥深いところへと来ていた。
やはりというか意外というか、あれだけ気が乗らないから歌わないと言ったのに、リッカはすぐに鼻歌を歌いだしていた。
今回も無意識に出ているようだが、狼を引き寄せるのに役立つので特に指摘せずにいる。
そうしていると、不意にリッカの声が止む。
ジッと一点を見つめ、その場で滞空する姿は、今朝にも見たものだ。
「…来たぞ」
囁くような小さい声のリッカに、俺達も前方へと視線を送る。
今日だけで二度の遭遇だが、少し離れた先に狼の姿があった。
相変わらずのプレッシャーに加え、何の感情も読み取れない目を向けられ、思わず後ずさりしそうになる足を叱咤する。
少し離れた場所に佇む狼は、これまでに遭遇した時と同様、観察するような無機質な目をしており、敵意も好意も感じられないのが逆に怖い。
「よし、いい具合にこっちに興味を持ってる。二人共、準備出来てるか?」
「おう、俺はいいぞ」
リッカの言葉に、俺は背負っていた荷物からマンドリンを取り出し、弦を軽く弾く。
調律にも問題はなく、このまますぐに演奏を始められるだろう。
その時、弦の音に反応してか、狼の耳がピクリと大きく動いた。
この反応は何となも犬っぽい感じで、少しだけ親近感を覚える。
少しの音にも敏感に反応したあたり、やはり音楽に対する感受性は相当なものかもしれない。
「ん゛ん゛…あー、あー……。よし、私も準備いいよ」
パーラも喉の調子を整え、いつでも歌えるという状態を伝えてきた。
「んじゃ後はアンディ、お前のきっかけで始めろ。あたいは少し離れて様子を見てっから、何かあったら逃げる隙くらいは作ってやる」
そう言ってリッカは飛び上がると、近くの木の枝へと腰を下ろす。
俺達と狼の両方を視界に捉えられる丁度いい位置にある枝だ。
狼も一度だけリッカを視線で追いかけるが、すぐに興味を無くしたように俺とパーラへと視線を戻した。
何かあったらというのは少し不安だが、万が一の備えはしてくれるようだ。
「…パーラ、始めるぞ。いいな?」
「うん、いつでも」
パーラの返答に合わせ、一度大きく息を吸ってからマンドリンの弦を弾いていく。
最初は一本ずつ爪弾いていき、しめやかなメロディーを辺りに響かせる。
マンドリンの音色はパーラの風魔術によって音を増幅させており、それなりに離れた距離にいる狼にもきちんと届いている。
その証拠に狼の反応は上々で、マンドリンが鳴りはじめてからは耳をしきりに動かし、積極的に音を拾おうとしているようだ。
ただ、その目にはまだ何の感情も窺えず、とりあえず興味は惹けたというところか。
次第に演奏は弦を全て使ったものへと移っていき、そろそろパーラの歌のパートだ。
目線でタイミングを伝えると、それを受けてパーラが高らかに歌いだす。
この曲自体の入りは穏やかなものだったが、歌の方はそうではない。
最初から力強く、腹の底から撃ちだすような歌いだしは、聞く側に中々のインパクトを与える。
歌声も風魔術で増幅されており、大型のスピーカーから出ているかのような大きな歌声となっていた。
リッカから伝授されたこの歌は、スローテンポの曲にパワーのある歌い方という組み合わせの少し変わったものだそうで、妖精のリッカからしても大分毛色の違う歌であるらしい。
元々、即興で作った曲だったのだが、こうしてあれと向き合って歌ってみると、妙にしっくりくるというか、この場で最もふさわしい曲なのではないかと思えるのだから不思議なものだ。
歌詞の方も、本来は妖精独自の言語を使うらしいが、そこはリッカが気を利かせて共通語で揃えてくれた。
共通語で歌うことが本来の歌と大分違ってしまい、狼にウケが悪くなる可能性も考えたが、思いが籠ってれば問題ないという、リッカの論を信じるとしよう。
