59 / 104
第5話
5-10
しおりを挟む向かい合うように座ったままの俺たち――俺はまたユンファ様に口付け、その甘い舌を舐めて、絡めとってやりながら。
ユンファ様の首元を覆っていた白い布、彼のうなじにある紐をほどき、緩めて――すると案外容易く、はらりとそれは、取り払うことができた。
そうして俺が脱がせるなりユンファ様は、は…と唇を自ら離し――その顔を伏せ気味に…それでいて嬉しそうに頬を染め、微笑んでいる。
「…そういえば…先ほど僕は、清いのは唇だけだなんだと言いましたが…ソンジュ様、実はまだ…――僕の首にも、ジャスル様の唇は触れておりません…、先ほどは、首布をしたままでしたから……」
「…おぉそうですか…、それは何より嬉しく思います。――ふ、では…失礼いたします、ユンファ様……」
ユンファ様はどこか緊張したように「はい…」と答えながら、その首を横へ反らして俺に差し出してくる。
俺はユンファ様の、まだ踏み荒らされていない新雪…その白く、流れるような美しい首筋を上からそっと鎖骨まで、つー、と指先で掠め撫でた。…意外にもしっかりと喉仏が、孤島のように浮かんでいるのが何とも官能的だ。
ひく…とわずかな反応を示した彼に、俺はその人の首筋へ顔を寄せ――口付ける。
「…ふ、…ん…っ♡」
ふにゅりと俺の唇が触れれば、ゾクゾク、と先ほどより反応を強め、ユンファ様は俺の肩をきゅうと掴んでくる。…甘く小さな声をもらしたユンファ様、カタカタと震えているその手、ぬくもりの濃いなめらかな白肌は粟立ち…――もう片手は自分の口元を押さえた彼、
「あっ、なっなんて声を…! ごめんなさい、く、擽ったくて……」
「…ふ…本当にそれだけですか、ユンファ様…? とても艶やかで、可愛らしい声でしたよ…。どうか堪えず、あるがままに声を出してくださいませ……」
どうせもう、誰ぞに聞かれたところで今更よ、ならば思うままにつがい合うほうがよい…俺はユンファ様の首筋にそう囁き――それから、舌を出してつぅと擽ればビクリ、ひっとよりあらわな反応を見せるユンファ様。
なんと初々しく、可愛らしい反応か…――。
つー…と舌でなぞり、軽く吸い付き、ペロペロと舐める…甘く、芳醇な桃の香も濃い――桃の味もまた、濃い。
「…ん…♡ …んぅ…♡ は、あ、くっ擽ったい…、ぁぁ…♡」
ひくん、……ひくん、と小さく跳ねるユンファ様の体は、俺を誘う。…擽ったい、などと言いながら甘い声を出しているこの人は、未知の快感にそう言っているだけなのだ。
「…ぅぅ…♡ そ、ソンジュ様…ぁ……」
ちろちろとその甘い肌を舐め、ちゅうと軽く吸い付きながら――するりと彼の衿元を撫でるよう割り、ユンファ様の肩のほうへ下げてゆく。
「…ソンジュ様…、あの……」
「…綺麗だ……」
あらわになった白い鎖骨は、くっきりと浮き――首の筋に繋がって、華奢な影を落としている。…というのもユンファ様は、先ほど思い切って自分の胸元を俺に見せ付けてきたわり、…胸板の中央まで衿元を掴んで引き上げ、胸を隠し、俯かせた顔を真っ赤にしているのだ。
しかし、その人の黒髪がさらりとかかる白い肩は、すっかり晒され――今曲げられている肘まで、その薄桃色の着物も、中の襦袢も下ろされている。
「…はは、むしろ…そのほうが艶やかでございますよ、ユンファ様……」
「……? それは、どういう…」
すかさずその鎖骨にちゅっと吸い付けば、ぁ、と息を詰めたユンファ様。
ならばと俺は、ユンファ様の帯を解いてゆく。…幸い、俺にとってこの装束は勝手知ったるという構造であり、俺がこの帯を解いてゆくのは、それこそ鎖骨を舐めながらでもできるほど、あまりにも簡単である。
――甘く香る芳醇な桃の熟れた匂い…若桃に、かぷりと甘噛み。…つまり、その鎖骨にやわく歯を立てると、ぴくんっとユンファ様の体が小さく跳ねる。
「…ッ♡ ソンジュ、様……」
そのあとは、鎖骨のくぼみを舌で擽る。…ユンファ様の、自分の着物を握ったその手にきゅうと、力が入る。
するりと、かかる髪を避けるように撫で付けたその人の肩――俺の手のひらは、ユンファ様の意外にも筋肉質な、それでいて細い二の腕をなめらかに、滑りゆく。
「…はぁぁ……♡ ソンジュ様、僕…幸せでございます…」
すると、それだけでふるふるとしたユンファ様の体がじんわりと熱くなり、内側からしっとりと湿ってくる――。
「……俺も、愛しのユンファ様に触れることが許され、今、至上の喜びを感じております……」
「……、ふふ…」
斜へ伏せられた、その端正な顔は頬が紅潮し、はにかんでほのかに笑う。――着物の衿元を持ち上げて胸元を隠し、やや竦められた白い肩、それによってよりくっきりと浮かんだ妖艶な鎖骨と…上部のみ覗く、平たく雪のように白い胸板。…艶美な黒髪がさらさら落ちて、いくらかまたその白い肩に、胸板にかかる。
可憐でありながら、何とも妖艶な人だ――男として、貪欲となるほどに。
1
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
不器用なきみの手をひいて
みづき(藤吉めぐみ)
BL
高齢化の進むちいさな町で、父の跡を継ぎ歯科医をしている深琴。
ある日、自転車屋の息子だという銀次に助けられた深琴は、銀次が高校の後輩ということもあり、少しずつ仲良くなっていく。
明るくて楽しい銀次は深琴と違いたくさんの知り合いや友達がいて、自分とは違うと感じて戸惑う深琴に、銀次は構うことなく近づいていく。けれどそんな銀次にも、この町に戻って来た理由があってーー?
戸惑いながらも銀次に惹かれ、それでも自分を変えられなくて逡巡する深琴と、そんな深琴を優しく見守りながらそれでも気持ちを傾け続ける銀次の、ゆっくりスローペースな恋の話です。
【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。
N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い)
×
期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい)
Special thanks
illustration by 白鯨堂こち
※ご都合主義です。
※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
神子様の捧げ物が降らす激雨の愛
岡本
BL
雨の神に愛された一族の神子様として生まれたルシュディー。ある日突然、彼は転生前の記憶を思い出す。
転生前の記憶を思い出したからか、それ以前の記憶を覚えておらず、困惑する。
それでも自由気ままに、転生前の趣味に没頭していると、国中に雨を降らすことが自分の仕事と判明し、雨乞いの儀式をすることに。
態度の悪い使用人との軋轢も絶えない日々の中、ルシュディーを神子として国に縛り付ける為、側室に迎え入れた第二王子とも仲は良くなくて――。
自分の事も、力の事も何も分からないルシュディーの、全てを捧げたお話。
【完結】それより俺は、もっとあなたとキスがしたい
佑々木(うさぎ)
BL
一ノ瀬(27)は、ビール会社である「YAMAGAMI」に勤めていた。
同僚との飲み会に出かけた夜、帰り道にバス停のベンチで寝ている美浜部長(32)を見つけてしまう。
いつも厳しく、高慢で鼻持ちならない美浜と距離を取っているため、一度は見捨てて帰ろうとしたのだが。さすがに寒空の下、見なかったことにして立ち去ることはできなかった。美浜を起こし、コーヒーでも飲ませて終わりにしようとした一ノ瀬に、美浜は思いも寄らないことを言い出して──。
サラリーマン同士のラブコメディです。
◎BLの性的描写がありますので、苦手な方はご注意ください
* 性的描写
*** 性行為の描写
大人だからこその焦れったい恋愛模様、是非ご覧ください。
年下敬語攻め、一人称「私」受けが好きな方にも、楽しんでいただけると幸いです。
表紙素材は abdulgalaxia様 よりお借りしています。
皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる
えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。
一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。
しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。
皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……
運命を知っているオメガ
riiko
BL
初めてのヒートで運命の番を知ってしまった正樹。相手は気が付かないどころか、オメガ嫌いで有名なアルファだった。
自分だけが運命の相手を知っている。
オメガ嫌いのアルファに、自分が運命の番だとバレたら大変なことになる!? 幻滅されたくないけど近くにいたい。
運命を悟られないために、斜め上の努力をする鈍感オメガの物語。
オメガ嫌い御曹司α×ベータとして育った平凡Ω
『運命を知っているアルファ』というアルファ側のお話もあります、アルファ側の思考を見たい時はそちらも合わせてお楽しみくださいませ。
どちらかを先に読むことでお話は全てネタバレになりますので、先にお好みの視点(オメガ側orアルファ側)をお選びくださいませ。片方だけでも物語は分かるようになっております。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます、ご注意くださいませ。
物語、お楽しみいただけたら幸いです。
コメント欄ネタバレ全解除につき、物語の展開を知りたくない方はご注意くださいませ。
表紙のイラストはデビュー同期の「派遣Ωは社長の抱き枕~エリートαを寝かしつけるお仕事~」著者grottaさんに描いていただきました!
踊り子さんはその手で乱されたい。
藜-LAI-
BL
国内唯一の男性ストリップバーのトップダンサー、ジルこと高城勇樹は、親友でバーのオーナーである恩人、北村舞花を交通事故で失う。
そして舞花の代理としてオーナーに名乗りをあげたのは、舞花の兄である、別企業のCEOを務める亮司だった。
勇樹を舞花の恋人だったと思い込んでいる様子の亮司だが、ある切っ掛けでその関係に亀裂が入り……
高城勇樹(32) ダンス講師 兼 ストリップダンサー
ちょっとミステリアスな爽やかイケメン
北村亮司(40) 会社CEO 兼 ストリップバーオーナー
正統派でクールな色男
◆Rシーンは※、攻め視点は⭐︎をつけておきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる