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42、準備のこと
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脱出の準備をする回です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「布の上に回路引いて、あとは1個ずつ組み合わせと出力を試せば……」
「うん……うん、いけそうだな……! ちゃんと作動するか確認してみよう」
「布越しなんで干渉は無いと思うんですよ」
「たしかに」
「とりあえずハンカチでやってみますか」
「ん。発光で良いよな?」
「はい」
慌てて走って来た私を何事かと迎えたコンラッド様は、話を聞くにつれ身を乗り出して乗り気になってくれた。灯り用に自作した習作魔導具と製作キットを取り出し、ハンカチをそれぞれ机に広げる。
弟妹様たちは横で見学。とりあえず2つ作って魔導具にハンカチを被せ、干渉せず使用が可能かどうかを確認することに。
「お、光った。……上だけ発光してるな?」
「いけてますね……じゃあ次は端だけ繋げて……」
「とりあえず仮止めで」
魔力というものは易きに流れる性質があり、電気やらと同じく物質によって通りやすさも違う。魔導具の回路はそれを利用して作っているので、だいたいの物よりは魔力が良く通る。
よって何の変哲もない布を間に挟めばそうそう干渉はしない……と、いうのはただの予想だったが、どうやら本当にそうらしい。魔導具の方の灯りは点かず、ハンカチの回路だけがぼんやりと光っている。
もちろん出力を上げたり複雑な回路を組んでどうなるかはまだ試さなければ分からない。でも、これなら多少強引にでもあの重い扉を開けることが出来そうだ。
「……あ、いけた。通ってる。これほんとにいけるぞクロード!」
「やりましたね! あとはあの扉が動く出力で干渉しなければ開けられますよ!」
魔導具本体と繋げた、ハンカチの方の回路だけを発光させる試みも成功。あの扉で言えば始点は水晶1つだけなので、終点がどこなのかさえ分かればちゃんと作用させることができる。と、いうことは、あの扉に見合った『開く』の回路さえ組めれば、あそこが開く可能性は十分にあるということだ。
いやそんな適当なと思わんでもないが……試すだけ試して損はないだろう。他の機構が組んであって開かないならそれはそれで、一歩進めたということなので。
「…………なぁチビ共、あいつら何言ってっか分かるか?」
「わたくしは半分くらい……」
「わかんない!」
「むつかしいこと言ってる!」
「そっか……良かったわ……」
ずるずるとボロい椅子を引き摺ってきたディーンおじさんが、頬杖をつきながらぼんやりとこちらを見ている。見学中の弟妹様たち、理論はちゃんと理解できていないようだ。いずれシシリー卿に指導して貰えば分かるようになるので安心してほしい。
ともかく、私たちがここから出るための方針は一旦定まった。さっそくシーツを取りに向かったコンラッド様はすぐに作って試してみるつもりのようだ。私も、大きな回路を書くための準備を始めようと思う。まずはきちんと図案を考えなければ。
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「布の上に回路引いて、あとは1個ずつ組み合わせと出力を試せば……」
「うん……うん、いけそうだな……! ちゃんと作動するか確認してみよう」
「布越しなんで干渉は無いと思うんですよ」
「たしかに」
「とりあえずハンカチでやってみますか」
「ん。発光で良いよな?」
「はい」
慌てて走って来た私を何事かと迎えたコンラッド様は、話を聞くにつれ身を乗り出して乗り気になってくれた。灯り用に自作した習作魔導具と製作キットを取り出し、ハンカチをそれぞれ机に広げる。
弟妹様たちは横で見学。とりあえず2つ作って魔導具にハンカチを被せ、干渉せず使用が可能かどうかを確認することに。
「お、光った。……上だけ発光してるな?」
「いけてますね……じゃあ次は端だけ繋げて……」
「とりあえず仮止めで」
魔力というものは易きに流れる性質があり、電気やらと同じく物質によって通りやすさも違う。魔導具の回路はそれを利用して作っているので、だいたいの物よりは魔力が良く通る。
よって何の変哲もない布を間に挟めばそうそう干渉はしない……と、いうのはただの予想だったが、どうやら本当にそうらしい。魔導具の方の灯りは点かず、ハンカチの回路だけがぼんやりと光っている。
もちろん出力を上げたり複雑な回路を組んでどうなるかはまだ試さなければ分からない。でも、これなら多少強引にでもあの重い扉を開けることが出来そうだ。
「……あ、いけた。通ってる。これほんとにいけるぞクロード!」
「やりましたね! あとはあの扉が動く出力で干渉しなければ開けられますよ!」
魔導具本体と繋げた、ハンカチの方の回路だけを発光させる試みも成功。あの扉で言えば始点は水晶1つだけなので、終点がどこなのかさえ分かればちゃんと作用させることができる。と、いうことは、あの扉に見合った『開く』の回路さえ組めれば、あそこが開く可能性は十分にあるということだ。
いやそんな適当なと思わんでもないが……試すだけ試して損はないだろう。他の機構が組んであって開かないならそれはそれで、一歩進めたということなので。
「…………なぁチビ共、あいつら何言ってっか分かるか?」
「わたくしは半分くらい……」
「わかんない!」
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「そっか……良かったわ……」
ずるずるとボロい椅子を引き摺ってきたディーンおじさんが、頬杖をつきながらぼんやりとこちらを見ている。見学中の弟妹様たち、理論はちゃんと理解できていないようだ。いずれシシリー卿に指導して貰えば分かるようになるので安心してほしい。
ともかく、私たちがここから出るための方針は一旦定まった。さっそくシーツを取りに向かったコンラッド様はすぐに作って試してみるつもりのようだ。私も、大きな回路を書くための準備を始めようと思う。まずはきちんと図案を考えなければ。
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