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せーのー 海だぁ!
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サンサンと音を上げ、照りつけるは黄色い太陽。
青い空と海の間に漂うは、さざ波の音。 雲の白さに対抗するかのように浜の砂は、どこまでも白く。
この世の楽園。ならば、訪れた人々は、必ずこの言葉を口にするのだ。
「――――海だ!」
「いや、待て。おかしいだろ!」
「え? なんです? 急に怒鳴って、何に対しての怒りなんですか、翔先輩?」
「俺がおかしいのか? 学校を破壊した翌日に海水浴を楽しもうとする、お前がおかしいのだと俺は思う」
「何言ってるんですか? 海ですよ! 可愛い可愛い彼女との水着デートを喜ばない男がいるというのか? ――――馬鹿なっ!」
「真顔で、自分を可愛いって言うな」
「まぁまぁ、壊れてしまった物は仕方ないじゃないですか。たしか、ガス爆発の扱いになったんですよね?」
「うん、深夜の学校でガス爆発って不自然だと思うが、一夜で学校を吹っ飛ばす現実的な事故は他にないのだろう」
「だからって緊急休校になった日に、一緒に海水浴に来ている翔先輩もいろいろ問題ありそうですね」
「いやいや、俺は天王けあきや賀茂先生に今後の話として、説明を受けるために来たのだが……どうして、海で遊んでいるんだろ?」
「もちろん、それには理由があります。大切な理由が」
『凛』
「天王けあき……そう言いながら、お前も水着か?」
「あら、こういう時は、女性の水着を誉めるべきだと思うのだけど?」
「……似合っているよ」
「ありがとう。おかげで、隣の狐が嫉妬で怒り狂っているのが見えて溜飲が下がる重いね」
「わ、私には言ってくれないんですか! 可愛いって、可愛いって! せっかく新調した水着なのに! 何より先輩に見せるために買ってんですよ!」
「いや、ごめんって……その……似合ってる」
「はい! なんですか? もう少し大きな声で! ボリューム上げてもらっても良いですかね!」
「似合ってる! 似合ってて可愛いよ! もう、彼氏として大好きとしか言えない」
「あら^^ やれば、できるじゃないですか、翔先輩。先輩も、こうやってよく見ると――――」
「よく見るとなんだ? 水着、似合ってるだろ?」
「えぇ、水着は似合っていると思いますよ。でも以上に、意外と良い体してるなぁ……と」
「なにそれ? 肉食系女子セクハラかよ!」
「いえいえ、マジですよ。極端に脂肪が少なくて、鍛えてなくても良い体に見えるタイプとかいますけど……そうじゃなくて、ちゃんと鍛えられてるって分かるタイプといいますか……じゅるり」
「じゅるりってヨダレを!」
「腹筋の左右、腹斜筋って言うんですか? エッジが効いたカット。それでいて全体的にはバルクアップも……」
「よくわからないが、専門的な用語使ってない? お前、なんなの? ……ってけあき?」
「私としては、下半身の方が……いえ違います。下ネタにしないでくださいね、狐さん。 見栄えを気にして上半身を集中して鍛えた結果、鶏みたいな細い脚になりがちな人は多いでしょうが……え? なんです? そうですね、私の好みはマッチョ系男子ですが……全体的シルエットで考えた時、やはり下半身の太さが正義だと……なんですか? 狐さん、手を差し出してきて……罠ですか?」
「天王けあき……恐ろしい子。でも、好みのタイプを聞くと嫌いになれないわ」
「狐……私も貴方の事を誤解していた所があるかもしれませんね。その握手、お受けしましょう」
「……(こいつら、ガッツリ握手してるけど…… 昨日、殺し合っていたよな?)」
「さて、翔くんと狐。 ここは、天王家のプライベートビーチ。今後の事、内緒話するのに適した場所です」
「あっ、流石に遊びに来たわけじゃないのか」
「当り前ですよ、しかしながら……」
「ながら?」
「せっかく、来たのだから大切な話は夜からにして、日中は遊びましょう。さぁ、きつね! あそこまで競争です! 後で、ビーチバレーなども興じましょう!」
「おい! ……って行ってしましまった。昨日の敵は、今日の友なんて言うけど、仲良くなりすぎじゃ……あれ?」
「どうかしましたか、翔くん?」
「先輩、早く早く! 遊びましょうよ」
「……あぁ、すぐ行くよ!」
そう言って翔は走り出した。
湧き出した疑問……そもそも、今は何月だったのか?
本当に今は『夏』 だったのか?
