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相棒、死す
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ベスネー村の田植えは年に二回、春と秋の二期に行われている。
村の周りには春用の田と秋用の田が存在しており、休耕と田植えが計画的に行われているため、ほぼ一年中米が収穫されるようになっていた。
年間を通して温暖な地域であることに加え、米の価値が認められたことで作付面積を増やしたこともあって、ベスネー村の周りは猛スピードで開拓が進み、今では米作りの一大産地として、アシャドル王国のみならず、近隣の国にもその名前が知られ始めているそうだ。
トマからの手紙で今年最初の田植えがあると聞き、早速俺とパーラは飛空艇でベスネー村へ向かい、凡そ一週間ほどの間田植えを手伝い、その礼にと、昨年刈った新古米をかなりの量融通してもらえた。
これで当分は米食に困ることはない。
想定よりも大分早く田植えが終わり、このままベスネー村にしばらく滞在するのも悪くなかったが、イアソー山の方でまだ仕事が残っているので、渋々と言った感じで戻ることにした。
その際、昆布の在庫を補充するため、パーラにはアイリーンのところに向かってもらうことになった。
別に俺が飛空艇で買い付けに行ってもよかったのだが、この役割分担はパーラに強く押し切られている。というのも、パーラは昆布の仕入れのついでにロニとも会っているため、その楽しみを取られたくないようだ。
まぁ俺もロニへの伝言や手紙をパーラに託しているし、向こうからの手紙も持ってくるので別に構わないとは思っているが。
そういうわけで現在、パーラが飛空艇でソーマルガへ、俺はバイクでイアソー山へと別れて行動していた。
サイドカーに野営道具を積み、久々の一人旅だ。
飛空艇に比べればどうしてもバイクの速度は遅く、目的地まではそれなりに時間はかかったが、キャンプ気分で意外とリフレッシュできた。
つい口笛も吹いてしまう。
四日ほどかけてイアソー山の麓にある、今ではもう町と言えるほどに発展している場所まで戻ってこれた。
時刻はまだ昼前と言った感じで、頭上で輝く太陽がその存在を主張しまくっている。
道中、特に問題らしい問題はなかったが、途中に寄った村で仕入れた情報では、街道を行く修道騎士の一団を見かけたそうで、向かった方角的にもイアソー山へ向かったと思われる。
恐らく、ガイバ辺りが呼んだのだろう。
少し前にあった土砂崩れの救助作業の際、死にたてホヤホヤの人間を電気ショックで蘇生させた件で、ヤゼス教が調査に乗り出してくるかもしれないとはセインから聞かせられていた。
その時はイアソー山から離れていたガイバだったが、少し遅れて死者蘇生を知り、ペルケティアに出した応援要請にでも応えてやってきたのがその一団だったのかもしれない。
町の入り口までバイクが辿り着くと、遠目にこちらを目指して駆けてくる人影が目に付いた。
商人ギルドの制服を纏った大柄な男性は、距離がある状態でもそうと見分けがつく。
ガイバだ。
バイクを止めて待っていると、険しい顔のガイバが俺の目の前までやってきて口を開く。
「やぁ、アンディさん。思ったよりも早く戻って来たみたいだな」
一見何気ない会話のようではあるが、険しい顔つきなのは一体どういうことなのか。
「ええ、思いのほか早く終わったもので。あぁ、そうだ。お土産がありますよ」
ベスネー村の周りはキノコがよく取れるため、お土産としていくつか持ってきていた。
ガイバやセインらに配ろうと小分けにしていた麻袋の一つに目線が行く。
「いや、土産は後で受け取るとしよう。それよりも、まずは聞いてくれ。これから君は、秘蹟認定というものにかけられることとなる」
「秘蹟認定?」
麻袋に伸ばしかけた手を止め、ガイバの声にオウム返しをする。
ガイバの纏う雰囲気も硬質なものであるため、どうも面倒なことが起きそうだということだけは、ひしひしと伝わってきた。
「…つまり俺が死人を生き返らせたことで、ヤゼス教の偉い人が悪い魔術師かどうかを調べようとしていると?」
「厳密にはもうちょっと違うが、そういう認識で間違いじゃない」
ガイバが俺に伝えてきたのは、これから俺はヤゼス教から派遣されてきたガイバ以外の聖鈴騎士も交えた秘蹟認定という、魔女裁判のようなものにかけられるということだ。
その裁判に立ち会うのは、ガイバを含めた二人の聖鈴騎士となる。
ヤゼス教において、死者蘇生はヤゼスのみが無しえた奇跡であるため、今それをやってのけた俺は、ヤゼス教のお偉いさんにとって興味と脅威を同時に抱く存在なのだとか。
わざわざ聖鈴騎士が二人も立ち会っての取り調べは、かなり厳しいものになるだろうとガイバは言うが、俺としては別に死者蘇生に関して後ろめたいことは何もないので、正面から受けて立つつもりだ。
「一応聞きますけど、もし俺がヤゼス教にとって脅威や不適切な存在だと判断されたら、ガイバさん達はどういう対応を取るつもりですか?」
その秘蹟認定とやらが魔女裁判のような、有罪ありきのものだとしたら、俺も逃亡を選択肢に入れた対応を考えておく必要がある。
「……恐らく、その場でグロウズ卿自ら処刑を執り行うことになる。勿論、私は君という人間を知っているから、可能な限り弁護はする。だが、グロウズ卿がそう判断したのなら、止めることはできない」
嬉しいことを言ってくれるじゃないの。
付き合いはそう長くはないが、それでも良好な関係を築けていたおかげか、裁判官側であるガイバが味方にまわってくれるというのは素直に嬉しく、ありがたい。
「そのグロウズ卿というのも同じ聖鈴騎士なら、ガイバさんの意見は無視されないのでは?」
「同じとは言っても、向こうの方が序列は大分上だからな。平時ならともかく、ことが死者復活に関わる秘蹟認定となれば、グロウズ卿も決断は躊躇わんぞ」
グロウズ卿とやらは中々過激な性格をしているようだが、今この地にいるヤゼス教の関係者の中でも序列が上の存在となれば、独自に判断して俺が不利になるのも十分にあり得る。
俺のやったことは何か邪悪な秘法とかではないものの、この世界の人間、特に宗教関係者にはどう受け取られるかは分からないため、最悪は二つ三つ質問に答えただけで首を刎ねられる可能性もゼロではない。
