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異世界モーターボート
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異世界版モーターボートの制作を初めてどれくらい経ったか。
俺もアイリーンの手伝いで忙しい時期などもあったため、まとまった休みはとれなかったが、それでも暇な時間を見つけてはロニと一緒にモーターボートをコツコツと作っていき、先日ようやく完成が見えてきたところだ。
「あ、やっぱりこっちのブラケットに当たってるよ。もう少し後ろにずらさないと」
船外機を目指してすっかり姿を変えた動力部の下に潜り込み、そう報告しているのはロニだ。
最初の頃は俺の道具だし程度しか出来ていなかったロニだが、今日まで一緒に色々と弄ってきたおかげで、今ではとても8歳の子供とは思えないほどに立派な整備士っぷりを見せつけている。
今も俺では入れないような隙間にロニは楽々と潜り込んでおり、的確に問題個所を知らせてくれてすらいた。
「んー…いや、後ろにはもうこれでいっぱいだな。…しかたない、少し浮かすか」
「じゃあアンディの方でちょっと上に持ち上げてみて。ボルトを締めなおすから。…いいよ、上げて」
「あいよ…っと」
ロニの指示に従い、パーツの一部に手をかけてゆっくりと持ち上げる。
「そこで止めて。そのまま……よし、終わったよ」
そう言われて手から力を抜くと、完璧に固定されたパーツはその位置を保ち、船外機はこれで俺の想像通りの形に全体が纏まってくれた。
「ふぅ…よし、これで大体は出来たな」
「じゃあ完成?」
船外機の下からスルリと抜け出してきたロニは、目を輝かせて俺を見てくる。
「いや、あとは少し試運転して調整するが、まぁほとんど完成だと言ってもいいな」
「ほんと!?……ぃやったー!」
一度溜め込んで、すぐに爆発させるような歓声を上げて、ロニがその場であおむけに倒れこむ。
すぐにゴロゴロと左右へと転がりながら、笑い声と供に全身を使って喜びを表していた。
今日まで一緒に機械いじりをして実を結んだ結果が格別に嬉しいのはわかるが、貨物室の床は今かなり汚れているので、あんまりそういうのはやらないほうがいい。
とはいえ、この姿が過剰な物かと言えばそうでもないのだ。
船外機の作成に取り掛かり、今日までかかった時間はそれなりのものになるのだが、その間に失敗もあったし、ひどいのだと途中まで組み立てたパーツをまた一からバラシて…なんてことも何度かあった。
進んでは戻りという作業を繰り返したことで、ロニも精神的な疲労を覚えていたのは俺もうすうす察していた。
だがそれも完成と同時に報われたことが反動となって、この目の前の様子へと繋がっていた。
ロニが服を汚すとパーラとレジルがうるさいのだが、まぁ今はテンションが高い状態のようなので、好きにさせよう。
それにしても、と目の前に置かれている船外機を撫でるようにして触る。
改めて思うがこの船外機の出来はかなりのものだ。
当初の予定ではこれをエンジンに見立て、プロペラへ動力を伝えてスクリューで船を前進させるつもりでいたのだが、そもそもこれは空を飛ぶ乗り物の動力部だったわけで、そんなことをしなくても後ろへ向けて推進力を発生させるだけで船を押していけると気付くと、方向性はガラリと変わった。
飛空艇は未だ謎の多い推進方式ではあるが、見えない何かが斥力っぽいものを発生させて、船体を浮かべたり押したりしているということだけは分かっている。
なので、船に載せるのにもこの力を生かした推進方式を採用することで、大掛かりな改造をせずに済み、外装と船への取りつけ、外付けの操縦機器の増設だけという、比較的少ない手間で作ることが出来た。
しかしながら、その少ない手間であってもかかった時間は相当なものだったので、もしこれが一からプロペラを作って取りつけて動力の伝達やら何やらまでするとなったら、一体どれほどの時間がかかったことか。
ただ、色々と足りなかいパーツも多かった。
特に動力部に直結させる魔力タンクが欠けていたため、やむを得ずバイクのものを流用してしまった。
おかげでバイクは走行不能となってしまったが、その内皇都にでも行って魔力タンクをダリアに用立ててもらったら、船外機のと交換して取りつけ直すつもりだ。
「ねぇアンディ、試運転はいつやる?今から?」
そんな風に考え事をしていると隣にロニが立ち、期待に満ちた目で俺を見てくる。
ゴロゴロしていたのからようやく落ち着いたようで、次の興味は船外機が実際に動くところへと移っていた。
「流石に今日はもう遅いな。明日、朝一で外に置いてる船体に取り付けるだけ取りつけて、午後に試運転って感じだ」
貨物室は明かりが煌々としているから気付かないだろうが、夕食を摂った時間から考えて今はもう日付が変わるかどうかというぐらいだ。
時間を忘れて夢中になっていたが、こんな夜中に試運転など到底できるはずもないので明日に持ち越す。
俺に言われたからか、思い出したように欠伸をかくロニの顔には大分眠気が覗いていた。
ちょっと夜更かしさせ過ぎたか。
「だから、明日に備えてもう寝ろ。片付けは俺がやっとくから」
「んー…じゃあ明日の朝にまた来るよ。僕無しで進めたりしないでよ?」
目をしょぼつかせながら外に向かいながら、しっかりとそう念を押すあたりに、ロニの船外機に掛けた情熱が垣間見える。
「分かってるよ。あぁ、そうだ。寝る前に風呂に入っとけ。体、かなり汚れてるぞ」
「えぇー…入んなきゃダメ?」
「ダメだ。そのまま寝たらレジルさんに怒られるぞ」
こうして見ただけでも、手から顔まで汚れがかなりついてしまっている。
たった今床を転がったのもあるが、それ以上に作業でついたものも多く、綺麗にしないでベッドに入ったら明日のレジルが怖い。
最近、領主の館では気軽に風呂に入れるようになっているのだが、これは俺が水魔術で湯船に水を張り、雷魔術で沸かしているおかげである。
貴重な薪を消費することなくお湯を作れる俺という存在がいることで、毎日とはいかずとも二日おきぐらいには風呂が用意されるようになっていた。
今日は丁度風呂がある日なので、ロニもそこで体を綺麗にしてくるといい。
主にアイリーン用にと沸かされる風呂だが、その後になら使用人達も利用できるため、最近のジンナ村では館での住み込みの仕事が人気となっているのだそうだ。
