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もう一度
しおりを挟むなにが、間違っていたのだろうか…
術封じの手枷に足枷。そして首輪までされてボロボロのローブに身を包んだ俺の姿を。まるで…汚い物を見るように聖騎士の後ろから覗きこんでいた彼女は…俺と目が合った途端に顔を背けた。
なんだよ、それ…。まさか、俺が君を襲うと…?枷どころか封術鎖で地面に縛り付けられてるし、周りは聖騎士隊に囲まれているじゃないか…。
一歩も動けない状態じゃないか…。
「…ティアラ…」
それでも…愛しい彼女の名を呼んでしまう。その途端に彼女はカタカタ…と震え始めた。
「…っ、…」
そんな彼女を、そっと抱きしめるのは聖騎士隊長のハーブだった。俺達は親友だ、そう言っていたのに。
「…、…っ…」
悔しいが、まるで寄り添う二人は絵画のようだった。
美男美女でお似合いのふたりだと噂されただけはある。噂だけだと思ってたのは俺だけで。ふたりは心通わせ恋人になっていた。
「せめて…友として、あの世におくってやろう」
スラリと構えた剣に俺は嘘だろう…と呟いた。
ドラゴンソードじゃねぇか…俺を唯一、殺せる道具じゃねぇか!もとから殺すつもりだったのかよ?
なんだ、それ…俺は…俺は…
「俺は守護獣として聖女に誓いをたて…彼女を護っただけだ!ティアラ!俺は君の為にー…!」
「彼女の為?…自分の欲の為だろう?彼女の両親を殺し、悲しむ彼女のパワーを奪い監禁してたのは誰だ?…そんな汚いやり方をするとは思わなかったよ…」
ハーブの冷たい声。
「パワーを奪う…なんの事だ?それに、監禁などしていない…!…、…確かに…ティアラの両親を殺しはしたが…」
それは彼女が俺に命令したから…主人の命令には俺は背けない。
「お父様、お母様…」
途端に泣き崩れたティアラに愕然とした。なんでだよ…命令したじゃないか!
「ごめんなさい、ごめんなさい。本気で言ったわけじゃないわ…ほんのちょっと口走っただけなの!死んじゃったらいいのにって。それなのに…凪斗が勝手に…もう、私じゃ止められないの!だって黒の守護獣は穢れてるから!…私が知らなかったばかりに…!そのせいでお父様もお母様まで…」
……穢れて…?穢れ…。
「は、はは…」嗤いが出た。
なんだ、それ……穢れてると…?俺が黒龍だから…か?
好きで黒龍で産まれたわけじゃないのに…本音はそう思ってたのか?
『色が黒だからって私は偏見の目で見ないわ。私にはわかる、あなたは優しい目をしてる…お願い、私を守って…凪斗…』
あの日、そうー…言ったのは…嘘だったのか…?
あの言葉に俺は救われたのに。だから俺は契約したのに。彼女の為に何でもすると誓ったのに…。心では涙が、ぼろぼろと流れてるのに俺は笑っていた。
「はは…はははは…」
騙されてたのか…騙されていたんだ。
…結局、俺は都合のいい道具だったんだ…君にとって。
あの笑顔も作り物だったのか…。
禁忌魔法にまで手を出して身体が腐りはじめたのも、痛みさえも我慢できたのは君が、…君が幸せなると思ったから…俺をみて微笑んでくれると信じたから…
笑い続ける俺を哀れな目でハーブは見つめる。他の聖騎士達の呟きが聞こえた。
狂ってる…
やはり早く始末した方がいい
汚らしいー…
聖女には、ふさわしくない…
忌々しい…
幼い頃から言われ続けてた言葉だ…。なんて、なんて…惨めな姿だろうか。腐り続けるこの身体。醜いドラゴンの姿も…。
全て…。
《本当に汚いわ…》
俺しか聞こえない主人の【声】だ。
顔を上げた俺が見たのは密かに嗤うティアラだった。
その声は、わざと聴かせてるのか。ショックで蒼白になる俺に彼女の【声】は続く。
《もう用済みなのよ…なんで、わからないの?貴重価値のドラゴンだったから守護獣にしてあげただけよ。前までは、なかなか容姿が良かったのに…。腐り始めたあんたのせいで私の評判が落ちたのよ。私は聖女なのよ。あんたのせいで聖神力が弱いんじゃないかなんて噂がたってるのよ。それに…今はもう素敵なナイトがいるもの…。ハーブこそ私の運命の相手だわ。あなた、邪魔よ。主人の為なら大人しく斬られて死んでちょうだい》
「…ティアラ…俺は…君を愛してた…ずっと…」
たとえ、振り向いてくれないとわかっていても。傍にいるだけで幸せだったんだ…でも君にとっては俺は…邪魔だったんだね…。
ティアラの…主人の命令で、なおさら俺は抵抗出来ない。
斬られろと命令された…。
「…凪斗、残念だ…君を救いたかった…」
ハーブが苦々しい表情をしたまま剣を振り下ろした。
「うあああああああーーー!」
あまりの絶叫に「どうしたの?!」と部屋に入ってきた父親と母親に更に驚いた声を上げたのは叫んだ本人の凪斗だった。
「落ち着きなさい!凪斗!」
「なんでっ父さんと母さんが…生きて…?」
「…、…。どうやら悪い夢をみたようだな、凪斗。ゆっくり深呼吸してごらん」
優しく諭す父親に凪斗は「夢…夢だったの?」と涙を流した。思わず首を撫でる。繋がってる…斬られてない…本当に夢だったのかと安堵する。
「怖い夢は話したら楽になるわ、大丈夫よ。私が守るから」優しく微笑む母親に凪斗は、グズグズと鼻をすすりながら「忘れちゃったよ…」と嘘をついた。あんな夢、話せるわけが無い。
部屋にある姿見の中にうつる自分の姿に凪斗は、本当にあれは夢だったのかと再び不安に陥った。
「…いや…あれは現実だ」
鏡にうつる己の姿は8歳くらいだろうか。だがこの違和感。
夢の中では27は越えていた。ただ、身体が腐り容姿的には老人のようだったが…。それに…と考える。15くらいで父も母も失っていたはずだ。夢にしてはあまりにも酷い人生をおくってる。いや…やはり、あれは…夢じゃない。
「…」
鏡を見つめ悩む息子に両親は部屋の外から覗いていたが互いに頷き再び部屋に入ってきた。
「凪斗、一緒に寝ましょう!最強の母さんが側にいたら安心でしょう?」
そう、最強だ。彼女は白銀のドラゴンなのだから。誰よりも強い幻獣だ。
「なら人間で最強の父さんも一緒に寝よう。これなら安心だろう」
そして父親は聖騎士のなかで一番の強さを持つ聖騎士隊長だ。誰もが憧れる職業だ。その父に惚れ…守護獣になった母は、なんと凪斗を身ごもった。そう凪斗はドラゴンと人間の間にできた子どもだ。
ただ残念な事に母のような銀色の髪では無い。もちろん父のような黄金色の髪でも無い。
禍々しい漆黒の髪だった。
似てるのは2人に似た群青色の瞳だけだ。
この世は《黒》は最も忌み嫌われる存在だった。しかも凪斗は人間とドラゴンの間にできた異種だ。更に偏見の眼で見られるのは仕方無かった。もちろん父も母も我が子を愛し大切にしてるが周りは凪斗の事を《穢れ者》として噂していた。
ーーー街から遠い、こんな離れた山奥に家を建てたのも愛する息子の凪斗を守る為だった。最強のふたりの間に挟まれ眠りにつく凪斗は…うとうとしながら…夢のことを考えていた。そんな最強のふたりが何故、亡くなったのか。
思い出せ、思い出せ。炎が見える…。
そうだ…15の時に家を放火されて…父さんも母さんも失った。炎だけは弱い母は動けなくなり、その母を救出する為に父は炎に飛び込んだ。
しかも、その炎には魔術がかけてあり父も母も炎に捕らわれ亡くなった。先に父に助けられてた凪斗は燃え盛る炎を見て泣くことしかできなかった。全て燃えた残骸の中、再び炎が立ち上がり凪斗を狙って襲ってきた。
…あの時、初めて水の加護を自分が持っていると知ったんだ。もっと早く水を操る事が出来れば…例え魔術がかかってる炎でも立ち向かえたはずだ。
そして母も父も失う事は無かった。更に誰も凪斗を引き取らなかった。黒というだけで嫌われてもいたが最強の二人は亡くなったのに子どもだけが生き残ったからだ。
『無能な子どもだけが生き残った』
『穢れが、有能な二人を殺した…』
『やはり黒は呪われている』
人々から常に言われ続けた言葉。冷たい視線。そこにいるだけというだけで殴られる日々。
それから俺は人間を信じられなくなって…自分の殻に閉じこもっていった。
ガバッと起き上がった凪斗に「どうしたの?」母が驚いた。
「母さん、俺に…加護術を扱えるよう修行させて下さい!」
ベッドに土下座して、そう告げる息子にふたりは驚いた。
「「ええ???」」
だが、ふたりとも嬉しそうな表情だ。
常に何も役に立たないと人々から罵られ言われ続けた凪斗は諦め勉強も術の練習もしなかった。
そう…自分も悪いのだ。全て諦めてた自分が。殻に閉じこもった自分が。父も母も凪斗本人が言うまで何も教え無かった。本当は望んでいたのだろう。いつか、そう言ってくれることを願って。
「加護術…ね。凪斗、あなた何の加護を受けているのか知っているの?」
頷く凪斗。あの炎で解ったことだ。
「…水」
「…正解!あら!私の息子、天才かしら!」
きゃーと喜ぶ母親に父親が「俺の息子でもあるんだけどー」と呟いた。
「父さんは剣の修行をお願いします!」
聖騎士隊長から直々、剣術を習えば例え暴漢に捕まっても逃げれるだろう。
「おお!凪斗ぉ!やる気だなぁ!」
抱きつくふたりに、今度は俺がふたりを守るんだと凪斗は決心した。あんな悲しいことは遠慮したい。回避できるなら…俺は…。
過去の自分は勉強も術も何もしなかったから…聖女に守護獣として認められた時、焦って禁忌魔法に手を出したのだ。それが一番、手っ取り早いから…そのせいで身体は腐った。
それに二人には長生きして欲しい。今度こそ…家族で幸せになりたい。
さて、その次の日からふたりから容赦ない修行が始まり凪斗は毎日、半べそで過ごす事になった。何度か挫けそうになったが…ティアラのあの見下した表情を思い出すと、こんな事くらいで挫けるわけにはいかないと奮い立った。
俺は…全て変えてみせる!
「穢れ者め!」
ぶんっと飛んできた石片手で掴んだ凪斗はそのまま拳に力を込め、砕いた。ぱらぱらと砂となった石が地面に落ちる。 それを見て、化け物ー!と投げた子どもは走って逃げた。
「…ふん」
日常茶飯事だった。ぱんぱんと手を叩いて粉を落とす。どうも黒髪は穢れ者として扱われるのは変わらない。
前世でも虐めもあり学校どころか村に行かなかった凪斗だが今は普通に村の学校へと通っていた。わざわざ山奥から通っているが。両親に扱かれ凪斗は水の加護も剣術も最高クラスになっていた。なので父と母には街に住むよう薦めた。もちろん子どもと離れる事に大反対されたが凪斗が押し切った。
街なら常に警備兵がいるのでなかなか放火されないだろうと凪斗は思ったのだ。それに凪斗本人と離れてしまえば弱点もなくなるだろう。ふたりは本当に最強なのだから。父の仕事の事もあるし、わざわざ山奥から通うより街に住んだ方がいい。それに犯人は元々、凪斗を狙っていたのだ。狙われるのは自分だけでいい。
山奥の自宅には常に水の魔法で結界を張っている。夢の通り放火にきた男がいたが突然できた池に落ちて、あっさりと捕まえた。もちろん凪斗の魔法である。父に鍛えられてることもあり魔法を使わなくても普通の大人なら簡単に倒す事もできるが。
そして何より…父も母も無事に生きてる。それが一番、凪斗は嬉しかった。
「今日も天気がいいなぁ」
空を見上げ凪斗は、やり直しの人生の未来を夢見る。
今年、街の学校へと進学するのだ。村の学校では成績トップだった事で異種の凪斗だが先生たちは味方に出来た。あの夢とは大違いだ。
「おはようー、凪斗」
「おはようございます。アンシュ先生」
真っ赤な髪の先生は凪斗に駆け寄るとギュ~ッと抱きしめた。この先生は特に凪斗を可愛がってくれてる。
デカい体に包まれ凪斗は、先生は本当にハグが好きだよなぁと苦笑した。
「卒業して街に行くと訊いたのだが…先生は先生は、やはり淋しい~!」わんわんと泣く大男は毎回のように凪斗に告げる言葉がある。
「絶対、ぜぇ~たい…変な女の子に騙されないようにね?凪斗は可愛いからね!先生、心配だよぉ~」
どこをどう見たら可愛いなるのか凪斗には解らないが。どうも聖神力がある人間には凪斗はそう視えるらしい。
「大丈夫ですよ。騙されません」
聖女には近づかない。特にティアラという女には絶対に。
凪斗は常にコレだけは頭に入れてある。彼女に出会い惹かれたのが一番の原因だ。あとハーブも。
父の所属の聖騎士隊も実は遠慮したい。
と、いうか絶対に近付きたくない。
「ブォルト学園に入学かぁ…名門中の名門校だよね~」
ぐすんと鼻をすする先生。冗談じゃない、その学園は貴族、王族など集めた超エリート学園じゃないか。ほとんどが聖騎士を目指す者が進む学園だ。そんな怖い所に行きたくは無い。
「やだなぁ~先生。俺は普通がいいんで。それにそこは聖騎士・聖女が目指す学園でしょう。そんな所に行きませんよ。俺は…商人になりたいんです。だから商業の学校へ手続きしてますよ」
「商人?!」
はいと凪斗は頷いた。この大陸より、はるか東には凪斗と同じように黒髪の人間が住む国があるという。ならば、そこへ向かえば…、黒髪だからと嫌がらせを受けず、もしかしたら凪斗がドラゴンだということもバレずに普通に暮らせるかもしれない。
「商人…凪斗がなぁ…」
首を傾げる大男。どうも想像できないらしい。可笑しいなぁとぶつぶつ呟いている。
「それよりも先生、俺が借りる寮なんですけど…変なんですよ」凪斗は鞄から紙を出すと先生に見せた。実は両親から一緒に住もうと誘われてるが断ったのだ。そこで先生に頼んで寮を希望したのだ。出来ればバイトもしたいのだが。まぁ街に出ればいろいろ出来るだろうと今から楽しみだった。
「…個人宅というか…名前が貴族みたいなんですよ」
「だって貴族だもの」
え?と凪斗は驚く。貴族???
