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リリィ退場?

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 (――――撃たれたのか? 俺は……この日本で!?)

 運転席を銃で撃たれたはずの幽霊トラック。 しかし――――

「しかし、しかし生きている! 俺は生きてるぞ! もはや、俺を殺せる存在はいない!」

「いや、言い難いけど、貴方はもう死んでいるので」

「はぁ!?」と運転手が驚くのも無理はない。

 高校生がトラックのドアを開いて乗り込んできたのだ。

 そして、その高校生は正道 翔だった。

「お前、何者だ!」

「うわぁ! 喋った! なんて言うか……幽霊をコミュニケーションを取るの気持ち悪い」

「ふざけるな! 運転席は俺の聖域だ! すぐさま出ていけ!」

「いやいや悪霊が聖域って……」

「こ、このやろう! ――――っ! な、何を!?」

「ん~ なんて言うか……カージツって知っている?」

『カージツ』

 ロシア発祥とされる新しいジャンルの格闘技である。

 その特徴は――――

 一言で終わらせてしまえば、柔術の試合を車の中で行う競技だ。

 通常の柔術ルールとは違い、狭く限られた空間。 シートベルトやミラー、あるいはハンドルを利用とした攻撃は有効とされる。

 そのため、高い戦略が必要とされ、一部では熱狂的ファンが生まれ人気競技となって――――

「ぐっ! コイツ、シートベルトで俺を、幽霊である俺の首を絞めて――――正気か?」

「あはははは……正気で、こんな事をするって思ってるの?」

「く、狂ってやがる! この異常者め!」

「うるせぇ! 誰が原因でこんな事になっていると思ってる。さっさと成仏しろ!」

「……くっ! 全ての物理攻撃が無効化されるはずの俺の首に!」

「だろうな。トラック内部を利用した攻撃なら有効だろうと思った通りだ」

「思うのか! 幽霊トラックの一部なら幽霊に有効だって思うのか!」

「でも、実際に効果はバツグンってやつだったろ? さぁ幽霊って絞め技で失神させられたらどうなるのかな? やっぱり、そのまま成仏するの?」

「――――っ! き、消えろ、トラック!」

「え? うわぁ、急に床が、トラックそのものが消えて――――痛っ!」

「こ、このクソ餓鬼が、トラックで轢き殺して――――」

「それはノータイムね」

「え?」

「トラックという武器を消してくれた助かったわ。これで私のガンもハートを撃ち抜けるってものよ」

「――――っ! そ、そんな銃で、幽霊である俺を殺せると思うか!」

「あら……殺せるわよ。西洋の悪霊退治はフィジカルが重視されるようなモンスターだから、私を銃を使うのだけれども、もちろん天王家の分家筋だから日本の悪霊祓いも――――イージゲームよ?」

「――――」

「――――」

 2人は無言で睨み合い。 どちらが先に動くか――――

「来い! トラック! アイツの引き金よりも速く――――」

「ダメよ。既に遅いわ」

 鳴り響いたのは銃声。 それから遅れてトラックのブレーキ音らしきものが夜の街に鳴り響いた。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

「HELLO! けあきちゃん!」

「あら、おはようございます櫛橋さん」

「おっと失礼。学校では令嬢のように振る舞っていましたね」

「振る舞っているのではなく、実際に令嬢なのですが……私」

「ソーリー、そうでしたね」

「……貴方は、どうしたのですか?」

「?」

「学校では、純粋な日本人として――――いえ、そもそも日本語に変な英語を混ぜていても、別に貴方はアメリカ人じゃないわよね」

「おっと、それ以上は戦争デース。まぁ、私も様子見のため、勢いで転校してきたわけだけど……もう、見たいものは見たので、京に帰ります」

「えっ? 貴方、来たばかり……1日で?」

「YES! アイ・ビー・バック!」

「貴方、それを言いたかっただけでしょ!」

「正道 翔」

「――――っ! 昨日、貴方と連絡が取れなくなった時点で、様々な出来事を想定して警戒を怠っていませんでしたが、いきなり翔くんに接触していたのは想定外でしたね。彼に何をしました?」

「いえ、別に夜のデートを楽しんだけよ」

「……やめてください。狐に妙な刺激を与えるような真似は慎んでください」

「狐? 彼の事が気になっているのは貴方でしょ?」

「止めた方がいいです。他でもなく、貴方のために――――」

「怖い顔。 本当に大切な人なのね」

「――――っ! いない!」

「それじゃ、さようなら」と串橋さゆり、リリィは姿を消した。

 行き場のない感情を持て余した天王けあきは、それを正道翔へ――――いや、鳥羽あかりにぶつける事に決めたのだった。
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