まぁ館内は外よりもずっと涼しいし、二日おきにでも風呂に入れるとあれば、恵まれた環境で働ける喜びは分かりやすい。
だが館内での仕事の采配はレジルが握っているので、彼女の面接を通過できるだけの人間がこの恩恵に与ることができ、相当な狭き門だとも聞いている。
「わかったよ…はぁ~」
明らかに眠気以外の何かで歩みを遅くしているロニの様子からは、よっぽど風呂が嫌いだと見た。
子供、特に男の子は風呂嫌いの時期が必ずある。
俺もそうだったので気持ちが分からんでもないが、この世界でこうも頻繁に風呂に入れる幸せを今の内に噛み締め、いつかそれに感謝する日が来るだろう。
飛空艇を出ていくロニを見送り、工具やらで散らかっている貨物室を片付け終えたのはそれからしばらく経ってのことだ。
今から館へ戻って誰かを起こすことも憚られ、飛空艇の浴室でさっと汗を流したら、そのまま居間のソファで眠ることにした。
なんだかんだで俺も船外機の完成に気が緩んだようで、体にのしかかるような疲労を感じつつ、あっという間に眠りに落ちていった。
翌日、朝一で飛空艇にやってきたロニに叩き起こされた俺は、早速船外機を取りつけるため、飛空艇の外に立てかけていた小舟を貨物室へと運び入れた。
この小舟は長さ三メートル強、幅一メートル弱の小さいものだが、先日村の漁師に用立ててもらったもので、比較的状態がいいおかげで船外機の取りつけにも特に補強などで手を入れる必要もないのがありがたい。
早速ロニと一緒に船外機を乗せるが、やはり船外機といったら舟の後部だと俺の中では相場が決まっているので、それに合わせて位置を決めると、小舟の縁に固定用の穴をいくつか空け、そこに木の棒を差し込んで嚙合わせて固定していく。
物がそれほど大きいものでもないので、作業はあっという間に終わり、後は実際に水に浮かべるのを待つのみとなった。
「これで完成だよね。じゃあ早速海に浮かべよう!」
「昨日言ったろ。試運転は午後だって。俺は午前はアイリーンさんの仕事を手伝わなきゃならんから、お前はそれまで遊んで来い」
「そうだった…。あー、早く午後にならないかなー」
よっぽど楽しみなのか、ソワソワしだしたロニを何とか宥め、一緒に朝食を摂ったら俺は執務室へと行き、ロニは村へ一目散にかけていった。
去り際、自分が来るまで試運転はするなと念押しされたが、俺はそんなに信用ないか?
執務室へと足を踏み入れると、早くも部屋の主が仕事を始めており、俺も自分の机へと座ると目の前に置かれた書類へと目を通しながら挨拶をする。
「おはようございます、アイリーンさん」
「おはようございます。昨夜はお楽しみでしたわね」
なんで急にド〇クエ?
「…お楽しみとは?」
「遅くまでロニと一緒に魔道具制作に夢中だったとか。二人がいなくてパーラが退屈そうにしてましたわよ」
あぁ、そういう意味か。
てっきり俺が何かいわれのない嫌疑を掛けられているのかと、一瞬心当たりのない罪を振り返りそうになった。
あの台詞は心臓に悪いな。
「まぁパーラの奴はロニを構いたくってしょうがなかっただけでしょう」
「そのようですわね。それで、完成しましたの?魔道具の舟は」
そう言ってアイリーンはチラリと探るような目を向けてくる。
俺とロニが船外機を作っていたことは知っている人間もそれなりにいて、アイリーンもその一人だ。
風に頼らず進む魔道具の舟だと伝えていたが、どうやら彼女も完成を待っていたらしい。
食事の度にロニが楽しそうにその日あったことを話していたので、それで関心を持つようになったのだろう。
珍しいものが好きだからというのもあるが。
「ええ、まぁ。今朝方ロニと一緒に最後の組み立てをやりまして、午後から試運転を予定してます。午後から俺は抜けるというのを?」
「レジルから既に聞いていますわ。そうですか、午後に…。私もそれを見たいところですけど、午後からは村の代表者達との会合がありますのよねぇ」
自分の机に置かれた書類にサインをしながら、アイリーンがため息を吐く。
領主の仕事はこういった事務仕事も多いが、領民と直接話をするというのも男爵領ぐらいの小領では欠かせない。
好奇心と義務を天秤にかけたら、会合を選ぶのは貴族としては当然のことだ。
「試運転の様子は後でロニが聞かせてくれますから、アイリーンさんは自分の仕事をしてください」
「わかっていますわ」
大丈夫だとは思うが、仕事をすっぽかさないように釘を刺し、俺も自分の仕事を片付けていく。
普段通りの量に、普段と変わらない内容の書類を裁いていきながらも、俺は自分の心がソワソワとしているのを自覚している。
アイリーンにああは言ったが、俺も仕事が疎かになりそうなほどに午後が待ち遠しい。
何度か集中力を切らしながら、午後まで何とか乗り切ると、食堂でパーラとロニに混ざって昼食を済ませると、早速試運転のために飛空艇へと足を向ける。
「アンディ!早く早く!」
「そんな急がなくても、船外機は逃げないぞ」
館を出てからまるで子犬のように跳ねまわるロニにそう言いつつも、心なしか俺も急ぎ足になっていく。
「ちょっと二人共、そんな急がなくても。アンディも言ったけど、逃げるもんじゃないんでしょ?」
そんな俺達の背中に投げかけられた声はパーラのものだ。
午後から暇だというのでパーラも試運転に付き合うと同行していたが、船外機作成にほぼ関わっていないから、今の俺達の気持ちが理解できないのだろう。
貨物室へと入り、今朝方仕上げた舟を改めて眺めると、何かこう、感慨深いものを覚える。
それは船外機が出来た時も感じたものだが、こうして舟に搭載して、実際に動かせる段には一入となってくる。
「ちょい待ち!…これ、浜までどうやって持ってく気?結構大きいけど」
貨物室に鎮座する舟を見て、パーラが酷く冷めた声を吐き出した。
「どうって……アンディ?」
ロニがパーラの言葉を受け、疑問が込められた純粋な目を向けてくる。
その目に映った俺は、答えられないでいる。
今ここで告白しよう。
舟を完成させることだけを考えていて、その後に浜まで持っていく方法は微塵も考えていなかった、と。
俺もテンションが高いままに作ってしまい、思考が鈍っていたのかもしれない。
飛空艇が置かれている場所から浜まではかなりの距離があり、途中に段差がいくつもある。
正直、舟を引っ張っていくには全く向いていない地形だ。
ちなみにここまでは屈強な漁師が4人がかりで舟を運んできたので、俺達3人では流石に無理だろう。
