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第五章 宝刀
第24話
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コンビニエンスストアで総菜パン、菓子パン、お菓子、そして飲み物を購入した大祇とマシューは、再び学校の第二理科室から大江山に戻ってきた。
まりなが宿題をしていた木の木陰に二人は座って、大祇は焼きそばパンを食べ始める。一方、マシューはクリームパンを食べながら今後の作戦について話し始める。
「まず、今、僕たちがいる大江山は現代の大江山にいる。時空捜査クラブだからもちろん過去の大江山にも行くことはできる。酒呑童子が今ほど力を取り戻す前の時代に行くことも検討したけど、今は時間が惜しい」
マシューはクリームパンを食べ終えて、ペットボトルの水を飲んでのどを潤す。大祇は、何も言わずにマシューの作戦に静かに耳を傾けている。
「次に、僕は宝刀を手に入れることを考えた。平安時代に源 頼光が酒呑童子を切りつけたとされる刀だ」
「え? その時の刀ってまだ残っているの? 博物館とかにあるってこと?」
「そう。『童子切(どうじぎり)』という名のついた名刀として、東京国立博物館が所蔵している。それを少し拝借しようと考えている」
「それって、博物館から盗むってこと? 厳重な警備だし、すぐに俺たち捕まってしまうんじゃないか?」
大祇は、まりなを助けるために泥棒になる必要があるのかと、犯罪に手を染める自分を想像した。しかも、今から東京に向かっていたら、その間にまりなが食べられてしまうのではないかと、気が気でない。
「いや。そこは心配しなくていい。この裏の世界の大江山から時空を通して、手を突っ込んで引き寄せるだけだし、その間、表の世界の時間は進まないから、酒呑童子の力を削ぎ落したらすぐに返却すれば問題ない。表の世界に気づかれる前に返却するってこと」
「そうか、表の世界の時間は進まない、つまり止まっているようなものだから、誰にも気づかれることなく童子切を拝借できるんだね」
「そういうこと。そして、念の為にもう一つ宝刀を持って行こうと考えている。僕とたいきがそれぞれ持っていた方が少しでも身を守れると思うんだ」
確かにマシューの言うことには一理ある。大祇は自分たちが手負いになってしまえば、まりなの救出が不可能になると理解していた。
「じゃあ、他にも宝刀があるってこと?」
「そう。源 頼光と一緒に酒呑童子の討伐に行った四天王の一人、渡辺 綱(わたなべ つな)の宝刀『鬼切丸(おにきりまる)』は北野天満宮が現在、所蔵している。こちらもこの裏の世界、大江山から時空に手を突っ込んで、拝借しようと思っている」
少しでも時間が惜しい気持ちをマシューも理解してくれているから、マシューの計画が一番良いに違いない。
大祇はそれほど、マシューに信頼を寄せるようになっていた。
「その二本の宝刀を手に入れたら、酒呑童子と戦うってことだよね?」
大祇は、子供のころのチャンバラごっこや剣道を少し経験しただけで、動きが早いわけでも強いわけでもない。それでも勝ち目は本当にあるのだろうか。
「もちろん、たいきが懸念していることはわかるよ。僕たちは、刀の扱いに慣れてはいない。でもね、何となくだけど、宝刀と呼ばれているのには理由があるはずだよ。恐らく、僕らの知らない鬼を倒す力を宝刀本体に秘めているから、そう呼ばれて現代でも大切にされているんじゃないかな。あくまで、僕の仮説だから根拠はないんだけどね」
マシューは湖の底のようなひすい色の瞳で俺を見ながらポリポリと頭を掻いた。
まりなが宿題をしていた木の木陰に二人は座って、大祇は焼きそばパンを食べ始める。一方、マシューはクリームパンを食べながら今後の作戦について話し始める。
「まず、今、僕たちがいる大江山は現代の大江山にいる。時空捜査クラブだからもちろん過去の大江山にも行くことはできる。酒呑童子が今ほど力を取り戻す前の時代に行くことも検討したけど、今は時間が惜しい」
マシューはクリームパンを食べ終えて、ペットボトルの水を飲んでのどを潤す。大祇は、何も言わずにマシューの作戦に静かに耳を傾けている。
「次に、僕は宝刀を手に入れることを考えた。平安時代に源 頼光が酒呑童子を切りつけたとされる刀だ」
「え? その時の刀ってまだ残っているの? 博物館とかにあるってこと?」
「そう。『童子切(どうじぎり)』という名のついた名刀として、東京国立博物館が所蔵している。それを少し拝借しようと考えている」
「それって、博物館から盗むってこと? 厳重な警備だし、すぐに俺たち捕まってしまうんじゃないか?」
大祇は、まりなを助けるために泥棒になる必要があるのかと、犯罪に手を染める自分を想像した。しかも、今から東京に向かっていたら、その間にまりなが食べられてしまうのではないかと、気が気でない。
「いや。そこは心配しなくていい。この裏の世界の大江山から時空を通して、手を突っ込んで引き寄せるだけだし、その間、表の世界の時間は進まないから、酒呑童子の力を削ぎ落したらすぐに返却すれば問題ない。表の世界に気づかれる前に返却するってこと」
「そうか、表の世界の時間は進まない、つまり止まっているようなものだから、誰にも気づかれることなく童子切を拝借できるんだね」
「そういうこと。そして、念の為にもう一つ宝刀を持って行こうと考えている。僕とたいきがそれぞれ持っていた方が少しでも身を守れると思うんだ」
確かにマシューの言うことには一理ある。大祇は自分たちが手負いになってしまえば、まりなの救出が不可能になると理解していた。
「じゃあ、他にも宝刀があるってこと?」
「そう。源 頼光と一緒に酒呑童子の討伐に行った四天王の一人、渡辺 綱(わたなべ つな)の宝刀『鬼切丸(おにきりまる)』は北野天満宮が現在、所蔵している。こちらもこの裏の世界、大江山から時空に手を突っ込んで、拝借しようと思っている」
少しでも時間が惜しい気持ちをマシューも理解してくれているから、マシューの計画が一番良いに違いない。
大祇はそれほど、マシューに信頼を寄せるようになっていた。
「その二本の宝刀を手に入れたら、酒呑童子と戦うってことだよね?」
大祇は、子供のころのチャンバラごっこや剣道を少し経験しただけで、動きが早いわけでも強いわけでもない。それでも勝ち目は本当にあるのだろうか。
「もちろん、たいきが懸念していることはわかるよ。僕たちは、刀の扱いに慣れてはいない。でもね、何となくだけど、宝刀と呼ばれているのには理由があるはずだよ。恐らく、僕らの知らない鬼を倒す力を宝刀本体に秘めているから、そう呼ばれて現代でも大切にされているんじゃないかな。あくまで、僕の仮説だから根拠はないんだけどね」
マシューは湖の底のようなひすい色の瞳で俺を見ながらポリポリと頭を掻いた。
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