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異世界ポップスター
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旅をしていて新しい場所に来たらやることというのは人によってさまざまだと思う。
有名スポットを巡ったり、おいしいものを求めるのはありがちだが、旅の楽しみ方は人それぞれだと思うので、これが一番というのを決めるのは難しい。
中には少し毛色が違う楽しみ方として、現地の一般生活を体験してみるというのも面白い。
自分が普段送る生活とはかけ離れた環境をその身に感じられるのは、時として何よりも得難い思い出を作ることがあるそうだ。
では俺自身が考える旅の楽しみ方というものは何か。
それは異世界らしさを見つけるということだ。
かつて自分が生きていた地球世界において、想像の産物に過ぎないとされていたファンタジー世界というものが目の前にあるのだから、それを体験するというのがとにかくおもしろい。
エルフやドワーフなどの亜人種を見つけた時は興奮したものだし、妖精との遭遇は…度肝を抜かれたとだけ言っておこう。
サリカラへとやって来た俺達は、予定ではネイの手引きで第二王子のダルカンと面会をすることになっていたのだが、思いの外早く来てしまったため、日程の調整などで朝からネイが城へと向かうことになり、俺とパーラは街を観光でもして日を潰すということになった。
生憎、ネイの愛馬はまだこちらへと来ていないため、代わりの馬に跨ったネイに引率される形で、俺達はバイクを走らせて首都サリカラへと向かうことにした。
こっちではまだバイクは走っていないようで、街道を走ると久しぶりに向けられる奇異の目に、なんだか懐かしさを覚えてしまう。
首都サリカラを遠めに見てみると、外壁に囲まれた威容は流石一国の首都といった感じだが、今まで訪れた国々の首都に比べると、外壁の高さが低いような気がした。
土地柄、建材が足りていないのかとも思ったのだが、近付いていくとその理由が分かった。
俺達が今進んでいる街道はそのまま街の門へと続いているのだが、それ以外の街の周囲の地面は大きく抉られたように低くなっており、その分だけで外壁の高さを補っているようだ。
中々面白い作りの街だと思うが、ネイが言うにはこの地形のせいで街の拡張ができないため、街の人口が増えていった先にある未来では遷都も検討されているほどに、政府上層部は不便さを覚えているそうだ。
ここが首都となったのは戦乱の時代ともいえた頃であり、この地形も防衛を考えると非常に優れてはいるのだが、長い間、戦らしい戦が起きていないチャスリウスでは、都市としての発展を考えた場合にはマイナスとなる点は多い。
しかしながら、歴史的な価値と長い年月で積み重ねられた都市としての風格は首都として十分に誇れるものであるため、まだまだ実際に遷都へと至るまで切羽詰まってはいないらしい。
短いながらも移動の間の暇を埋める意味も兼ねたネイの講義を聞きつつ、街の中へと繋がる石橋を渡っていくと、門の前では街に入っていく人達の列が見えた。
街に入るには門番に身分を証明するものを提示するというのはどこの国でも同じだが、俺達はネイの貴族特権である門の通行自由に便乗させてもらい、手間と時間を大幅に省くことができた。
やはり持つべきものは貴族の友か。
心の中でネイに手を合わせつつ門をくぐった俺の目に飛び込んできたのは、城へと続く大通りを埋め尽くす人の群れとこの国特有の文化を体現した家々の並ぶ姿だった。
これまで飛空艇での移動中に見てきた町村の建物と建築様式は同じようだが、こうして近付いて見てみると壁にはその家ごとに異なる模様が描かれており、文字ともいえないそれは何か呪術的な意味合いでもあるのかと思ってしまう。
「ネイさん、あの家の壁に描かれてるのって何?なんかの文字?」
「あぁ、それはその家が誰のものかを示すものだ。昔からある家はそうして模様で見分けられていたそうだ。最近は普通に名前を書いた木札なんかを提げる家も多いが、今でもそういうやり方で家を建てる人はいるらしい」
「へぇー……なんで?」
「さて、私にもわからんな。周りの家もそうだからとか親のそのまた親から言われたからとか色々あるんだろう。別にあれを法で強制も規制もしていないから、完全に個人の好みだな」
俺が抱いていた疑問はパーラの口からネイへと伝わり、興味深い話を聞けたのはよかった。
しばらく通りを進み、街のメインストリートが接続される中央広場のような場所でネイがおもむろに口を開いた。
「さて、私はこのまま城へ向かうが、君達は街を見て回るといい。土産物屋はこっちの通りがおすすめだ。この時間だとそっちの通りを行った先にある広場で大道芸なんかも見られるだろう。ただし、くれぐれも外周街へはいかないでくれよ。あそこは治安がいいとは言えんから、何かあっては困る」
ネイの言う外周街とは、壁の内縁に沿って建ち並ぶいわゆるスラムのような場所のことで、低所得者や破落戸といった連中が多くたむろしているため、チャスリウスに始めて来た旅人などにはその辺りには近付かないようにと門番から注意がされるほどだ。
「大丈夫だって。私達だってそこそこ冒険者としてやってきてるんだよ?そんなとこにいって絡まれても逆に懲らしめてやるんだから」
シュッシュッと拳を二度突き出して不敵に笑うパーラを見て、ネイは重い溜息を吐き出す。
「だから行くなと言っているんだ。君たちの心配をしているんじゃなく、のこのこと自分から竜の尾を踏みに行く住民が不憫なだけだ。いいな?絶対に行くなよ。絶対だからな」
「それは振りですか?」
「振り…?いや、逆に煽ってるわけじゃない。いいから、本当に行かないようにしてくれ。あそこに行かなくてもこの街には楽しめるところはいくらでもあるんだからな」
もしかしたら芸人的なノリかとも思い、念のために裏に込められた意味を思い切ってネイに尋ねてみたが、どうやら本当に俺達よりもそこにいる住民を心配しているらしい。
俺達を危険人物のように扱っているのは甚だ心外だが、これもここまでの旅で得た俺達への印象がよくなかったのか。
だとすればそのあたりをじっくりと聞いてみたいところだが、生憎ネイはとっくに城の方へと馬を走らせてしまった。