仮に肉体を強化して引っ張っていくとして、向こうに着くまでの間に舟にどれだけのダメージが蓄積されるかを考えると、到底利口なやり方とは言えない。
今になって思えば、舟はわざわざ飛空艇まで運んでこずに、浜に置いたままにして、船外機を向こうに持って行って組み付けるのが正解だったのだろう。
「…どうしようパーラ。アンディが動かないよ?」
「大丈夫だよ、ロニ。こういう時のアンディは自分の失敗を恥ずかしがってるだけだから。少し待ってなさい」
考え事をしているのをパーラのそう分析されるのは甚だ心外だが、あながち間違っているとも言えないので軽く咳払いをして解決案を提示する。
「んんっ…飛空艇で浜まで行って、そこで貨物室から降ろせばいいさ。もし試運転で修理とかが必要になったら、飛空艇が近くにあった方が楽だろ」
「…ま、それしかないね。なんか言い訳っぽいのが聞こえたけど、それはとりあえずいいや」
なるほどと頷いているロニと違い、こっちの内心をよく理解しているパーラのジトっとした目が俺を責める。
確かに苦しい言い訳染みているが、全くないとも言えないので飛空艇ごと行くことの利点は理解してほしい。
頼む。
そんなわけで飛空艇で浜まで向かい、そこで舟を降ろすことにしたのだが、いきなり飛空艇が飛び立つと村中から注目を集めるもので、砂浜に着陸するとすっかり村人を集めてしまっていた。
まだ昼過ぎぐらいの時間であったのも災いして、昼食を終えてのんびりしていた村人達の好奇心を刺激してしまい、結構な数の村人が浜辺へと見えた。
ちょっと騒々しくしてしまったのは悪いと思うが、まぁこれから行う異世界版モーターボートの試運転を見せることでなんとか許してほしい。
貨物室から舟を降ろし、砂の上を押しながら波打ち際まで運んでいると、見ていた村人達からはなんだかがっかりしたような雰囲気が感じられた。
これから何をやるのかと思っていたところに、姿を見せたのが一見するとただの小舟だというのは、普段から舟を見慣れている村人達にとっては珍しさの欠片もないのだろう。
だがこれから見せるのは普通の舟などではなく、もしかしたら次世代の舟の鏑矢となるかもしれないものだ。
きっと驚いてもらえるはずだ。
「よし、じゃあ試運転を開始するぞ。ほれロニ」
船体が水に浮かんだら水漏れがないかを確認し、問題がないようなのでロニを抱えて舟へと乗せてやる。
その後に俺も乗り込むと、船外機を起動させる。
元は飛空艇の動力として作られているものなので、起動させるのも実は意外と面倒くさい。
だがそこは俺も十分理解していたので、その辺にはしっかりと手を加えてスイッチを長押しする方式に変えている。
本当は様式美としてリコイルスターター、つまり紐を引いてエンジンをかけるあれを再現しようとしたのだが、クランクシャフトなんざ搭載していない動力には意味がないのでやめた。
大体2秒ほど長押しすると、船外機自体がブルりと一度震えて起動したと分かる。
ガソリン式ではないので特に大きい音などはなく、バイクのモーターに似たブゥンという低い音がずっと聞こえている感じだ。
「…動いてる?」
「ああ、ちゃんと動いてるぞ。後はこっちのレバーで操縦するだけだ」
船外機が思いのほか静かなのが不安だったのか、キョロキョロと目を動かせながら俺の近くまでやってきたロニにそう言ってやると、ようやく微かな駆動恩をその耳で捉えたようで、ホッとした顔に変わる。
「ねぇ、どんな感じ?いけそう?」
「ああ、大丈夫だ。問題ない」
「そう?じゃあ押すから、後はそっちで操縦してね」
「おう、頼む」
乗らずに様子を窺っていたパーラに押してもらい、舟はゆっくりと沖に向けて進みだす。
そのまま少し行ったところで、船外機から伸びる棒に着いたレバーを軽く握る。
すると船は徐々に何かの力で押し出されていき、5メートルも進むともう完全に風や潮とは全く違う速度で動き出していた。
この棒についているレバーで速度を調節する仕組みは、俺とパーラが使う噴射装置でも採用されているもので、比較的手近な素材と簡単な改造で作ることが出来るので、こういうとりあえずの部品としては結構優秀だ。
レバーで速度を、棒を左右に振ることで曲がるという感じは、地球での船外機付きのボートと非常に近い感覚で操縦できて、俺には馴染みのある操縦方式だ。
「おっほおー!ちゃんと動いてる!動いてるよアンディ!」
「当たり前だ。あんだけ時間をかけて組み上げたんだから、動いてくれないと困る」
ロニは自分が手掛けた舟がこうして動いているのがよっぽど嬉しいのか、興奮した笑みで舳先に身を乗り出している。
実際に走らせて、ようやく船外機の完成を見届けた感じがあるようで、流れる景色を見回すその笑顔には誇らしさが滲んでいた。
加速と減速、カーブした際の船体の傾きなどを確認し、満足のいく出来だと何度か頷いていると、こちらをじっと見つめるクリっとした目と視線が絡み合った。
特に何か言うでもなく、ただただ俺を見るロニには、無言ながら訴えかける何かが感じられ、その正体にうすうす気づいている俺はおもむろに声を掛ける。
「…ロニ、ちょっと動かし―」
「いいの!?」
『てみるか』というのが出切るより早く、食い気味にそう言ってロニはいそいそと俺と場所を入れ替わる。
「操縦方法は分かるか?」
「アンディのを見てたから多分。でも一応教えて」
安易にガンガン運転しようとしない辺りに冷静さを垣間見たが、ソワソワと体を揺する様子には今にも走り出したい強い思いが秘められている。
別段複雑な操縦法を採用しているわけでもないので、簡単に各装置の役割と注意事項を軽く説明して、早速ロニの運転で舟が動き出す。
「あはははっ!凄いよこれ!速い!バイクもそうだったけど、魔道具の乗り物ってなんでみんなこんなに速いの!?ははは!」
出だしは酷くゆっくりとしたものだったが、操作感覚が身に着くとすぐにスピードを上げて走り回るようになり、スピードに魅了されたと思われる笑い声をあげるロニの将来に一抹の不安を覚える。
波のほとんどない湾内という環境もあって、舟の操縦に障害となるものがないおかげで試運転はスムーズに進められていった。
「こんなもんだろう。ロニ、試運転は終わりだ。浜に戻るぞ」
「えぇ~!もうちょっとやろうよ!」
よっぽど気に入ったのか、まだまだ動かしたりないというのを全身で表しているロニに、俺としても気の済むまでやらせてやりたいところだが、その希望は今は叶えられそうにない。