「いいか?秘蹟認定の場でグロウズ卿に聞かれたことには正直かつ簡潔に答えるんだ。下手に言い繕ってつけ込む隙を晒すな。発言の補足は私の方からもする。とにかくアンデッドとして生き返らせていないことを強調すれば―」
「へぇ、それがアンディ?思ったよりも普通だね」
いつの間にか、俺達のすぐそばまで見知らぬ男がやってきており、そいつがガイバの声を遮るようにして放った言葉には妙な酷薄さが滲んでいた。
一体どういう理屈か、近付いてくる姿は勿論、気配すらこうして声を掛けられるまで察知できなかった。
「グロウズ卿っ…もう来られたのですか」
苦々し気なガイバの口から出た言葉で、目の前にいる男がさっきまで話題にしていたヒューイット・グロウズだと分かった。
細い目付きに柔らかく笑みを浮かべた口元と、柔和な雰囲気を醸し出している様はどこかの御曹司かホストと言った感じだ。
ヤゼス教の騎士階級が身に纏うとされる、修道服と鎧が融合した独特な衣装がなければ、このグロウズが聖鈴騎士だとは誰が思うだろうか。
この男がこれから俺の運命を決める男というわけか。
「伝令を聞いてすぐに来たからね。おかげで昼食を食べ損なったよ。…しかしまぁ、これはこれで丁度良かったかな」
「それはどういう―」
淡々と言うグロウズの言葉に、ガイバが訝しげな声を上げたのと同時に、俺はその場から横っ飛びで離れる。
ほんの僅かだけ目で捉えられたグロウズの動きで、背筋を走った怖気が俺にそんな行動をさせた。
すると俺の足が地面に着地するより一瞬早く、バイクが甲高い金属音を立てながら縦に真っ二つとなっていた。
誰が何をしたのかは地面に降り立ち、視線を上げたことで凡そ把握できた。
ガイバから離れた場所に立っていたグロウズの右手には、いつの間にか銀色の鞭が握られており、その先がバイクへと伸びていることから、どうもグロウズがあの鞭の一撃でバイクを両断したと見ていいだろう。
10メートル弱あった距離をものともせず、鉄の塊とも言えるバイクをああもするとは、この男、かなり腕が立つようだ。
「グロウズ卿!一体何を!?」
「お!上手くかわしたねぇ。んー…対象に逃亡の恐れがあったから足を潰した、ってことにしといてよ」
高い技量のなせる技か、生きているかのように鞭がとぐろを巻き、それを手元へ戻したグロウズの口からは中々悪辣な言葉が飛び出た。
逃亡を許さないためのものとは理解はしたが、一言の警告も無い攻撃に到底納得は出来ない。
なにより、下手をしなくとも俺に当たっていたかもしれないとなれば、明確な害意があるとしか思えない。
「彼にそのような兆候はありませんでした!私の話にも耳を傾けていたし、秘蹟認定の場への出頭にも応じると、態度で示していました!」
「その秘蹟認定だがね、彼にそれを行うことはしないよ」
「は?」
激しい口調から一転、間の抜けた声を上げたガイバにグロウズが向き直り、懐から取り出した封筒を差し出した。
「実は僕、今回の派遣の際に本国の司教の一人から別口で命令を受けていてね。これ、指令書ね。特別に見せてあげるよ」
ガイバが怪訝な顔で封筒を受け取り、その中身を読みだすと表情は更に険しい物へと変わっていった。
どうやら書かれている内容は、ガイバにとって相当ショッキングなもののようだ。
「これはっ…どういうことですか!これではまるで、罪人を召喚するかのような文言ではありませんか!」
「どうもこうも、書いてある通りだよ。これは僕達よりもずっと上の方で決まったことだ。彼が罪人かどうかは別として、秘蹟認定は行わずに本国へ移送する。そのために僕はここに来たんだから。本当はもっと早く教えたかったけど、どうも君、彼と親しいみたいだから言いだせなくて。ごめんね」
聞こえてくる話によれば、どうやら俺はペルケティアに移送されるらしい。
ただ、それはグロウズに与えられていた秘密の指令で、ガイバが全く関知していたことではないのが、この場にピリピリとした空気を作り出している。
今この場は、お偉いさんの指示で俺をペルケティアに連れて行きたいグロウズと、自分のあずかり知らぬところで動かれたガイバという、二人の聖鈴騎士が睨み合う修羅場一歩手前の構図が出来ていた。
不愉快そうな顔のガイバと、ヘラヘラとした調子のグロウズは少しの間睨み合っていたが、不意にこちらを見たガイバは申し訳なさそうな顔を俯かせてしまった。
どうやらグロウズの序列が上であることに加え、指令書まで持っていることで自分が出来ることはないと悟ったらしく、悔しさと諦めが同居した何とも言えない表情がのぞき見えた。
「納得してない顔だね。ま、そうなるだろうと思ったから、言わなかったんだけど。後はもうガイバ君はいいよ。僕だけで十分だ。……そういうわけだから。大人しく捕まってくれるかな?アンディ君」
俺を余所に話は進んだようで、秘蹟認定は流れた代わりに、俺はペルケティアに連行されることになったらしい。
これがもし、俺に非があるか向こうに正当性があるのなら、大人しく捕まることも検討できただろう。
だがしかし、ついさっきのグロウズの行動によってその選択肢はもう消し飛んでいる。
「何がどういうわけなんだか知らんが、断る」
きっぱりとそう言い放つ。
「おや、それは聖鈴騎士としての職務を妨害するということだね?うーん、仕方ないな、うん仕方ない。実力行使しかないね、うん。あぁ一応、僕は聖鈴騎士の中でもやる方だと教えておくよ」
口調こそいかにも残念そうだが、グロウズの顔は楽し気なものだ。
これは俺もよく見たことがある、戦いに楽しみを見出している人間のリアクションだろう。
正直、さっきのバイクに向かって振るわれた鞭の一撃だけでも、グロウズの強さは相当なものだと推測できる。
安全を考えるなら、戦わずに一度捕まり、逃亡する機会をうかがうのが賢いやり方だ。
しかし俺の心はそれを強く拒絶している。
なぜなら、グロウズに対して激しい怒りを覚えているからだ。
俺自身を傷付けるのならまだいいだろう。
いや本当はよくないが、それでもグッと堪えて許そう。
だがバイクを壊されてはもうダメだ。
長年一緒に旅を続け、俺達の足となってくれた相棒であるバイクだ。
