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番外編
須藤君の じれったい二人
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クリスマスパーティー後の週明け、人々の好奇心の矢面に立たされた須藤君。
適当にあしらうものの、隣の席の千速には、またまたこんな話題をふられて……
********************************************
「はぁっ? ……いや、僕はたまたま隣の席に座っているだけで、皆さんが見ているもの以上のものを見ているわけじゃないですから。特別な事情なんて知りませんよ。僕の方がどうなってんのか聞きたいくらいですよ」
何度目かわからない「で、そこんトコどうなってんの?」的な質問に、これまた同じ答えを返しながら、僕はため息をつきました。
突然あんな格好で現れて話題をさらった当人は、翌日にはいつもの「薄墨の君」仕様で出社し、何があったのー? と簡単に聞ける雰囲気ではなくなってしまったのです。
策士ですねー、加藤さん。
いや、たぶん、無意識なんでしょうけど。
……は は は。
元婚約者(笑)久世課長は、「俺に何か聞いてみろ、その度胸があったらな」という黒いオーラを放出しており、もちろん誰も近付けず。
常盤さんは、例の調子で「どうなってるんだろうねー。僕もこの先楽しみでさー」と、肝心なことは何ひとつ口にせず。
谷口さんに至っては「んふふ。そうよねー興味深いわよねー。でも、教えてあげなーい」とか、余計興味を煽るようなことを言い。
何も情報を掴めなかった人たちが、一番聞きやすそうで、丸め込みやすそうな僕のところへやってくるのです。
で、僕はこう答えるわけ。
「本人に直接聞いてみたらどうです? 加藤さん、隠すつもりなんてサラサラ無さそうですし」
いや、実際の所、結構面白いものを間近で見聞きしていたとは思いますが、それは、もちろん秘密です(笑)
あ、因みに、直接聞こうとする勇者は現れていないようです。
凄いですねー、加藤さん。
* * *
時刻は六時過ぎ。
加藤さんが、隣の席でため息をつきました。
まずい展開です。
ここはひとつ、席を立って脱出……
「須藤君」
きたーーーーーっ。
脱出失敗です。
「……はい、何でしょう」
この時間帯、そしてこの口調、OFFモードの加藤さんです。
このヒトは、OFFモードの時の方が厄介なのです、僕の経験則からいって。
「指輪って、やっぱり意味があるわよね?」
指輪って、あの噂のシロモノですかね?
「そりゃ、あるんじゃないですかね」
「……そうよね」
うーーーーんっ! 気になるじゃないですかっ! そこで切られたら。
「指輪は、そう簡単にプレゼントできませんよ」
特に、アナタがつけていたような、一粒石のモノとかはね。
「加藤さんだって、あの指輪をもらった時に、何かひとこと言われたんじゃないんですか?」
くるりっと勢いよく椅子をこちらに向けて、僕に向かって身を乗り出した加藤さんが、目を大きく見開いてこう言いました。
「それがね。目が覚めたら、はめてあったの」
どういったシチュエーションか、妄想が暴走しそうですーーーっ。
しかし、赤面する僕を歯牙にもかけず、
「でね、ビックリして暫く眺めていたら、『それは、保険だ』って言われたのよ」
そう言って加藤さんは、腕を組んでふーむ、と唸っています。
「私だって馬鹿じゃないから、あの指輪がどんな意味をもっているかくらい、わかります。わからないのは『保険』のほうで」
首をかしげながら呟くのです。
「それって、指輪を渡すのに、正しい言葉なのかしら?」
いや、正しいとか正しくないとか……そういう問題?
「つまり加藤さんとしては、指輪自体がどうこうじゃなくて、言葉の選択に疑問を感じていると?」
「そうっ! 何『保険』って。私が心変わりしないための保険ってこと?」
……そこは盛大に「そりゃ、違いますっ!」と、森さんのためにも言っておくべきなんでしょうか。
加藤さんは、ずいっと僕ににじり寄って、
「っていうか、その渡し方にも、問題アリじゃない? 私、YESもNOも言ってないもの。もし、NOだったらどうするつもりだったのかしら?」
と眉を顰めた。
いや、断らせるつもりは、これっっっぽっちも、繰り返しますが、これっっっぽっちもなかったと思いますよ(断言)
僕はため息をついて、加藤さんに言い聞かせるのでした。
「あのですね。『保険』ていうのは、他の男が加藤さんに手を出さないようにっていう意味の保険ですよ。心変わりなんて、ハナから許されてないんですよ」
誰が相手だと思ってるんですか、全く。
すると、少し拗ねたような表情で、
「……お伺いぐらいたてるのが、筋ってもんじゃない?」
とか言うんですよっ!
断る気なんて、ないんじゃないんですかっ!
うう……甘すぎて、砂を吐きそうです。
なんで、僕にのろけてるんですか?
これ、のろけてるんですよね??
違う???
