8 / 35
『フクロウカフェ』
しおりを挟む
「こ、ここは『フクロウカフェ』ですか!?」
「あぁ、珍しいだろ? 猫カフェって選択肢も考えたんだが……おい、大丈夫か?」
「な、何がですか? わ、わっちが猛禽類ごときで怯むと思ってか?」
「いや、声が震えてる……って、『わっち』? 一人称も言葉使いも無茶苦茶になっているぞ!」
「おっと、平常心です! まだ私がラスボスと明かすのはネタバレが過ぎるので」
「すでに、手遅れだと思うのだが……」
「え?(それって、どういう意味でしょうか?)」
「ん?(俺があすかさんから話を聞いているのは秘密だったな)」
「……」
「……」
と暫く無言で見つめ合う2人だった。
「さて、先輩…… 気を取り直して、中に入りましょう……」
「いや、フクロウが苦手だったら無理する事はない。別の場所に行こう」
「いえ! 絶対に大丈夫です。この鳥羽 あかり! 恐怖を克服できる黄金の精神を持っていますとも!」
「本当にいいんだな? 無理だけはするなよ?」
「の、望む所です。さぁ、早く……その扉を開いてください!」
「それじゃ……」
「いらっしゃいませ、御二人様でしょうか?」
「はい、あの初めてなのですが……」
「わかりました」と女性店員が説明を始めた。
(意外と高くない値段だな。しかし、あかりの奴、背後で隠れるように震えて本当の本当に大丈夫なの……あれ?)
「どうした、あかり? そんなに一か所を見つめて?」
「か……」
「か?」
「可愛い!! 見てください翔先輩! 白いフクロウですよ……ヘドウィグじゃないですか!」
「おぉ、さっきまで震えていたのに、目が輝いてる! ヘドウィグって言うと確かハリーポッターの白いフクロウの名前だったな。 好きなのか?」
「もちろんです。ハリーポッターが嫌いな文学少女なんで存在しません!」
「文学少女のつもりだったのか?」
「あれ? どこか間違っていましたか?」
「い、いや、間違ってはない(普段、図書室で漫画しか読んでない気もするが……)」
「私、あの子! あの子と遊びたい! いくら? いくらで購入できますか?」
「フクロウカフェのフクロウは売り物じゃないぞ。見ろ、店員さんも苦笑してる」
「おぉ! 先輩、先輩! 見てください。 この子、私の肩に乗ってくれました! 写真を! 写真を早く取ってください!」
「待て、待て! 写真は別料金だから店員さんに、今払うからな。すいません、お騒がせしまして」
「いえいえ」と店員は微笑んだ。
「彼女さんも楽しんでくれて、うちの子たちも喜んでくれてますよ。それでは写真ですね。彼氏さんも一緒に入りますか」
「そうだなぁ。あかりはどうしたらいいと思う?」
「そんなの決まっているじゃありませんか。ほら、一緒に!」
「うわぁ! 急に強く手を引っ張るなよ、ば、バランスが!」
「あっ! せ、先輩! 私の胸に顔を押し付けてくるなんて、すっごくエッチですね!」
「わ、わざとじゃないからな! こんな場所で人聞きの悪い!」
「おや? こんな場所じゃなければエッチな事を望まれますか?」
「なんで、若干嬉しそうなんだよ!」
「え? わかりません? 年上の彼氏が、まだ幼さが残る私の事を女性として見てくれているか……彼女の不安がわかりませんか?」
「真顔で言うな! 冗談って分かり難い……いや、冗談ですよね? あかりさん?」
「まぁ、冗談ですが……おぉ! こちら、フクロウに水を飲ませて上げるサービスがあるのですね! 私、ヘドウィグさんに水をあげたいです!」
「わかった、わかったから、少しは落ち着けって」
「は~い! そう言えば、フクロウって何を食べるんですかね? やっぱり虫とかですか? そう言えば、私の視線を掻い潜っている虫がいるみたいですが……」
「――――っ!(あかりがドアの外を睨みつけている! もしかして、賀茂先生がいるのか?)」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「は、話が違うわよ! どうして、狐の人妖がフクロウと遊べるの!」
(くっ――――天敵を前にしたら、戦闘力の低下もあると思っていたら見込みがはずれたわ。封印されている学校から離れた今がチャンスなのに……うわぁ! 人妖、隠れてる私を睨みつけているわ。 見つかっている……どうする?)
「――――やる! いくら目立っても、今が殺すチャンスには違いが――――」
「止めときなさい」
「――――っ! 貴方は?」
凛とした音。どこかで夏の風鈴が鳴ったのか?