多少傷付いたとかのレベルじゃなく、ここまで真っ二つにされては怒りのメーターの針は一気に振り切れてしまった。
もしもここで、噴射装置を身に着けていたら、一度逃げて別の手を打つという展開もあったが、生憎バイク以外のハイテク装置は飛空艇に積んだままだ。
そのことが、俺にこれからすることの決断を後押しした。
「そうかい。正直、聖鈴騎士がどれだけ強いのかは知らないが、人のバイクをこうまでしてくれたんだ。少しきついお仕置き程度で済ますつもりはないと言っておく」
やられたことがことなので、ちょっと小突いて終わりなどと微塵も考えていない。
腕の一本か二本はへし折らせてもらおう。
最早残骸と成り果てたバイクの中から、細く伸ばした磁力を使ってピンポイントで剣を手繰り寄せ、切っ先をグロウズへと向けて構える。
この時点で、ガイバが止めに入るか加勢に入るか考えていたが、意外なことに静観の構えだ。
これは恐らく、グロウズの受けた指令に対する不服が大きく、俺とグロウズどちらの手助けもしないことで抗議の姿勢を見せているのかもしれない。
そういった態度は騎士としてどうかと思うが、個人としての俺はその姿勢を有難く思う。
「ふむ……いーい目をしている。やる方だとは思っていたけど、これは思ったより楽しめそうだ」
舌なめずりをして笑みを深め、もう戦いを楽しもうというのを隠そうとしなくなったグロウズは、手に持ったままだった鞭をゆるくしならせ、波打たせるようにして自らの周りへとその先端を走らせていく。
風を切る音と地面を叩く音が交互に鳴り、いつあのバイクを両断した一撃が飛び出してくるのか警戒して、俺の視線はグロウズの手元へ釘付けになる。
この鞭という武器、騎士はおろか冒険者の中でも使い手はまずいない珍しいものだ。
剣や槍と違い、うねうねと動く部分を自在に操るのは並外れた技量が必要で、才能に恵まれていなければまともに扱うこともできない。
下手な使い方をすれば、自分が怪我を負うこともあり得る、使い手にこそ危険な武器でもあった。
しかし、使いこなせばその優れた射程と速度で、剣や槍など比べ物にならないほど一方的な攻撃を繰り出せると言われていて、真の使い手に出会うことがあったら、弓での一方的な遠距離攻撃のみが唯一の対策と言える。
テレビなんかで聞いた話では、正しく振るわれた鞭の先端は音の壁を突破するらしいし、革製の鞭でも勢いよく当たれば大人の男が一発で絶命する衝撃を秘めているとかいないとか。
身体強化を使ったとして、一撃を食らって耐えられるかどうかも未知数な相手なら、一発も貰わずに倒すことも考えなくてはならない。
中々ハードな相手だ。
ほんの僅かにだが、鞭の音が変わる。
伸びた風切り音と言えばいいのか、明らかにそれまでと違う異音を耳が捉えたことで、グロウズが攻撃態勢に移ったと判断した。
その瞬間、足元の土を操作して盛り上げ、目の前に壁を作る。
鞭の速度を考え、目で追えないなら防御すればいいと判断した。
速度に優れているとはいえ、質量差を考えればそこそこ厚さのある土壁で十分に防げる。
そう思っていた。
「おや、いいのかい?」
結構な距離があるというのに、恐ろしくはっきりと聴こえたグロウズの声。
何を言っているのかと疑問に思う暇もなく、俺の目の前にあった土の塊が弾け飛んだ。
「うぉおうっ!?」
思わずその場でしゃがみこむと、土壁の破片が礫となって頭上を飛び去っていった。
軽トラックの激突にも耐えると自負している土壁が、まさか一発で壊されるとは。
見えてはいなかったがあの鞭でこれをやったとするなら、生身で受けなかったのはやはり正解だったか。
予想外の激しい攻撃に肝を冷やしたが、今度は俺の方から攻める。
そのまま残っている土壁の下半分に手を触れ、分解と再構築を行い、土塊の弾丸をグロウズがいた場所目がけて発射する。
当たり所によっては骨折もあり得る土の弾丸だ。
まだ動いていないのなら、殺到する礫に撃たれて悲鳴を上げることだろう。
「え、ちょっあいででででで!」
その目論見は見事に当たり、少し離れたところから悲鳴が上がる。
やったか、と思ったが、その悲鳴が少し妙だ。
先程聞いたグロウズの声よりも、若干だが低めな声のような気がする。
そう、どちらかというとガイバの声に近いような…。
「うは~、凄い威力だ。ガイバ君も多少は防いでいるけど、ありゃ痛いだろうねぇ」
呑気な声が、俺の背後から聞こえてきた。
振り向くと、いつの間に移動したのかグロウズが傷一つなく立っている。
こいつがここにいるということは、あの悲鳴の主はやはりガイバか。
そう言えば、グロウズに下がれとは言われてはいたが、特に遠くに行くことなく立っていたので、先程グロウズを狙って放った土魔術の射線上にも入っていたはずだ。
「いつの間に…」
「ん?さっき鞭を振ったのと同時に動いてただけだよ」
事も無げにそう言い放つが、それはつまり、俺が察知できないレベルで攻撃と移動を両立させたことになる。
確かに攻撃と移動は同時に行うのは難しくないが、あれだけの威力を保ちつつ、相手に悟られずに背後を取る高速移動をするということに、グロウズのずば抜けた実力の高さが窺えた。
「それよりも、さっきの土の壁はよかったよ。一瞬であれだけの強度を持った壁を作るなんて、並の魔術師には無理だ。僕じゃなきゃ防がれてたね」
「そりゃどうも。けど、あれを壊したあんたは俺より強い、並以上の人間のさらに上の実力者だって意味に受け取れるが?」
「あれ?そう言ったつもりだけど、通じなかったのかな。君、意外と頭悪いね」
「あ゛?」
なんなんだ、こいつは。
さっきから随分と煽ってきて癪に障る。
実力が上の人間が下の人間に対し、傲慢な態度を取るのはおかしなことではない。
同時に、言葉とは裏腹にこちらの戦闘能力を侮っていないのは、攻撃と回避のどちらにも移れる絶妙な距離を保っていることから分かる。
つまり、この態度はわざとで、俺の逆上を誘っているのかもしれない。
あるいは、元々の性格というのも考えられるが、俺の勘は前者だと訴えてきている。
「へぇ、俺より強いってんなら手加減はいらないか。これでも死なせないように配慮してたんだが、その必要はなさそう…だっ!」
ちょっぴり頭に来ていた俺は、強く地面を叩いて土魔術を発動させた。
余裕綽々といった様子で立っているグロウズの足元に落とし穴が発生する。