「まさか、先生…?」
うんうんと頷く先生。俺は寮を希望したよね?
「可愛い生徒をワケのわからない寮なんかに行かせないよ~。そこはね。先生の従姉妹のそのまた従兄弟の更に従兄弟…かなぁ?う~ん、とにかく信頼できる方の邸宅なんだよ。向こうも承諾してくれたし。何より向こうから凪斗を是非ともと言われたんだよ。渡りに船だよね。ここはね、凪斗と変わらない年の子もいるから仲良くできると思うよ」
にこにこと微笑む先生に凪斗は…嘘だろう~!と嘆いた。
貴族なんかと仲良くなれるわけが無い!奴らは村の子ども以上に偏見がヒドいのに!ああーー!何で俺はこの人を信用してしまったのだろうか!手続きは大人しか出来ない。でもまさか、本人の了承も得ずにそうするとは思わなかった。
「凪斗にも親友というものをつくって欲しいな。いいぞ!親友は!」
うんうんと嬉しそうな先生には言えない、俺は親友だと思ってた男に殺されたんですけどね…?
「…」
建ち並ぶ建物のなかで一番、立派な屋敷の門の前で凪斗は真っ青になっていた。この屋敷で間違いない。
黄金のドラゴンが剣に巻きつき更に盾にされている紋章。
「…」
この何がしたいのか、解らない紋章。
剣なんかに巻きついたら痛いし斬れるだろうに…しかも盾にされてるのだ。もうドラゴンに対して嫌がらせとしか思えない。しかも見たことある気がする…かなり嫌な予感しかなかった。
「…住むところ無いから…仕方ないけど…」
どうせなら納屋でもいい。屋根裏でもいい。それか…出来れば追い出して欲しいと願いながらも、屋敷の執事に迎えられた。貴族は嫌いだと…凪斗は高そうな装飾品を眺めながら、応接間でここの主人を待った。きっと、また見下した目で見られるに違いないのだ。ところが凪斗が思ってた事は起こらなかった。
「私がレイラーレ家の主だ、君の事は聞いているよ。我が家と思って過ごしてくれ」
恰幅の良い好印象な男性はそう名乗ると「君はドラゴンと人の間にできた子だ。君は人とドラゴンの間の架け橋となる存在だ、本当に素晴らしい!」と褒め称えた。
はぁ、どうも…と凪斗は応える。
何故、こんなにもキラキラした目で見られてるのだろうか?今までに無い反応だ。きっと先生だな…俺の何を伝えてるんだろうか。
「実はね。君のお父様は私の上司でね。どーしても我が子をお願いと…いやいや、嬉しい限りだよ。私を頼ってくれるなんて…ふふふ。これは信頼されてるということだ。ところで、うちには息子がいてね…」
先生だけでなく父さんまで関わっているのか。…あと、なんか父さんに変な憧れ持ってないか、この人。大丈夫だろうか、こんな部下がいて…と凪斗は余計な心配をする。話してる途中で部屋の扉をノックする音。
「ちょうどいい、凪斗くん。うちの息子の…ハーブだ」
「は…?」
入ってきた少年に凪斗は悲鳴をあげそうになった。我慢したが思わず「ヒュッ」と変な声が出てしまった。
よりによって…あれほど願っていたのに!
部屋の灯りでさえ、その輝きを味方にする黄金の髪、まるで沈む夕陽のような幻想的な瞳。真っ白な肌。にこりと微笑めばその姿は、まるで天使のようだと伝えられ誰もが彼に魅了されるだろう、そんな美少年だ。その美少年を見て蒼白なるのは凪斗だけだろう。
俺の首をーーーはねた奴だ!と思うと恐怖しかない。そう、あの紋章も名前も、どこかで……何で早く気がつかなったんだろうか。
ハーブだ!ああああ!!!!