っていうか、本人は全力で否定すると思いますけど、加藤さんにご執心であるがゆえに、いまひとつ、照れて言葉にすることが出来ない森さんの男心、わかってあげてほしいですよ……
照れる、森瑞穂……うーん、俄かには信じがたいですけど(笑)
傍から見れば、これほどあからさまなお互いへの好意が、どうやら、当人同士にはダイレクトには伝わっていないという……
なんとも傍迷惑な、なんともじれったい二人なのです。
適当にあしらうものの、隣の席の千速には、またまたこんな話題をふられて……
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「はぁっ? ……いや、僕はたまたま隣の席に座っているだけで、皆さんが見ているもの以上のものを見ているわけじゃないですから。特別な事情なんて知りませんよ。僕の方がどうなってんのか聞きたいくらいですよ」
何度目かわからない「で、そこんトコどうなってんの?」的な質問に、これまた同じ答えを返しながら、僕はため息をつきました。
突然あんな格好で現れて話題をさらった当人は、翌日にはいつもの「薄墨の君」仕様で出社し、何があったのー? と簡単に聞ける雰囲気ではなくなってしまったのです。
策士ですねー、加藤さん。
いや、たぶん、無意識なんでしょうけど。
……は は は。
元婚約者(笑)久世課長は、「俺に何か聞いてみろ、その度胸があったらな」という黒いオーラを放出しており、もちろん誰も近付けず。
常盤さんは、例の調子で「どうなってるんだろうねー。僕もこの先楽しみでさー」と、肝心なことは何ひとつ口にせず。
谷口さんに至っては「んふふ。そうよねー興味深いわよねー。でも、教えてあげなーい」とか、余計興味を煽るようなことを言い。
何も情報を掴めなかった人たちが、一番聞きやすそうで、丸め込みやすそうな僕のところへやってくるのです。
で、僕はこう答えるわけ。
「本人に直接聞いてみたらどうです? 加藤さん、隠すつもりなんてサラサラ無さそうですし」
いや、実際の所、結構面白いものを間近で見聞きしていたとは思いますが、それは、もちろん秘密です(笑)
あ、因みに、直接聞こうとする勇者は現れていないようです。
凄いですねー、加藤さん。
* * *
時刻は六時過ぎ。
加藤さんが、隣の席でため息をつきました。
まずい展開です。
ここはひとつ、席を立って脱出……
「須藤君」
きたーーーーーっ。
脱出失敗です。
「……はい、何でしょう」
この時間帯、そしてこの口調、OFFモードの加藤さんです。
このヒトは、OFFモードの時の方が厄介なのです、僕の経験則からいって。
「指輪って、やっぱり意味があるわよね?」
指輪って、あの噂のシロモノですかね?
「そりゃ、あるんじゃないですかね」
「……そうよね」
うーーーーんっ! 気になるじゃないですかっ! そこで切られたら。
「指輪は、そう簡単にプレゼントできませんよ」
特に、アナタがつけていたような、一粒石のモノとかはね。
「加藤さんだって、あの指輪をもらった時に、何かひとこと言われたんじゃないんですか?」
くるりっと勢いよく椅子をこちらに向けて、僕に向かって身を乗り出した加藤さんが、目を大きく見開いてこう言いました。
「それがね。目が覚めたら、はめてあったの」
どういったシチュエーションか、妄想が暴走しそうですーーーっ。
しかし、赤面する僕を歯牙にもかけず、
「でね、ビックリして暫く眺めていたら、『それは、保険だ』って言われたのよ」
そう言って加藤さんは、腕を組んでふーむ、と唸っています。
「私だって馬鹿じゃないから、あの指輪がどんな意味をもっているかくらい、わかります。わからないのは『保険』のほうで」
首をかしげながら呟くのです。
「それって、指輪を渡すのに、正しい言葉なのかしら?」
いや、正しいとか正しくないとか……そういう問題?
「つまり加藤さんとしては、指輪自体がどうこうじゃなくて、言葉の選択に疑問を感じていると?」
「そうっ! 何『保険』って。私が心変わりしないための保険ってこと?」
……そこは盛大に「そりゃ、違いますっ!」と、森さんのためにも言っておくべきなんでしょうか。
加藤さんは、ずいっと僕ににじり寄って、
「っていうか、その渡し方にも、問題アリじゃない? 私、YESもNOも言ってないもの。もし、NOだったらどうするつもりだったのかしら?」
と眉を顰めた。
いや、断らせるつもりは、これっっっぽっちも、繰り返しますが、これっっっぽっちもなかったと思いますよ(断言)
僕はため息をついて、加藤さんに言い聞かせるのでした。
「あのですね。『保険』ていうのは、他の男が加藤さんに手を出さないようにっていう意味の保険ですよ。心変わりなんて、ハナから許されてないんですよ」
誰が相手だと思ってるんですか、全く。
すると、少し拗ねたような表情で、
「……お伺いぐらいたてるのが、筋ってもんじゃない?」
とか言うんですよっ!
断る気なんて、ないんじゃないんですかっ!
うう……甘すぎて、砂を吐きそうです。
なんで、僕にのろけてるんですか?
これ、のろけてるんですよね??
違う???
っていうか、本人は全力で否定すると思いますけど、加藤さんにご執心であるがゆえに、いまひとつ、照れて言葉にすることが出来ない森さんの男心、わかってあげてほしいですよ……
照れる、森瑞穂……うーん、俄かには信じがたいですけど(笑)
傍から見れば、これほどあからさまなお互いへの好意が、どうやら、当人同士にはダイレクトには伝わっていないという……
なんとも傍迷惑な、なんともじれったい二人なのです。
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