距離が近いせいもあって、穴の直径も深さもかなりの物を生み出したが、それは当然のごとくグロウズがその場からジャンプしたことで回避された。
しかしこれは想定済み。
今まで戦った強者は、どいつも落とし穴は軽く回避して見せていたので、こいつにも通じないとは思っていた。
本命はジャンプしたグロウズ目がけて発射する電撃だ。
地面に叩きつけた手とは反対の手を、ジャンプしたグロウズに向けて突き出す。
魔術によって掌から迸った雷は、空中にいて次への行動が著しく制限されているグロウズを正確に貫く―かに思われた。
だが実際は、電撃が届くよりも一瞬早く、グロウズの体は掻き消えてしまった。
いや、掻き消えたというのは正確ではないか。
いつの間に伸ばしていたのか、グロウズが地面へと食い込ませた鞭を巻き上げるようにして、空中から地上へと高速で引っ張られていく。
スパイダーマ〇もかくやといった機動力で、噴射装置がない時の俺なら参考にしていたであろう見事な動きだ。
恐らく先ほどもそうして俺の背後を取ったのだろうが、今度は宙にいたおかげで見逃さなかった。
「器用な真似を!」
鞭一本で空中からの帰還をこなしてみせたグロウズの技量には舌を巻くが、俺も攻撃の手を緩めることはしない。
あの鞭が次にしなりを見せたら、完全にこちらが不利だ。
地上に降りたグロウズ目がけ、追撃に土の弾丸を発射する。
さっきの電撃にはつい魔力を多めに込めてしまっていたため、魔力残量を気にして土魔術に切り替えたが、その判断は間違いだったと思い知らされた。
まるで新体操の選手が操るリボンのように、グロウズが自分の体の周りで躍らせている鞭によって土の弾丸は悉く防がれてしまう。
攻撃や移動だけでなく、ああして防御にも使いこなされてしまうと、奴にも最優の戦士だとの賛辞を禁じ得ない。
俺が仕掛けたフェイントはあっさりと見破られる上に、グロウズの方は余裕をもって攻撃も防御をこなしやがる。
この一瞬の間で、グロウズには俺を遥かに超える戦闘経験があることがよく分かった。
土がダメならやはり雷かと、攻撃を高出力の電撃へと切り替える。
残る魔力の大半をつぎ込み、照射の時間と範囲を最大限に広げた電撃を放つ。
質量のある土と違い、目標までの到達速度は群を抜いていると自負する雷は、独特のジグザグの起動を描きながら進む。
瞬きよりも早くグロウズへと迫り、未だ回転を続ける鞭の森を青白い光が突破するかと思われた次の瞬間。
吸い込まれるようにして電撃は鞭へと纏わりつき、そのまま周囲へと散ってしまった。
「…え」
予想していなかった光景に、呆けてしまった俺の体に激しい衝撃が襲い掛かってきた。
どうやら今の攻撃のすぐ後に、グロウズは俺目がけて鞭を振るっていたようで、わずかに電撃から遅れて俺を鞭が叩いたらしい。
「~~~~~~~ぅぐッッあ!!」
当たったのは体の正面に一発、左腹から右肩に向けての逆袈裟に鞭が通っていったわけだが、その痛みにろくな絶叫も上げられない。
雷化での無効化を考える暇すらない高速の攻撃。
燃えるようなのは勿論、肉が内側から引きずり出されるような痛みと針を隙間なく撃ち込まれるような痛みが同時に発生し、それが時間とともに治まるどころかドンドン強くなっていく。
痛い痛いとは聞いていたが、これほどのものか。
想像を絶する激痛で、立っていることすらできずに膝を突く。
浅く荒い呼吸を繰り返し、何とか精神を保っているが、これなら一撃食らってそのまま気絶できていたほうが楽だったかもしれない。
痛みに思わず視線を下げれば、胸の鎧は削り取られたように割れ、その下に着込んでいた服ごと皮膚が裂けてしまっていた。
剣で斬られたような鋭さもなく、荒々しく窪んだ傷跡からはジワリと血が滲み出てくるが、痛みの割に出血が少ないのは鞭で負う傷の特徴なのだろう。
「おやおや、いいところに当たったみたいだ。鞭で打たれるのは初めてかな?どうだい、痛いだろう?古人曰く、『鞭の一撃は鍛えた肉体にも女性の柔肌にも無差別に等しく痛みを与える最強の攻撃』だそうだ」
もしかしてそれ言ったの範馬の人?
などと、おかしなことを考えながら痛みに耐え、目の前までゆっくりと歩いてきたグロウズを睨む。
鞭の痛み云々は同意するところだが、それよりも先程の魔術が散らされた現象についての方も、なかなかショックが大きい。
「なん…で、魔術が」
「ん?あぁ、さっきのかい?…まぁいいか。教えてあげるよ。魔導器って知ってる?」
グロウズの口から飛び出した名前に、思わず強く歯を食いしばる。
なんとも忌々しいことか。
知ってるも何も、少し前にこの身でその厄介さを味わったところだ。
運がいいのか悪いのか、普通の冒険者が一生にお目に書かれるかどうかの魔導器に、まさかこの短い期間で二度も遭遇するとは。
俺は一体どんな星の下に生まれたんだ?
ラノベの主人公並みだな。
「…その鞭が魔導器で?」
「いや、この鞭は魔導器じゃない。ひな形となった魔導器は別にあって、この鞭はそれを模倣したものなんだ。作った職人が言うには、見た目はよく再現できてるらしいけど、原器の性能に半分も届いていない、よく出来た出来損ないだそうだ。もっとも、こうして魔術を分散させる機能は原器にも無いらしいから、そこは優れてるといえるけど」
確かに、魔導器は魔術師の放った魔術を吸収するのであって、あんな感じで散らすような風にはならない。
魔導器の模造品としてオリジナルには劣っていても、こうして対魔術師用としてはオリジナルと同等に使えるので、面倒な武器であることに変わりない。
「さて、答え合わせはこの辺にして、そろそろこの遊びも終わりにしようか」
「あれで遊び…」
結構マジでやったつもりだが、グロウズにとっては今の戦いも遊びに過ぎないようだ。
そこには純然たる実力の隔たりがあり、俺は圧倒的に格下だという事実を付きつけられた。
「そ、遊び。本当は問答無用で君を昏倒させてもよかったんだけど、一応これでも神に仕える身なんでね。こういう戦いの場ってのは貴重なんだよ。だからちょっと楽しもうと思っただけさ」
つまり、その気になっていれば、俺は手も足も出ずに気絶させられて、今頃は連行されていたということか。
(俺という人間が舐められている、圧倒的屈辱ッッ!!)
「まぁそんなわけで、都合よく君も動けないみたいだし、後は抵抗できないように手足の一・二本は斬り飛ばしておこうかな。あ、持ち運びしやすいように頭と胴体以外全部無くしてもいいかもね」
「え、いや待―」
まるで定食の味噌汁の具を決めるかのような気軽さで恐ろしいことを言うや否や、俺の右手と右足が一瞬で切断され、陽光を浴びながら宙を舞った。
親の顔より見慣れた自分の手足を見間違うわけもなく、俺の体の一部は確かにグロウズの言葉通りに斬り飛ばされてしまった。
村の周りには春用の田と秋用の田が存在しており、休耕と田植えが計画的に行われているため、ほぼ一年中米が収穫されるようになっていた。
年間を通して温暖な地域であることに加え、米の価値が認められたことで作付面積を増やしたこともあって、ベスネー村の周りは猛スピードで開拓が進み、今では米作りの一大産地として、アシャドル王国のみならず、近隣の国にもその名前が知られ始めているそうだ。
トマからの手紙で今年最初の田植えがあると聞き、早速俺とパーラは飛空艇でベスネー村へ向かい、凡そ一週間ほどの間田植えを手伝い、その礼にと、昨年刈った新古米をかなりの量融通してもらえた。
これで当分は米食に困ることはない。
想定よりも大分早く田植えが終わり、このままベスネー村にしばらく滞在するのも悪くなかったが、イアソー山の方でまだ仕事が残っているので、渋々と言った感じで戻ることにした。
その際、昆布の在庫を補充するため、パーラにはアイリーンのところに向かってもらうことになった。
別に俺が飛空艇で買い付けに行ってもよかったのだが、この役割分担はパーラに強く押し切られている。というのも、パーラは昆布の仕入れのついでにロニとも会っているため、その楽しみを取られたくないようだ。
まぁ俺もロニへの伝言や手紙をパーラに託しているし、向こうからの手紙も持ってくるので別に構わないとは思っているが。
そういうわけで現在、パーラが飛空艇でソーマルガへ、俺はバイクでイアソー山へと別れて行動していた。
サイドカーに野営道具を積み、久々の一人旅だ。
飛空艇に比べればどうしてもバイクの速度は遅く、目的地まではそれなりに時間はかかったが、キャンプ気分で意外とリフレッシュできた。
つい口笛も吹いてしまう。
四日ほどかけてイアソー山の麓にある、今ではもう町と言えるほどに発展している場所まで戻ってこれた。
時刻はまだ昼前と言った感じで、頭上で輝く太陽がその存在を主張しまくっている。
道中、特に問題らしい問題はなかったが、途中に寄った村で仕入れた情報では、街道を行く修道騎士の一団を見かけたそうで、向かった方角的にもイアソー山へ向かったと思われる。
恐らく、ガイバ辺りが呼んだのだろう。
少し前にあった土砂崩れの救助作業の際、死にたてホヤホヤの人間を電気ショックで蘇生させた件で、ヤゼス教が調査に乗り出してくるかもしれないとはセインから聞かせられていた。
その時はイアソー山から離れていたガイバだったが、少し遅れて死者蘇生を知り、ペルケティアに出した応援要請にでも応えてやってきたのがその一団だったのかもしれない。
町の入り口までバイクが辿り着くと、遠目にこちらを目指して駆けてくる人影が目に付いた。
商人ギルドの制服を纏った大柄な男性は、距離がある状態でもそうと見分けがつく。
ガイバだ。
バイクを止めて待っていると、険しい顔のガイバが俺の目の前までやってきて口を開く。
「やぁ、アンディさん。思ったよりも早く戻って来たみたいだな」
一見何気ない会話のようではあるが、険しい顔つきなのは一体どういうことなのか。
「ええ、思いのほか早く終わったもので。あぁ、そうだ。お土産がありますよ」
ベスネー村の周りはキノコがよく取れるため、お土産としていくつか持ってきていた。
ガイバやセインらに配ろうと小分けにしていた麻袋の一つに目線が行く。
「いや、土産は後で受け取るとしよう。それよりも、まずは聞いてくれ。これから君は、秘蹟認定というものにかけられることとなる」
「秘蹟認定?」
麻袋に伸ばしかけた手を止め、ガイバの声にオウム返しをする。
ガイバの纏う雰囲気も硬質なものであるため、どうも面倒なことが起きそうだということだけは、ひしひしと伝わってきた。
「…つまり俺が死人を生き返らせたことで、ヤゼス教の偉い人が悪い魔術師かどうかを調べようとしていると?」
「厳密にはもうちょっと違うが、そういう認識で間違いじゃない」
ガイバが俺に伝えてきたのは、これから俺はヤゼス教から派遣されてきたガイバ以外の聖鈴騎士も交えた秘蹟認定という、魔女裁判のようなものにかけられるということだ。
その裁判に立ち会うのは、ガイバを含めた二人の聖鈴騎士となる。
ヤゼス教において、死者蘇生はヤゼスのみが無しえた奇跡であるため、今それをやってのけた俺は、ヤゼス教のお偉いさんにとって興味と脅威を同時に抱く存在なのだとか。
わざわざ聖鈴騎士が二人も立ち会っての取り調べは、かなり厳しいものになるだろうとガイバは言うが、俺としては別に死者蘇生に関して後ろめたいことは何もないので、正面から受けて立つつもりだ。
「一応聞きますけど、もし俺がヤゼス教にとって脅威や不適切な存在だと判断されたら、ガイバさん達はどういう対応を取るつもりですか?」
その秘蹟認定とやらが魔女裁判のような、有罪ありきのものだとしたら、俺も逃亡を選択肢に入れた対応を考えておく必要がある。
「……恐らく、その場でグロウズ卿自ら処刑を執り行うことになる。勿論、私は君という人間を知っているから、可能な限り弁護はする。だが、グロウズ卿がそう判断したのなら、止めることはできない」
嬉しいことを言ってくれるじゃないの。
付き合いはそう長くはないが、それでも良好な関係を築けていたおかげか、裁判官側であるガイバが味方にまわってくれるというのは素直に嬉しく、ありがたい。
「そのグロウズ卿というのも同じ聖鈴騎士なら、ガイバさんの意見は無視されないのでは?」
「同じとは言っても、向こうの方が序列は大分上だからな。平時ならともかく、ことが死者復活に関わる秘蹟認定となれば、グロウズ卿も決断は躊躇わんぞ」
グロウズ卿とやらは中々過激な性格をしているようだが、今この地にいるヤゼス教の関係者の中でも序列が上の存在となれば、独自に判断して俺が不利になるのも十分にあり得る。
