勇者は発情中

shiyushiyu

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第二十五エロ 箱の庭園へ

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「勇者様ー!」

ようやく気が付いた助態に純純が泣きながら抱きついた。

くびちとルブマともふともが、あ!と言うが同時に、まぁ仕方ない。と諦めた。

「じゅ…んじゅん?あれ?俺は一体…?」

混乱する思考の中助態は、純純を優しく離しながら辺りをキョロキョロ見る。

純純は、顔を真っ赤にしながら、取り乱しました。と頭を下げた。

「大丈夫?」

助態同様に吸収スライムの雷攻撃を受けたティーパンが声をかける。

助態の隣のベッドに寝ているが、もう起き上がれる程に回復したようだ。

「悪いね。ちょっと油断した。まさか吸収スライムがあそこまでの知能を身につけているとは思わなかった。あれは今の内に倒しておくべき脅威だ…」

「でもどうやって倒すんですか?話を聞いた限りだと、全く攻撃が効かないとか…」

起き上がったティーパンをそっとベッドに寝かせながら純純が聞く。

助態は先ほど見た夢を思い出しながら頭の中を整理した。

『さっきの夢は置いておくとして、俺がやられた後で誰かがここまで運んでくれたのか…』

「どのくらい寝てたんだろう…?」

ぽつりと助態がこぼした。

先ほどみた夢の感覚では数時間程度だが、雷を受けたティーパンが起き上がれる程に回復しているのを考えると、もしかしたら数日という可能性もある。

「アタイがここに運んだのがちょうど一週間前だよ。」

トントンともふともが自分の肩を叩く。

「それと、ハクダクが作ってくれた鉄爆だけど、アンタのことを守る代わりに破壊されちまったよ。」

ぽん。と鉄爆の柄を助態が寝ている布団の上に軽くなげた。

もふともの声が少し震えているように助態には感じた。

「もふとも?」

「何でもないよ。ただ、もうあんなことはしないでくれよ。自分が犠牲になって仲間を助けるなんて考え、もう二度とするんじゃないよ。ティーパンも。」

くるりと後ろを向いて涙を袖で拭く仕草をする。

珍しく、犬猿の仲のくびちがもふともをそっと抱きしめて背中をポンポン叩いていた。

何かを言おうとする助態をティーパンが片手を挙げて制止した。

助態がティーパンを見ると、ティーパンは首を左右に振り、それからもふともに言った。

「済まなかった。軽率だった。誰かの犠牲の上での勝利に意味なんてないからね。今後の対策を考えよう。みんなが生き残れるための対策を。」

「その前に、助態さんとティーパンさんはもう少し寝た方がいいっすよ。みんなも精神的に疲れてるんすから一度休みましょ。明日の朝までに各自で何かいい案があれば出すってことでどうっすか?」

ぱいおの提案に誰も異儀は唱えなかった。

助態も起きたばかりだったが、物凄く疲れていたからか、泥のように眠りについた。



翌朝、宿屋の食堂でメンバーは集まって朝食をとる。

昨日のことがあったからか、純純ともふともは助態の顔を見ようとしない。

「で、あの吸収スライムを倒す手段思いついた人いますか?」

そんな2人の態度を無視してぱいおが全員に聞く。

「1ついいかしら?」

アンアンが手を挙げる。

「またその吸収スライムと戦うことになったら、私はこの前と同じように戦力外通告なのかしら?」

「そうね。モンスター系は全種族、吸収対象になるからね。吸収されたいなら別だけど。」

パンを頬張りながらティーパンがストレートに答える。

その言葉を聞いてアンアンはしょんぼりする。

「では私は一度温泉に戻った方がいいかしら。みんなの役にも立たないようだし…」

「いや、アンアンさんは、変態助態さんのキングコブラを大人しくさせるってゆー重要な役割があるっすよ!」

「勇者様はどう思いますか?」

ぱいおがアンアンを助態の股間を静める役に任命したのを見て、純純が聞く。

恐らく純純にはそこまで意味が伝わっていないのだろう。

「んー。そうだな。足手まといとかそういうのはないし、俺は一緒に居たいなら居てもいいんじゃないかと思うけどな。」

「まぁ、吸収される前に私たちが助ければ問題ないでしょ。」

赤い髪の毛を掻き上げながら、上品にくびちがスープを飲む。

「そのことについてなんだけどさ。」

ティーパンがみんなに向かって言う。

「あれから考えてたんだ。よく考えたら確かに変だわ…」

「何がです?」

何が言いたいのか分からず助態が訊く。

「勇者。あんたが言っていたことだよ。あの時は突然のことに気が動転してそこまで考えられなかったけど確かに変なんだ。」

「えっと…?」

ますます分からず助態が混乱する。

他のみんなも目を丸くしてティーパンを見る。

「なんで悪魔の使いが吸収されてるのかってやつだよ!普通に考えてありえないんだよ。悪魔の使いの方が動きも早いし知能もある。そもそも吸収スライムは格下モンスターを吸収するんだ。もちろん稀に格上モンスターを吸収することもあるけどそれは稀だ。最上級モンスターである悪魔の使いが吸収されることは絶対にない。」