そんな幻聴ですら聞こえてくる。
それほどまで、彼女の立ち振る舞いは美しかった。
「天王家からの使いの者よ。貴方が呼んだのでしょ?」
「そうですが、信じれないわ。 まさか、若き次期党首と言われた天王 けあき……貴方を寄こすなんてね」
「そんなの……どうでも良い事よ」とけあきはため息をつく。
家柄。そして、若い次期党首と言われるのに、何か思う所があるのだろう。
「それで、中にいるのがターゲットね?」
「えぇ、その通りよ」
「なるほど……貴方が苦戦するのもよくわかるわ」
「……? 私の事を知っているの?」
「貴方ね……はぁ、自己評価が低すぎよ」
「低い? 自己評価って何のことかしら?」
「どこにも所属せず、自由に人妖と戦う闇払い最強の喧嘩家 『賀茂あすか』 この業界で知らなきゃ、モグリ扱いよ」
「え? 待って!? 私、そんな風に言われているの!?」
「あぁ、珍しいだろ? 猫カフェって選択肢も考えたんだが……おい、大丈夫か?」
「な、何がですか? わ、わっちが猛禽類ごときで怯むと思ってか?」
「いや、声が震えてる……って、『わっち』? 一人称も言葉使いも無茶苦茶になっているぞ!」
「おっと、平常心です! まだ私がラスボスと明かすのはネタバレが過ぎるので」
「すでに、手遅れだと思うのだが……」
「え?(それって、どういう意味でしょうか?)」
「ん?(俺があすかさんから話を聞いているのは秘密だったな)」
「……」
「……」
と暫く無言で見つめ合う2人だった。
「さて、先輩…… 気を取り直して、中に入りましょう……」
「いや、フクロウが苦手だったら無理する事はない。別の場所に行こう」
「いえ! 絶対に大丈夫です。この鳥羽 あかり! 恐怖を克服できる黄金の精神を持っていますとも!」
「本当にいいんだな? 無理だけはするなよ?」
「の、望む所です。さぁ、早く……その扉を開いてください!」
「それじゃ……」
「いらっしゃいませ、御二人様でしょうか?」
「はい、あの初めてなのですが……」
「わかりました」と女性店員が説明を始めた。
(意外と高くない値段だな。しかし、あかりの奴、背後で隠れるように震えて本当の本当に大丈夫なの……あれ?)
「どうした、あかり? そんなに一か所を見つめて?」
「か……」
「か?」
「可愛い!! 見てください翔先輩! 白いフクロウですよ……ヘドウィグじゃないですか!」
「おぉ、さっきまで震えていたのに、目が輝いてる! ヘドウィグって言うと確かハリーポッターの白いフクロウの名前だったな。 好きなのか?」
「もちろんです。ハリーポッターが嫌いな文学少女なんで存在しません!」
「文学少女のつもりだったのか?」
「あれ? どこか間違っていましたか?」
「い、いや、間違ってはない(普段、図書室で漫画しか読んでない気もするが……)」
「私、あの子! あの子と遊びたい! いくら? いくらで購入できますか?」
「フクロウカフェのフクロウは売り物じゃないぞ。見ろ、店員さんも苦笑してる」
「おぉ! 先輩、先輩! 見てください。 この子、私の肩に乗ってくれました! 写真を! 写真を早く取ってください!」
「待て、待て! 写真は別料金だから店員さんに、今払うからな。すいません、お騒がせしまして」
「いえいえ」と店員は微笑んだ。
「彼女さんも楽しんでくれて、うちの子たちも喜んでくれてますよ。それでは写真ですね。彼氏さんも一緒に入りますか」
「そうだなぁ。あかりはどうしたらいいと思う?」
「そんなの決まっているじゃありませんか。ほら、一緒に!」
「うわぁ! 急に強く手を引っ張るなよ、ば、バランスが!」
「あっ! せ、先輩! 私の胸に顔を押し付けてくるなんて、すっごくエッチですね!」
「わ、わざとじゃないからな! こんな場所で人聞きの悪い!」
「おや? こんな場所じゃなければエッチな事を望まれますか?」
「なんで、若干嬉しそうなんだよ!」
「え? わかりません? 年上の彼氏が、まだ幼さが残る私の事を女性として見てくれているか……彼女の不安がわかりませんか?」
「真顔で言うな! 冗談って分かり難い……いや、冗談ですよね? あかりさん?」
「まぁ、冗談ですが……おぉ! こちら、フクロウに水を飲ませて上げるサービスがあるのですね! 私、ヘドウィグさんに水をあげたいです!」
「わかった、わかったから、少しは落ち着けって」
「は~い! そう言えば、フクロウって何を食べるんですかね? やっぱり虫とかですか? そう言えば、私の視線を掻い潜っている虫がいるみたいですが……」
「――――っ!(あかりがドアの外を睨みつけている! もしかして、賀茂先生がいるのか?)」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「は、話が違うわよ! どうして、狐の人妖がフクロウと遊べるの!」
(くっ――――天敵を前にしたら、戦闘力の低下もあると思っていたら見込みがはずれたわ。封印されている学校から離れた今がチャンスなのに……うわぁ! 人妖、隠れてる私を睨みつけているわ。 見つかっている……どうする?)
「――――やる! いくら目立っても、今が殺すチャンスには違いが――――」
「止めときなさい」
「――――っ! 貴方は?」
凛とした音。どこかで夏の風鈴が鳴ったのか?
そんな幻聴ですら聞こえてくる。
それほどまで、彼女の立ち振る舞いは美しかった。
「天王家からの使いの者よ。貴方が呼んだのでしょ?」
「そうですが、信じれないわ。 まさか、若き次期党首と言われた天王 けあき……貴方を寄こすなんてね」
「そんなの……どうでも良い事よ」とけあきはため息をつく。
家柄。そして、若い次期党首と言われるのに、何か思う所があるのだろう。
「それで、中にいるのがターゲットね?」
「えぇ、その通りよ」
「なるほど……貴方が苦戦するのもよくわかるわ」
「……? 私の事を知っているの?」
「貴方ね……はぁ、自己評価が低すぎよ」
「低い? 自己評価って何のことかしら?」
「どこにも所属せず、自由に人妖と戦う闇払い最強の喧嘩家 『賀茂あすか』 この業界で知らなきゃ、モグリ扱いよ」
「え? 待って!? 私、そんな風に言われているの!?」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
My Doctor
west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生
病気系ですので、苦手な方は引き返してください。
初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです!
主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな)
妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ)
医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる