勇者は発情中

shiyushiyu

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第十五エロ 再びリンネーン・サイネへ

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休憩を終えた助態たちは、願望の宿で無事にアンアンとあへに合流し、再び一緒に冒険してくれることとなった。

「本当に久しぶりね。私はもうあの冒険が忘れられなくて仕方なかったわ。」

アンアンも最初の頃のもふともみたいにやや興奮していた。

「私もです。毎晩のようにアンアンさんと冒険の日々を話していました。」

大して一緒に冒険をしていないあへですら興奮していた。

「これが勇者の力なのかもね。」

ティーパンがぼそりと言う。

え?と純純が聞き返したが、それどころではなくなった。

モンスターに囲まれた。

「これはまずいわね…」

ギリと、ティーパンが歯噛みする。

「我の元に召集されたるは令名たる神の息吹。光となって敵を貫け!」

さっそくティーパンが召喚呪文を唱える。

助態が見て分かるモンスターだけでも、酸スライムに触手スライム、雷スライムに粘着スライムがいる。

「光の騎士…」

ティーパンの実力を久しぶりに見たアンアンが絶句する。

ふと助態がティーパンを見ると、珍しく疲弊していた。

「もしかしてかなり凄い召喚獣なんじゃないのか?」

アンアンに訊ねると、頷いて答えた。

「幻獣種に属するかなり珍しい種族よ。あれを召喚したとなるとかなり魔力を消耗しているはず。」

「アンアンさん、ティーパンさんを守ってくれ。絶対に死なせないでくれ。」

助態は手に木の棒を持って一歩前に進む。

見たことないスライムも多いけれど、どれも打撃は効かないはず。

そう助態は考えながらも、どうしたらいいのか分からず、とりあえず武器として木の棒を構える。

「ルブマ!ぱいお!アンアンさんと一緒にティーパンさんを頼む!」

そう声だけかけて、とりあえず目の前の真っ赤なスライムを木の棒でつついてみた。

声をかけられたルブマとぱいおも、ティーパンの状態に気づき、3人でティーパンを囲んだ。

ティーパンは、悪いわね。と一声かけるとその場にへたり込み、何か飲み物を飲み始めた。

魔力を回復するための薬だと後から知った。

「助態!そいつは激辛スライムだ!近づいたらダメだ!」

もふともの忠告は遅かった。

激辛料理の香辛料が目や鼻にくるのと同じように、激辛スライムに近づくとその辛さで目と鼻をやられる。

涙で何も見えない上に辛い匂いだけで他に何も分からない状態の助態は、頼りの聴覚をフル活用した。

しかし、視覚がない中で戦いの音や声だけがするのは助態の恐怖心を煽った。

「あ!こいつ!」

助態の片腕に柔らかい物が当たり、近くでもふともの声がした。

「一旦こっちに来い。」

もふともに言われるがままに引きずられ、激辛スライムの激辛攻撃から離れると、涙も止まって少しずつ視力が回復してきた。

「見るな!」

もふともが言うが時既に遅し。

助態はもふともの胸を思いっきり見てしまった。

『さっきの腕の柔らかい感触はおっぱいか…もふとももまぁそれなりに胸があったということか。』

なんて考えながら目の前を見ると、もふともがなぜ胸を丸出しにしているのか、その理由が分かった。

エロサルだ。もふともの服の胸部を持ってひらひらさせた後、スライムの間をぬって逃げて行く。

「あいつまたもふともの服を盗んだのか!」

そう言って助態が間抜けそうな顔をしているエロサルを追う。

「待ちなって!スライムがいるんだよ?」

片手で胸を隠しながらもふともが言う。

その様子が妙にエロく、助態の視線はもふともの隠している胸に釘付けになった。

「アタイの服も確かに大事だけど、まずはスライムを倒すのが先決。」

助態の視線に気が付いているもふともがイライラを抑えながら言う。

「ティーパンが言ってたけど、土に埋めれば問題ないってさ。光の騎士は魔法攻撃で敵を減らしている。サラマンダーも火で炙ってくれてる。アンタと純純とくびちは土を使ってスライムどもを埋めな。」

最後に助態のお腹に思いっきりパンチした。

「こんな時にどこ見てんだアンタは!」

捨て台詞と共にもふともはティーパンの防衛に回った。

「悪いねぇ。召喚獣をそのまま維持するだけでもかなり魔力を使うんだ。この魔回薬も貴重だしここは勇者に任せるわ。」

力なくティーパンが笑う。相当魔力を消費していることが分かる。

「やってやるぜぇー!」

ふぉぉぉぉー!と雄叫びをあげながら助態は目の前の粘着スライムに向かって行った。



助態は自分の力を過信していた。

異世界に来てからまともに戦ったことなど、数回しかないのに。

それでもアニメや漫画のように、さっと敵の攻撃を躱してバッと攻撃を加えることができる。そう勘違いしていた。

現世での助態の運動神経はそれなりによかった。それも自信過剰に繋がったのだろう。

そして実感する――

現実の戦いでは運動神経など必要ないということを――

「うわぁぁぁぁぁぁぁー!」

腕にへばりついた粘着スライムを、ブンブン振り回すことで取ろうとする。

「あなた何やってるのよ?」

呆れ顔で助態を見るくびち。

「これ!取って!取れない!怖い!」

粘着スライムの粘着攻撃をかっこよくバク転で避けようとした助態は、地面に着いた手にスライムが粘着することとなった。

「さっきの話し聞いてなかったのかしら?」

ますますくびちは呆れ顔になる。

「落ち着いてください勇者様。」

涙目で慌てふためく助態の肩に手を置いて純純が落ち着かせる。

「いやしかし純純!これが落ち着いていられるか?」

「お・ち・つ・い・て・く・だ・さ・い!」

慌てて純純の話しを聞こうとしない助態に対して、一言一言大きな声で区切って純純が声をかける。

「じゅ…純純…あのな、粘着スライムが腕に張り付いて離れないんだ。」

落ち着きを取り戻した助態が同じ言葉を繰り返す。

「平気です。ほら、簡単に取れますよ?」

プラスチックで出来た定規のような物を、スライムと皮膚の間にそっと入れながら純純が助態に優しく微笑む。

まるで貝を剥がすかのように上手に粘着スライムを助態の腕から引き剥がす。

「ね?」

もう一度助態に微笑みながら純純が、粘着スライムを土に埋める。

「あ、あぁ。ありがとう。」

お礼を言う助態の顔が赤いのは、慌ててた自分が恥ずかしいからだけではないだろう。

「さて、次いくわよ。もふともの服を回収しないと役立たずのまんまだからね。」

くびちがそよ風で土を巻き上げて、何匹かのスライムに被せてながら言う。

よく見れば、あれだけいたスライムたちも残りわずかとなっていた。

「ティーパンさんってやっぱすげーんだな。」

改めて助態が感心するとくびちが後ろから声をかけた。

「そうよ?でもそこに甘えちゃだめよ?スライムは私と純純が倒すからサルのところに行ってきて。あのサルは女の天敵なんだから。」

大きな岩の向こうをくびちが指さす。

そっちにサルが逃げたということだ。

助態が岩の方へ向かうと、パチンパチンという何かを叩くような音がしてきた。

『?何だ?武器でも持ってるのか?』

手に持つ木の棒をぎゅっとしっかり握りしめて、額の汗を拭いながらそっと助態は前へ進んだ。

助態の目の中に飛び込んで来た光景は、助態の予想の斜め上を行っていた。



エロサルが逃げ込んだであろう場所は、大きな岩に囲まれた場所だった。

そっと岩の影から覗き込むと、驚きの光景が広がっていた。

それは何と、複数のサルに捕まったぷーれいが、お尻丸出しの状態でサルたちからお尻を叩かれている光景だった。

しかも何となく、ぷーれいは興奮しているような表情をしていた。

『こりゃあぱいおたちがわざとモンスターに襲われているって思っても仕方ないなー。』

ポリポリと頭の後ろを掻きながら助態は少しこの光景を楽しむことにした。

『ふむ。新しい発見だ。俺はチアコスも好きなんだな…それにしてもチアガールの姿でノーパンとは…なんてエロいんだ…それにぷーれいのケツ…プリプリだなぁ。』

うっとり見とれていた助態は、気が付くのに遅れた。

「しまった!」

そう口にした時にはもう遅かった。

明らかに軽蔑した目でもふともとぱいおが見ている。

「アンタってやつは…」

ワナワナともふともが震えている。

「ほんとさいってーっすね助態さん。」

うわーとぱいおは思いっきり軽蔑を込めた言い方をする。

「ねぇ助態?私はもふともの服を回収するようにお願いしたのよ?」

くびちがにこりと笑いながら言うが、目が笑っていない。

「え?いや。これにはわけがあってだね?」

言い訳をするにも、アンアンが見抜いてしまって言い訳すらできない。

「あら?勇者様♡かなり興奮したのですね?」

「こ、興奮?してないよ?ほんとだよ?」

慌てて助態が周囲を見回すが、純純とルブマは怒ってこっちを見向きもしない。もふともとくびちは怒っている。ぱいおとティーパンは軽蔑した目、アンアンは反対にうっとりしてるが、それはつまり助態がエロいことをしたという証拠。

「あれ?あへは?」

そう言った瞬間に背後から気配がした。

あへは自分の気配を消してぷーれいを救出してくれていた。

サルたちはティーパンの召喚獣を見た瞬間に逃げ出してしまった。



「んー私が思うに、君はもう少し自分を自制した方がいいね。」

みんなから殴られた助態に向かって、ティーパンは更に追い打ちをかける。

助態は、はい。すみませんでした。と言いながらせっせと全員分の食事の用意をしていた。

純純が時折手伝おうとするが、くびちともふともがそれを止めた。

「いつまでも甘い顔してちゃだめよ?また同じことされてもいいの?」

くびちが言うと、純純はふるふると首を左右に振った。

「ほんとに感じてなかったんすか?」

一方のぱいおは、ぷーれいの赤く腫れあがったお尻に薬を塗ってあげていた。

はい。とひんやりと冷えた自分の盾まで貸してあげた。

「これをお尻に当てとくと、痛みが和らぐと思うっす。で、ほんとに叩かれて感じなかったんすか?ウチならガチムチにあんなことされたら最高に興奮するんすけど。」

「ありがとうございます。助態さんにされていたなら嬉しかったのですが、相手がモンスターだったので。」

「あー。やっぱ好きな人じゃないと感じないもんなんすねー?ウチも自分へのお仕置きは好きな人妄想するんで分かるっすよー。」

うへへー。とよだれを垂らしながらぱいおが言う。

自分にお仕置きと言いながら、自分で自分のお尻を叩くあたり。ぱいおらしい。

「ぱいおさんは凄いですね。私なんて全然ダメで。自分に自信もありませんし、そんな風に堂々としてられるのが羨ましいです。」

「何言ってるんすか?一度きりの人生を楽しまない方が損じゃないっすか?やりたいこと、したいこと、思っていること。堂々としたらいいじゃないっすか。迷惑さえかけなければ問題ないっすよ。ウチ、このメンバー好きなんすよ。」

そう言ってぱいおがみんなを見る。

「みんなが変態で個性的だからウチも浮かなくて済む。こんなウチを受け入れてくれたみんな。だから助態さんにも感謝はしてるんすけどね。どうもあの人は変態度が過ぎてるんすよね。なぜあんな人がモテるのかほんと不思議っす。」

両手を組んで考えながらぱいおが言う。

ふとぷーれいを見て、

「あ、すみませんっす。ぷーれいさんも助態さんのことが好きな人の1人だったっすね。」

と付け足した。

「たまに思うのよねー。なんであんなのを好きになったんだろうって。」

くびちが岩に腰掛けながら両隣に座る純純ともふともに言う。

「エロいからだろ?」

冗談でつっこみつつも、もふともにもくびちの気持ちは分かった。

「助態が自分とエロいことをするのはいいんだけど、他の人とするのは嫌なのよねー。つまり嫉妬じゃない?ってことは好きなのよねー。でも、どこか好き?って聞かれると思い浮かばないのよねー。」

「そんなもんだろ?」

もふともの思わぬ返答に、くびちも純純ももふともを見た。

「いやさ。人を好きになるのに理由なんてないじゃん?だからそんなもんだろうよ?ま、いい奴ってのはアタイも認めるよ…」

顔を赤くしながらもふともが言うと純純が微笑む。

「勇者様はほんといい人なんですよね。」

ティーパンに怒られる助態を見つめながら、改めて純純が言う。

「クズなところが多いけどね。」

一応もふともがツッコムと、くびちもそこなのよ。と同意した。

そんなメンバーを見て、アンアンとあへが微笑みあう。

「やっぱり素敵なパーティーですね。」

あへがルブマに言う。

「そうですか?私は助態さんのあのえっちぃさに幻滅です。」

ぷーと頬を膨らませながらルブマが言うと、アンアンがそれは違うと否定した。

「勇者様があんだけエロいのに、人が離れて行かないことが凄いことよ?」

「それはたぶん――」

ルブマがそこで言葉を閉じた。

言ってしまえば楽になる。

でもそれは同時に意識しなければならない。

ほぼみんなが助態を好きだということを。

つまり恋のライバルだということを。



助態たちは休憩した後、すぐに出発した。

近くにあるというスライムの巣がどんなものかは不明だが、近寄らないに越したことはない。というのが満場一致の意見だった。

リンネーンの町に到着すると、ハクダクがちょうどいた。

「勇者様ー!みなさーん!お久しぶりでーす。」

相変わらずのモフモフっぷりだ。

兎獣族とはまた違ったモフモフ感が栗鼠族にはある。

聞けば、鉄爆は結構前に完成したらしい。

ハクダクはこの山の工場でしばらく修行をつむことにしたらしい。

約束通りに鉄爆を貰った助態たちはそのままサイネ市へと向かうことにした。

「…重いんだけど!」

歩きながら助態が文句を言う。

鉄爆は、その効果こそ絶大なのだろうが、かなり重かった。

よくよく考えてみれば、鉄の塊なのだから思いのは当然だろう。

それにしても誰も持つのを手伝おうとしないのは、助態には計算違いだった。

もふともとぱいおは、助態が自分で使うと言った武器なんだから自分で持つのが当たり前と言った。

くびちは、私はか弱い女の子だからそんな重いものは持てない。とぶりっ子キャラを出してきた。

純純とルブマに持たせるわけにはいかない。

本当に力がなさそうだしか弱そうだし。

ティーパンはそんなに甘やかしてくれない。

あへは人にくっついているだけの役立たず。

アンアンの魔法を使えば済むのに、面白がって魔法を使ってくれない。

ぷーれいは助態の下半身とどっちが大きいかなどと訳の分からないことしか言わないから却下。

鉄爆の重さに押しつぶされそうになりながら、助態はみんなが先に向かったサイネ市へようやく到着した。

何だかんだでこの街は心が踊る。

華やかな町で、助態は好きだった。

みんなもきっとそうなのだろう。

しかし助態は胸を押しつぶすような感覚に襲われる。

重いのは鉄爆だけのせいではない――
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