そう言った疑問が湧き上がった瞬間、記憶が塗りつぶされて消滅した事に正道 翔は気づく事すらできなかった。
青い空と海の間に漂うは、さざ波の音。 雲の白さに対抗するかのように浜の砂は、どこまでも白く。
この世の楽園。ならば、訪れた人々は、必ずこの言葉を口にするのだ。
「――――海だ!」
「いや、待て。おかしいだろ!」
「え? なんです? 急に怒鳴って、何に対しての怒りなんですか、翔先輩?」
「俺がおかしいのか? 学校を破壊した翌日に海水浴を楽しもうとする、お前がおかしいのだと俺は思う」
「何言ってるんですか? 海ですよ! 可愛い可愛い彼女との水着デートを喜ばない男がいるというのか? ――――馬鹿なっ!」
「真顔で、自分を可愛いって言うな」
「まぁまぁ、壊れてしまった物は仕方ないじゃないですか。たしか、ガス爆発の扱いになったんですよね?」
「うん、深夜の学校でガス爆発って不自然だと思うが、一夜で学校を吹っ飛ばす現実的な事故は他にないのだろう」
「だからって緊急休校になった日に、一緒に海水浴に来ている翔先輩もいろいろ問題ありそうですね」
「いやいや、俺は天王けあきや賀茂先生に今後の話として、説明を受けるために来たのだが……どうして、海で遊んでいるんだろ?」
「もちろん、それには理由があります。大切な理由が」
『凛』
「天王けあき……そう言いながら、お前も水着か?」
「あら、こういう時は、女性の水着を誉めるべきだと思うのだけど?」
「……似合っているよ」
「ありがとう。おかげで、隣の狐が嫉妬で怒り狂っているのが見えて溜飲が下がる重いね」
「わ、私には言ってくれないんですか! 可愛いって、可愛いって! せっかく新調した水着なのに! 何より先輩に見せるために買ってんですよ!」
「いや、ごめんって……その……似合ってる」
「はい! なんですか? もう少し大きな声で! ボリューム上げてもらっても良いですかね!」
「似合ってる! 似合ってて可愛いよ! もう、彼氏として大好きとしか言えない」
「あら^^ やれば、できるじゃないですか、翔先輩。先輩も、こうやってよく見ると――――」
「よく見るとなんだ? 水着、似合ってるだろ?」
「えぇ、水着は似合っていると思いますよ。でも以上に、意外と良い体してるなぁ……と」
「なにそれ? 肉食系女子セクハラかよ!」
「いえいえ、マジですよ。極端に脂肪が少なくて、鍛えてなくても良い体に見えるタイプとかいますけど……そうじゃなくて、ちゃんと鍛えられてるって分かるタイプといいますか……じゅるり」
「じゅるりってヨダレを!」
「腹筋の左右、腹斜筋って言うんですか? エッジが効いたカット。それでいて全体的にはバルクアップも……」
「よくわからないが、専門的な用語使ってない? お前、なんなの? ……ってけあき?」
「私としては、下半身の方が……いえ違います。下ネタにしないでくださいね、狐さん。 見栄えを気にして上半身を集中して鍛えた結果、鶏みたいな細い脚になりがちな人は多いでしょうが……え? なんです? そうですね、私の好みはマッチョ系男子ですが……全体的シルエットで考えた時、やはり下半身の太さが正義だと……なんですか? 狐さん、手を差し出してきて……罠ですか?」
「天王けあき……恐ろしい子。でも、好みのタイプを聞くと嫌いになれないわ」
「狐……私も貴方の事を誤解していた所があるかもしれませんね。その握手、お受けしましょう」
「……(こいつら、ガッツリ握手してるけど…… 昨日、殺し合っていたよな?)」
「さて、翔くんと狐。 ここは、天王家のプライベートビーチ。今後の事、内緒話するのに適した場所です」
「あっ、流石に遊びに来たわけじゃないのか」
「当り前ですよ、しかしながら……」
「ながら?」
「せっかく、来たのだから大切な話は夜からにして、日中は遊びましょう。さぁ、きつね! あそこまで競争です! 後で、ビーチバレーなども興じましょう!」
「おい! ……って行ってしましまった。昨日の敵は、今日の友なんて言うけど、仲良くなりすぎじゃ……あれ?」
「どうかしましたか、翔くん?」
「先輩、早く早く! 遊びましょうよ」
「……あぁ、すぐ行くよ!」
そう言って翔は走り出した。
湧き出した疑問……そもそも、今は何月だったのか?
本当に今は『夏』 だったのか?
そう言った疑問が湧き上がった瞬間、記憶が塗りつぶされて消滅した事に正道 翔は気づく事すらできなかった。
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