じっと見つめる紅の眼差し。蛇に睨まれた蛙状態の凪斗。
「…。…僕の名前はハーブ。何か判らない事があれば遠慮無く言ってくれ」まるで華が咲いたような笑顔だったが、凪斗は真っ青な顔のままでなんとかでた言葉は「…よろしく」だけだった。
納屋か屋根裏でもいいのでと凪斗は言ったが、上司の息子をそんな所に住ませる訳にはいかない!と、やはり聞き入れては貰えず最悪な事にハーブの隣の部屋に通された。
「…どーして…こうなるんだ…」
本来なら、もっと後でハーブと出会う筈だ。だから油断していた。前世では両親を失い凪斗は施設で育っていた。そこへ研修という目的でハーブが現れたのが、二人の出逢いだった。その頃は施設でも虐めを受け大人にも暴力を振るわれ誰も味方がいなく凪斗は卑屈なり自分を追い詰め自信を持てない状態だった。そんな凪斗を救ったのは誰でも無いハーブだった。あの容姿に騙されたのもあるが彼は本当に優しく親友だと信じていた。
そう、ティアラが現れるまでは凪斗にとって世界はハーブ中心だったのだ。
「問題はティアラなのか…?」
やはり…恋敵になってしまったからか。いや、一方的に凪斗がハーブを恋敵だと思ったからだ。彼に負けたくない。彼女に振り向いて欲しいから…。
「…」
それよりも半分、人間のくせに守護獣になったのが一番の原因なのだろうか。
「だって…」
彼女を護りたかった。彼女の望む事はできるだけ叶えてあげたかった。だがハーブは凪斗より強く誰よりも仲間がいて…総てにおいてパーフェクトだった。当たり前だ。凪斗は全て諦め努力してなかったのだから敵う筈が無かった。
敵わない相手に凪斗は禁忌魔法まで手を出した。そのせいで身体に呪いがかかった。魔法を使えば使うほど身体が腐っていっていた。それを知ったティアラは途端に手のひらを返したように凪斗を穢れ者扱いし始めたのだ。
「…ティアラには…会っても恋なんかしない。もちろん禁忌魔法なんて手を出さない。それに前の俺とは違う…今度の俺は頑張ってる…そうだ!これからだ!」
うんうんと頷く。
どうせ学園も違うのだ。彼女は聖女だ。ハーブと同じ学園だろう。それに…もし偶然、彼女と街で出会っても無視すればいい。あとハーブも極力、会わないように…うん、これは同じ家だから難しいかもしれない。
コンコンとノックとともに「凪斗、入ってもいいかい?」ハーブの声にどーして人が決心してるのに!と早くも予定が崩れ始めた事に泣きそうになった。
「…」
「凪斗?」
嫌だとは言えず「…どうぞ」としか応えようが無い。居候の身なのだ。
「荷物の整理してるのかい?これ君のお父様から荷物が届いてたから」
ありがとうと受け取る。わざわざ届けにきてくれたのか、貴族の坊ちゃんが。どーしても凪斗が、ひねくれた考えなるのは仕方ない。受け取ったのにハーブは部屋から出て行かない。じっ…と凪斗を見つめている。
「…」
居心地が悪く凪斗は箱を開ける事にした。制服かな…「ん?」と凪斗は固まった。
…なに、このエンブレム?
凪斗が望んだ商業の制服には特別なエンブレムは入って無かったはずだ。
「ああ、学園の制服だね。同じクラスになれるといいね」
「は?」
ハーブは、どうしたの?と首を傾げる。さらりと金の髪が揺れる。いちいち、そんな描写いらないと思いながらもハーブの勘違いに笑いそうになった。次の言葉までは。
「ブォルト学園だよ。君、推薦で入ってるんだろう?」
ーーーーー????
「すい、す?????…」
ガタガタと震え始めた凪斗。聖騎士の卵達の巣窟に??!俺が???推薦??
なんで?どうしてだ??
「凪斗、大丈夫かい??え?ちょっ、血の気が引いてる!真っ青だ!ええええ??」
…プツンと何かが切れる。暗闇の中で父親がピースして笑っていた。
父さーーーーん!!
推薦で入ってる???なにそれーーー?!
そうだ、父さんはエリート中のエリート、聖騎士の隊長だ!例え血が繋がっていても、まさか…そんな特例な事をするはずはないと思ってたのに!
というか、しちゃ駄目だろーーー!父さんーーー!
うあああああ!
あっさり商業の学校の手続きしたと聞いた時に可笑しいと気がつけば良かった!!!最初から凪斗の望む学校へは手続きしてなかったのだ。だから先生が首を傾げてたのか!!!
…謀られた……!!!しかも血の繋がった親にーーー!
「凪斗…」
ハッと気がつけばハーブの腕の中だった。どうやら数分、気絶してたらしい。
「わ、悪ぃ…」
腕の中から逃れようとしたら、ぎゅっと抱き寄せられた。
「?…」
なんか最近、よく同性に抱きしめられるな?
「…あの頃と変わらないね。…黒髪って神秘的だ…凄く綺麗だよ…」
「????」
何を言ってるのだろうか。ハーブの黄金の髪の方がよほど綺麗なのに。
というか俺、今回は初めて出会ったよね???
それよりも…と凪斗はハーブの手付きが気になった。凪斗の頭を撫でていた手は、ゆっくりと下りていき…身体を撫で回してきたからだ。
さわさわ…。
何だろう…、なんか…変だ。
「…、…、…」
「凪斗って…綺麗な瞳だよね…?」
囁くように耳元で言われ…ぞわ…っと悪寒が走った。
「…ハーブ?」
「名前で呼んでくれるの、嬉しいな」
にこり…と微笑む。誰もが惚れる笑顔だろうが凪斗は身体中に鳥肌がたった。
うおおおお??
「あのさ、離れようぜ…」
ああ、ごめん。可愛くて…とハーブの囁きが聞こえたが聞こえないふりをした。
聞こえない、聞こえない。おまけに離してくれない。
なんだ、これ。なんか可笑しい…まず距離感が可笑しいだろう。こいつ…こんなにベタベタする奴だっけ?
ハーブの凪斗を見つめる瞳には熱がこもっている。居心地が悪くて仕方ない。
離れようと言っても離してくれないし、何故か首元の匂いまでスンスンと嗅がれた。
「…?!」
「凪斗、香水でも付けてるの?凄く…そそられる香りだ…」
んなもん、付けてねーよ!そそるって、何だよ!!!
変な雰囲気なりかけた時、ドアのノックで救われた。執事が食事の用意ができた事を教えてくれた。
しかし食事の最中もハーブの熱い視線は変わらない。それが怖すぎて結局、凪斗は何を食べたか本当に食べ物が喉に通ったか覚えて無かった。
◎学園◎
望んでもいない学園の入学式。ちゃっかりと保護者席に両親を見つけ凪斗は式が終わった途端に速攻に走り寄った。もちろん文句を言う為だ。
「ごめん、ごめん。でも似合ってるぞ制服」
本来、希望した学校には入学の手続きもされて無いので仕方なく此方にきたが、周りが騎士の卵だと思うと生きた心地もしない。そんな事知らない両親は悪気は全く無い。親ばか全開で嬉しそうだ。
「そうよ~商人になりたいなんて…凪斗は聖騎士隊長の息子なのよ?そこはちょっと考え欲しいわね」
母の言葉に、うぐ…と凪斗は文句を言えなくなった。
「ところで、ねぇ…凪斗?チャームブレスを垂れ流してるけど…好きな娘でもいるの?」
母が、こそりと耳打ちする。
「は?」
なにそれと凪斗が問うと母は「え、無意識なの…!それで、そんだけの量を垂れ流してるの?」と額に手を当てて「…そうか。そうか。そーゆー年頃だもんね。うん、私が安心してたのが悪かったわ。教えてなかったのも悪いわね」とブツブツ呟き「今、あなたは無意識に人々を魅了してるのよ。学園のみんなの視線が熱を帯びてるの、わかる?」と言うと母は自分の耳飾りを外した。美しい母には似合わない素朴な牙の形のイヤリング。だが彼女は常にそれを付けていた。それを凪斗の両耳に付ける。途端に父が母を抱きしめ周りを威嚇し始めた。ぐるる唸ってる。
どうした、父さん…と心配なってきた。こんな父をみるのは初めてだ。
「それ、あげるわ。少しは抑える事が出来るから。ドラゴンはね。人にとって希有な存在、畏怖の存在なの。そして…何よりも魅力的で独占したくなるのよ…あなたは半分はヒトだからチャームブレスはたいして無いものだと私が勝手に安心してたわ。ブレスと言っても息じゃないわよ?生命パワーみたいなもの。今まで無かったけど…年頃なったから…一気に溢れているのね」
「…ドラゴン特有の魅了の力ってこと?」
そうよ、賢いわねと母が微笑む。
なる程…だから…か。そう言えば前世でもハーブと親友なったり聖女の守護獣なったのも…その力が働いたのかもしれない。
「まぁ…凪斗の場合、歩くエロス?犯して下さいって言ってるみたいだわ…」
え?…なにそれ怖い。
…俺が先生に抱きしめられたりハーブが変な目で見るのも、そのせいか?
「…」
今日なんか屋敷から学園まで行くのに馬車なのにハーブは凪斗の隣に座り手を握り、ずっと熱い瞳で見つめていた。それ以上なことをしないのは執事が側にいたからだろう。
だが、その行動の意味が解らない凪斗にとっては本当に地獄の釜を開けたように感じていた。
だが理由は解った。解ったが知らなかったままだと思うと…そのままこの学園で暮らしていくとーー…
ぞぞーと背中に汗が流れた。
「ある程度、年をとれば無くなるはず…よ。私は純ドラゴンだから…外すと、これ、なのよ」と抱きしめ周りを威嚇する父を指差す。
「でも全ての人間がチャームブレスに引っかかるわけじゃないからね。私も解らないけど特に聖神力がある人間が引っかかるのよね~。そこが面倒くさいのよ。凪斗、聖神力が強い人間には気をつけなさい。逆に虜にされる場合があるから」
ざわざわと、凪斗達の方に人間達が集まってきた。視線は全て今は母に注がれていた。
虜にされるって、どういうことなのだろうかと聞く前に母は溜息を洩らした。
「…私、帰るわ。このままじゃ学園中が騒ぎになるわ」
そう告げると母は父の首根っこを掴み走りだした。会場から外へ出た途端に白銀のドラゴンの姿に戻り蒼空へと舞う。人々の歓声が響く。
「派手過ぎる…」
母の去り方に凪斗は苦笑した。母の言葉も気になるがとりあえず耳飾りで安堵感を覚えた。これでハーブとは普通の関係になれるだろうと。できれば関わりたくないが。
○新たな出会い○
普通の関係になる…はずだよな??
なのに、何故かハーブの凪斗を見つめる熱い眼差しは変わらない。
変わらないじゃないか…というか悪化してないか…?と凪斗は常に隣で微笑むハーブに頭を抱えた。
「凪斗……」
止めてくれ…囁くな、そんな眼で俺を見つめるな。お前に憧れてる女子はたくさん居るだろ…?ほら、遠巻きに声もかけれず熱い視線を送ってるじゃないか。
前世では…お前に殺されたが、それまでは親友だったはずだ。こんな変な目で見て無かっただろう??
なのに、どーしてこうなるんだよ…!
お前に何が起こったんだーーー!??
この耳飾りで、チャームブレスは抑えられてるはずなのに!
更に悪い事が重なる。ハーブの取り巻き登場だった。赤髪のトゥマスと銀髪のライフである。忘れもしない。前世で彼らはドラゴンの弱点を見つけ凪斗を無力化したのだ。あの枷や鎖を作ったのも、どちらかだろう。面倒くさいのは彼らは今世でもハーブを神のように崇拝しているということだ。同級生なのに「ハーブ様」と呼ぶのもすでに可笑しい。
…そういえば、ハーブのことを地上に現れた天使だ神だと吹聴してたのは、どちらかのバカが最初だった。
群衆もそれに賛同しハーブを讃えた。
彼が聖騎士の隊長になれば、またカリスマ性を発揮するだろう。
「…」
嫌だ…この2人からはハーブに相応しくないと散々に嫌がらせを受けたのに…。
本当に離れたい…こんな奴らから。
だが、その3人に前、横、後ろと挟まれ授業を受ける事となった。
「~…」
ライフは凪斗の事を品定めするような目つきだしトゥマスは凪斗を一瞥すると舌打ちした。そしてハーブの熱い視線。
なんの拷問だよ…これ…。まだティアラが居ないだけマシなのか。癒やしが欲しい…そう願い凪斗は窓の外に視線を移した。隣のハーブが常に熱い視線を送ってくるからだ。
俺ばかり見てないで、先生の話を聞けよ!まぁコイツは頭は賢いから聞かなくても大丈夫だろうが。
「…」
眼下には庭園が広がっていた。貴族が通う学園だけあって庭園もずいぶんと広い。綺麗に手入れされてある。
「!」
そこに銀色のモフモフの塊を見つけた。
なんだ…あれ?
こそこそ…と動いている。動物ではない、人の形だが。
あれ、尻尾か?人間じゃないのか?凪斗の興味は、そちらに移った。よし、昼休みに何か探ってみよう。
鐘の音と共に昼休みに入った。
「凪斗、学食に…あれ?」
察知していた凪斗は既に教室から姿を消していた。彼は山を自由に駆けていたので足腰には自信がある。走り出したら普通の人間では追いつけない。だが、あのハーブだ。油断ならないと風のように廊下を駆けて行く凪斗。
途中、女生徒とぶつかりそうになったが「?!」凪斗は直前、見事な跳躍で避けクルリと空中で回転した。廊下にいた生徒達が「おおお!」と歓声を上げる。ちらりと視界に入った女生徒には見覚えがあった。すとんと彼女の後ろに降り立つが、彼女が振り返る前にこれまた物凄いスピードで凪斗は走って逃げた。
あ、あぶねー!ティアラだ!ティアラだったーーー!