「そうは言ってもな、今回は試運転ってことで魔力はあんまり籠めてないんだ。タンクの魔力残量はあんまりないぞ。このまま続けたら、手で漕いで浜に戻んなきゃならなくなるが」
こうしてここにいるのはあくまでも試運転のためだったので、魔力タンクにはあまり魔力を注入してはいなかった。
船外機の燃費がどれくらいかは分からないが、延々と走り続けられるわけがないので、そろそろ浜へ戻った方がいいだろう。
まぁもしタンクが空になっていたとしても、この場で充填してしまえばいいだけだが、それはそれとして、試運転の終わりを区切るタイミングとしてもいいだろう。
「ちぇー、わかったよ。じゃあ浜に引き返すけど、それまでは僕が操縦してもいいよね?」
「ああ、好きにしろ」
少しの距離でも操縦を楽しみたいというロニの態度に、呆れ交じりにそう返す。
こりゃあ後でタンクに魔力を注入しろと強請られそうな感じだ。
浜まで戻ってくると、出迎えたのはパーラとその隣に立つワンズだった。
舟を陸に揚げた俺達は、ニヤニヤとした顔のワンズに早速捕まる。
「ようアンちゃん、いいもん持ってんじゃねーか」
かつあげかな?
「どうも、いいもんとはこの舟のことですよね」
「おうよ。帆も立てずに魔道具で走る舟とはまた面白いもんを作ったもんだ。それにロニが動かせるってことは、複雑な操作はいらんってことだろう?」
村人達の前で試運転をしたのだから、こういう反応をする人間は出てくるとは思っていたが、やはりというかなんというか、まず動いたのはワンズだった。
村の若手漁師の代表的立場にあるし、年寄り連中にも信頼が篤い彼ならば、他の誰を差し置いても俺に事の仔細を尋ねるのに不足はない。
「遠目にもかなり速かったのはわかったが、この舟は俺達でも使えるのか?」
浜に置かれた俺達の舟を触りながらそういうワンズの声には、この舟に対する期待が感じられる。
風に頼らず走れる舟となれば、漁においての有用性はかなりのものになる。
「どうなんだ?ロニ」
初めて触る舟という点では俺もロニも同じだが、この手の魔道具を動力に詰んだ乗り物には俺は慣れがあるので、ワンズの疑問に答えるのならロニが適任だ。
「最初は戸惑うと思うけど、少し触ればすぐに慣れると思う。僕は今日初めて触ったけど、普通に走らせるだけなら本当にあっという間だったよ」
「ほう、そりゃいい。で、こういうのは他にも作るのか?俺達にまで回ってくるのはいつになる?」
やはりそういう話になるか。
気持ちはわかるが、このモーターボートは俺の趣味として作ったものなので、市販化までは考えていない。
そもそも使っている動力は本来国家が管理しているものなので、一般に出回るようになるのはいつになることやら。
「―というわけで、普通に手に入るのは当分先、もしくはないと考えたほうがいいかもしれません」
「うぅむ…」
ソーマルガが抱える機密に抵触しないように言葉を選び、なんとかワンズに通じるように説明することは出来たが、腕を組んで悩むその様子にはがっかりしたものが感じられる。
恐らく試運転を眺めていた時から、いかにして自分達の生活に組み込むかを想像していたのだろう。
一般化までが遠いと知っては、内心では相当落ち込んでいるに違いない。
仕方ない。
ワンズとは知らない仲でもないし、一つ案を出すとしよう。
「代わりと言っては何ですが、この舟、しばらくそちらにお貸ししますよ」
「なに!いいのか!?」
「ええ。どうせ舟を置く場所は必要ですから、俺達が使わないときはそちらで好きに使ってくれて構いませんよ」
毎日いつでも海に出るという立場にあるわけでもない俺よりも、舟の扱いに慣れていて毎日海で働く漁師達に使ってもらった方が作った甲斐はあるし、なにより多くの人が使うことで改良点なども見つかる可能性もある。
そういう点から、時折俺が気分転換に使う以外はしばらく村の舟という扱いにしてもいい。
魔力タンクへの補充は俺かパーラが請け負い、舟体のメンテナンスは村の人間が行うということにして、問題は船外機のメンテナンスに関してだが、これは適任を俺から推薦させてもらう。
「ロニ、船外機の方はお前に頼んでもいいか?」
「うん、任せて」
胸を張ってそういうロニは、中々頼りになりそうだ。
実際に舟を動かしたことで自信を得たのか、与えられた使命に対しての気負いのようなものは感じられるものの、今日までのロニの働きを考えると安心して任せてもいいだろう。
流石に子供に毎日舟を見ろとは言えないので、暇な時、一週間おきぐらいにでも様子を見てくれればいい。
何かあっても、よっぽどの物でない限りはロニが直せるはずだしな。
しかし帆いらずとはいえ、こんな小舟一艘があったところで何の役に立つのかという思いはあるが、それに関してワンズが言うには、沖に流されてしまった舟などを引っ張ってくるのに使ったり、まだ風を読むのが下手な若い漁師に経験を積ませる練習などにと色々用途はあるのだそうだ。
まあ風に頼らないで動けるとはいえたった一艘の舟だけの運用となれば、他の舟のサポートやレスキュー目的が妥当なところだろう。
この辺りは俺よりも漁師の方が船の活用法は見いだせるようなので、扱いに関して俺から特に何かを言う事はせず、とにかく壊したりしないように頼むだけだ。
こうして俺とロニが作ったモーターボートはジンナ村に貸与となったが、後日、このことを聞き付けたアイリーンがロニを伴ってこの舟でコッソリ沖へ遊びに出かけるという事件を起こし、それに関してはレジルがアイリーンに特大の雷を落としたことで話は終わらせてもらう。
俺もアイリーンの手伝いで忙しい時期などもあったため、まとまった休みはとれなかったが、それでも暇な時間を見つけてはロニと一緒にモーターボートをコツコツと作っていき、先日ようやく完成が見えてきたところだ。
「あ、やっぱりこっちのブラケットに当たってるよ。もう少し後ろにずらさないと」
船外機を目指してすっかり姿を変えた動力部の下に潜り込み、そう報告しているのはロニだ。
最初の頃は俺の道具だし程度しか出来ていなかったロニだが、今日まで一緒に色々と弄ってきたおかげで、今ではとても8歳の子供とは思えないほどに立派な整備士っぷりを見せつけている。
今も俺では入れないような隙間にロニは楽々と潜り込んでおり、的確に問題個所を知らせてくれてすらいた。
「んー…いや、後ろにはもうこれでいっぱいだな。…しかたない、少し浮かすか」
