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あかり対天狗
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「天狗!? 実在していたのか! ――――っ、まずいなぁ」
(妖怪で言ったら超がつくほどの有名。たぶん、あかりの正体である妖狐以上の知名度……この戦いが『概念』と『概念』のぶつかり合いなら……)
そんな翔の考えとは無関係にあかりと天狗の戦いは続いて行く。
「速い……この速度は、私――――いや、わっちよりも上か」
「――――」
「ふん! 誇りもせぬか。可愛げのない奴め! 燃えろ狐火」
「――――天狗火」
「むっ!? わっちの火にぶつけて相殺した。いや、自分のスピードを生かすために灯りを狙ったのじゃな!」
無音。 そして、視界は殺された。
しかし、それは互いに同じ条件。
(……天狗は夜に活動するなんて話も聞くが、この闇を利用する戦術、戦法なんぞ聞いた事もない……はずじゃが、さて)
――――その直後だ。
「むっ? 地震? ――――いや、『天狗の揺さぶり』ってやつか!」
『天狗の揺さぶり』
人を驚かせるために、深夜に建物を揺さぶるという天狗の話だが、今宵揺さぶられたのは自然の大地。
その自然をも操る天狗の力に人妖の神と言われたあかりですら、明確な隙を作らされた。
「狐の妖怪。その命、いただく」
「速い! いや、速すぎる!?」
「かまいたち」
「くっ!? 回避が間に合わな――――」
その斬撃。
風から生み出された剣撃は吸い込まれていくようにあかりへ、何度も撃ちこまれていく。
「まぁ、回避が間に合わなければ、防御を固めれば良いだけの話じゃがな」
「おぉ、怪物か? 我が斬撃を受けて平然と歩いている」
「ふん、見た目ほど平然としているつもりはないのじゃがな」
「なぜ……」
「ん? なんじゃ? 言いたい事があればハッキリと言わばよかろう?」
「なぜ、それほどの力を有しながら、村人を攫う?」
「――――ん? それは、お主ではないのか?」
「……我は守護者。山の神を信仰する者は、妖怪も人も守護する者」
「はん、何を偉そうに言う。わっち等を人さらいと勘違いしたのであろう?」
「まだ、貴様らが無罪だとは思っておらんが――――どうやら、新しい事件が発生したようだな」
「? 何を言っておる?」
「やれやれ、呑気だ。 貴様も同行者が神隠しに会った事に気づきもせぬか?」
「……翔先輩?」
あかりは、自身の恋人がいるはずの方角を凝視する。だが――――
「い、いません? 先輩、隠れてないで出てきてください……先輩? 先輩!?」
「その動揺。ただの同行者ではなかったのか?」
「うるせぇ! 天狗野郎がっ!」
「なっ――――」
「あの人は、私の婚約者なんだよ! お前と、お前なんとか遊んでいる隙に、連れて……連れて……連れて……許さない。先輩を連れ去った存在……例え神仏の存在だとしても、ぶっ殺すと意識した」
「それほどの相手か。 よかろう、こちらも落ち度があった。手伝ってやろう」
「あん? 手伝ってじゃねぇんだよ!? てめぇ! こき使ってやるわ!」
「……」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「っ――――ここは? 痛っ! たしか、あかりが戦っている間、誰かに後ろから殴られたんだ」
「気がついた? お兄さん?」
「君は、けあきちゃん? どうしてこんな事を?」
「うん、けあき」
「ん?」
「貴方が、最初に私を見てけあきって人に似ていると思った。だから、私はけあきになった」
「何を言ってるんだ? 意味がわからないよ」
「貴方が似てると思った。だから――――私の『概念』は強化された。そういう能力」
「君は――――けあきじゃないのか?」
「うん、お兄さん。私がなんだかわかる?」
「そうだな。もう少しヒントをくれないかな?」
「だめ、それは時間稼ぎだから」
「簡単にバレたか。そう、あかりが助けに来るまでの時間稼ぎだよ」
「……? お兄さん、変に正直なのね」
「――――」
「あぁ、なるほど。いろいろ考えているのね。例えば――――」
「君が俺の心を読めるか? なんてね」
「お兄さん? 貴方は何者なの?」
「俺? 俺は人間だよ。ただ恋人が人妖の神なんて言われていてね。一緒にいようとするだけでも大変なんだよ」
「それは、普通であると言う事、日常ってのを捨てないとダメなくらい大変なの?」
「そりゃ、そのくらい当たり前だよ。恋愛なんだから」
「驚いたわ。人間と妖怪がつがいになる。そんな事を夢見る人間がいるなんて……」
「夢を見てるんじゃないよ。夢を叶えようとしてるんだよ」
「私は驚いてばかりね。貴方の思考――――人間を学ぶためのはずが、私の心を蝕む毒になっていく」
「そうかい……大変だね。 サトリの妖怪ってのは」