俺のやったことは何か邪悪な秘法とかではないものの、この世界の人間、特に宗教関係者にはどう受け取られるかは分からないため、最悪は二つ三つ質問に答えただけで首を刎ねられる可能性もゼロではない。
「いいか?秘蹟認定の場でグロウズ卿に聞かれたことには正直かつ簡潔に答えるんだ。下手に言い繕ってつけ込む隙を晒すな。発言の補足は私の方からもする。とにかくアンデッドとして生き返らせていないことを強調すれば―」
「へぇ、それがアンディ?思ったよりも普通だね」
いつの間にか、俺達のすぐそばまで見知らぬ男がやってきており、そいつがガイバの声を遮るようにして放った言葉には妙な酷薄さが滲んでいた。
一体どういう理屈か、近付いてくる姿は勿論、気配すらこうして声を掛けられるまで察知できなかった。
「グロウズ卿っ…もう来られたのですか」
苦々し気なガイバの口から出た言葉で、目の前にいる男がさっきまで話題にしていたヒューイット・グロウズだと分かった。
細い目付きに柔らかく笑みを浮かべた口元と、柔和な雰囲気を醸し出している様はどこかの御曹司かホストと言った感じだ。
ヤゼス教の騎士階級が身に纏うとされる、修道服と鎧が融合した独特な衣装がなければ、このグロウズが聖鈴騎士だとは誰が思うだろうか。
この男がこれから俺の運命を決める男というわけか。
「伝令を聞いてすぐに来たからね。おかげで昼食を食べ損なったよ。…しかしまぁ、これはこれで丁度良かったかな」
「それはどういう―」
淡々と言うグロウズの言葉に、ガイバが訝しげな声を上げたのと同時に、俺はその場から横っ飛びで離れる。
ほんの僅かだけ目で捉えられたグロウズの動きで、背筋を走った怖気が俺にそんな行動をさせた。
すると俺の足が地面に着地するより一瞬早く、バイクが甲高い金属音を立てながら縦に真っ二つとなっていた。
誰が何をしたのかは地面に降り立ち、視線を上げたことで凡そ把握できた。
ガイバから離れた場所に立っていたグロウズの右手には、いつの間にか銀色の鞭が握られており、その先がバイクへと伸びていることから、どうもグロウズがあの鞭の一撃でバイクを両断したと見ていいだろう。
10メートル弱あった距離をものともせず、鉄の塊とも言えるバイクをああもするとは、この男、かなり腕が立つようだ。
「グロウズ卿!一体何を!?」
「お!上手くかわしたねぇ。んー…対象に逃亡の恐れがあったから足を潰した、ってことにしといてよ」
高い技量のなせる技か、生きているかのように鞭がとぐろを巻き、それを手元へ戻したグロウズの口からは中々悪辣な言葉が飛び出た。
逃亡を許さないためのものとは理解はしたが、一言の警告も無い攻撃に到底納得は出来ない。
なにより、下手をしなくとも俺に当たっていたかもしれないとなれば、明確な害意があるとしか思えない。
「彼にそのような兆候はありませんでした!私の話にも耳を傾けていたし、秘蹟認定の場への出頭にも応じると、態度で示していました!」
「その秘蹟認定だがね、彼にそれを行うことはしないよ」
「は?」
激しい口調から一転、間の抜けた声を上げたガイバにグロウズが向き直り、懐から取り出した封筒を差し出した。
「実は僕、今回の派遣の際に本国の司教の一人から別口で命令を受けていてね。これ、指令書ね。特別に見せてあげるよ」
ガイバが怪訝な顔で封筒を受け取り、その中身を読みだすと表情は更に険しい物へと変わっていった。
どうやら書かれている内容は、ガイバにとって相当ショッキングなもののようだ。
「これはっ…どういうことですか!これではまるで、罪人を召喚するかのような文言ではありませんか!」
「どうもこうも、書いてある通りだよ。これは僕達よりもずっと上の方で決まったことだ。彼が罪人かどうかは別として、秘蹟認定は行わずに本国へ移送する。そのために僕はここに来たんだから。本当はもっと早く教えたかったけど、どうも君、彼と親しいみたいだから言いだせなくて。ごめんね」
聞こえてくる話によれば、どうやら俺はペルケティアに移送されるらしい。
ただ、それはグロウズに与えられていた秘密の指令で、ガイバが全く関知していたことではないのが、この場にピリピリとした空気を作り出している。
今この場は、お偉いさんの指示で俺をペルケティアに連れて行きたいグロウズと、自分のあずかり知らぬところで動かれたガイバという、二人の聖鈴騎士が睨み合う修羅場一歩手前の構図が出来ていた。
不愉快そうな顔のガイバと、ヘラヘラとした調子のグロウズは少しの間睨み合っていたが、不意にこちらを見たガイバは申し訳なさそうな顔を俯かせてしまった。
どうやらグロウズの序列が上であることに加え、指令書まで持っていることで自分が出来ることはないと悟ったらしく、悔しさと諦めが同居した何とも言えない表情がのぞき見えた。
「納得してない顔だね。ま、そうなるだろうと思ったから、言わなかったんだけど。後はもうガイバ君はいいよ。僕だけで十分だ。……そういうわけだから。大人しく捕まってくれるかな?アンディ君」
俺を余所に話は進んだようで、秘蹟認定は流れた代わりに、俺はペルケティアに連行されることになったらしい。
これがもし、俺に非があるか向こうに正当性があるのなら、大人しく捕まることも検討できただろう。
だがしかし、ついさっきのグロウズの行動によってその選択肢はもう消し飛んでいる。
「何がどういうわけなんだか知らんが、断る」
きっぱりとそう言い放つ。
「おや、それは聖鈴騎士としての職務を妨害するということだね?うーん、仕方ないな、うん仕方ない。実力行使しかないね、うん。あぁ一応、僕は聖鈴騎士の中でもやる方だと教えておくよ」
口調こそいかにも残念そうだが、グロウズの顔は楽し気なものだ。
これは俺もよく見たことがある、戦いに楽しみを見出している人間のリアクションだろう。
正直、さっきのバイクに向かって振るわれた鞭の一撃だけでも、グロウズの強さは相当なものだと推測できる。
安全を考えるなら、戦わずに一度捕まり、逃亡する機会をうかがうのが賢いやり方だ。
しかし俺の心はそれを強く拒絶している。
なぜなら、グロウズに対して激しい怒りを覚えているからだ。
俺自身を傷付けるのならまだいいだろう。
いや本当はよくないが、それでもグッと堪えて許そう。
だがバイクを壊されてはもうダメだ。
長年一緒に旅を続け、俺達の足となってくれた相棒であるバイクだ。