仕方ない、またの機会としよう。
「じゃあどうするか。パーラはなんかやりたいこととかあるか?」
「そうだねぇ…。うん、さっきネイさんが言ってた大道芸人っての見たいかな。チャスリウスだとどんなのが流行ってるのか気になるし」
「よし、なら早速そこに行こう。…あんまり立ち止まってたら余計に人の注意を集めちまう」
先ほどからバイクを遠巻きに眺める人の群れが俺たちの周りに形成されつつあり、このままだと通りの往来の邪魔になっているのではないかと不安になる。
人垣から逃げるようにしてバイクを走らせ、ネイに教えられた広場を目指す。
途中、すれ違う馬や馬車からはいろんな視線を浴びせられたが、ほとんどが奇異の視線だった。
やはり名馬の産地だけあって、街中を行く馬の姿が多い中ではバイクの存在は浮いてしまう。
まぁ俺もパーラもこの手の視線にさらされるのはすっかり慣れたものだがな。
到着した広場はここに来るまでに見た喧騒をさらに凝縮したような賑わいで溢れていた。
ちょっとした公園ぐらいの広さはあるスペースに、様々な格好をした老若男女が音楽を奏でながら踊ったり、変わったものだとアクロバットな動きとナイフ投げを組み合わせた的当てなんかをしている人間もいる。
観客の方も街の住民から旅人、冒険者や傭兵などと様々な人達がこの大道芸を楽しんでいた。
こういう人ごみが出来れば商機を敏感に察知した商人も詰めかけるものだが、何かしらの取り決めでもあるのか、この場で何かを売っているという姿は見られない。
代わりにこの広場の入り口となっている通りには食べ物を扱う店舗が多く、そこで何か買って食べ歩いている人が多いようだ。
広場の脇にある馬を停めるスペースにバイクを置き、広場へと足を踏み入れると、四方八方から浴びせられる音楽や人の歓声に思わず首をすくめてしまう。
「すごい数の人だね。ここにいる人達だけでどれぐらいになるのかな」
「さてな。百や二百は軽く超えてるだろう。他の国でも大道芸人は見かけたけど、この規模で人を集めたのは流石にここぐらいか?」
キョロキョロと周囲を見渡すパーラの顔は笑顔一色で、この雰囲気を純粋に楽しむあたりはまだまだ子供だといえる。
アシャドルやソーマルガなどの国でもそれなりに大道芸人というのはいたが、どれも道端の一角を借りてパフォーマンスをやるぐらいで、こういった丸ごと大きな広場に集められて芸を披露するというのは見たことがない。
街の他の場所では大道芸は行われていないのか、それともたまたまここに集まっただけなのかをネイに聞けばよかったと少し後悔しつつ、とりあえずどんなものがあるのかを一通り見て回ることにした。
そして、しっかりとおひねり用の小銭をスタンバイしておくのも忘れない。
この芸人達も生活があるのだから、見入ってしまったものには報酬と敬意を払うのは当然の義務だ。
体感時間で一時間ほど見て回ったが、なかなかバラエティに富んだものが見れた。
真昼間からもお構いなしに妖艶な格好をした美女が躍るというものが多く、次いで多いのはナイフ投げや剣舞などの武器を使ったパフォーマンスだ。
どうやら一般市民には危険であればあるほどうけるようで、一番人気があったのは手斧を使ったジャグリングだった。
そこに多くの人垣が出来ているおかげで、他の人も気になって集まるという好循環を生み出しているのだから、あのジャグリングをしている男は今日の稼ぎにも内心で期待していることだろう。
「うっわ、あんなことよくやるねぇ。失敗したら手が落ちるかもしれないのに」
「まぁ確かに危ないけど、手斧ぐらい重さがあれば、上に放ってから落ちてくるまでの軌道も安定してやりやすいのかもしれないな」
俺には同じことは無理だが、小豆の詰まった布袋でのお手玉であれば四つまでは同時に操ったことがある。
当然難易度は今目の前で行われているジャグリングのほうが段違いに高い。
大勢の人を前にして、金をとれるだけの技術を披露しているわけだ。
見世物としては楽しめたので、他の観客が放るおひねりに俺達のも混ぜて、その場を後にした。
次に俺達が注目したのはあまり人が集まっていない所だった。
他とは違って激しい動きや目立つ出し物もない、ただただ音楽のみを奏でているだけというものだ。
そこにはチャスリウスの民族衣装を纏った老婆が一人、手にはマンドリンと思われる楽器を手にしており、それを巧みに弾いて幻想的な音楽を俺の耳に届けてくれている。
聞いていて不思議な落ち着きを与えてくれる穏やかな音楽は、この広場の喧騒の中にあってもはっきりとその存在を感じられる何かがある。
にもかかわらず、俺達以外ではこの老婆の前に立ち止まる者もおらず、もしかして俺達だけにしか見えていないのかと一瞬考えてしまった。
そうしていると演奏も終わり、少し遅れてパーラが俺の脇を肘で突いてきた。
「アンディ、お代」
「あ、そうか。そうだな」
どうやらおひねりを忘れるぐらいに聞き惚れていたようで、少し慌てて目の前にある小箱にお代を入れる。
「ありがとうよ、お若いの」
「いえ、いいものを聞かせてもらいましたので」
見た目どおりの穏やかな声でお礼を言われた。
似ていないはずなのに、なんだか俺の亡くなった祖母を思い出す。
「ねぇねぇ、お婆さん。なんで他のお客さんがいないの?こんなにいい曲弾いてるのにさ」
「バカ、失礼だろ。…すみません、余計なことをお聞きして」
「ほっほっほ、構わんよ。…あんたらの他に客がいないのは古い楽器で古い曲しか弾けないこの婆のせいさ。見たところあんたらはこの国の人間じゃないね?さっきの曲はこの国の人間なら子供の頃から何度も聞くもので、皆聞き飽きているんだよ」
そう言ってマンドリンを一撫でする老婆の姿からは寂しさが感じられる。
「他のところのを見てみればわかると思うけどね、最近はああいう派手なのが人気らしいよ。退屈で代り映えのしない音楽じゃあ見向きもされないのさ」
確かにこの広場で人が集まるのは派手な動きと奇抜な催し物にであって、音楽もどちらかというとその添え物としてあるだけ。
楽器の演奏一本だけでやっているのはこの老婆以外にはいないぐらいだ。
「そのマンドリン…でいいんですかね。ここでそれを弾いて長いんですか?」
「これかい?かれこれ40年はやってるね。昔はそこそこ名の売れた楽士だったんだよ。城にも何度か呼ばれたことがあって―」
