悪の王妃

悪の王妃1

照りつける太陽の下、生を受けた中で一番粗末な灰色のワンピースに身を包む。
項垂れた視界には、膝下まであるはずの自慢の金の髪が肩口で切られているのが見える。

ざわざわと周囲が煩いけれど、わたくしが壇上に上がるとそのざわめきはピタリと止む事を、わたくしは知っている。

「これより！！王妃……いや、罪人、アルティメルダの処刑を執り行う！！」

聞きなれた低い声はわたくしの旦那様である国王陛下の物だと、見なくてもわかるのは何度も繰り返された出来事だからか。それとも、愛していたからか。

真上から降り注ぐ太陽の光の元、古い木の床に押されるように跪かされる。

そうして首を、木で出来た窪みに押さえつけられるのでしょう。
もう何度目かのその行為を知っているから、抵抗はしない。

抵抗した時もあったけれど、その時には胸を切られ、痛みで苦しんだだけではなく民衆に胸を晒す事になってしまったもの。
だからもう抵抗はしないと決めたの。

「…アルティメルダよ…何か最後に言い残す事はないか？」

眉を顰めながら苦々し気に言う貴方様の表情は、見なくてもわかる。
初めての時に貴方様を見たら、そういう顔をしていたのだから。

「いいえ。何も」

さぁ、早くして頂戴。
眩しいこの日差しから解放されたいの。
民衆からの視線も、もう飽きたわ。

少しの沈黙の後。
風を切る音がわたくしの首に向かってくるのが聞こえる。

ザンッ！！
という何かを切り落とした音と同時に、わたくしの視界には何度目になるかわからない、雲一つない真っ青な空が映った。