「じゃあアンディの方でちょっと上に持ち上げてみて。ボルトを締めなおすから。…いいよ、上げて」
「あいよ…っと」
ロニの指示に従い、パーツの一部に手をかけてゆっくりと持ち上げる。
「そこで止めて。そのまま……よし、終わったよ」
そう言われて手から力を抜くと、完璧に固定されたパーツはその位置を保ち、船外機はこれで俺の想像通りの形に全体が纏まってくれた。
「ふぅ…よし、これで大体は出来たな」
「じゃあ完成?」
船外機の下からスルリと抜け出してきたロニは、目を輝かせて俺を見てくる。
「いや、あとは少し試運転して調整するが、まぁほとんど完成だと言ってもいいな」
「ほんと!?……ぃやったー!」
一度溜め込んで、すぐに爆発させるような歓声を上げて、ロニがその場であおむけに倒れこむ。
すぐにゴロゴロと左右へと転がりながら、笑い声と供に全身を使って喜びを表していた。
今日まで一緒に機械いじりをして実を結んだ結果が格別に嬉しいのはわかるが、貨物室の床は今かなり汚れているので、あんまりそういうのはやらないほうがいい。
とはいえ、この姿が過剰な物かと言えばそうでもないのだ。
船外機の作成に取り掛かり、今日までかかった時間はそれなりのものになるのだが、その間に失敗もあったし、ひどいのだと途中まで組み立てたパーツをまた一からバラシて…なんてことも何度かあった。
進んでは戻りという作業を繰り返したことで、ロニも精神的な疲労を覚えていたのは俺もうすうす察していた。
だがそれも完成と同時に報われたことが反動となって、この目の前の様子へと繋がっていた。
ロニが服を汚すとパーラとレジルがうるさいのだが、まぁ今はテンションが高い状態のようなので、好きにさせよう。
それにしても、と目の前に置かれている船外機を撫でるようにして触る。
改めて思うがこの船外機の出来はかなりのものだ。
当初の予定ではこれをエンジンに見立て、プロペラへ動力を伝えてスクリューで船を前進させるつもりでいたのだが、そもそもこれは空を飛ぶ乗り物の動力部だったわけで、そんなことをしなくても後ろへ向けて推進力を発生させるだけで船を押していけると気付くと、方向性はガラリと変わった。
飛空艇は未だ謎の多い推進方式ではあるが、見えない何かが斥力っぽいものを発生させて、船体を浮かべたり押したりしているということだけは分かっている。
なので、船に載せるのにもこの力を生かした推進方式を採用することで、大掛かりな改造をせずに済み、外装と船への取りつけ、外付けの操縦機器の増設だけという、比較的少ない手間で作ることが出来た。
しかしながら、その少ない手間であってもかかった時間は相当なものだったので、もしこれが一からプロペラを作って取りつけて動力の伝達やら何やらまでするとなったら、一体どれほどの時間がかかったことか。
ただ、色々と足りなかいパーツも多かった。
特に動力部に直結させる魔力タンクが欠けていたため、やむを得ずバイクのものを流用してしまった。
おかげでバイクは走行不能となってしまったが、その内皇都にでも行って魔力タンクをダリアに用立ててもらったら、船外機のと交換して取りつけ直すつもりだ。
「ねぇアンディ、試運転はいつやる?今から?」
そんな風に考え事をしていると隣にロニが立ち、期待に満ちた目で俺を見てくる。
ゴロゴロしていたのからようやく落ち着いたようで、次の興味は船外機が実際に動くところへと移っていた。
「流石に今日はもう遅いな。明日、朝一で外に置いてる船体に取り付けるだけ取りつけて、午後に試運転って感じだ」
貨物室は明かりが煌々としているから気付かないだろうが、夕食を摂った時間から考えて今はもう日付が変わるかどうかというぐらいだ。
時間を忘れて夢中になっていたが、こんな夜中に試運転など到底できるはずもないので明日に持ち越す。
俺に言われたからか、思い出したように欠伸をかくロニの顔には大分眠気が覗いていた。
ちょっと夜更かしさせ過ぎたか。
「だから、明日に備えてもう寝ろ。片付けは俺がやっとくから」
「んー…じゃあ明日の朝にまた来るよ。僕無しで進めたりしないでよ?」
目をしょぼつかせながら外に向かいながら、しっかりとそう念を押すあたりに、ロニの船外機に掛けた情熱が垣間見える。
「分かってるよ。あぁ、そうだ。寝る前に風呂に入っとけ。体、かなり汚れてるぞ」
「えぇー…入んなきゃダメ?」
「ダメだ。そのまま寝たらレジルさんに怒られるぞ」
こうして見ただけでも、手から顔まで汚れがかなりついてしまっている。
たった今床を転がったのもあるが、それ以上に作業でついたものも多く、綺麗にしないでベッドに入ったら明日のレジルが怖い。
最近、領主の館では気軽に風呂に入れるようになっているのだが、これは俺が水魔術で湯船に水を張り、雷魔術で沸かしているおかげである。
貴重な薪を消費することなくお湯を作れる俺という存在がいることで、毎日とはいかずとも二日おきぐらいには風呂が用意されるようになっていた。
今日は丁度風呂がある日なので、ロニもそこで体を綺麗にしてくるといい。
主にアイリーン用にと沸かされる風呂だが、その後になら使用人達も利用できるため、最近のジンナ村では館での住み込みの仕事が人気となっているのだそうだ。
まぁ館内は外よりもずっと涼しいし、二日おきにでも風呂に入れるとあれば、恵まれた環境で働ける喜びは分かりやすい。
だが館内での仕事の采配はレジルが握っているので、彼女の面接を通過できるだけの人間がこの恩恵に与ることができ、相当な狭き門だとも聞いている。
「わかったよ…はぁ~」
明らかに眠気以外の何かで歩みを遅くしているロニの様子からは、よっぽど風呂が嫌いだと見た。
子供、特に男の子は風呂嫌いの時期が必ずある。
俺もそうだったので気持ちが分からんでもないが、この世界でこうも頻繁に風呂に入れる幸せを今の内に噛み締め、いつかそれに感謝する日が来るだろう。
飛空艇を出ていくロニを見送り、工具やらで散らかっている貨物室を片付け終えたのはそれからしばらく経ってのことだ。
今から館へ戻って誰かを起こすことも憚られ、飛空艇の浴室でさっと汗を流したら、そのまま居間のソファで眠ることにした。
なんだかんだで俺も船外機の完成に気が緩んだようで、体にのしかかるような疲労を感じつつ、あっという間に眠りに落ちていった。
翌日、朝一で飛空艇にやってきたロニに叩き起こされた俺は、早速船外機を取りつけるため、飛空艇の外に立てかけていた小舟を貨物室へと運び入れた。