在りし日の栄光とでもいうべきか、昔のことを語る老婆の目は先ほどよりも生き生きとしている。
この老婆の話を聞きながら、俺の心は別のことを思っていた。
先ほど聞いたマンドリンの音色は素晴らしいものだ。
技術もさることながら、儚さが感じられる曲もまたよかった。
これを聞き飽きているというのであれば興味を持たないのも仕方ないが、それならそれでアプローチを変えたやり方を試してみたくなってきた。
話が城で開かれた音楽会でプロポーズを受けたというくだりに差し掛かっているところで、パーラもそこには食いついているところ申し訳ないが、割り込ませてもらう。
「お話の途中すみません」
「あの頃は爺さんも男っぷりが―ん?なにかな?」
「一つ試したいことがあるのですが、ご協力願えないでしょうか?」
「ほっ?協力とな」
太陽が頂点を超えた時間を過ぎ、昼食を終えた人達が大道芸を見物に詰めかけて広場の人口密度が更に上がった。
聞くとこの時間帯が一番人が多くなるため、ちょうど今が大道芸人達のまさに稼ぎ時であり、午前を超える賑わいが広場を包んでいく。
そんな中、大きな動きを見せることもなく楽器だけを弾くという場所は人の注目も集まらないものだが、素通りしようとした人達の耳に馴染みのない音楽が聞こえてくるとしたら話は違う。
この国の人間であれば馴染みの深いマンドリンという楽器。
それを使っての演奏というのは大抵似たような音調に偏っていくものらしいのだが、今広場の片隅で披露されているマンドリンは恐らく全く新しいものと捉えられているはずだ。
現に、先ほどから次々と足を止める人達が増えてきており、俺達のいるスペースはもう既に人垣と呼べるほどの人に囲まれていた。
マンドリンの演奏をしているのはさっき知り合ったあの老婆、名前をエファクという。
あの後、俺はエファクの協力を取り付けてすぐに、人の目と耳がない場所に引っ込んで、前世の日本で流行っていたポップミュージックからクラシックまでハミングでエファクに聞かせ、マンドリンで再現するというのを試してみた。
この際、一々説明が長くなるのが煩わしいから敬語はやめろと言われたので、エファクを呼ぶ時にはパーラは変わらずお婆さん、俺は婆さんと呼ぶようになる。
敬語をやめたことで遠慮も減ったおかげか、ガンガン注文を付けて試していくと、すぐにエファクは曲を覚えていく。
それまで聞いたことのないメロディにエファクは興味を示し、午前いっぱいを使っていくつかのJPOPな曲を演奏できるまでになっていた。
その腕前は長年の経験に裏打ちされた確かなもので、俺が口ずさんだメロディをほぼ完璧に再現しているばかりか、あのマンドリン独特の弦を震わせるような音を織り込んで奏でられるそれは、まさに現代日本で聞いた曲が異世界で生まれた瞬間だった。
今は主にエファクだけが演奏しているが、その後ろに控える形でいる俺とパーラにもこの後ちゃんと役割がある。
その瞬間が来るまでは、エファクのマンドリンでどれだけ人の足を引き留められるかが肝心だ。
―あれ?ここってなんかやってたっけ?
―ん?確か婆さんがマンドリン弾いてるだけだったような…。
―なんだ、それだけかよ。…でもなんか聞いたことない感じの曲だ。
マンドリンを奏でているだけでは興味を引かれなかったはずのこの場所に、いつの間にか人だかりができあがり、それがさらに人を呼ぶ。
流れを妨げない程度に人が溜まったところで、曲を変える。
それまで奏者の後ろにいたパーラが前に出て、エファクよりも目立つ位置へとつく。
丁度パーラを頂点にエファクと俺で三角形を作るような並びになると、演奏していたエファクに注目していた観客の視線が一気にパーラへと引き寄せられていく。
何か新しいパフォーマンスかと期待している観客に応え、大きく息を吸ったパーラが一拍おいてから歌いだす。
パーラが歌うのは三日月をテーマにした曲だ。
世界が変われども存在する月を歌にすれば親近感は沸くだろうと思ってこのチョイスにした。
この世界での歌といえば、下は吟遊詩人が町の酒場で口ずさむ程度のものから、上は劇場で行われる歌劇まである。
吟遊詩人も歌劇も音楽を楽しむというよりも、詩や動きで観客にストーリーを追想させることに重きを置かれているため、大抵が小難しい言い回しを荘厳な音楽とともに話すというスタイルが多い。
今パーラがやっているように、穏やかなメロディーを聞かせながら分かりやすい言葉での歌というのはもしかしたら俺達が初めてこの世界で行っているのかもしれない。
街角で流す音楽としてはこれぐらい気楽なのがいいものだと俺は思う。
曲の再現は完璧、パーラの歌声も中々いい。
観客もパーラが歌いだした時に一瞬浮かべた怪訝な表情はすっかり鳴りを潜め、中には目を閉じて聞き入っている姿も見られる。
途中で俺が金属の棒で剣の刃を叩く音を混ぜると、マンドリンだけの演奏へさらに音が重なって深みが増していく。
丁度サビの盛り上がりの部分だったので、パーラも熱が入って声量は上がっていく。
歌詞と曲のスピードも元となった曲からは変えているが、これはこれで原曲のイメージを壊さない程度にはオリジナリティが感じられていい。
元々バラード系の曲だったということもあって、終わり方は静かにフェードアウトしていく感じで、最後にエファクのマンドリンが弦を緩やかに爪弾いて締められた。
気がつくと、広場に満ちていたはずの喧騒と音楽はその数を減らしており、エファクの鳴らした弦の音が妙に強く響き渡ったような気がした。
次の瞬間、これまで聞いたことのないほどの連続した大きな破裂音が俺達の体を襲った。
音の正体は大勢の人間が鳴らす拍手だ。
俺達の演奏を聞いていた人達からの賛辞、拍手と歓声と共にこちらへと放られてくるおひねりである硬貨の鳴らす金属音がパフォーマンスの成功を告げている。
「や、どーもどーも。にゃははは、どーもー」
「嬢ちゃん!いい歌だったぞ!」
「ねぇ、次はどんなのを聞かせてくれるの?」
「んー次はまだ未定かな。ちょっと相談するから少し時間をおいてからまた来てみてね」
投げ込まれているお金を拾い集める役割は俺とパーラに任されており、その際にパーラには観客からひっきりなしに声がかけられている。
主に歌を称える言葉が多いが、中には次を欲しがる声も同じぐらい多い。