曲はそろそろ、サビに当たる部分へ差し掛かろうとしている。
ここまで、狼に対して人間との友好を歌ってきたが、まだまだフリのようなものだ。
本当に伝えたいことは、やはりサビの部分に込められている。
一際声を張り、歌い上げるのは狼に対して選択を迫るものだ。
傲慢に思えるかもしれないが、隔絶した存在の狼に対して脆弱な人間が示せる選択肢は、共に生きるか、さもなくば互いに距離を置いて生きていくかの二つ。
俺にはリッカの言う、歌に思いが籠っているかどうかは分からないが、歌詞でそれを訴えかけて、そこにパーラが思いを乗せて歌っているとすれば、向こうからのリアクションをそろそろ期待したいところだ。
あの狼も耳を頻繁に動かしていることから、歌自体は聞こえているはずだが、こちらの意図がどれだけ伝わるかは、パーラにかかっている。
そろそろサビも終わるという頃だが、相変わらず狼の方はジッとこちらを見るだけで、特に他のリアクションは無い。
こっちの意図が十分に伝われば、向こうが同意にしろ拒否にしろ、何かしら分かりやすい反応を返すとリッカからは聞いている。
だが、未だ狼は彫像のように佇むのみだ。
いや、耳はしきりに動いているから、彫像のようには適切ではないか。
「…リッカ!」
何となく不安を覚えた俺は、演奏の手を止めずにリッカを呼び寄せる。
腰かけていた枝から飛び上がり、こちらへとやってきたリッカは俺の肩へと座った。
「なぁリッカ。今んとこどうなんだ?俺には今一つ、手応えがない気がするんだが」
今この場では、狼と対話しているのはパーラなのだが、歌っているのを中断させてここまでの手応えを尋ねるわけにもいかず、次いで一番そういうのに敏感そうなリッカに現状を尋ねることにした。
「正直、あんましよくねぇな。いや、パーラの歌はいいんだ。昨夜の練習より、しっかり思いも込められてる。意図は十分伝わってるはずなんだが…」
「はずなんだが?」
「向こうの反応が全く無いってのが妙だ。普通、こんぐらいの歌を聞けば、何かしらの感情の揺らぎみたいなもんは絶対に出るはずなんだが」
それはつまり、歌が向こうの魂に響いていないということになるのではないだろうか。
リッカもパーラの歌には問題は無いというし、そうなると向こうの方に原因があると考えてしまう。
「転真体だから、やっぱり普通のやり方じゃダメだったりとかはどうだ?」
「…転真体つっても、結局は落ちたる種の延長みたいなもんだ。やり方は同じでいいはず。もし違うってんなら、あたいの手に負えねぇ。逃げるのもそろそろ考えた方がいいかもな」
歌で意思疎通をするというのはリッカ発案なので、その言い様は少し無責任な気もするが、一番詳しい者の言葉である以上、従うしかない。
パーラがサビまで歌い終わり、そのタイミングで狼の様子を窺うが、やはり反応はないまま。
今歌った曲は一番のみで二番以降はなく、ここまでを一つの区切りともできるため、一旦演奏をやめるなら今がちょうどいい。
「パーラ、どうも反応が今一だし、ここは一旦下がって仕切り直し―」
「だめ、演奏を止めないで。もう一回頭からやるよ」
最前に立つパーラへ近付き、仕切り直しを提案しかけた俺の言葉を、パーラの低く抑えた声が遮る。
俺の位置からはパーラの横顔しか見えないが、声の調子には何か確信めいたものが籠められている。
「いやしかしな、こうも反応がないと…。歌が届いてるかも怪しくないか?」
「そんなことはないよ。こいつは私の歌を聞いてる。だってこいつの目、ギラギラしてるもん」
それを聞き、俺も狼と目を合わせてみるが、パーラが言うギラギラとしたものというのは今一つ分からない。
これはもしや、歌を通じてパーラなりに何かの手ごたえでも感じているのか?
