上 下
29 / 35

VSサトリの妖怪

しおりを挟む
 サトリの妖怪。

 人の心を読み、恐怖した所で殺して喰らう妖怪だ。

「まぁ、なんとなくね。なんとなく君が、まるで俺の考えを読んでいるような受け答えをしていたから、そう思っただけだよ」

「……やはり、人間は厄介。心が読めても、こっちの意表をついてくる」

「それが有名な君たちの攻略法だからね」

「どこまで、計算だったの? どこまで私を倒すための計画だったの?」

「さぁてね(まぁ、完全に当てずっぽうなわけだけどね)」

「――――こ、この! だましたのね!」

「ん? あれ? 体が大きく、もしかして本性を現したら、滅茶苦茶デカくなるパターンの妖怪?」

「黙れ! お前、殺す」

 人型の巨人。 その姿は、まさに怪物。

 打撃? 腕を真っすぐに伸ばして殴りかかってくる。

(人型だからだろうか? どんなに不規則な動きでも――――やり易い)

「こ、この! この後におよんで人間如きが!」

(ん? あぁ、俺の思考を読んでいるのか? ごめんよ、格下に見てしまって) 

「なめるな!」

(蹴り……流石に速いけど、撃った後に隙が大きい。まぁ、その隙は狙わないけどね)

「むっ!」と蹴りの打ち終わりを狙われると読んでいたサトリ。 

 読みが外れて、動きが止まる。

「それじゃ行くよ」と翔は、普通に歩いて間合いを縮める。

 僅かに身を屈めると、サトリの膝に打撃――――フックを打ち込む。

 左右の二連撃。 関節部分という人体の弱点。

 シンプルな激痛がサトリを襲う。 それは立っている事すら困難だ。

「やっぱり、やり易いね。『概念』とか心を読むくらいの能力なら、シンプルな打撃戦なら――――考えるよりも早く体が動くから」

 そんなはずはない。 

 シンプルな打撃戦で攻撃が読まれる。そのアドバンテージは、どこまでも果てなく大きなもののはずだが……

(そんなのは関係ない。相手の動きに合わせて、こっちは自動的に反応して打つだけだ!)

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

 その後、僅かな時間。 サトリは敗北を認めていた。

 例え妖怪とは言え、敗北を認識して許しをこう。

「勝ったのはいいけど、どうするかな? 攫われた人間とか――――」

 だが、敗北を決してもサトリは妖怪であった。

 戦いの決着後でありながらも明確な隙を見せた翔に襲い掛かり――――

 カウンター一閃

 逆に翔の拳を叩き込まれたサトリ。 その想いは――――

(やはり……ニンゲン、……心にない…動きを行う……)  

 サトリの意識があるのは、そこまでだった。

「見事だ。まさか、人間の身で妖怪を倒すか」

「……誰?」と空を見上げる翔。 空中には天狗が舞っていた。

「新手の妖怪? まいったなぁ、俺はみんなが思っているよりも喧嘩すきじゃないんだけどなぁ」

「ほっほっほ……愉快! 山の神と言われたワシと喧嘩を所望か?」

「いや、喧嘩は好きじゃ……まぁいいけど」

「残念、残念。そちらの同行者と約束しておってな。見つけたら連れて帰ると」

「同行者? あかりの事か」

「ほう、人妖の神が名を呼ぶことを許すほど近しい人間か、これは珍しい」

「いや……あかりは彼女なんで」

 翔の言葉に天狗は大きな目玉を、さらに大きくして驚いてみせた。

「まさか、寵愛を受ける人間がおるとは……」
    
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

帰らなければ良かった

jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。 傷付いたシシリーと傷付けたブライアン… 何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。 *性被害、レイプなどの言葉が出てきます。 気になる方はお避け下さい。 ・8/1 長編に変更しました。 ・8/16 本編完結しました。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

官能令嬢小説 大公妃は初夜で初恋夫と護衛騎士に乱される

絵夢子
恋愛
憧れの大公と大聖堂で挙式し大公妃となったローズ。大公は護衛騎士を初夜の寝室に招き入れる。 大公のためだけに守ってきたローズの柔肌は、護衛騎士の前で暴かれ、 大公は護衛騎士に自身の新妻への奉仕を命じる。 護衛騎士の目前で処女を奪われながらも、大公の言葉や行為に自分への情を感じ取るローズ。 大公カーライルの妻ローズへの思いとは。 恥辱の初夜から始まった夫婦の行先は? ~連載始めました~ 【R-18】藤堂課長は逃げる地味女子を溺愛したい。~地味女子は推しを拒みたい。 ~連載中~ 【R-18有】皇太子の執着と義兄の献身

処理中です...