ティーパンが言い切る。

「それってつまり…」

ごくりと助態が生唾を飲む。

「誰かが後ろで糸を引いてる可能性が高い。」

それに反応するように、こくりとティーパンが頷く。

「私はとりあえず召喚獣を増やしたい。悪魔の使いの悪魔魔法に対抗するためには通常の魔法耐性に加えて反対属性が必要だ。本来なら勇者が聖属性で有効なんだけど、君は性属性だからたぶん効果がない。そこで、箱の庭園の近くにいる箱庭の妖精を仲間にしようと思うんだ。」

悪魔の使いは闇属性で、本来なら光属性や聖属性が効果的であるとティーパンが解説する。

「でも属性はそこまで気にする必要がないって言ってませんでした?」

「うん。危険度の低いモンスターならね。スパイシーSは別だ。きちんとした倒し方で倒さないと今度こそ命がない。有効だと思える手段は何でも使っていこう。」

そう言われて助態も納得する。

「なるほど…箱の庭園ですか…なんか聞き覚えがあるような…」

「なんだ?珍しいな。勇者がこの世界のことを知っているなんて。私も詳しい場所は知らないぞ。」

そう言われた助態が知っているわけではない。と説明する。

「ただなんか聞き覚えがあるんですよ…誰かに聞いたのかな?…あ!そうだ思い出した!夢だ!夢を見たんですよ。」

「夢?」

今度はティーパンが困惑した表情を見せる。

「はい!」

そう言って助態は、吸収スライムに攻撃されてから見た夢の話をみんなに聞かせた。



「なるほど…もしかしたらその夢は何かのお告げかもしれないな…箱の庭園へは勇者と純純とルブマの3人で向かった方がいいだろう。私達はそこの近くで箱庭の妖精を探すとしよう。」

話を聞いたティーパンがまとめた。

ティーパンが推測するには、タンクという用語は恐らく鎧などの防御系アイテムだろうとのことだ。

夢で3人しか登場していないなら、3人で向かってみるのがいいだろうと。

もちろん近くまではみんなも同行する。

吸収スライムの倒し方が見いだせない中で、これが光となるか。全員が祈るように助態の夢にすがった。

「助態さんの夢のおかげで助かったらウチ、初めてあげますよ!」

ぱいおなんか、助態の股間にお祈りをささげている。

「あら?私はいつでも歓迎よ?」

くびちもそれに反応したように助態に胸を揉ませる。

そして純純に助態は殴られる。

ようやく、いつもの日常が戻って来た。

とりあえずサイネ市で箱の庭園の情報を聞きこむこととなった。

ティーパンを含め、他の誰もが知らないということもあり、人攫い以上に情報が集まらないかと思いきや情報はすぐに集まった。

理由は、助態が周辺のモンスターを討伐したおかげでこの辺での仕事がしやすくなった人がいたためと、そのおかげでたまたま行商人がやって来ていたためだった。

「たまたまにしては都合が良すぎないですか?」

必要なアイテムを揃えて行商人の教えて貰った場所へと向かう最中に助態が言う。

さすがの行商人も正確な場所までは分からなかったようで、だいたいの場所を教えて貰った。

教えて貰った場所としてはフォレストの村の更に先ということだ。

「たまたまってのが、冒険には多いものだよ。」

助態に言われたティーパンがそう切り返す。

「それに、フォレストの先なら私も何度も足を運んだことがある。知らない土地を歩くのと知ってる土地を歩くのは全然違うぞ。」

ポン。と助態の肩を軽く叩いて大丈夫大丈夫。とティーパンは笑った。



サイネ市からフォレストの村までは、その途中のラーガの村までを何度も行き来しているからか、問題なく進めた。

ティーパンは、魔力を鍛えるためにサラマンダーを常に出しており、そのおかげで厄介なモンスターに襲われることもなかった。

「サラマンダーって凄いんですね。」

襲ってきたエロサルをぺろりと平らげるサラマンダーを見て助態が感心する。

「君も小さくなったから分かるだろうけど、猫がいると虫があまり発生しなくなるだろ?あれは猫に食べられたくないから。同じ理屈さ。サラマンダーに食べられたくないから、ほとんどのモンスターは近寄らない。おっと魔力切れか…」