「どうなんだ?リッカ」
「うーん…こういうのは歌ってる奴の感覚だからな。言われればそうかもって程度だ」
歯切れの悪い言葉だと思うが、リッカがそう言うのならそうなのだろう。
ことあれに関するとなれば、リッカの言葉を信頼するしかない。
「けど、パーラがそう言うのならもう一回やってみようや。あたいが思うに、もしかしたら、何回か歌を聞かせる必要があるかもしれない」
「…わかった。パーラ、何か所か飛ばしていきなり歌に入るぞ。気を付けろ」
「うん、それでいいよ。その代わり、半分の速さでお願い!」
この間もマンドリンの音は止まっていなかったが、その甲斐あって狼はまだこっちに興味を持っているようだ。
再び演奏を頭からに戻し、今度は前奏を短縮していきなりパーラの歌が入る。
オーダー通り、演奏の速度は半分にしてあるが、そうすることで今まで歌っていた曲と雰囲気がガラリと変わるのだから、音楽というのは実に面白い。
バラード感が大分強まった曲に、パーラも情感を込めた歌い方に変わり、先程よりも歌に感情が乗っているのが俺でも分かる。
しかし狼の様子は変わらず、虫でも観察しているのかというぐらい、無機質な目をしている。
まぁ実際、奴にとっては俺達なんか虫けら同然なので、そういう目をするのはおかしくないが。
もうじきサビに突入するという頃、このままさっきの繰り返しかと、思わずため息を吐きそうになったその時だ。
狼が天を仰ぐような動きを見せ、遠吠えをするように甲高い音が一瞬聞こえたすぐ後、ドーンという、尾を引くような長い爆音が辺りに響いた。
それは何かが破裂したというような生易しいものではなく、隕石が落ちたかのような途轍もない音と、辺りの木々を揺らす激しい爆風が、狼から生み出されていた。
「演奏を止めるなアンディ!」
あまりにも突然のことに、マンドリンの手も止まってその場に蹲りかけた俺だったが、爆風に混じって耳に届いたリッカの叫び声で持ちなおす。
ハッとして演奏を続けるが、同時に狼と一番近いパーラの様子が気になった。
恐らく狼が発生源であるこの荒れ狂う風を、パーラは俺よりも強く受けているはずで、どこかに吹っ飛んでいったのではないかと不安を覚える。
だがその不安は杞憂となり、パーラがしっかりと大地に足をつけて立っている姿が確認できた。
下手をすれば吹き飛びそうな風の中、何かに魅入られたように只管歌い続けるパーラの顔は、楽し気なものだ。
まるで歌を通して狼と遊んでいるようなその様子から、転真体との意思疎通がちゃんと出来ていると思わされた。
せっかくいい方向に動き出した歌での意思疎通が、中断されて欲しくないとリッカも考えたのだろう。
隕石落下のようなこの爆風は、これまでと異なる動きを見せた狼が引き起こしたことは明らかで、狼の方はまだ遠吠えを続けており、それに合わせて断続的な爆風が発生している。
ライオンの咆哮なぞ目でもない、声自体が力を持っているかのようなそれに、転真体が持つ強大な力の一端を垣間見た気がした。
果たしてこの風が騒がしい中でマンドリンの音がパーラに届いているかは疑問だが、パーラの歌声が俺の耳でしっかりと聴こえているので、風魔術での増幅はまだ効いているようだ。
「は…ははっ…はははは!すげぇ!転真体が歌に答えるとこういう風になるのかよ!凄すぎるじゃあねぇか!」
リッカが興奮したように笑い声をあげ、今起きていることの凄さを体全体で表すように、暴風の中を飛び回っている。
竜巻の中を錯覚させる風の中も自在に動き回れるのは、流石妖精と言っていいものやら。
「リッカ!これは上手くいってるのか!?」
俺にはなんとも判断しにくい現状だが、分かっているように騒ぐリッカへ大声で尋ねる。
「上々さ!あの狼野郎、パーラの歌にちゃんと答えた!それどころか、すげぇ喜んでるぞ!ははっ!見ろよこの光景!森が歌ってやがる!わかるか!?アンディ!森が歌ってんだ!ははははははは!」
どうやら上手くいったようだが、それ以上に、リッカの狂ったような笑い声が少し不安だ。
なにやら森が歌うというのがリッカにとっては予想外のことのようだが、言われて周りの様子を窺ってみれば、森の木々が爆風以外にも動きを見せているのが分かる。
心なしか、木々が薄く光って見えるほどで、明らかに普通の光景じゃない。
これがリッカの言う、森が歌うというやつなのか、なるほど、確かにパーラの歌に合わせて森全体が揺れ動いているようにも見えないこともない。
いまだ風は強いが、不思議なことに荒々しさは徐々に無くなっていき、今ではパーラの歌声に合わせて遠吠えと木々のざわめくような音がしっかりと聴こえるようになっていた。