多少傷付いたとかのレベルじゃなく、ここまで真っ二つにされては怒りのメーターの針は一気に振り切れてしまった。
もしもここで、噴射装置を身に着けていたら、一度逃げて別の手を打つという展開もあったが、生憎バイク以外のハイテク装置は飛空艇に積んだままだ。
そのことが、俺にこれからすることの決断を後押しした。
「そうかい。正直、聖鈴騎士がどれだけ強いのかは知らないが、人のバイクをこうまでしてくれたんだ。少しきついお仕置き程度で済ますつもりはないと言っておく」
やられたことがことなので、ちょっと小突いて終わりなどと微塵も考えていない。
腕の一本か二本はへし折らせてもらおう。
最早残骸と成り果てたバイクの中から、細く伸ばした磁力を使ってピンポイントで剣を手繰り寄せ、切っ先をグロウズへと向けて構える。
この時点で、ガイバが止めに入るか加勢に入るか考えていたが、意外なことに静観の構えだ。
これは恐らく、グロウズの受けた指令に対する不服が大きく、俺とグロウズどちらの手助けもしないことで抗議の姿勢を見せているのかもしれない。
そういった態度は騎士としてどうかと思うが、個人としての俺はその姿勢を有難く思う。
「ふむ……いーい目をしている。やる方だとは思っていたけど、これは思ったより楽しめそうだ」
舌なめずりをして笑みを深め、もう戦いを楽しもうというのを隠そうとしなくなったグロウズは、手に持ったままだった鞭をゆるくしならせ、波打たせるようにして自らの周りへとその先端を走らせていく。
風を切る音と地面を叩く音が交互に鳴り、いつあのバイクを両断した一撃が飛び出してくるのか警戒して、俺の視線はグロウズの手元へ釘付けになる。
この鞭という武器、騎士はおろか冒険者の中でも使い手はまずいない珍しいものだ。
剣や槍と違い、うねうねと動く部分を自在に操るのは並外れた技量が必要で、才能に恵まれていなければまともに扱うこともできない。
下手な使い方をすれば、自分が怪我を負うこともあり得る、使い手にこそ危険な武器でもあった。
しかし、使いこなせばその優れた射程と速度で、剣や槍など比べ物にならないほど一方的な攻撃を繰り出せると言われていて、真の使い手に出会うことがあったら、弓での一方的な遠距離攻撃のみが唯一の対策と言える。
テレビなんかで聞いた話では、正しく振るわれた鞭の先端は音の壁を突破するらしいし、革製の鞭でも勢いよく当たれば大人の男が一発で絶命する衝撃を秘めているとかいないとか。
身体強化を使ったとして、一撃を食らって耐えられるかどうかも未知数な相手なら、一発も貰わずに倒すことも考えなくてはならない。
中々ハードな相手だ。
ほんの僅かにだが、鞭の音が変わる。
伸びた風切り音と言えばいいのか、明らかにそれまでと違う異音を耳が捉えたことで、グロウズが攻撃態勢に移ったと判断した。
その瞬間、足元の土を操作して盛り上げ、目の前に壁を作る。
鞭の速度を考え、目で追えないなら防御すればいいと判断した。
速度に優れているとはいえ、質量差を考えればそこそこ厚さのある土壁で十分に防げる。
そう思っていた。
「おや、いいのかい?」
結構な距離があるというのに、恐ろしくはっきりと聴こえたグロウズの声。
何を言っているのかと疑問に思う暇もなく、俺の目の前にあった土の塊が弾け飛んだ。
「うぉおうっ!?」
思わずその場でしゃがみこむと、土壁の破片が礫となって頭上を飛び去っていった。
軽トラックの激突にも耐えると自負している土壁が、まさか一発で壊されるとは。
見えてはいなかったがあの鞭でこれをやったとするなら、生身で受けなかったのはやはり正解だったか。
予想外の激しい攻撃に肝を冷やしたが、今度は俺の方から攻める。
そのまま残っている土壁の下半分に手を触れ、分解と再構築を行い、土塊の弾丸をグロウズがいた場所目がけて発射する。
当たり所によっては骨折もあり得る土の弾丸だ。
まだ動いていないのなら、殺到する礫に撃たれて悲鳴を上げることだろう。
「え、ちょっあいででででで!」
その目論見は見事に当たり、少し離れたところから悲鳴が上がる。
やったか、と思ったが、その悲鳴が少し妙だ。
先程聞いたグロウズの声よりも、若干だが低めな声のような気がする。
そう、どちらかというとガイバの声に近いような…。
「うは~、凄い威力だ。ガイバ君も多少は防いでいるけど、ありゃ痛いだろうねぇ」
呑気な声が、俺の背後から聞こえてきた。
振り向くと、いつの間に移動したのかグロウズが傷一つなく立っている。
こいつがここにいるということは、あの悲鳴の主はやはりガイバか。
そう言えば、グロウズに下がれとは言われてはいたが、特に遠くに行くことなく立っていたので、先程グロウズを狙って放った土魔術の射線上にも入っていたはずだ。
「いつの間に…」
「ん?さっき鞭を振ったのと同時に動いてただけだよ」
事も無げにそう言い放つが、それはつまり、俺が察知できないレベルで攻撃と移動を両立させたことになる。
確かに攻撃と移動は同時に行うのは難しくないが、あれだけの威力を保ちつつ、相手に悟られずに背後を取る高速移動をするということに、グロウズのずば抜けた実力の高さが窺えた。
「それよりも、さっきの土の壁はよかったよ。一瞬であれだけの強度を持った壁を作るなんて、並の魔術師には無理だ。僕じゃなきゃ防がれてたね」
「そりゃどうも。けど、あれを壊したあんたは俺より強い、並以上の人間のさらに上の実力者だって意味に受け取れるが?」
「あれ?そう言ったつもりだけど、通じなかったのかな。君、意外と頭悪いね」
「あ゛?」
なんなんだ、こいつは。
さっきから随分と煽ってきて癪に障る。
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ちょっぴり頭に来ていた俺は、強く地面を叩いて土魔術を発動させた。
余裕綽々といった様子で立っているグロウズの足元に落とし穴が発生する。
距離が近いせいもあって、穴の直径も深さもかなりの物を生み出したが、それは当然のごとくグロウズがその場からジャンプしたことで回避された。
しかしこれは想定済み。
今まで戦った強者は、どいつも落とし穴は軽く回避して見せていたので、こいつにも通じないとは思っていた。
本命はジャンプしたグロウズ目がけて発射する電撃だ。
地面に叩きつけた手とは反対の手を、ジャンプしたグロウズに向けて突き出す。
魔術によって掌から迸った雷は、空中にいて次への行動が著しく制限されているグロウズを正確に貫く―かに思われた。
だが実際は、電撃が届くよりも一瞬早く、グロウズの体は掻き消えてしまった。
いや、掻き消えたというのは正確ではないか。
いつの間に伸ばしていたのか、グロウズが地面へと食い込ませた鞭を巻き上げるようにして、空中から地上へと高速で引っ張られていく。
スパイダーマ〇もかくやといった機動力で、噴射装置がない時の俺なら参考にしていたであろう見事な動きだ。
恐らく先ほどもそうして俺の背後を取ったのだろうが、今度は宙にいたおかげで見逃さなかった。
「器用な真似を!」
鞭一本で空中からの帰還をこなしてみせたグロウズの技量には舌を巻くが、俺も攻撃の手を緩めることはしない。
あの鞭が次にしなりを見せたら、完全にこちらが不利だ。
地上に降りたグロウズ目がけ、追撃に土の弾丸を発射する。
さっきの電撃にはつい魔力を多めに込めてしまっていたため、魔力残量を気にして土魔術に切り替えたが、その判断は間違いだったと思い知らされた。
まるで新体操の選手が操るリボンのように、グロウズが自分の体の周りで躍らせている鞭によって土の弾丸は悉く防がれてしまう。
攻撃や移動だけでなく、ああして防御にも使いこなされてしまうと、奴にも最優の戦士だとの賛辞を禁じ得ない。
俺が仕掛けたフェイントはあっさりと見破られる上に、グロウズの方は余裕をもって攻撃も防御をこなしやがる。
この一瞬の間で、グロウズには俺を遥かに超える戦闘経験があることがよく分かった。
土がダメならやはり雷かと、攻撃を高出力の電撃へと切り替える。
残る魔力の大半をつぎ込み、照射の時間と範囲を最大限に広げた電撃を放つ。
質量のある土と違い、目標までの到達速度は群を抜いていると自負する雷は、独特のジグザグの起動を描きながら進む。
瞬きよりも早くグロウズへと迫り、未だ回転を続ける鞭の森を青白い光が突破するかと思われた次の瞬間。
吸い込まれるようにして電撃は鞭へと纏わりつき、そのまま周囲へと散ってしまった。
「…え」
予想していなかった光景に、呆けてしまった俺の体に激しい衝撃が襲い掛かってきた。
どうやら今の攻撃のすぐ後に、グロウズは俺目がけて鞭を振るっていたようで、わずかに電撃から遅れて俺を鞭が叩いたらしい。
「~~~~~~~ぅぐッッあ!!」
当たったのは体の正面に一発、左腹から右肩に向けての逆袈裟に鞭が通っていったわけだが、その痛みにろくな絶叫も上げられない。
雷化での無効化を考える暇すらない高速の攻撃。
燃えるようなのは勿論、肉が内側から引きずり出されるような痛みと針を隙間なく撃ち込まれるような痛みが同時に発生し、それが時間とともに治まるどころかドンドン強くなっていく。
痛い痛いとは聞いていたが、これほどのものか。
想像を絶する激痛で、立っていることすらできずに膝を突く。
浅く荒い呼吸を繰り返し、何とか精神を保っているが、これなら一撃食らってそのまま気絶できていたほうが楽だったかもしれない。
痛みに思わず視線を下げれば、胸の鎧は削り取られたように割れ、その下に着込んでいた服ごと皮膚が裂けてしまっていた。
剣で斬られたような鋭さもなく、荒々しく窪んだ傷跡からはジワリと血が滲み出てくるが、痛みの割に出血が少ないのは鞭で負う傷の特徴なのだろう。
「おやおや、いいところに当たったみたいだ。鞭で打たれるのは初めてかな?どうだい、痛いだろう?古人曰く、『鞭の一撃は鍛えた肉体にも女性の柔肌にも無差別に等しく痛みを与える最強の攻撃』だそうだ」
もしかしてそれ言ったの範馬の人?
などと、おかしなことを考えながら痛みに耐え、目の前までゆっくりと歩いてきたグロウズを睨む。
鞭の痛み云々は同意するところだが、それよりも先程の魔術が散らされた現象についての方も、なかなかショックが大きい。
「なん…で、魔術が」
「ん?あぁ、さっきのかい?…まぁいいか。教えてあげるよ。魔導器って知ってる?」
グロウズの口から飛び出した名前に、思わず強く歯を食いしばる。
なんとも忌々しいことか。
知ってるも何も、少し前にこの身でその厄介さを味わったところだ。
運がいいのか悪いのか、普通の冒険者が一生にお目に書かれるかどうかの魔導器に、まさかこの短い期間で二度も遭遇するとは。
俺は一体どんな星の下に生まれたんだ?
ラノベの主人公並みだな。
「…その鞭が魔導器で?」
「いや、この鞭は魔導器じゃない。ひな形となった魔導器は別にあって、この鞭はそれを模倣したものなんだ。作った職人が言うには、見た目はよく再現できてるらしいけど、原器の性能に半分も届いていない、よく出来た出来損ないだそうだ。もっとも、こうして魔術を分散させる機能は原器にも無いらしいから、そこは優れてるといえるけど」
確かに、魔導器は魔術師の放った魔術を吸収するのであって、あんな感じで散らすような風にはならない。
魔導器の模造品としてオリジナルには劣っていても、こうして対魔術師用としてはオリジナルと同等に使えるので、面倒な武器であることに変わりない。
「さて、答え合わせはこの辺にして、そろそろこの遊びも終わりにしようか」
「あれで遊び…」
結構マジでやったつもりだが、グロウズにとっては今の戦いも遊びに過ぎないようだ。
そこには純然たる実力の隔たりがあり、俺は圧倒的に格下だという事実を付きつけられた。
「そ、遊び。本当は問答無用で君を昏倒させてもよかったんだけど、一応これでも神に仕える身なんでね。こういう戦いの場ってのは貴重なんだよ。だからちょっと楽しもうと思っただけさ」
つまり、その気になっていれば、俺は手も足も出ずに気絶させられて、今頃は連行されていたということか。
(俺という人間が舐められている、圧倒的屈辱ッッ!!)
「まぁそんなわけで、都合よく君も動けないみたいだし、後は抵抗できないように手足の一・二本は斬り飛ばしておこうかな。あ、持ち運びしやすいように頭と胴体以外全部無くしてもいいかもね」
「え、いや待―」
まるで定食の味噌汁の具を決めるかのような気軽さで恐ろしいことを言うや否や、俺の右手と右足が一瞬で切断され、陽光を浴びながら宙を舞った。
親の顔より見慣れた自分の手足を見間違うわけもなく、俺の体の一部は確かにグロウズの言葉通りに斬り飛ばされてしまった。
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