母が言っていた聖神力の強い人間に気をつけろと言ってた事が今、判った。ちらっと視界に入っただけで誰か、わかってしまった。
それほど、誰よりも惹かれるてしまう存在だ。側にいたら、たちまち虜にされるだろう。
「俺のチャームブレスと同じか…!?」
彼女の場合、聖神力が嗅げるほど溢れていた。いや、ワザと流してるのかもしれない。あのまま、側にいたら凪斗は彼女に心を奪われ、また破滅の道へと歩む事となるだろう。
母から聞いてなかったら本当に危なかった。
それをいうならハーブも、かなり聖神力はある。前世ではそれを上手いこと使い群衆を魅了していた。
凪斗は知らなかったが彼は貴族として育っているので幼少期から抑える事を学んでいる。コントロールできるということだ。もし、コントロールが出来てなければ屋敷で出会った途端に凪斗はハーブに心を奪われていただろう。
「…、…」
ちらっと彼女が視界に入っただけなのに愛しいという気持ちが溢れる。だが、惹かれてはいけない相手だ。破滅へと誘う相手。なにより…
「…ティアラの運命の相手は、俺じゃない。ハーブなんだから…」
きっと今世でも出会えば互いに惹かれあうに違いない。手をとりあって幸せに笑うふたりの姿を想像すればズキズキと胸が痛んだ。
庭園は、ずいぶんと静かだった。
「この辺りで…」
きょろきょろと辺りを見渡すが、あの塊は無い。ただ花々が咲き乱れているだけで。
「もふもふの塊を見たんだけどな?」
「誰がモフモフの塊だー!」
ガサッと音をたててモフモフの塊がビューンっと飛んできた。凪斗は思わずキャッチ。
「…は!」
完全なる2頭身!頭でっかちの短足!頭には獣耳、尻にはモフモフの尻尾が7つ生えている。銀色の毛並み。おっきな金の瞳が凪斗を、きゅるんと見上げた。
「か、可愛い…!」
なんだ、この生き物ー!
前世でも出会ったことのない衝撃な可愛さだった。
「可愛いだとー!オリはカッコイいだー!」
パカーンっと、どこから出したのかハリセンで頭を叩かれた。
「?!」
「聞けぇ!オリは九尾の狐、ナナオ様だー!」
えっへんと胸をはる。
九尾って…確か東の国の伝説の生き物じゃなかったか?
東の国に憧れていた凪斗はいろいろな書物を読み漁っていたのでもちろん妖怪の事も頭に入っている、が。
「…、尻尾が7つしかねぇーけど?」
「む、そりは事情があるんだ」
ちっこい両手で、それは置いといてというジェスチャー。
「ぬ、ぬ、お前。毛並みが違うな。噂の黒のドラゴンだな。凪斗だろう?聞いてた姿と違うな。幼いぞ、ちっとも怖くないぞ」
どうだ、やるか、こんにゃろーと拳をつくってシュッシュッと殴る真似をする。
「…。…ケンカしにきたんじゃない。窓から見えたから気になったんだ」
「ぬ?視えたのか…結界を強化しなきゃならんだ。はっ!まさか!お前…姫様を狙ってるのかー!やらねーぞ!おりの嫁さんだからな!」
姫様?と首を傾げた凪斗に、はっ余計な事を言ってしまっただーとアワアワと口を押さえてナナオはオロオロしてる。ずいぶんとオロオロしてる。
「なんだか、よく解らねーけど…大切な人が居るんだな」
むむーっとナナオが唸る。
「分かった、じゃ俺はここには来ないよ。それならいいだろう?」
「え…、お前。姫様を狙ってるんじゃないのか?」
「俺はナナオの姿が見えて気になっただけだよ。あのモフモフの塊はなんだろーって。お姫様がいるなんて知らなかった。邪魔はしない、ごめんな」そう告げて凪斗が去ろうとしたが「待った!」と服の裾を掴まれた。
「…来てもいいだ」
「でも、邪魔だろう?」
何故かティアラとハーブの姿が浮かんだ。
「…邪魔じゃないだ。どうせ…姫様は眠り続けてる…お前、俺の話相手になれだ」
「眠り…?」
ざわ…と風が吹いた。ナナオの尻尾が、ぶわっと膨らむ。
「なんだ!なんか、おっとろしーのが来るだー!」
ボンっという音と共にナナオの姿が消えた。彼の姿が消え、しばらくするとハーブが庭園に入ってきた。
○仮契約○
「凪斗。此処に、いたんだ」
「…」
どーやって俺の居場所を突き止めたんだ、こいつ。追跡機能でもあるのだろうか。
「なんだか、ここ獣臭いな…。凪斗、行こうか?」
手を差し出してくるハーブに凪斗は「いや、俺は」と断ると急に辺りが冷えた。
「…!」
ハーブは表情こそ笑ってるが目が笑って無い。どうやら怒ってるようだ。何故、怒ってるのか解らない。
ハーブは庭園を見渡すと、ふう…と溜め息をついた。
「どうして…僕に逆らうのかな?どうして僕から離れるのかな?…こんな事、君にはしたくないけど…ここなら周りに誰も居ないから…」
「なん…」
ぞわ…と足下から何かが這い上がってくる。
なんだ、これ…ヤバい。
気がついた時には遅かった。
「…っ、」
腰が砕けたように凪斗は地面に、へなへなと座り込んだ。
身体に力が入らない?いや、違う…痺れてるような…
それなのに身体の奥から、ジンジンと甘い痛みが広がる。
「…、-は…」
息が上がった。心臓がバクバクと鳴っている。
「は、は…ん…はぁはぁ…」
ぎゅっと胸元を掴んで凪斗は理解不能な熱に怯えた。
なんだ、これ…なん、だ、これ…?!
「頬が染まって、凄く可愛いね…凪斗」じゃり…近づいてくるハーブの足音。カタカタと震える身体で凪斗はハーブを見上げた。
「お、俺にぃ…なに…し…」喋るのも声が震える。瞳が潤んで涙が溢れているのが解った。
「最初に僕を誘ったのは君だろう?ドラゴンのチャームブレスのことは書物を読んで知ってたけどね。あの屋敷で聖神力を持つのは僕だけだから…ね。凄く僕を誘ってるなぁって思ってたら学園でも垂れ流して…でも、それで抑えたみたいただから許してあげるよ」
ハーブは己の耳を指差した。凪斗が母から貰ったイヤリングの事だろう。
「ご、誤解…だ…はぁ、ん…ん…」
俺はチャームブレスのことは知らなかったんだ…!お前を誑かしてたんじゃねーよ!