この小舟は長さ三メートル強、幅一メートル弱の小さいものだが、先日村の漁師に用立ててもらったもので、比較的状態がいいおかげで船外機の取りつけにも特に補強などで手を入れる必要もないのがありがたい。
早速ロニと一緒に船外機を乗せるが、やはり船外機といったら舟の後部だと俺の中では相場が決まっているので、それに合わせて位置を決めると、小舟の縁に固定用の穴をいくつか空け、そこに木の棒を差し込んで嚙合わせて固定していく。
物がそれほど大きいものでもないので、作業はあっという間に終わり、後は実際に水に浮かべるのを待つのみとなった。
「これで完成だよね。じゃあ早速海に浮かべよう!」
「昨日言ったろ。試運転は午後だって。俺は午前はアイリーンさんの仕事を手伝わなきゃならんから、お前はそれまで遊んで来い」
「そうだった…。あー、早く午後にならないかなー」
よっぽど楽しみなのか、ソワソワしだしたロニを何とか宥め、一緒に朝食を摂ったら俺は執務室へと行き、ロニは村へ一目散にかけていった。
去り際、自分が来るまで試運転はするなと念押しされたが、俺はそんなに信用ないか?
執務室へと足を踏み入れると、早くも部屋の主が仕事を始めており、俺も自分の机へと座ると目の前に置かれた書類へと目を通しながら挨拶をする。
「おはようございます、アイリーンさん」
「おはようございます。昨夜はお楽しみでしたわね」
なんで急にド〇クエ?
「…お楽しみとは?」
「遅くまでロニと一緒に魔道具制作に夢中だったとか。二人がいなくてパーラが退屈そうにしてましたわよ」
あぁ、そういう意味か。
てっきり俺が何かいわれのない嫌疑を掛けられているのかと、一瞬心当たりのない罪を振り返りそうになった。
あの台詞は心臓に悪いな。
「まぁパーラの奴はロニを構いたくってしょうがなかっただけでしょう」
「そのようですわね。それで、完成しましたの?魔道具の舟は」
そう言ってアイリーンはチラリと探るような目を向けてくる。
俺とロニが船外機を作っていたことは知っている人間もそれなりにいて、アイリーンもその一人だ。
風に頼らず進む魔道具の舟だと伝えていたが、どうやら彼女も完成を待っていたらしい。
食事の度にロニが楽しそうにその日あったことを話していたので、それで関心を持つようになったのだろう。
珍しいものが好きだからというのもあるが。
「ええ、まぁ。今朝方ロニと一緒に最後の組み立てをやりまして、午後から試運転を予定してます。午後から俺は抜けるというのを?」
「レジルから既に聞いていますわ。そうですか、午後に…。私もそれを見たいところですけど、午後からは村の代表者達との会合がありますのよねぇ」
自分の机に置かれた書類にサインをしながら、アイリーンがため息を吐く。
領主の仕事はこういった事務仕事も多いが、領民と直接話をするというのも男爵領ぐらいの小領では欠かせない。
好奇心と義務を天秤にかけたら、会合を選ぶのは貴族としては当然のことだ。
「試運転の様子は後でロニが聞かせてくれますから、アイリーンさんは自分の仕事をしてください」
「わかっていますわ」
大丈夫だとは思うが、仕事をすっぽかさないように釘を刺し、俺も自分の仕事を片付けていく。
普段通りの量に、普段と変わらない内容の書類を裁いていきながらも、俺は自分の心がソワソワとしているのを自覚している。
アイリーンにああは言ったが、俺も仕事が疎かになりそうなほどに午後が待ち遠しい。
何度か集中力を切らしながら、午後まで何とか乗り切ると、食堂でパーラとロニに混ざって昼食を済ませると、早速試運転のために飛空艇へと足を向ける。
「アンディ!早く早く!」
「そんな急がなくても、船外機は逃げないぞ」
館を出てからまるで子犬のように跳ねまわるロニにそう言いつつも、心なしか俺も急ぎ足になっていく。
「ちょっと二人共、そんな急がなくても。アンディも言ったけど、逃げるもんじゃないんでしょ?」
そんな俺達の背中に投げかけられた声はパーラのものだ。
午後から暇だというのでパーラも試運転に付き合うと同行していたが、船外機作成にほぼ関わっていないから、今の俺達の気持ちが理解できないのだろう。
貨物室へと入り、今朝方仕上げた舟を改めて眺めると、何かこう、感慨深いものを覚える。
それは船外機が出来た時も感じたものだが、こうして舟に搭載して、実際に動かせる段には一入となってくる。
「ちょい待ち!…これ、浜までどうやって持ってく気?結構大きいけど」
貨物室に鎮座する舟を見て、パーラが酷く冷めた声を吐き出した。
「どうって……アンディ?」
ロニがパーラの言葉を受け、疑問が込められた純粋な目を向けてくる。
その目に映った俺は、答えられないでいる。
今ここで告白しよう。
舟を完成させることだけを考えていて、その後に浜まで持っていく方法は微塵も考えていなかった、と。
俺もテンションが高いままに作ってしまい、思考が鈍っていたのかもしれない。
飛空艇が置かれている場所から浜まではかなりの距離があり、途中に段差がいくつもある。
正直、舟を引っ張っていくには全く向いていない地形だ。
ちなみにここまでは屈強な漁師が4人がかりで舟を運んできたので、俺達3人では流石に無理だろう。
仮に肉体を強化して引っ張っていくとして、向こうに着くまでの間に舟にどれだけのダメージが蓄積されるかを考えると、到底利口なやり方とは言えない。
今になって思えば、舟はわざわざ飛空艇まで運んでこずに、浜に置いたままにして、船外機を向こうに持って行って組み付けるのが正解だったのだろう。
「…どうしようパーラ。アンディが動かないよ?」
「大丈夫だよ、ロニ。こういう時のアンディは自分の失敗を恥ずかしがってるだけだから。少し待ってなさい」
考え事をしているのをパーラのそう分析されるのは甚だ心外だが、あながち間違っているとも言えないので軽く咳払いをして解決案を提示する。
「んんっ…飛空艇で浜まで行って、そこで貨物室から降ろせばいいさ。もし試運転で修理とかが必要になったら、飛空艇が近くにあった方が楽だろ」
「…ま、それしかないね。なんか言い訳っぽいのが聞こえたけど、それはとりあえずいいや」
なるほどと頷いているロニと違い、こっちの内心をよく理解しているパーラのジトっとした目が俺を責める。
確かに苦しい言い訳染みているが、全くないとも言えないので飛空艇ごと行くことの利点は理解してほしい。