律儀にその言葉一つ一つに応えているパーラは、なんだかアイドル的存在にでもなったかのように錯覚してしまう。
「ほっほっほっほ。こりゃあ驚きだ。今までやってきた中で一番の稼ぎだよ」
元々おひねりを入れるためにあった小さな麻袋が、硬貨でパンパンになって俺とパーラの手にある。
袋自体が小さいということもあるが、それはつまり普段はこの小袋で十分に用が足りる程度の収入だったということだ。
殆どが銅貨と鉄貨であるため、全部まとめても金貨には届かないとは思うが、それでもこれだけの貨幣の枚数分だけ観客が喜んでくれたということの証であるため、これは俺達にとっての勲章代わりとなるだろう。
「アンディ、次は何を弾くのかってすごい聞かれたんだけどさ、どうするの?」
「そりゃあ客が待ってるならやらないわけにはいかんだろ。婆さん、次に弾くのはどれにする?」
本当なら少し間をあけて客同士の口コミ効果を狙うつもりだったのだが、どうも客の足が動きそうにないため、これはすぐに次の曲をやったほうがいいような気もする。
老人であるエファクの疲労も考えなくてはならないが、見た限りでは疲れている様子もないため、次の予定を尋ねてみた。
「なら糸の歌にしようかね。あれは歌詞もいいし、マンドリンの音とも相性がいいんだよ」
「あぁ、私も好きだよあれ」
「じゃあそれでいこう。少し休んだら婆さんのマンドリンで適当な曲を弾いて客を呼ぶってことで」
そんなわけで、エファクのマンドリンを出囃子代わりにしてパーラが人の前に姿を現すと、先ほどの客からだと思われる歓声と拍手が巻き起こった。
これほどの期待をかけられているとあれば応えずにはいられないのがパーラの性格だ。
笑顔で手を振りつつ、所定の立ち位置についたのを確認したエファクが一度演奏の手を停め、客の耳がこちらに完全に向いたのを察知してか、細く小さい音から演奏を始めている。
先ほどの三日月をテーマにした曲もそうだが、男女の仲を歌うというのはどの世界でも女性受けがよく、観客には女性の姿が増えているように感じた。
面白いことに観客の中には大道芸人と思われる格好をした人もちらほらと混ざっており、それだけ俺達の催しは注目の的になっているようだ。
とはいえ、ずっと聞いている人もいれば少し聞いて立ち去る人いるので、そのあたりは好み次第となる。
この広場に集まっている芸人達の傾向としては、危険で大掛かりなパフォーマンスで客を喜ばせるものが多いようだが、俺達の行動によって過去には確かにあったと聞いた音楽の演奏を楽しむというものに再び光が当たってくれることを願っている。
体を張った芸もいいものだが、それだけに拘らず、音楽や似顔絵などの色々と幅のある芸を見たいという思いが俺にはあった。
今回はエファクに押し売りのようにして協力する形になってしまったが、今後は俺などが手を加える必要がないほどに多様な芸を生み出していくと思いたい。
マンドリンの演奏に歌を加えた俺達のパフォーマンスに、広場に渦巻く熱意と情熱は確実に盛り上がっているのを感じる。
きっと今俺達の演奏を聴いている芸人達も、これを超える何かを作ろうとするはずだ。
そうなった時、またここで新たな楽しい時間を体験できることだろう。
結局、俺達は観客の波が引かないままに日暮れまで演奏を続けることになった。
曲を変えたりリクエストを受けたりと、20曲近く演奏したわけだが、流石にエファクも疲労が大分溜まってきていたため、まだ残る観客には申し訳ないが幕とさせてもらう。
「いやはや、まさかこの年になってここまでの稼ぎを手にする時が来るとは。やっぱり若いもんには若いもんが考えた曲でなければいかんのかの」
小山となって積まれた硬貨の入った麻の小袋を見て、エファクのしみじみとした言葉が何とも寂しそうだ。
「確かに楽曲を提供したのは俺だけど、婆さんの腕あってこそだって。それとパーラの歌声もな」
「うぇへ、照れる。でもアンディの言う通り。お婆ちゃんの演奏じゃなきゃあそこまで人は集まらなかったよ」
「ほっほっほっほ、ありがとうよ。それじゃあ報酬の話をしようかね。…本当にこのお金を山分けにしなくてもいいのかい?」
互いに賛辞を交換し合い、今日の成功を祝ったところで報酬の話に移る。
何も100パーセント慈善でエファクに手を貸したわけではないのだ。
成功したあかつきには報酬を頂くことは約束してあった。
内容も金ではなく、別のものでということも既に承諾をもらっている。
「ああ。最初の約束通り、マンドリンの実物と演奏の指南で頼みたい」
「そりゃあ構わないけど、貰いと払いが釣り合ってないと思うのは私だけかねぇ」
「俺にとっては婆さんほどの腕の奏者に指南してもらうんだから、十分釣り合ってるよ」
どちらにとって価値があるのかは人それぞれだ。
今回、俺が欲しかったのはマンドリンとその演奏法であり、その対価として日本の曲を提供しただけだ。
それを使って今後エファクがどう稼ぐかは知ったことではない。
ただし、俺とパーラがいつまでもチャスリウスにいるとは限らないので、歌い手はエファク自身で手配しなくてはならない点を考慮すると、安定した稼ぎにはもう少し準備がかかることだろう。
「それじゃあ楽器は私の家にあるのを譲るとして、弾き方を習うのはどっちだい?」
「俺―」
「はいはいはーい。私も習いたい」
「……おい、パーラ。俺が習うって最初に話し合っただろ」
「まぁそうなんだけどさ、私も歌ってて興味出ちゃった。お婆さん、いいでしょ?」
「もちろんさ。教えるのに一人も二人も変わりゃしないよ」
「わーい!」
両手を挙げて喜ぶパーラの姿に、エファクは孫を見るような穏やかな目を浮かべ、俺はというと苦笑がこぼれた。
最初、パーラと話し合ったときはマンドリンの演奏に興味を示さなかったというのに、この短時間で心境が変化したのは何にでも興味を持つパーラの性格ゆえのことだろう。
エファクの演奏を傍で見ていた俺の感想としては、このマンドリンという楽器の扱いは中々複雑だと思うのだが、果たしてパーラは最後まで飽きずに学べるのかという一抹の不安はある。
一応本人にやる気はあるようなので強く反対することはないが、教えてくれるエファクに失礼のないように言っておいたほうがよさそうだ。
今日はもう大分日が遅いので、エファクの家に行って楽器を受け取り、軽く基本だけ習って続きは明日からということになった。
なおその際、パーラは覚えるのを諦めたようで、早々にギブアップしていたことをここに明かしておこう。
有名スポットを巡ったり、おいしいものを求めるのはありがちだが、旅の楽しみ方は人それぞれだと思うので、これが一番というのを決めるのは難しい。
中には少し毛色が違う楽しみ方として、現地の一般生活を体験してみるというのも面白い。
自分が普段送る生活とはかけ離れた環境をその身に感じられるのは、時として何よりも得難い思い出を作ることがあるそうだ。
では俺自身が考える旅の楽しみ方というものは何か。
それは異世界らしさを見つけるということだ。
かつて自分が生きていた地球世界において、想像の産物に過ぎないとされていたファンタジー世界というものが目の前にあるのだから、それを体験するというのがとにかくおもしろい。
エルフやドワーフなどの亜人種を見つけた時は興奮したものだし、妖精との遭遇は…度肝を抜かれたとだけ言っておこう。
サリカラへとやって来た俺達は、予定ではネイの手引きで第二王子のダルカンと面会をすることになっていたのだが、思いの外早く来てしまったため、日程の調整などで朝からネイが城へと向かうことになり、俺とパーラは街を観光でもして日を潰すということになった。
生憎、ネイの愛馬はまだこちらへと来ていないため、代わりの馬に跨ったネイに引率される形で、俺達はバイクを走らせて首都サリカラへと向かうことにした。
こっちではまだバイクは走っていないようで、街道を走ると久しぶりに向けられる奇異の目に、なんだか懐かしさを覚えてしまう。
首都サリカラを遠めに見てみると、外壁に囲まれた威容は流石一国の首都といった感じだが、今まで訪れた国々の首都に比べると、外壁の高さが低いような気がした。
土地柄、建材が足りていないのかとも思ったのだが、近付いていくとその理由が分かった。
俺達が今進んでいる街道はそのまま街の門へと続いているのだが、それ以外の街の周囲の地面は大きく抉られたように低くなっており、その分だけで外壁の高さを補っているようだ。
中々面白い作りの街だと思うが、ネイが言うにはこの地形のせいで街の拡張ができないため、街の人口が増えていった先にある未来では遷都も検討されているほどに、政府上層部は不便さを覚えているそうだ。
ここが首都となったのは戦乱の時代ともいえた頃であり、この地形も防衛を考えると非常に優れてはいるのだが、長い間、戦らしい戦が起きていないチャスリウスでは、都市としての発展を考えた場合にはマイナスとなる点は多い。
しかしながら、歴史的な価値と長い年月で積み重ねられた都市としての風格は首都として十分に誇れるものであるため、まだまだ実際に遷都へと至るまで切羽詰まってはいないらしい。
短いながらも移動の間の暇を埋める意味も兼ねたネイの講義を聞きつつ、街の中へと繋がる石橋を渡っていくと、門の前では街に入っていく人達の列が見えた。
街に入るには門番に身分を証明するものを提示するというのはどこの国でも同じだが、俺達はネイの貴族特権である門の通行自由に便乗させてもらい、手間と時間を大幅に省くことができた。
やはり持つべきものは貴族の友か。
心の中でネイに手を合わせつつ門をくぐった俺の目に飛び込んできたのは、城へと続く大通りを埋め尽くす人の群れとこの国特有の文化を体現した家々の並ぶ姿だった。
これまで飛空艇での移動中に見てきた町村の建物と建築様式は同じようだが、こうして近付いて見てみると壁にはその家ごとに異なる模様が描かれており、文字ともいえないそれは何か呪術的な意味合いでもあるのかと思ってしまう。
「ネイさん、あの家の壁に描かれてるのって何?なんかの文字?」
「あぁ、それはその家が誰のものかを示すものだ。昔からある家はそうして模様で見分けられていたそうだ。最近は普通に名前を書いた木札なんかを提げる家も多いが、今でもそういうやり方で家を建てる人はいるらしい」
「へぇー……なんで?」
「さて、私にもわからんな。周りの家もそうだからとか親のそのまた親から言われたからとか色々あるんだろう。別にあれを法で強制も規制もしていないから、完全に個人の好みだな」
俺が抱いていた疑問はパーラの口からネイへと伝わり、興味深い話を聞けたのはよかった。
しばらく通りを進み、街のメインストリートが接続される中央広場のような場所でネイがおもむろに口を開いた。
「さて、私はこのまま城へ向かうが、君達は街を見て回るといい。土産物屋はこっちの通りがおすすめだ。この時間だとそっちの通りを行った先にある広場で大道芸なんかも見られるだろう。ただし、くれぐれも外周街へはいかないでくれよ。あそこは治安がいいとは言えんから、何かあっては困る」
ネイの言う外周街とは、壁の内縁に沿って建ち並ぶいわゆるスラムのような場所のことで、低所得者や破落戸といった連中が多くたむろしているため、チャスリウスに始めて来た旅人などにはその辺りには近付かないようにと門番から注意がされるほどだ。
「大丈夫だって。私達だってそこそこ冒険者としてやってきてるんだよ?そんなとこにいって絡まれても逆に懲らしめてやるんだから」
シュッシュッと拳を二度突き出して不敵に笑うパーラを見て、ネイは重い溜息を吐き出す。
「だから行くなと言っているんだ。君たちの心配をしているんじゃなく、のこのこと自分から竜の尾を踏みに行く住民が不憫なだけだ。いいな?絶対に行くなよ。絶対だからな」
「それは振りですか?」
「振り…?いや、逆に煽ってるわけじゃない。いいから、本当に行かないようにしてくれ。あそこに行かなくてもこの街には楽しめるところはいくらでもあるんだからな」
もしかしたら芸人的なノリかとも思い、念のために裏に込められた意味を思い切ってネイに尋ねてみたが、どうやら本当に俺達よりもそこにいる住民を心配しているらしい。
俺達を危険人物のように扱っているのは甚だ心外だが、これもここまでの旅で得た俺達への印象がよくなかったのか。
だとすればそのあたりをじっくりと聞いてみたいところだが、生憎ネイはとっくに城の方へと馬を走らせてしまった。
仕方ない、またの機会としよう。
「じゃあどうするか。パーラはなんかやりたいこととかあるか?」
「そうだねぇ…。うん、さっきネイさんが言ってた大道芸人っての見たいかな。チャスリウスだとどんなのが流行ってるのか気になるし」
「よし、なら早速そこに行こう。…あんまり立ち止まってたら余計に人の注意を集めちまう」
先ほどからバイクを遠巻きに眺める人の群れが俺たちの周りに形成されつつあり、このままだと通りの往来の邪魔になっているのではないかと不安になる。
人垣から逃げるようにしてバイクを走らせ、ネイに教えられた広場を目指す。
途中、すれ違う馬や馬車からはいろんな視線を浴びせられたが、ほとんどが奇異の視線だった。
やはり名馬の産地だけあって、街中を行く馬の姿が多い中ではバイクの存在は浮いてしまう。
まぁ俺もパーラもこの手の視線にさらされるのはすっかり慣れたものだがな。
到着した広場はここに来るまでに見た喧騒をさらに凝縮したような賑わいで溢れていた。
ちょっとした公園ぐらいの広さはあるスペースに、様々な格好をした老若男女が音楽を奏でながら踊ったり、変わったものだとアクロバットな動きとナイフ投げを組み合わせた的当てなんかをしている人間もいる。
観客の方も街の住民から旅人、冒険者や傭兵などと様々な人達がこの大道芸を楽しんでいた。
こういう人ごみが出来れば商機を敏感に察知した商人も詰めかけるものだが、何かしらの取り決めでもあるのか、この場で何かを売っているという姿は見られない。
代わりにこの広場の入り口となっている通りには食べ物を扱う店舗が多く、そこで何か買って食べ歩いている人が多いようだ。
広場の脇にある馬を停めるスペースにバイクを置き、広場へと足を踏み入れると、四方八方から浴びせられる音楽や人の歓声に思わず首をすくめてしまう。
「すごい数の人だね。ここにいる人達だけでどれぐらいになるのかな」
「さてな。百や二百は軽く超えてるだろう。他の国でも大道芸人は見かけたけど、この規模で人を集めたのは流石にここぐらいか?」
キョロキョロと周囲を見渡すパーラの顔は笑顔一色で、この雰囲気を純粋に楽しむあたりはまだまだ子供だといえる。
アシャドルやソーマルガなどの国でもそれなりに大道芸人というのはいたが、どれも道端の一角を借りてパフォーマンスをやるぐらいで、こういった丸ごと大きな広場に集められて芸を披露するというのは見たことがない。
街の他の場所では大道芸は行われていないのか、それともたまたまここに集まっただけなのかをネイに聞けばよかったと少し後悔しつつ、とりあえずどんなものがあるのかを一通り見て回ることにした。
そして、しっかりとおひねり用の小銭をスタンバイしておくのも忘れない。
この芸人達も生活があるのだから、見入ってしまったものには報酬と敬意を払うのは当然の義務だ。
体感時間で一時間ほど見て回ったが、なかなかバラエティに富んだものが見れた。
真昼間からもお構いなしに妖艶な格好をした美女が躍るというものが多く、次いで多いのはナイフ投げや剣舞などの武器を使ったパフォーマンスだ。
どうやら一般市民には危険であればあるほどうけるようで、一番人気があったのは手斧を使ったジャグリングだった。
そこに多くの人垣が出来ているおかげで、他の人も気になって集まるという好循環を生み出しているのだから、あのジャグリングをしている男は今日の稼ぎにも内心で期待していることだろう。
「うっわ、あんなことよくやるねぇ。失敗したら手が落ちるかもしれないのに」
「まぁ確かに危ないけど、手斧ぐらい重さがあれば、上に放ってから落ちてくるまでの軌道も安定してやりやすいのかもしれないな」
俺には同じことは無理だが、小豆の詰まった布袋でのお手玉であれば四つまでは同時に操ったことがある。
当然難易度は今目の前で行われているジャグリングのほうが段違いに高い。
大勢の人を前にして、金をとれるだけの技術を披露しているわけだ。
見世物としては楽しめたので、他の観客が放るおひねりに俺達のも混ぜて、その場を後にした。
次に俺達が注目したのはあまり人が集まっていない所だった。
他とは違って激しい動きや目立つ出し物もない、ただただ音楽のみを奏でているだけというものだ。
そこにはチャスリウスの民族衣装を纏った老婆が一人、手にはマンドリンと思われる楽器を手にしており、それを巧みに弾いて幻想的な音楽を俺の耳に届けてくれている。
聞いていて不思議な落ち着きを与えてくれる穏やかな音楽は、この広場の喧騒の中にあってもはっきりとその存在を感じられる何かがある。
にもかかわらず、俺達以外ではこの老婆の前に立ち止まる者もおらず、もしかして俺達だけにしか見えていないのかと一瞬考えてしまった。
そうしていると演奏も終わり、少し遅れてパーラが俺の脇を肘で突いてきた。
「アンディ、お代」
「あ、そうか。そうだな」
どうやらおひねりを忘れるぐらいに聞き惚れていたようで、少し慌てて目の前にある小箱にお代を入れる。
「ありがとうよ、お若いの」
「いえ、いいものを聞かせてもらいましたので」
見た目どおりの穏やかな声でお礼を言われた。
似ていないはずなのに、なんだか俺の亡くなった祖母を思い出す。
「ねぇねぇ、お婆さん。なんで他のお客さんがいないの?こんなにいい曲弾いてるのにさ」
「バカ、失礼だろ。…すみません、余計なことをお聞きして」
「ほっほっほ、構わんよ。…あんたらの他に客がいないのは古い楽器で古い曲しか弾けないこの婆のせいさ。見たところあんたらはこの国の人間じゃないね?さっきの曲はこの国の人間なら子供の頃から何度も聞くもので、皆聞き飽きているんだよ」
そう言ってマンドリンを一撫でする老婆の姿からは寂しさが感じられる。
「他のところのを見てみればわかると思うけどね、最近はああいう派手なのが人気らしいよ。退屈で代り映えのしない音楽じゃあ見向きもされないのさ」
確かにこの広場で人が集まるのは派手な動きと奇抜な催し物にであって、音楽もどちらかというとその添え物としてあるだけ。
楽器の演奏一本だけでやっているのはこの老婆以外にはいないぐらいだ。
「そのマンドリン…でいいんですかね。ここでそれを弾いて長いんですか?」
「これかい?かれこれ40年はやってるね。昔はそこそこ名の売れた楽士だったんだよ。城にも何度か呼ばれたことがあって―」
在りし日の栄光とでもいうべきか、昔のことを語る老婆の目は先ほどよりも生き生きとしている。
この老婆の話を聞きながら、俺の心は別のことを思っていた。
先ほど聞いたマンドリンの音色は素晴らしいものだ。