「どうして、それを?」とけあき――――否。 けあきのフリをしていた妖怪は驚きを露わにした。
(妖怪で言ったら超がつくほどの有名。たぶん、あかりの正体である妖狐以上の知名度……この戦いが『概念』と『概念』のぶつかり合いなら……)
そんな翔の考えとは無関係にあかりと天狗の戦いは続いて行く。
「速い……この速度は、私――――いや、わっちよりも上か」
「――――」
「ふん! 誇りもせぬか。可愛げのない奴め! 燃えろ狐火」
「――――天狗火」
「むっ!? わっちの火にぶつけて相殺した。いや、自分のスピードを生かすために灯りを狙ったのじゃな!」
無音。 そして、視界は殺された。
しかし、それは互いに同じ条件。
(……天狗は夜に活動するなんて話も聞くが、この闇を利用する戦術、戦法なんぞ聞いた事もない……はずじゃが、さて)
――――その直後だ。
「むっ? 地震? ――――いや、『天狗の揺さぶり』ってやつか!」
『天狗の揺さぶり』
人を驚かせるために、深夜に建物を揺さぶるという天狗の話だが、今宵揺さぶられたのは自然の大地。
その自然をも操る天狗の力に人妖の神と言われたあかりですら、明確な隙を作らされた。
「狐の妖怪。その命、いただく」
「速い! いや、速すぎる!?」
「かまいたち」
「くっ!? 回避が間に合わな――――」
その斬撃。
風から生み出された剣撃は吸い込まれていくようにあかりへ、何度も撃ちこまれていく。
「まぁ、回避が間に合わなければ、防御を固めれば良いだけの話じゃがな」
「おぉ、怪物か? 我が斬撃を受けて平然と歩いている」
「ふん、見た目ほど平然としているつもりはないのじゃがな」
「なぜ……」
「ん? なんじゃ? 言いたい事があればハッキリと言わばよかろう?」
「なぜ、それほどの力を有しながら、村人を攫う?」
「――――ん? それは、お主ではないのか?」
「……我は守護者。山の神を信仰する者は、妖怪も人も守護する者」
「はん、何を偉そうに言う。わっち等を人さらいと勘違いしたのであろう?」
「まだ、貴様らが無罪だとは思っておらんが――――どうやら、新しい事件が発生したようだな」
「? 何を言っておる?」
「やれやれ、呑気だ。 貴様も同行者が神隠しに会った事に気づきもせぬか?」
「……翔先輩?」
あかりは、自身の恋人がいるはずの方角を凝視する。だが――――
「い、いません? 先輩、隠れてないで出てきてください……先輩? 先輩!?」
「その動揺。ただの同行者ではなかったのか?」
「うるせぇ! 天狗野郎がっ!」
「なっ――――」
「あの人は、私の婚約者なんだよ! お前と、お前なんとか遊んでいる隙に、連れて……連れて……連れて……許さない。先輩を連れ去った存在……例え神仏の存在だとしても、ぶっ殺すと意識した」
「それほどの相手か。 よかろう、こちらも落ち度があった。手伝ってやろう」
「あん? 手伝ってじゃねぇんだよ!? てめぇ! こき使ってやるわ!」
「……」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「っ――――ここは? 痛っ! たしか、あかりが戦っている間、誰かに後ろから殴られたんだ」
「気がついた? お兄さん?」
「君は、けあきちゃん? どうしてこんな事を?」
「うん、けあき」
「ん?」
「貴方が、最初に私を見てけあきって人に似ていると思った。だから、私はけあきになった」
「何を言ってるんだ? 意味がわからないよ」
「貴方が似てると思った。だから――――私の『概念』は強化された。そういう能力」
「君は――――けあきじゃないのか?」
「うん、お兄さん。私がなんだかわかる?」
「そうだな。もう少しヒントをくれないかな?」
「だめ、それは時間稼ぎだから」
「簡単にバレたか。そう、あかりが助けに来るまでの時間稼ぎだよ」
「……? お兄さん、変に正直なのね」
「――――」
「あぁ、なるほど。いろいろ考えているのね。例えば――――」
「君が俺の心を読めるか? なんてね」
「お兄さん? 貴方は何者なの?」
「俺? 俺は人間だよ。ただ恋人が人妖の神なんて言われていてね。一緒にいようとするだけでも大変なんだよ」
「それは、普通であると言う事、日常ってのを捨てないとダメなくらい大変なの?」
「そりゃ、そのくらい当たり前だよ。恋愛なんだから」
「驚いたわ。人間と妖怪がつがいになる。そんな事を夢見る人間がいるなんて……」
「夢を見てるんじゃないよ。夢を叶えようとしてるんだよ」
「私は驚いてばかりね。貴方の思考――――人間を学ぶためのはずが、私の心を蝕む毒になっていく」
「そうかい……大変だね。 サトリの妖怪ってのは」
「どうして、それを?」とけあき――――否。 けあきのフリをしていた妖怪は驚きを露わにした。
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