頼む。
そんなわけで飛空艇で浜まで向かい、そこで舟を降ろすことにしたのだが、いきなり飛空艇が飛び立つと村中から注目を集めるもので、砂浜に着陸するとすっかり村人を集めてしまっていた。
まだ昼過ぎぐらいの時間であったのも災いして、昼食を終えてのんびりしていた村人達の好奇心を刺激してしまい、結構な数の村人が浜辺へと見えた。
ちょっと騒々しくしてしまったのは悪いと思うが、まぁこれから行う異世界版モーターボートの試運転を見せることでなんとか許してほしい。
貨物室から舟を降ろし、砂の上を押しながら波打ち際まで運んでいると、見ていた村人達からはなんだかがっかりしたような雰囲気が感じられた。
これから何をやるのかと思っていたところに、姿を見せたのが一見するとただの小舟だというのは、普段から舟を見慣れている村人達にとっては珍しさの欠片もないのだろう。
だがこれから見せるのは普通の舟などではなく、もしかしたら次世代の舟の鏑矢となるかもしれないものだ。
きっと驚いてもらえるはずだ。
「よし、じゃあ試運転を開始するぞ。ほれロニ」
船体が水に浮かんだら水漏れがないかを確認し、問題がないようなのでロニを抱えて舟へと乗せてやる。
その後に俺も乗り込むと、船外機を起動させる。
元は飛空艇の動力として作られているものなので、起動させるのも実は意外と面倒くさい。
だがそこは俺も十分理解していたので、その辺にはしっかりと手を加えてスイッチを長押しする方式に変えている。
本当は様式美としてリコイルスターター、つまり紐を引いてエンジンをかけるあれを再現しようとしたのだが、クランクシャフトなんざ搭載していない動力には意味がないのでやめた。
大体2秒ほど長押しすると、船外機自体がブルりと一度震えて起動したと分かる。
ガソリン式ではないので特に大きい音などはなく、バイクのモーターに似たブゥンという低い音がずっと聞こえている感じだ。
「…動いてる?」
「ああ、ちゃんと動いてるぞ。後はこっちのレバーで操縦するだけだ」
船外機が思いのほか静かなのが不安だったのか、キョロキョロと目を動かせながら俺の近くまでやってきたロニにそう言ってやると、ようやく微かな駆動恩をその耳で捉えたようで、ホッとした顔に変わる。
「ねぇ、どんな感じ?いけそう?」
「ああ、大丈夫だ。問題ない」
「そう?じゃあ押すから、後はそっちで操縦してね」
「おう、頼む」
乗らずに様子を窺っていたパーラに押してもらい、舟はゆっくりと沖に向けて進みだす。
そのまま少し行ったところで、船外機から伸びる棒に着いたレバーを軽く握る。
すると船は徐々に何かの力で押し出されていき、5メートルも進むともう完全に風や潮とは全く違う速度で動き出していた。
この棒についているレバーで速度を調節する仕組みは、俺とパーラが使う噴射装置でも採用されているもので、比較的手近な素材と簡単な改造で作ることが出来るので、こういうとりあえずの部品としては結構優秀だ。
レバーで速度を、棒を左右に振ることで曲がるという感じは、地球での船外機付きのボートと非常に近い感覚で操縦できて、俺には馴染みのある操縦方式だ。
「おっほおー!ちゃんと動いてる!動いてるよアンディ!」
「当たり前だ。あんだけ時間をかけて組み上げたんだから、動いてくれないと困る」
ロニは自分が手掛けた舟がこうして動いているのがよっぽど嬉しいのか、興奮した笑みで舳先に身を乗り出している。
実際に走らせて、ようやく船外機の完成を見届けた感じがあるようで、流れる景色を見回すその笑顔には誇らしさが滲んでいた。
加速と減速、カーブした際の船体の傾きなどを確認し、満足のいく出来だと何度か頷いていると、こちらをじっと見つめるクリっとした目と視線が絡み合った。
特に何か言うでもなく、ただただ俺を見るロニには、無言ながら訴えかける何かが感じられ、その正体にうすうす気づいている俺はおもむろに声を掛ける。
「…ロニ、ちょっと動かし―」
「いいの!?」
『てみるか』というのが出切るより早く、食い気味にそう言ってロニはいそいそと俺と場所を入れ替わる。
「操縦方法は分かるか?」
「アンディのを見てたから多分。でも一応教えて」
安易にガンガン運転しようとしない辺りに冷静さを垣間見たが、ソワソワと体を揺する様子には今にも走り出したい強い思いが秘められている。
別段複雑な操縦法を採用しているわけでもないので、簡単に各装置の役割と注意事項を軽く説明して、早速ロニの運転で舟が動き出す。
「あはははっ!凄いよこれ!速い!バイクもそうだったけど、魔道具の乗り物ってなんでみんなこんなに速いの!?ははは!」
出だしは酷くゆっくりとしたものだったが、操作感覚が身に着くとすぐにスピードを上げて走り回るようになり、スピードに魅了されたと思われる笑い声をあげるロニの将来に一抹の不安を覚える。
波のほとんどない湾内という環境もあって、舟の操縦に障害となるものがないおかげで試運転はスムーズに進められていった。
「こんなもんだろう。ロニ、試運転は終わりだ。浜に戻るぞ」
「えぇ~!もうちょっとやろうよ!」
よっぽど気に入ったのか、まだまだ動かしたりないというのを全身で表しているロニに、俺としても気の済むまでやらせてやりたいところだが、その希望は今は叶えられそうにない。
「そうは言ってもな、今回は試運転ってことで魔力はあんまり籠めてないんだ。タンクの魔力残量はあんまりないぞ。このまま続けたら、手で漕いで浜に戻んなきゃならなくなるが」
こうしてここにいるのはあくまでも試運転のためだったので、魔力タンクにはあまり魔力を注入してはいなかった。
船外機の燃費がどれくらいかは分からないが、延々と走り続けられるわけがないので、そろそろ浜へ戻った方がいいだろう。
まぁもしタンクが空になっていたとしても、この場で充填してしまえばいいだけだが、それはそれとして、試運転の終わりを区切るタイミングとしてもいいだろう。
「ちぇー、わかったよ。じゃあ浜に引き返すけど、それまでは僕が操縦してもいいよね?」
「ああ、好きにしろ」
少しの距離でも操縦を楽しみたいというロニの態度に、呆れ交じりにそう返す。
こりゃあ後でタンクに魔力を注入しろと強請られそうな感じだ。
浜まで戻ってくると、出迎えたのはパーラとその隣に立つワンズだった。
舟を陸に揚げた俺達は、ニヤニヤとした顔のワンズに早速捕まる。
「ようアンちゃん、いいもん持ってんじゃねーか」
かつあげかな?
