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山編終わり
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「さて、これで大丈夫だろうか? そこら辺の植物、蔦とかで捕縛してみたけど」
「うむ、サトリも気を失っておる。急に暴れ出すこともないだろうが……ほれ!」
「ん? 天狗さん、何をしたんですか?」
「天狗の技よ。蔦を強化しておいた」
「へぇ、そんな事ができるんですね。しかし、どうしましょう、コイツ? この巨体だと村まで運べない」
サトリ。
気を失っているが、童女の姿で翔を騙そうと接近してきた姿なら運ぶのも簡単だが……
「正体、現すとデカいだもんな。身長3メートル近くないか?」
「……ならば、ここはワシが見張っておこう。翔は村人を呼んでくればよかろう」
「なるほど、たしかに! それじゃお任せします」
そう言って走り出した翔。一瞬だけ脳裏に――――
(あれ? あの天狗、どうして俺の名前を知ってるんだろ? あかりから聞いたのか)
そんな疑問を浮かべるもすぐに忘れた。
だが――――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「村が……ない? 痕跡が完璧に消えてる?」
「Zzz……Zzz……」
「それで、なんでお前は寝ているんだ、あかり!? 揺さぶっても起きない!」
Zzz…… Zzz……
Zzz…… Zzz……
「本気で起きないなぁ、どうしようか?」
「……2人でサボっているのですか、翔くん?」
「――――っ!?!? け、けあき?」
「え? どうしました? そんなに驚くとは思ってもいませんでしたが」
「お前もタイムスリップしてきたのか?」
「タイムスリップ? 何を言っているんですか、SFじゃあるまいし」
「???」
「ふぁぁ、良く寝た。あれ? どうかしました、翔先輩とけあきさん……けあきさん!? あれ、村は!」
「あかりさんまで……寝ぼけているだけでもなさそうですけど……」
「気づかないうちに現代に戻ってきた……いや、それにしても……おかしいですね」
「本当に一体、何があったのですか? 説明してくださいよ!」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「タイムスリップ? 妖怪と人間が一緒に暮らす村? 天狗に? サトリ?」
「何か心当たりはないのか?」
「ありませんよ。この山、天王家の管轄です。妖怪に関わる伝承はありません」
「それじゃ、あれは一体……」
「う~ん」とあかりは唸り声を出しながら「まぁ心当たりはありますよ」
「え? あかり?」
「私を、狐を騙せる種族は1種類だけですよ。いつだって、昔から……」
「それは、どういう意味だい?」
「狐を騙すような連中は――――あれですよ。たぬきだけですよ」
あかりが指を向けた方向。
ポンっ!
腹鼓の音が聞こえた気がした。
「うむ、サトリも気を失っておる。急に暴れ出すこともないだろうが……ほれ!」
「ん? 天狗さん、何をしたんですか?」
「天狗の技よ。蔦を強化しておいた」
「へぇ、そんな事ができるんですね。しかし、どうしましょう、コイツ? この巨体だと村まで運べない」
サトリ。
気を失っているが、童女の姿で翔を騙そうと接近してきた姿なら運ぶのも簡単だが……
「正体、現すとデカいだもんな。身長3メートル近くないか?」
「……ならば、ここはワシが見張っておこう。翔は村人を呼んでくればよかろう」
「なるほど、たしかに! それじゃお任せします」
そう言って走り出した翔。一瞬だけ脳裏に――――
(あれ? あの天狗、どうして俺の名前を知ってるんだろ? あかりから聞いたのか)
そんな疑問を浮かべるもすぐに忘れた。
だが――――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「村が……ない? 痕跡が完璧に消えてる?」
「Zzz……Zzz……」
「それで、なんでお前は寝ているんだ、あかり!? 揺さぶっても起きない!」
Zzz…… Zzz……
Zzz…… Zzz……
「本気で起きないなぁ、どうしようか?」
「……2人でサボっているのですか、翔くん?」
「――――っ!?!? け、けあき?」
「え? どうしました? そんなに驚くとは思ってもいませんでしたが」
「お前もタイムスリップしてきたのか?」
「タイムスリップ? 何を言っているんですか、SFじゃあるまいし」
「???」
「ふぁぁ、良く寝た。あれ? どうかしました、翔先輩とけあきさん……けあきさん!? あれ、村は!」
「あかりさんまで……寝ぼけているだけでもなさそうですけど……」
「気づかないうちに現代に戻ってきた……いや、それにしても……おかしいですね」
「本当に一体、何があったのですか? 説明してくださいよ!」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「タイムスリップ? 妖怪と人間が一緒に暮らす村? 天狗に? サトリ?」
「何か心当たりはないのか?」
「ありませんよ。この山、天王家の管轄です。妖怪に関わる伝承はありません」
「それじゃ、あれは一体……」
「う~ん」とあかりは唸り声を出しながら「まぁ心当たりはありますよ」
「え? あかり?」
「私を、狐を騙せる種族は1種類だけですよ。いつだって、昔から……」
「それは、どういう意味だい?」
「狐を騙すような連中は――――あれですよ。たぬきだけですよ」
あかりが指を向けた方向。
ポンっ!
腹鼓の音が聞こえた気がした。
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