そう叫びたかったが声は既に嗚咽になり始め視界がぶれてきた。
「はぁ、、はぁ…」
「僕が聖神力を使うと魅惑効果があるみたいだから普段は抑えてるんだけど、ここには君しか居ない…どう?ドラゴンにとって、これ…凄く気持ちいいだろう?」
声が近い、と気がついた時は顎を掴まれ覗き込まれていた。
「媚薬に近いかな?ドラゴンには?」
「はぁ、あ、ぁあ…」
「涎まで垂らして…ああ、可愛いなぁ」
ふふ…と笑うハーブ。
「その漆黒の髪も群青色の瞳も。凄く綺麗だよ…また逢えた。運命だと思ったよ」
「はぁ、はぁ…んん…!」ビクビクと身体を身震いさせた凪斗。ハーブは「もしかして、軽く…いっちゃったかな?」と苦笑した。確かめる為にズボンの前側を優しく触れば勃起してるだけでなく、くちゃ…と水音も聞こえた。
「…。凪斗、覚えてないかな?僕が母様を失った時のこと…僕は悲しくて…現実を受け入れたくなくて…逃げ出した。街で迷子なったときに君に出逢ったね…傷だらけだった君は自分の事より僕が泣いてるのを気遣ってくれたね…一緒に葬儀所に行ってくれたね」
「はぁ、はぁ、…あ……?」
ふたりで戻ったら大人たちに引き離された。凪斗は穢れ者だと罵られ殴られた彼は泣きながら走り去った…。あの時、もっと僕に力があれば君に理不尽な目を合わせる事も無かった。後からドラゴンだと聞かされ…自分のモノにしとけば…と後悔したんだ…。
「ねぇ、こんなに可愛いのに…。僕の腕のなかで震えているのに…。誰も、君の魅力を気がつかないなんて…」
くちゅ、くちゅ…その形を掴んで上下に撫でればズボン越しにも、わかる淫靡な音。
「あ、ひ…ぃぁあ…」
凪斗は動くハーブの手を掴んでいるつもりだが、ただ手を重ねてるだけになってしまった。
「僕は運がいい。ふふ、誰も君の主人になってない。僕のモノに出来るじゃないか…!ねぇ、凪斗…!」
ハーブは先ほど廊下で、すれ違った女生徒を思い出した。ライフの情報によると庶民のくせに聖女候補に選ばれ特別枠で入学したティアラだという。彼女の聖神力には驚いたが、わざと溢れ流しているようだ。あのままだと凪斗は直ぐに惚れて契約してしまうだろう。
「僕の印を…しておくか」
丁寧に凪斗の制服のボタンを外し胸をはだけさせた。地面に横たわせハーブは詠唱をとなえた。
あまりの聖神力により快感に打ち震えている凪斗は贖う事が出来なかった。
人間を主人として認め契約できるのはドラゴンからしか出来ない。今のところ、それしか方法は無いとされている。
それなら、そうなる方法へと導けばいい。
凪斗の胸に印を刻む。
「ァあ…や、…」
イヤだと凪斗は無意識に言葉にしたが、その言葉もハーブの口づけで、かき消された。
「~~~っ~…!」
身体の中に聖神力を無理やり注がられ凪斗はあまりのパワーに弓なりに体を反らした。陶酔感を得た凪斗はそのまま果てた。
「…凪斗」
「…」
胸をはだけたまま横たわる彼の姿は妖艶でハーブは誘われるまま、また唇を重ねた。舌を絡ませ味わえば時にはぴちゃぴちゃと音をたてたりして思う存分、口づけを交わした。
胸元の印が妖しく輝く。キィン…と高い音をたてて術が完成した。
胸元の印を鏡にうつし凪斗は悔し涙を流した。これは契約ではない。だけど無理やりハーブのモノになった印と変わらなかった。
「凪斗」
ノックもせずに部屋に入ってきたハーブは凪斗の濡れてる頬をベロリと舐めた。
「っ…」
反射的にハーブから飛び退いたが凪斗は、それ以上は動けない。どくどく…と身体の奥が熱い。胸元の印が熱い。
「ん…」
彼が視界に入れば、たちまちスイッチが入ってしまった。
「ふ、ぅん…」
抵抗する凪斗を面白そうにハーブは見つめた。見つめたまま、ストンと彼のベッドに腰掛ける。
「…凪斗、欲しいンだろう?」
ハーブがわざと舌なめずりすると凪斗はふらふらと彼に近寄り…しばらく躊躇していたが「…、…っ」我慢出来なかったのか彼の唇に己の唇を重ねた。そのまま強請るようなキスになる。
「はぁ、はぁ…んん…」
甘い、凄く美味しい…。
胸元の印が輝く。欲望が抑える事が出来ない。ハーブが与えてくれる聖神力に酔っていく。それは前世では味わった事が無い味だった。欲しくて欲しくてたまらなくなる。蜂蜜のように甘くて粘っこく、とろとろ…と本当に溶けてしまいそうだ。
我慢…、出来ない、欲しい、もっと…
「…」
凪斗は頬を染めてハーブとの口付けを味わっている。自然と腰が揺れている姿に性的な印はしてなかったけどな…と苦笑した。
可愛い…僕の凪斗…。
腰を撫でてやれば、ビクビクと身体を揺らし悦んでいる。
可愛くて堪らない。僕だけを映してる瞳はなんて綺麗なんだろう。このまま心を僕でいっぱいにして欲しい。誰も隙間に入れさせない。常に僕だけの事を考えて欲しい。
ハーブの独占欲は激しかった。
「…、…もう、駄目だよ。もっと欲しいなら契約しなきゃ…ね?」
優しく諭すようにハーブは伝えたが契約という言葉で凪斗は、はっと思考が戻った。契約…、守護獣のことか…?契約…したら、もっと与えて貰える…?
だけど…だけど…。
ティアラの言葉。
ハーブこそ自分の運命の相手。
いずれ…ふたりは惹かれあい…愛しあう…邪魔になるのは俺だ。
やはり、同じように…俺は殺されるのか…?
「嫌だ…!契約は…しない…!」
契約すれば離れられない。主人の命令に逆らえ無い。全て支配されて捨てられるのは…、もう、嫌だ…!