技術もさることながら、儚さが感じられる曲もまたよかった。
これを聞き飽きているというのであれば興味を持たないのも仕方ないが、それならそれでアプローチを変えたやり方を試してみたくなってきた。
話が城で開かれた音楽会でプロポーズを受けたというくだりに差し掛かっているところで、パーラもそこには食いついているところ申し訳ないが、割り込ませてもらう。
「お話の途中すみません」
「あの頃は爺さんも男っぷりが―ん?なにかな?」
「一つ試したいことがあるのですが、ご協力願えないでしょうか?」
「ほっ?協力とな」
太陽が頂点を超えた時間を過ぎ、昼食を終えた人達が大道芸を見物に詰めかけて広場の人口密度が更に上がった。
聞くとこの時間帯が一番人が多くなるため、ちょうど今が大道芸人達のまさに稼ぎ時であり、午前を超える賑わいが広場を包んでいく。
そんな中、大きな動きを見せることもなく楽器だけを弾くという場所は人の注目も集まらないものだが、素通りしようとした人達の耳に馴染みのない音楽が聞こえてくるとしたら話は違う。
この国の人間であれば馴染みの深いマンドリンという楽器。
それを使っての演奏というのは大抵似たような音調に偏っていくものらしいのだが、今広場の片隅で披露されているマンドリンは恐らく全く新しいものと捉えられているはずだ。
現に、先ほどから次々と足を止める人達が増えてきており、俺達のいるスペースはもう既に人垣と呼べるほどの人に囲まれていた。
マンドリンの演奏をしているのはさっき知り合ったあの老婆、名前をエファクという。
あの後、俺はエファクの協力を取り付けてすぐに、人の目と耳がない場所に引っ込んで、前世の日本で流行っていたポップミュージックからクラシックまでハミングでエファクに聞かせ、マンドリンで再現するというのを試してみた。
この際、一々説明が長くなるのが煩わしいから敬語はやめろと言われたので、エファクを呼ぶ時にはパーラは変わらずお婆さん、俺は婆さんと呼ぶようになる。
敬語をやめたことで遠慮も減ったおかげか、ガンガン注文を付けて試していくと、すぐにエファクは曲を覚えていく。
それまで聞いたことのないメロディにエファクは興味を示し、午前いっぱいを使っていくつかのJPOPな曲を演奏できるまでになっていた。
その腕前は長年の経験に裏打ちされた確かなもので、俺が口ずさんだメロディをほぼ完璧に再現しているばかりか、あのマンドリン独特の弦を震わせるような音を織り込んで奏でられるそれは、まさに現代日本で聞いた曲が異世界で生まれた瞬間だった。
今は主にエファクだけが演奏しているが、その後ろに控える形でいる俺とパーラにもこの後ちゃんと役割がある。
その瞬間が来るまでは、エファクのマンドリンでどれだけ人の足を引き留められるかが肝心だ。
―あれ?ここってなんかやってたっけ?
―ん?確か婆さんがマンドリン弾いてるだけだったような…。
―なんだ、それだけかよ。…でもなんか聞いたことない感じの曲だ。
マンドリンを奏でているだけでは興味を引かれなかったはずのこの場所に、いつの間にか人だかりができあがり、それがさらに人を呼ぶ。
流れを妨げない程度に人が溜まったところで、曲を変える。
それまで奏者の後ろにいたパーラが前に出て、エファクよりも目立つ位置へとつく。
丁度パーラを頂点にエファクと俺で三角形を作るような並びになると、演奏していたエファクに注目していた観客の視線が一気にパーラへと引き寄せられていく。
何か新しいパフォーマンスかと期待している観客に応え、大きく息を吸ったパーラが一拍おいてから歌いだす。
パーラが歌うのは三日月をテーマにした曲だ。
世界が変われども存在する月を歌にすれば親近感は沸くだろうと思ってこのチョイスにした。
この世界での歌といえば、下は吟遊詩人が町の酒場で口ずさむ程度のものから、上は劇場で行われる歌劇まである。
吟遊詩人も歌劇も音楽を楽しむというよりも、詩や動きで観客にストーリーを追想させることに重きを置かれているため、大抵が小難しい言い回しを荘厳な音楽とともに話すというスタイルが多い。
今パーラがやっているように、穏やかなメロディーを聞かせながら分かりやすい言葉での歌というのはもしかしたら俺達が初めてこの世界で行っているのかもしれない。
街角で流す音楽としてはこれぐらい気楽なのがいいものだと俺は思う。
曲の再現は完璧、パーラの歌声も中々いい。
観客もパーラが歌いだした時に一瞬浮かべた怪訝な表情はすっかり鳴りを潜め、中には目を閉じて聞き入っている姿も見られる。
途中で俺が金属の棒で剣の刃を叩く音を混ぜると、マンドリンだけの演奏へさらに音が重なって深みが増していく。
丁度サビの盛り上がりの部分だったので、パーラも熱が入って声量は上がっていく。
歌詞と曲のスピードも元となった曲からは変えているが、これはこれで原曲のイメージを壊さない程度にはオリジナリティが感じられていい。
元々バラード系の曲だったということもあって、終わり方は静かにフェードアウトしていく感じで、最後にエファクのマンドリンが弦を緩やかに爪弾いて締められた。
気がつくと、広場に満ちていたはずの喧騒と音楽はその数を減らしており、エファクの鳴らした弦の音が妙に強く響き渡ったような気がした。
次の瞬間、これまで聞いたことのないほどの連続した大きな破裂音が俺達の体を襲った。
音の正体は大勢の人間が鳴らす拍手だ。
俺達の演奏を聞いていた人達からの賛辞、拍手と歓声と共にこちらへと放られてくるおひねりである硬貨の鳴らす金属音がパフォーマンスの成功を告げている。
「や、どーもどーも。にゃははは、どーもー」
「嬢ちゃん!いい歌だったぞ!」
「ねぇ、次はどんなのを聞かせてくれるの?」
「んー次はまだ未定かな。ちょっと相談するから少し時間をおいてからまた来てみてね」
投げ込まれているお金を拾い集める役割は俺とパーラに任されており、その際にパーラには観客からひっきりなしに声がかけられている。
主に歌を称える言葉が多いが、中には次を欲しがる声も同じぐらい多い。
律儀にその言葉一つ一つに応えているパーラは、なんだかアイドル的存在にでもなったかのように錯覚してしまう。
「ほっほっほっほ。こりゃあ驚きだ。今までやってきた中で一番の稼ぎだよ」
元々おひねりを入れるためにあった小さな麻袋が、硬貨でパンパンになって俺とパーラの手にある。
