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熱で寝込む。
しおりを挟む「湊、おかゆ。食べれる?」
「ん、いや、ちょっと・・・」
「・・・そっか」
熱が出て早退して二日経った。食欲が出なくてお母さんにおかゆを作ってもらっても食べられない状況が続いた。
「ごめんね」
「・・・なーに謝ってんのよ!ほら、ゼリーは食べられない?ヨーグルトもあるわよ」
「今はちょっといらないかな・・・」
わざわざ仕事を休んでまで僕を看てなくたっていいのに・・・。
「ねぇ、湊。いつもほったらかしちゃってごめんね?」
「・・・いいよ、別に。」
物心つく前から母子家庭だったから、お母さんは朝から晩まで働いて休みの日はグッタリ休んで、一緒に遊んだりした記憶なんてなかった。
そのことを謝っているのだろう。別に今更に気にしないし。お母さんが働いてくれるから今学校行けてるんだし。
「じゃあお母さん、リビングにいるから。なんかいるものあったら言ってね。」
「うん、ありがと」
お母さんが部屋から出ていくと、再び部屋に静寂が戻った。
春くん、どうしてるかな。今日も中庭で待ってくれてるのかな。
僕、休んだけど。あの人たちに殴られてないかな、大丈夫かな
「春くん・・・」
「は~い」
「!?」
ドアの方を向くそこには春くんが。相変わらずへらへらして近づいてきた。
「な、なん・・・!?」
「俺が玄関前でまごついてたらお母様が入れてくれました~今から買い物行ってくるから湊よろしく!って。」
おぉおおお母さん・・・!!急に人入れないでよ・・・!
春くん、って呟いてたの聞かれちゃった!い、いやいいんだけどね!いいんだけど!
アレだから!心配のアレだから・・・!
「がっこうは・・・」
まだ授業の時間のはず。なんでここに。
「サボっちゃいました!」
ハハッ、てあっけらかんとそういうけど。だ、大丈夫なの・・・?そんな堂々としてたらなにも言えなくなる・・・
「てか、先輩。なに俺の名前とか呼んじゃってんすか~」
「ぃ、いやあの・・・し、心配で・・・!」
「何が心配だったんすか?」
な、なんだか目が怖くなったような・・・。突然の春くんの変化にシドロモドロしてると、
「何が、心配だったんすか?・・・俺が、あいつらに殴られるとか・・・?」
「っ!!」
なんで知って・・・
「それで、・・・それで心配だからって先輩が犠牲になったら意味無いっす!」
「え、なんで誰から・・・」
春くん・・・知ってるの?僕があんなことしたって・・・。なんで、なんで知っててここに来れるの?気持ち悪いって、思わないの?
こんな疑問は春くんにはぶつけられない。拒絶されたら、怖い。
「先輩・・・!」
「ん・・・っ!?」
一瞬、何が起こったか分からなかった。目の前が急に見えなくなって、それで。口に感触があって、春くんの匂いに包まれて。
そこでやって、キスされたって気づいた。
「ん、・・・ふっ」
「こんなことも、したんすか?こんな・・・声、とかも聞かせたんすか?」
春くんが何を言ってるか分からないけど、初めてしたキスはとても気持ちが良くて、びっくりした。
「っ・・・ゃ、風邪、移るから・・・っ」
「・・・移してくださいよ。」
「ふ、・・・っちょ、だ、めだって・・・んっ」
「ダメ・・・?あいつは良くて俺はダメなんすか!?」
「・・・だからっ、ん やってないって!」
「あぁそうですか!・・・て、え?」
「キス、・・・してないし。春くんが初めて、なんだけど。」
やっと口が離れて息を整える。・・・ふぅ、なんとか落ち着いてきた・・・。
・・・っいやいやいや!ぼぼぼぼ、僕!キキキキ・・・ッ
真っ赤になる僕を見て何かを感じ取ったのだろう春くんが顔を青くした。
「ぁあああすいませんでした先輩!俺・・・っなんかはやとちりしたみたいで!」
土下座をする勢い・・・ていうか土下座で謝る春くんを見て、ため息をつく。
「先輩・・・俺のこと、嫌いになりました?」
うるうると目を潤ませる春くんをどうしても怒る気になれず、
「・・・いいよ、もう」
って言ったのを何を勘違いしたのかもっと顔を真っ青にして
「先輩っ見捨てないで・・・!」
ってすがり付いてきた。
・・・ちょっと可愛い気がする。
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