サラマンダーが目の前から消えたのを見てティーパンが小さく舌打ちをする。

フォレストの村は深い森の中にある。

そこを更に東に進んでいるわけだが、森はどんどん深くなっていた。

反対方向の西に進めばラーガの村やいつもの湖がある。

深い森の中での進行は神経を使う。

見張り役のサラマンダーが居なくなったことで進行を止めた。

今日はここまでということだ。

火を起こし、簡易のテントを立てて食事の準備をする。

「ほんとはサラマンダーがいなくても進みたいけど、この森はやや危険だから仕方ない。」

ティーパンが木の枝を折って焚き火の中に投げ入れながら言う。

「火が無いと真っ暗で何も見えませんね。」

やや不安そうに言うのは純純だ。

「そうだねぇ。今までの冒険では森の中ってのは無かったから、こんなに真っ暗なのは初めてだねぇ。」

純純の隣に座りながらもふともも同意する。

みんなが囲っている焚き火はバスケットボールサイズの大きさだ。

その焚き火から少し離れるともう真っ暗闇だった。

どこに木が立っているのかさえ分からない。

もふともの言葉を聞いて助態が闇の先を見つめる。

まるで、目に見えない引力に引き寄せられるかのような不思議な感覚に襲われる。

「闇は人を引き込む。ただでさえ人は弱い。灯りを照らさずに闇の中に入ったら最後。出て来れないから気をつけないよ。」

助態の感覚をティーパンも同じように感じたのか注意した。

しかしそれは森の闇の話ではなく、心の闇の話に助態には聞こえた。

森の奥から風が吸い込まれるように吹き込む。

「なんだか…不気味ですね…」

ルブマがブルブルと身震いをする。

「さ。もう寝ちゃいなさい。見張りは私がするから。」

くびちが純純とルブマに声をかける。

「私も見張りをするわ。」

アンアンも役に立ちたいと声を上げた。

「俺も見張るんでティーパンさんは夜寝ててください。」

こうして助態、くびち、アンアンが最初の見張りをすることになった。

夜中に純純・ルブマ・もふとも・ぱいおが見張りをする。

ティーパンは体力温存のために休みだ。

夜は静けさを増した。



――パチリ。

炎がはぜる音が静けさに響く。

「見られてるわね…」

助態が見た夢の話をしている最中に突然アンアンが言った。

淫魔族は他の種族と比べても夜目が利く。更に人間よりも感覚が鋭い。

「モンスター?」

杖を構えながらくびちが立ち上がる。

油を染みこませた布を巻き付けた木の棒に助態が火を点ける。

簡易の松明だ。

「俺とアンアンさんで見てくるから、くびちは焚き火の火を頼む。」

闇が深い森の中では火は貴重だ。

くびちは何かあれば仲間に伝達する役割も担う。

くびちが軽く頷いて焚き火に木をくべるのを見てから、助態とアンアンは森の奥へと進んで行った。

深い森は松明があっても暗闇が勝っていた。

――ガサッ。

小さな物音に助態がびくつく。

気持ちが高ぶる。

「勇者様。」

ひそひそ声でアンアンが声をかける。

暗闇の中では距離感がなかなかつかめない。

そんな中で助態は声がした方を向く。

むにゅ。とした柔らかい感触が助態の顔に触れる。

「あん♡駄目ですよ勇者様♡」

アンアンの胸の感触だと分かった瞬間の虚無感。

アンアンが助態の性欲を吸い取ったのが分かる。

「もう少し楽しませてくれよ…」

ブツブツ文句を言う助態の言葉を無視して、アンアンがあれ。と指を指す。

指の先を目を凝らすと、暗闇の中でも何かが動いているのが分かる。

相手からはこちらの松明が見えているはずだ。

しかし焚き火の炎の方が大きい。

そちらへ少しずつ向かっているのが見て分かる。

瞬間、助態とアンアンは走り出してくびちの元へ向かった。

「どうだったの?」

息を切らして走ってくる2人に向かってくびちが聞く。

答えは聞くまでもなかった。

目の前にハイエナのようなモンスターが居た。

しかも複数だ。

「ハイエナエースだ!チェイスドッグの親玉みたいな存在で強いぞ。危険度はBだ。」

物音に気づいたティーパンが起き上がって言う。

早速詠唱を開始してユルルングルとジャックランタンを呼び出した。

ハイエナエースは全部で5匹いた。

「3匹はこの子らに任せる。私達は残りの2匹を倒すぞ。」

ティーパンが大刀を掲げて言う。
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