袋自体が小さいということもあるが、それはつまり普段はこの小袋で十分に用が足りる程度の収入だったということだ。
殆どが銅貨と鉄貨であるため、全部まとめても金貨には届かないとは思うが、それでもこれだけの貨幣の枚数分だけ観客が喜んでくれたということの証であるため、これは俺達にとっての勲章代わりとなるだろう。
「アンディ、次は何を弾くのかってすごい聞かれたんだけどさ、どうするの?」
「そりゃあ客が待ってるならやらないわけにはいかんだろ。婆さん、次に弾くのはどれにする?」
本当なら少し間をあけて客同士の口コミ効果を狙うつもりだったのだが、どうも客の足が動きそうにないため、これはすぐに次の曲をやったほうがいいような気もする。
老人であるエファクの疲労も考えなくてはならないが、見た限りでは疲れている様子もないため、次の予定を尋ねてみた。
「なら糸の歌にしようかね。あれは歌詞もいいし、マンドリンの音とも相性がいいんだよ」
「あぁ、私も好きだよあれ」
「じゃあそれでいこう。少し休んだら婆さんのマンドリンで適当な曲を弾いて客を呼ぶってことで」
そんなわけで、エファクのマンドリンを出囃子代わりにしてパーラが人の前に姿を現すと、先ほどの客からだと思われる歓声と拍手が巻き起こった。
これほどの期待をかけられているとあれば応えずにはいられないのがパーラの性格だ。
笑顔で手を振りつつ、所定の立ち位置についたのを確認したエファクが一度演奏の手を停め、客の耳がこちらに完全に向いたのを察知してか、細く小さい音から演奏を始めている。
先ほどの三日月をテーマにした曲もそうだが、男女の仲を歌うというのはどの世界でも女性受けがよく、観客には女性の姿が増えているように感じた。
面白いことに観客の中には大道芸人と思われる格好をした人もちらほらと混ざっており、それだけ俺達の催しは注目の的になっているようだ。
とはいえ、ずっと聞いている人もいれば少し聞いて立ち去る人いるので、そのあたりは好み次第となる。
この広場に集まっている芸人達の傾向としては、危険で大掛かりなパフォーマンスで客を喜ばせるものが多いようだが、俺達の行動によって過去には確かにあったと聞いた音楽の演奏を楽しむというものに再び光が当たってくれることを願っている。
体を張った芸もいいものだが、それだけに拘らず、音楽や似顔絵などの色々と幅のある芸を見たいという思いが俺にはあった。
今回はエファクに押し売りのようにして協力する形になってしまったが、今後は俺などが手を加える必要がないほどに多様な芸を生み出していくと思いたい。
マンドリンの演奏に歌を加えた俺達のパフォーマンスに、広場に渦巻く熱意と情熱は確実に盛り上がっているのを感じる。
きっと今俺達の演奏を聴いている芸人達も、これを超える何かを作ろうとするはずだ。
そうなった時、またここで新たな楽しい時間を体験できることだろう。
結局、俺達は観客の波が引かないままに日暮れまで演奏を続けることになった。
曲を変えたりリクエストを受けたりと、20曲近く演奏したわけだが、流石にエファクも疲労が大分溜まってきていたため、まだ残る観客には申し訳ないが幕とさせてもらう。
「いやはや、まさかこの年になってここまでの稼ぎを手にする時が来るとは。やっぱり若いもんには若いもんが考えた曲でなければいかんのかの」
小山となって積まれた硬貨の入った麻の小袋を見て、エファクのしみじみとした言葉が何とも寂しそうだ。
「確かに楽曲を提供したのは俺だけど、婆さんの腕あってこそだって。それとパーラの歌声もな」
「うぇへ、照れる。でもアンディの言う通り。お婆ちゃんの演奏じゃなきゃあそこまで人は集まらなかったよ」
「ほっほっほっほ、ありがとうよ。それじゃあ報酬の話をしようかね。…本当にこのお金を山分けにしなくてもいいのかい?」
互いに賛辞を交換し合い、今日の成功を祝ったところで報酬の話に移る。
何も100パーセント慈善でエファクに手を貸したわけではないのだ。
成功したあかつきには報酬を頂くことは約束してあった。
内容も金ではなく、別のものでということも既に承諾をもらっている。
「ああ。最初の約束通り、マンドリンの実物と演奏の指南で頼みたい」
「そりゃあ構わないけど、貰いと払いが釣り合ってないと思うのは私だけかねぇ」
「俺にとっては婆さんほどの腕の奏者に指南してもらうんだから、十分釣り合ってるよ」
どちらにとって価値があるのかは人それぞれだ。
今回、俺が欲しかったのはマンドリンとその演奏法であり、その対価として日本の曲を提供しただけだ。
それを使って今後エファクがどう稼ぐかは知ったことではない。
ただし、俺とパーラがいつまでもチャスリウスにいるとは限らないので、歌い手はエファク自身で手配しなくてはならない点を考慮すると、安定した稼ぎにはもう少し準備がかかることだろう。
「それじゃあ楽器は私の家にあるのを譲るとして、弾き方を習うのはどっちだい?」
「俺―」
「はいはいはーい。私も習いたい」
「……おい、パーラ。俺が習うって最初に話し合っただろ」
「まぁそうなんだけどさ、私も歌ってて興味出ちゃった。お婆さん、いいでしょ?」
「もちろんさ。教えるのに一人も二人も変わりゃしないよ」
「わーい!」
両手を挙げて喜ぶパーラの姿に、エファクは孫を見るような穏やかな目を浮かべ、俺はというと苦笑がこぼれた。
最初、パーラと話し合ったときはマンドリンの演奏に興味を示さなかったというのに、この短時間で心境が変化したのは何にでも興味を持つパーラの性格ゆえのことだろう。
エファクの演奏を傍で見ていた俺の感想としては、このマンドリンという楽器の扱いは中々複雑だと思うのだが、果たしてパーラは最後まで飽きずに学べるのかという一抹の不安はある。
一応本人にやる気はあるようなので強く反対することはないが、教えてくれるエファクに失礼のないように言っておいたほうがよさそうだ。
今日はもう大分日が遅いので、エファクの家に行って楽器を受け取り、軽く基本だけ習って続きは明日からということになった。
なおその際、パーラは覚えるのを諦めたようで、早々にギブアップしていたことをここに明かしておこう。
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