まるでパーラと狼、森の三つが呼吸を合わせて歌っているような光景は、奇妙なことにしっくりくるものがある。
最後まで歌い終わり、パーラがその声を止めるのに合わせ、狼の方も遠吠えをやめる。
それまでのフェス染みた合唱から、一瞬で凪いだように静まるのは、パーラと狼が言葉を交わさずともそうすると分かり合ったからだろうか。
ジッと狼と見つめ合うパーラ。
しかし次の瞬間、狼がパーラに覆いかぶさるようにして飛び掛かってきた。
喉元を食いちぎろうとするように、大きく開いた口がパーラの顔に寄せられたのを見て、俺はマンドリンを手放して魔術の準備をする。
友好関係の構築は失敗したというのと、あの牙が突き立つよりも先に俺の魔術が届くかどうかという二重の焦りに、震える俺の腕へ小さな手が添えられる。
「やめろ、アンディ。大丈夫だ。今のあれなら、パーラに害はねぇよ」
いつの間にか俺の傍へやってきていたリッカが、魔力を纏っている俺の手を宥めるようにさすった。
「あっひゃひゃひゃひゃ!くすぐっ……ぅべわ!」
リッカの言う通り、狼はパーラを害することなく、親愛を表すようにパーラの顔を舐めまわし始めた。
パーラもされるがままにしているが、くすぐったさから笑い声を堪えきれず、また力が強いのか、ほっぺが波打つような激しいお舐めを受けている。
あの恐ろしい狼がペットのようにじゃれついている姿には驚くが、これはつまり、パーラと狼の間で信用が築けたと見ていいのかもしれない。
現に、あの指向性を持って放たれていたプレッシャーのようなものはなくなっており、その点では警戒が解かれたという見方もできる。
「よーしゃよしゃよしゃよしゃ」
「クゥーン…ぶしゅっ」
ワシャワシャと狼の顎下をさするパーラに、甘えた声を出す狼の姿は、この短い時間でもう野生を手放したのかと思わされる。
そしてそれを見てウンウンと頷いているリッカは、何故かしたり顔だ。
まぁこの光景を作り出したのはリッカの尽力は大きいので、その態度をとれる資格はあるが。
「上手くいったみたいだな。そいつ、完全にパーラを友達だと思ってるぞ」
「うん、そうみたいだね。分かるよ」
狼の耳の裏を掻いてやりながら、リッカの言葉にパーラが楽しげな様子で応える。
分かると言うのは、やはり意思の疎通が出来ているということになるが、歌っていない今の状態でも狼の考えか感情を汲み取れるのは、俺には分からない何かをパーラが掴んでいるからだろうか。
「それでどうなんだ?ちゃんと人間は敵じゃないって伝わったんだよな?」
もう既にペット状態ではあるが、それがパーラ限定であるとも限らないため、本来の目的である人間という種族との友好はどうなったのかをパーラに尋ねる。
「そっちは大丈夫。しっかり人間は友達って思ってくれたよ。けど、住む場所を移るのは受け入れられなかった。ここは自分の縄張りだからって」
バウリ〇ガルもびっくりの意思疎通だな。
「そうか。まぁ人間を襲わないってんならそれでいいか。…襲わないよな?」
「だから大丈夫だよ。この森はこの子の棲み処ではあるけど、派手に荒らさなきゃ森の恵みを手にするのは別にいいってさ」
あの歌だけでそこまでの取り決めがなされたとは、歌というのは意外と伝達能力の高い手段なのかもしれない。
あるいは、パーラの交渉力がすごかったかのどちらかだが、まぁ前者だろう。
「そりゃあいい。これでタミン村の人達も薬草採取に来れるな。…どれ」
あまりにも犬っぽいため、俺も触ってみようかと手を伸ばしてみる。
すると、それまで目を細めてパーラとくっついていた狼が、俺の方へと視線を向けてきた。
ジッとこちらを見つめる目は、敵意こそないが俺という存在を品定めしているような、そんな雰囲気だ。
それを見てしまっては、撫でるのが少し躊躇われ、伸ばした手もそのままになったが、一度指先をスンスンと嗅いだ狼は、やれやれと言ったように首を大きく横に振り、俺の方へと頭を差し出してきた。
そのいかにも仕方なくといった様子に、さきほどまでのパーラとじゃれていた姿との温度差が見え、この時点で俺とパーラでは信頼度が違っているのもよく分かる。
それはともかくとして、向こうが差し出してきた頭を撫でないのは犬好きに非ず。
顎下から頬、耳の裏へと指の先でシャンプーするように撫でていくと、思わず漏れたという感じで欠伸をし始め、狼の目が徐々に蕩けるようにして細められていく。
妖精に近い存在と言われるが、こうして触れてみると普通の犬とそう変わらぬ手応えだ。
むしろ、想像していたごわごわ感はなく、ベルベットのような触感が心地いい。
抱き枕に欲しいくらいだ。
「ォオン…バフッ…」
ふっふっふ、たまらんだろう。
ここか?ここがええのんか?
