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暴走幽霊トラック
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「私は、こう考える時があります、正道 翔くん」
「はい?」
櫛橋さゆりことリリィの言葉に翔は首を傾げる。その様子にリリィは満足げに――――
「県庁所在地の駅、通勤時の満員列車を見ながら、この中で何人が人を殺した経験があるのでしょうか……なんてね?」
「それは悪趣味と言うか悪癖だよ」
「ふっ……そうですね。でもまぁ、現役の殺人鬼は1人2人は当たり前に乗ってるでしょうね」
「……(なんて言うか、危うい感じがする、この子)」
「今回の事件は、そういう事です。日常に紛れて、大量に存在している物。そこに人は気づかない怪物が潜んでいるという事です」
「いや、良い感じに話をまとめようとするな。問題解決は、これからだろ。……それにしても」
「おやおや、翔くんもコイツがお好きですか?」
「まぁ、平凡な高校生程度には好きだよ。でもまぁ……」
(これをバイクと呼んで良いのだろうか?)
リリィが用意したのはバイクだった。 しかし、そのバイクを一言で表現するなら『異形』
「タイヤ、ぶっ太い! バットマンのバイクみたいだ」
「ふふ~ん! 当然パンクしない仕様のタイヤですよ」
「ところで……これ、エンジンは400じゃないよね? 1000とか大型バイクって免許取れたけ?」
「……」
「お前、まさか……無免許なんじゃ……」
「翔くん? 私たちは、これから現代の怪物退治に出かけるのですよ? 法律? なにそれ? 美味しいですか?」
「いや、それは流石に――――」
「いいから、後ろに乗れ。これはお願いじゃなくて命令だぞ?」
「――――っ! わかった。わかったから、その銃を俺に額に突き付けないでくれ」
「まぁ、心配しなくても、霊的な特別カスタマイズしているだけでエンジン自体は怪物仕様ではなく、普通の400ccなんですけどね」
「う~ん(この見た目、エンジンとか免許の問題じゃなくても交通法に触れそうな気がするんだけど……)」
「そんな事よりも早く後ろに乗ってください! ハリーアップ! トゥナイトはベリーショートね! モンスターハントもタイムをオーバーするね!」
「急にキャラ設定を思い出したかのように英語を混ぜるなよ」
「ノンノンノン、これは私のメンタルを強化するためのルーチンね。モンスター退治はメンタルにライト&レフトされるのデース」
「左右されるって英語でライフ&レフトって言う? 本当に言う?」
「OK、乗りましたね。それじゃレッツゴー! スロットを回し、クラッチを繋げ、ローからセカンド……」
「うおぉ、爆音が! 本当に動き出した」
「しっかり、バックからホールドミーね! 振り落とされても――――」
「おい、リリィ?」
「いたわ。どうやら、バカでかい排気量に釣られるって予想は正解だったみたいね。バッドボーイズの運転に巻き込まれて死亡した運転手の亡霊かもしれないわね」
「おい、後ろを走ってるトラック。あれはそうだって言うのか? 少し前から普通に走っていたぞ」
「イグザクトリ! だから言ったでしょ? 日常に溶け込んでるタイプの悪霊は、感知すること自体が困難だって」
「――――いや、言ってない。一瞬、考えたけど、似たような事を言ってただけだ」
「あら、そうですか? ソーリーね。 でも、ノープログラム! 私のカンは、よく当たる!」
「一体、どこから銃を? 本当に、どこに隠してるの? それ?」
「急加速した距離を稼ぎ、ターンした瞬間――――コイツでショット&ファイアを狙う!」
「ちょ! 痛っ――――舌を噛んだ」
「翔くん、注意してくださいね。舌を噛みます」
「……(どうして、もう少し早く言ってくれないかな?)」
「こう距離を取って――――レッツダンス」
「くっ――――(こ、高速走行で蛇行を始めて、安定しない状態で銃を――――)」
「行きますよ。すれ違う瞬間に――――ショット&ファイア!」
「やったか!」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「ふざけるな! ふざけるな! ふざけるな! 」
(何度、怨みを声を出しか? もうわからない)
「ふざけるな! ブチ殺してやる!」
(何度、事故を誘発させたかわからない。 いつ、自分が生まれたのか? 自分が何者だったのか――――いや、違う)
「俺は生まれた時には悪霊だった。 しかし、その前は確かに人間だった。 だから――――」
(憎い! 憎い! 憎い! 死ね、人間ども! 全ての人よ!)
「そうか……俺には家族が……愛する者がいたんだな。 だから――――」
「(全ての人間を轢き殺さないと!)」
幽霊トラック。 その運転手は怨嗟の言葉を吐く。
自身の存在を知覚してから、無限の如く繰り返してきた自己確認。
それが今宵――――
銃声にかき消された。
「ヒット! 運転席を吹っ飛ばしてやりました!」
「お前、それ……ゴム弾じゃなくて実弾?」
「YES ゴム弾ではモンスター退治はできないね」
「じゅ、銃刀法違反」
「まぁ心配しなくても、ここだけの話ですが、悪霊を祓うなら特別な許可をいろいろ貰っているので大丈夫、大丈夫」
「本当かよ……それに、あんまり効果はないみたいだぞ」
「え? リアリィ!? 実弾をぶち込んでもまだ動くの! 合衆国《スティツ》のモンスターなら一発でフィニッシュなのに!」
「……おい。もしあれなら……」
「?」
「俺が倒してしまっても構わないか?」
「はい?」
櫛橋さゆりことリリィの言葉に翔は首を傾げる。その様子にリリィは満足げに――――
「県庁所在地の駅、通勤時の満員列車を見ながら、この中で何人が人を殺した経験があるのでしょうか……なんてね?」
「それは悪趣味と言うか悪癖だよ」
「ふっ……そうですね。でもまぁ、現役の殺人鬼は1人2人は当たり前に乗ってるでしょうね」
「……(なんて言うか、危うい感じがする、この子)」
「今回の事件は、そういう事です。日常に紛れて、大量に存在している物。そこに人は気づかない怪物が潜んでいるという事です」
「いや、良い感じに話をまとめようとするな。問題解決は、これからだろ。……それにしても」
「おやおや、翔くんもコイツがお好きですか?」
「まぁ、平凡な高校生程度には好きだよ。でもまぁ……」
(これをバイクと呼んで良いのだろうか?)