「どうも、いいもんとはこの舟のことですよね」
「おうよ。帆も立てずに魔道具で走る舟とはまた面白いもんを作ったもんだ。それにロニが動かせるってことは、複雑な操作はいらんってことだろう?」
村人達の前で試運転をしたのだから、こういう反応をする人間は出てくるとは思っていたが、やはりというかなんというか、まず動いたのはワンズだった。
村の若手漁師の代表的立場にあるし、年寄り連中にも信頼が篤い彼ならば、他の誰を差し置いても俺に事の仔細を尋ねるのに不足はない。
「遠目にもかなり速かったのはわかったが、この舟は俺達でも使えるのか?」
浜に置かれた俺達の舟を触りながらそういうワンズの声には、この舟に対する期待が感じられる。
風に頼らず走れる舟となれば、漁においての有用性はかなりのものになる。
「どうなんだ?ロニ」
初めて触る舟という点では俺もロニも同じだが、この手の魔道具を動力に詰んだ乗り物には俺は慣れがあるので、ワンズの疑問に答えるのならロニが適任だ。
「最初は戸惑うと思うけど、少し触ればすぐに慣れると思う。僕は今日初めて触ったけど、普通に走らせるだけなら本当にあっという間だったよ」
「ほう、そりゃいい。で、こういうのは他にも作るのか?俺達にまで回ってくるのはいつになる?」
やはりそういう話になるか。
気持ちはわかるが、このモーターボートは俺の趣味として作ったものなので、市販化までは考えていない。
そもそも使っている動力は本来国家が管理しているものなので、一般に出回るようになるのはいつになることやら。
「―というわけで、普通に手に入るのは当分先、もしくはないと考えたほうがいいかもしれません」
「うぅむ…」
ソーマルガが抱える機密に抵触しないように言葉を選び、なんとかワンズに通じるように説明することは出来たが、腕を組んで悩むその様子にはがっかりしたものが感じられる。
恐らく試運転を眺めていた時から、いかにして自分達の生活に組み込むかを想像していたのだろう。
一般化までが遠いと知っては、内心では相当落ち込んでいるに違いない。
仕方ない。
ワンズとは知らない仲でもないし、一つ案を出すとしよう。
「代わりと言っては何ですが、この舟、しばらくそちらにお貸ししますよ」
「なに!いいのか!?」
「ええ。どうせ舟を置く場所は必要ですから、俺達が使わないときはそちらで好きに使ってくれて構いませんよ」
毎日いつでも海に出るという立場にあるわけでもない俺よりも、舟の扱いに慣れていて毎日海で働く漁師達に使ってもらった方が作った甲斐はあるし、なにより多くの人が使うことで改良点なども見つかる可能性もある。
そういう点から、時折俺が気分転換に使う以外はしばらく村の舟という扱いにしてもいい。
魔力タンクへの補充は俺かパーラが請け負い、舟体のメンテナンスは村の人間が行うということにして、問題は船外機のメンテナンスに関してだが、これは適任を俺から推薦させてもらう。
「ロニ、船外機の方はお前に頼んでもいいか?」
「うん、任せて」
胸を張ってそういうロニは、中々頼りになりそうだ。
実際に舟を動かしたことで自信を得たのか、与えられた使命に対しての気負いのようなものは感じられるものの、今日までのロニの働きを考えると安心して任せてもいいだろう。
流石に子供に毎日舟を見ろとは言えないので、暇な時、一週間おきぐらいにでも様子を見てくれればいい。
何かあっても、よっぽどの物でない限りはロニが直せるはずだしな。
しかし帆いらずとはいえ、こんな小舟一艘があったところで何の役に立つのかという思いはあるが、それに関してワンズが言うには、沖に流されてしまった舟などを引っ張ってくるのに使ったり、まだ風を読むのが下手な若い漁師に経験を積ませる練習などにと色々用途はあるのだそうだ。
まあ風に頼らないで動けるとはいえたった一艘の舟だけの運用となれば、他の舟のサポートやレスキュー目的が妥当なところだろう。
この辺りは俺よりも漁師の方が船の活用法は見いだせるようなので、扱いに関して俺から特に何かを言う事はせず、とにかく壊したりしないように頼むだけだ。
こうして俺とロニが作ったモーターボートはジンナ村に貸与となったが、後日、このことを聞き付けたアイリーンがロニを伴ってこの舟でコッソリ沖へ遊びに出かけるという事件を起こし、それに関してはレジルがアイリーンに特大の雷を落としたことで話は終わらせてもらう。
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