日本にいた頃、俺は犬を飼っていたため、イヌ的な動物を垂らし込むのにはちょっとした自負がある。
この様子を見るに、この狼も俺の手に堕ちたも同然だ。
でかかろうとも所詮はイヌ科よ。
愛い奴め。
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その様子を見て、リッカが感心して俺の手元を覗き込んできた。
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「へぇ、色々やってんだな。ちょっとあたいにも撫でさせ―」
何気なくリッカが手を伸ばした瞬間、狼はその手を振り払うようにして大きく体を震わせ、後ろへと下がってリッカから距離を取ってしまった。
牙を剥くことはしないが、リッカをジトっとした目で見ているのは何故なのか。
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「……おい!てめぇどういうつもりだよ!あたいが撫でてやろうってんだぞ!この愛らしい妖精のあたいが!」
自分で言うか。
「あははは、なんかリッカのことをあんまり好きじゃなさそうだね。なんかしたの?」
「なんもしてねぇよ。ちぇっ、別にいいや。そこまで撫でたいと思ってねーし!」
なんという捨て台詞感。
不貞腐れたようにリッカはそう言い捨て飛び去っていく。
まさかいじけてどこかに行ってしまうのかと思ったら、適当な木の枝に座り込み、頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。
興味ない風に言っていたが、それでも気にはしているようだ。
チラチラとこちらの様子を伺っているのがその証拠だ。
「そういやこいつって、普段どこにいるんだ?」
ねだるように頭を擦り透けてくる狼の首元を掻いてやりながら、ふと疑問に思ったことを口に出してみる。
意思疏通ができたパーラなら知っているのかもしれないと思ったが、首を振るパーラの様子に、そうホイホイと話ができている訳ではないようだ。
考えてみれば、歌でこちらの考えを伝えたのだから、今のような普通の状態では会話ができているわけがないか。
となれば、一番わかってそうな奴に聞いてみるとしよう。
枝の上で頬を膨らませているリッカに、視線で尋ねてみる。
「あん?…どこって、どっか適当なとこだろ。言っとくが、そいつは狼じゃなくて落ちたる種だぞ。一つの場所を寝床にしてるわけじゃあねぇんだ」
「そうなのか?てことは、朝から晩まで森の中をさまよってるってことか?」
「さまよってるって言い方はどうかと思うが、森と一体になって生きるってのが正しいな。そいつが眠くなりゃあ森が寝るのに適した振る舞いをするし、腹が減ったら適当な果物やら獲物やらの場所まで誘導する。落ちたる種が森で生きるってのはそういうことなんだよ」
そういえば、リッカからは自然が落ちたる種を守るように振る舞う特性ってのを聞いていたな。
この狼も、転真体ではあるが落ちたる種でもある。
森自体が落ちたる種のために快適な場所を作ってやるというわけか。
なんという上げ膳据え膳か。
羨ましい。
話のついでというわけではないが、先ほどリッカが言った森が歌うという表現にも言及してみる。
何やらかっこよさ気な表現だし、聞かずにいられない。
「あれな。文字通り、森が歌ったんだ…っつってもわかんねぇよな。あー、どう説明したらいいんだ?つまりなー」
説明に困って顔をしかめながらリッカが言うには、妖精が森の中で本気の全力で歌うと、木にしろ花にしろ、植物が反応するのたまにあることだと言う。
ただし、それはあくまでもちょっと変化がある程度で、花が舞ったり木がにょきにょき生えたりするようなことはなく、そう大したものではないそうだ。
だが今日、パーラが転真体を相手にして歌うという、妖精史の中でも恐らく初の試みで、植物がちょっと反応するなどというちゃちなもんじゃなく、森全体が荒ぶるような、まるで森自体が歌うかのような現象を見て大興奮したという。
「ちゃんとした話で残っちゃいねぇけど、すげぇ昔にいた妖精の王が似たようなことをやったってお伽話がある」
