皇兄は艶花に酔う

鮎川アキ

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第6話

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 脚の間が濡れているのは湯のせいではない。久しく感じていなかった、秘蕾から愛液の漏れる感覚。
 翠玲の手をあわいへ触れさせただけで、仁瑶の身體は愉悦に蜜をこぼし、下肢をしとどに濡らしていた。
「もう、こんなになさっておられたのですね」
 翠玲の瞳に気遣うような色がにじむ。
 とろけた襞をそっとなぞられ、仁瑶は身をよじった。
「んぅ、ン、ぁ、ふあ……っ」
「お可哀想に、兄の使った媚薬のせいでしょう。楽にしてさしあげますからね」
「はぁ、ッぁ、あんぅう……っぁ、あ、しゃおれ、小玲、っ」
 翠玲の指はもどかしいほどやさしく窄まりを撫でるばかりだったが、仁瑶には過ぎるほどの快感をもたらした。
 爪先が褥を蹴り、触ってとねだったくせにたえきれなくなって、恋しい躰に縋りつく。
 くちづけを求めれば、翠玲はすぐに応じてくれた。
「んく……っん、ンぅ、ん」
「後始末はすべてわたしがしますから、たくさん気を遣ってください」
「ぁふ、ッ、ふぁ、あ、っんぁ、あ、ゃッ――」
 くちゅくちゅと鼓膜を犯す水音は下肢から響いたものか、それともくちびるから漏れたのか。
 翠玲は仁瑶を抱き寄せ、甘やかすように秘蕾と昂りを愛撫し続けた。
 仁瑶は翠玲の指が肌をこするたびに幾度も達し、白濁と愛液とで褥を濡らす。
 しかし、あわいは充分すぎるほど濡れているのに、翠玲の指は窄まりの表面を撫でるだけ。困惑した仁瑶が懸命に肌香を発しても、挿入しようともしない。それどころか、うなじを咬もうとする気配もなかった。
 ただひたすらに、妃嬪だった頃の翠玲に仁瑶がそうしたのと同じく、熱を発散させるだけ。
(なぜ……)
 疑問が浮かぶのに、気を遣りすぎて朦朧とした頭では思考が空転するばかりだ。
「しゃおれ……」
 舌足らずな口調でどうにか翠玲を呼んだものの、ひどい倦怠感に襲われ、それ以上くちびるを動かすことができなかった。
 せめてと抗うように翠玲の胸に額をこすりつければ、甘やかに囁かれる。
「どうぞ、お眠りなさいませ。お目が覚めたら、薬湯をお持ちしますからね」
 薬湯などどうでもよいと答えたいのに、もう瞼をあけていられない。
 微睡に沈んだ仁瑶は、翠玲のくちびるがやわらかく重ねられたことを覚えてはいなかった。
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