リリィが用意したのはバイクだった。 しかし、そのバイクを一言で表現するなら『異形』
「タイヤ、ぶっ太い! バットマンのバイクみたいだ」
「ふふ~ん! 当然パンクしない仕様のタイヤですよ」
「ところで……これ、エンジンは400じゃないよね? 1000とか大型バイクって免許取れたけ?」
「……」
「お前、まさか……無免許なんじゃ……」
「翔くん? 私たちは、これから現代の怪物退治に出かけるのですよ? 法律? なにそれ? 美味しいですか?」
「いや、それは流石に――――」
「いいから、後ろに乗れ。これはお願いじゃなくて命令だぞ?」
「――――っ! わかった。わかったから、その銃を俺に額に突き付けないでくれ」
「まぁ、心配しなくても、霊的な特別カスタマイズしているだけでエンジン自体は怪物仕様ではなく、普通の400ccなんですけどね」
「う~ん(この見た目、エンジンとか免許の問題じゃなくても交通法に触れそうな気がするんだけど……)」
「そんな事よりも早く後ろに乗ってください! ハリーアップ! トゥナイトはベリーショートね! モンスターハントもタイムをオーバーするね!」
「急にキャラ設定を思い出したかのように英語を混ぜるなよ」
「ノンノンノン、これは私のメンタルを強化するためのルーチンね。モンスター退治はメンタルにライト&レフトされるのデース」
「左右されるって英語でライフ&レフトって言う? 本当に言う?」
「OK、乗りましたね。それじゃレッツゴー! スロットを回し、クラッチを繋げ、ローからセカンド……」
「うおぉ、爆音が! 本当に動き出した」
「しっかり、バックからホールドミーね! 振り落とされても――――」
「おい、リリィ?」
「いたわ。どうやら、バカでかい排気量に釣られるって予想は正解だったみたいね。バッドボーイズの運転に巻き込まれて死亡した運転手の亡霊かもしれないわね」
「おい、後ろを走ってるトラック。あれはそうだって言うのか? 少し前から普通に走っていたぞ」
「イグザクトリ! だから言ったでしょ? 日常に溶け込んでるタイプの悪霊は、感知すること自体が困難だって」
「――――いや、言ってない。一瞬、考えたけど、似たような事を言ってただけだ」
「あら、そうですか? ソーリーね。 でも、ノープログラム! 私のカンは、よく当たる!」
「一体、どこから銃を? 本当に、どこに隠してるの? それ?」
「急加速した距離を稼ぎ、ターンした瞬間――――コイツでショット&ファイアを狙う!」
「ちょ! 痛っ――――舌を噛んだ」
「翔くん、注意してくださいね。舌を噛みます」
「……(どうして、もう少し早く言ってくれないかな?)」
「こう距離を取って――――レッツダンス」
「くっ――――(こ、高速走行で蛇行を始めて、安定しない状態で銃を――――)」
「行きますよ。すれ違う瞬間に――――ショット&ファイア!」
「やったか!」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「ふざけるな! ふざけるな! ふざけるな! 」
(何度、怨みを声を出しか? もうわからない)
「ふざけるな! ブチ殺してやる!」
(何度、事故を誘発させたかわからない。 いつ、自分が生まれたのか? 自分が何者だったのか――――いや、違う)
「俺は生まれた時には悪霊だった。 しかし、その前は確かに人間だった。 だから――――」
(憎い! 憎い! 憎い! 死ね、人間ども! 全ての人よ!)
「そうか……俺には家族が……愛する者がいたんだな。 だから――――」
「(全ての人間を轢き殺さないと!)」
幽霊トラック。 その運転手は怨嗟の言葉を吐く。
自身の存在を知覚してから、無限の如く繰り返してきた自己確認。
それが今宵――――
銃声にかき消された。
「ヒット! 運転席を吹っ飛ばしてやりました!」
「お前、それ……ゴム弾じゃなくて実弾?」
「YES ゴム弾ではモンスター退治はできないね」
「じゅ、銃刀法違反」
「まぁ心配しなくても、ここだけの話ですが、悪霊を祓うなら特別な許可をいろいろ貰っているので大丈夫、大丈夫」
「本当かよ……それに、あんまり効果はないみたいだぞ」
「え? リアリィ!? 実弾をぶち込んでもまだ動くの! 合衆国《スティツ》のモンスターなら一発でフィニッシュなのに!」
「……おい。もしあれなら……」
「?」
「俺が倒してしまっても構わないか?」
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