お伽噺でしか残っていないということは、それだけ古い昔に起きた非常にレアな現象だということか。
「そのお伽噺ってどんなのだ?簡単でいいから教えてえくれよ」
「うーん、簡単にか。…大分端折って言うと、大昔になんかの災害があって、この星のマナが無くなりかけたときがあったんだけど……マナってわかるよな?」
「魔力とは別に、このあらゆるものに宿る命の根元たる力ってやつだろ?大昔にそういう災害があったってはじめて聞くな」
「あったんだよ、あたいらが生まれるよりずっと昔にな。で、その時に妖精の王が同胞に安心して生きられる土地を生み出そうと、わずかに残ってた森を歌で妖精の理想郷に作り変えたって話だ。その話に、森が歌ったって表現があったのさ」
そういうことか。
リッカがあんなにも騒いだのも、そこに理由があったわけだ。
お伽話にもなった超常現象を、自らの目で見て体験したら、誰だってそうなる。
俺だってそうなる。
「ま、そんなわけで、あたいはすげー貴重な体験をしたけど、それはお前らも同じだ。人間であれに遭遇したのって、もしかしたらお前らが初めてかもよ?」
「まじか」
芸能人に会ったとか、蕎麦屋の出前がこけて頭から蕎麦を被ってる場面とか、それぐらいにレアなのだろうか。
こりゃいい冥途の土産が出来たかもしれん。
そんなことを話していると、突然狼が軽く吠えた。
俺達の注意を引いた狼が、パーラと俺にそれぞれ頭を擦りつけたと思ったら、そのまま森の奥の方へと走り去っていってしまった。
「……え?あ、ちょっと!」
その動きがあまりにも急なことで、思わずと言った感じでパーラが制止の声をあげるのみで、俺達はただ見送るしかできなかった。
「行っちまったな。もう俺達に用はねぇってか。まぁ実際そうなんだろうけど」
「あの野郎、あたいにだけなんも挨拶してねぇじゃねぇか。なんなんだよ」
あの頭すりすりが別れの挨拶だったようで、俺とパーラだけがそれを受け、リッカは見向きもされなかったことに不満を零すが、本当になぜこうも無視されるのか俺も不思議でならない。
ただ、敵意を向けられているとか嫌われているというようでもなく、何となく距離を取っているような感じなのは、もしかしたら妖精と転真体の組み合わせでは、そうなってしまう何かがあるのかもしれない。
知らんけど。
「まぁまぁ。私達の言いたいことはちゃんと伝わったし、向こうも理解を示してくれた。今回の目的は果たしたってことでいいじゃん」
「そうだな。これもリッカのおかげだし、今晩はなんか美味いものを用意するよ。だから機嫌なおせよ。な?」
また頬を膨らませ始めたリッカを宥めながら、俺達は森の外へと移動を開始した。
本音を言えば、あの狼には一緒にタミン村まで来てもらって、面通し的なことをしたかったが、その隙も無く去られてしまっては仕方がない。
とりあえず、この森に関してタミン村の人間が抱えていた問題は一先ず解決したと見て、後は村まで戻ってこのことを説明するだけだ。
どうせだし、この不機嫌なリッカをタミン村の説明に同席させてみるとしよう。
今回の件をありのまま話し、あの狼を森のヌシ的な形に据える方向で話をまとめるとして、リッカを使えば説明に説得力を持たせられる。
こんなのでも、妖精というのは土地によって崇められるほどに神聖な存在である。
こんなのでもだ。
あの狼がとんでもない存在だということを証明するためにも、リッカの証言は有用だ。
まぁとにかく、それもリッカの機嫌が直ってからの話になるが、こいつは美味いもので機嫌が直るチョロい奴だし、大丈夫だろう。
「お、そうだ。リッカ、干果は好きか?」
「…嫌いじゃない」
「そうか。なら、俺のとこにいい干果があってな。そりゃあもうあんむぁーいのでよ。それも食後に出してやろう」
「ゴクッ…」
リッカが喉を鳴らし、口元が緩みだしたのを見て俺は勝利を確信する。
この時点で、もう不機嫌さは半分ぐらい直っている。
ここに甘味でとどめとなるだろ。
その後に、上機嫌になるであろうリッカに先の話を持ち掛けるとしよう。
妖精、マジチョロい。
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