「ー…、……そう、じゃ今日はこれで終わりだね」
そう冷たく告げるとハーブは部屋から出て行った。
「…」触れていた唇。凪斗は指先で触り…拭った。
「うう…」
一度、味わったら止まらなくなってしまった。こんなになるのは胸元の印のせいでもあるだろうが。
ティアラは、こんな風に凪斗に聖神力はくれなかった。手をかざし祈るようにしてくれたが、ほんの欠片くらいだった。
そういう方法があるのに敢えてハーブは屈辱的な方法で与えてくる。だがティアラと違い大量に貰えるハーブに勘違いしてしまいそうになる。
愛して貰えてると勘違いする。
「だけど、また…与えて貰えなくなる」
突然ティアラからそれが無くなったのは彼女がハーブに惹かれたからだ。自分は彼女の守護獣だ、愛されてる筈だと自分を騙し騙して…結果、邪魔だと切り捨てられた。
「…ああ…俺は愛されたかったんだ…」
誰でも良かったのか…前世の凪斗は孤独だった。飢えていた、愛情を。それに聖神力は愛情のように感じるのもドラゴン特有のものだ。これからはハーブが視界に入るたびに彼が欲しくて堪らなくなる。特にこの印のせいで。
「はは…変わらないじゃないか」
そのうち自分は我慢が出来なくなり自ら契約して彼のものになるだろう。ティアラの時がそうだ。彼女を独占したくて愛されたくて…破滅へと歩んで行った。
主人がティアラでもハーブでも…愛される事も無く…また、死ぬ運命なのか…。
ぽとり…涙がシーツに落ちて染みていく。
「…なんとか…しないと…」
やり直しの人生だと思った。これは、きっと…前世で哀れに思った神さまがくれたチャンスだと。
「また破滅の道にいくようになる…」
だが、解決策は全く浮かばなかった。
○ティアラ○
「どういうことかしら…」
ガリガリと爪を噛む癖は昔から変わらない。止めなければならない、せっかく綺麗に揃えた爪だったのに。そう、せっかくの二度目の人生なのだから。
「あれは…凪斗だった?」黒髪は凪斗しか居ないわ…一瞬でよく、解らなかったけど。でも、どうして?彼は施設にいるはずだわ…そう聞いてたし。学園に居るはずがない。
「前のときから変わってる」
何より現在の聖騎士隊長が違うわ。ドラゴンを守護獣にしてるなんて事あったかしら?新聞を広げ、聖騎士の守護獣の白銀のドラゴンを見つめる。
なんて綺麗なのかしら…あの黒ドラゴンとは大違いだわ。
ティアラはふたりが凪斗の両親だということを知らなかった。
「私が学園に通ってる事で未来が変わったのかしら?それにしても…ハーブは変わらず綺麗だったわぁ…。でも…何で声をかけて来ないのかしら…?すれ違ったわよね??やっぱり時系列が違うから話かけても来ないのかしら?こっちは、わざと聖神力を出しているのに…釣れるのは役にたたない男達ばかりだし。…。…私が欲しいのはハーブなのよ!」
ぼんっと枕を壁に投げつける。未来では聖騎士隊長になるハーブは是非とも手に入れておきたい。成長すれば誰よりも美しい男を隣に侍らせたい。
「運命の相手は彼しか居ないもの。前世で上手くいかなかったのは凪斗のせいよ!出会った最初はなかなか格好良かったのに…ドラゴンはドラゴンでもやっぱり黒は駄目ね!変な術で身体は腐っていくし…それに…」
彼を始末した後ハーブは人が変わったようになったのだ。ティアラに見向きもしない。そのうち彼は遠征ばかり行き帰って来なくなった。仕事熱心なのだとティアラは自分に言い聞かせていた。妻である自分が屋敷を守らないとならない。だが突然、彼女は屋敷から追い出された。ハーブ様の命令だと使用人たちは言っていたがティアラには信じられなかった。そんな筈は無い。だって自分はハーブに愛されてるのに!使用人達の横暴だ。しかしハーブの妻だと言えば妄想癖があるのかと罵られ、聖女の源の聖神力まで急になくなった。あとは転落人生だった。
最期は悲惨な死に方で…
「いやあああああ!思い出したも無い!あんな終わり方…!これは神さまが与えてくれたチャンスなのよ!」
そう、一番は友を殺したハーブの精神的ケアをしてあげなかったからだわ。きっと凪斗の主人の私をみて辛かったのね。だって、あの人は優しいから…自分を責めたのよ。私が気がついてあげるべき事だったのに。でも大丈夫、今度はきちんと支えてあげるわ。
「そう…凪斗は…早めに始末しなきゃね…。あのドラゴンは汚点だわ。全てアイツが悪いのよ。役にも立たないし。何より醜くなるのが気持ち悪いわ。きっと今世でも私に惚れるでしょうけどね。もう一度守護獣にして…ドラゴンの羽根や骨って高く売れるのよね…死んでって言えば命令をきくかしら?前世の時は死んだ後、手に入れられなかったのよねぇ…骨くらいあれば屋敷を出ても不自由しなかったのに!」
凪斗を埋葬したのはハーブだった。どこへ埋葬したのかを何度聞いても教えて貰えなかったし彼は部下にも教えなかった。
「そうね、守護獣にして少しずつ売っていけば…あの子バカだから、きっと喜んで自分の身体を売るわね…」
主人が喜ぶ事で愛されてると勘違いするバカだもの。うふふふ…と笑っているとルームメイトのトルシュが入ってきた。
「ティアラ、どうしたの?楽しそうね」
「え、ええ~。ちょっとね…」
うざいわね、この子。
ティアラはトルシュを見下していた。そばかすだらけの顔、天然パーマの茶色髪。貴族のなかでは位が低いくせに、いつも高い服を着ちゃって。私が悔しがるとでも思ってるのかしら?貴族の癖に庶民と同じ寮の部屋でプライドもなにも無いくせに。私は庶民だけど…あんたよりはマシだわ。顔も私の方が何倍も可愛いし。あんたは引き立て役ね。
「これ、お母様から届いたの」
一緒に食べましょうとお菓子を用意してくれるトルシュに「わぁ美味しそー」と喜ぶ姿を見せる。それ高級でしょうね?と失礼な事を考えていた。
「夕陽が綺麗だ…」
学園に住み着いて何年目だろうか。この夕陽も独りで見るのも何年目だろうか。
ざざ…
心地良い風。ナナオは広い庭園で、ただ独り…彼女が目覚めるのをずっと待っている。
「…」
結界を張っていたのに自分の姿を見た少年。凪斗が現れたのは彼女が目覚める兆しだ。
「…」
それにしても後から現れた金髪の少年のオーラは本当に恐ろしかった。
「あんな得体の知れない奴に眼ぇつけられてるのか…ちょっと可哀相だ…な」
聖騎士とか聖女を育成する学園なのに上手く隠していたが全く反対のオーラまで彼は含んでいたからだ。
あの幼いドラゴンをこれから自分は騙さないならない。お姫様の為に。
「…綺麗な夕陽だけど…なんだか怖くなってきただな…」
沈む夕陽が、まるで悪魔の笑顔のように見えた。それはこの先の行方を案じているかのようだ。
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