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『フクロウカフェ』

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「こ、ここは『フクロウカフェ』ですか!?」

「あぁ、珍しいだろ? 猫カフェって選択肢も考えたんだが……おい、大丈夫か?」

「な、何がですか? わ、わっちが猛禽類ごときで怯むと思ってか?」

「いや、声が震えてる……って、『わっち』? 一人称も言葉使いも無茶苦茶になっているぞ!」

「おっと、平常心です! まだ私がラスボスと明かすのはネタバレが過ぎるので」

「すでに、手遅れだと思うのだが……」

「え?(それって、どういう意味でしょうか?)」

「ん?(俺があすかさんから話を聞いているのは秘密だったな)」

「……」

「……」

 と暫く無言で見つめ合う2人だった。

「さて、先輩…… 気を取り直して、中に入りましょう……」

「いや、フクロウが苦手だったら無理する事はない。別の場所に行こう」

「いえ! 絶対に大丈夫です。この鳥羽 あかり! 恐怖を克服できる黄金の精神を持っていますとも!」

「本当にいいんだな? 無理だけはするなよ?」

「の、望む所です。さぁ、早く……その扉を開いてください!」

「それじゃ……」

「いらっしゃいませ、御二人様でしょうか?」

「はい、あの初めてなのですが……」

「わかりました」と女性店員が説明を始めた。

(意外と高くない値段だな。しかし、あかりの奴、背後で隠れるように震えて本当の本当に大丈夫なの……あれ?)

「どうした、あかり? そんなに一か所を見つめて?」

「か……」

「か?」

「可愛い!! 見てください翔先輩! 白いフクロウですよ……ヘドウィグじゃないですか!」

「おぉ、さっきまで震えていたのに、目が輝いてる! ヘドウィグって言うと確かハリーポッターの白いフクロウの名前だったな。 好きなのか?」

「もちろんです。ハリーポッターが嫌いな文学少女なんで存在しません!」

「文学少女のつもりだったのか?」

「あれ? どこか間違っていましたか?」

「い、いや、間違ってはない(普段、図書室で漫画しか読んでない気もするが……)」

「私、あの子! あの子と遊びたい! いくら? いくらで購入できますか?」

「フクロウカフェのフクロウは売り物じゃないぞ。見ろ、店員さんも苦笑してる」

「おぉ! 先輩、先輩! 見てください。 この子、私の肩に乗ってくれました! 写真を! 写真を早く取ってください!」

「待て、待て! 写真は別料金だから店員さんに、今払うからな。すいません、お騒がせしまして」

「いえいえ」と店員は微笑んだ。

「彼女さんも楽しんでくれて、うちの子たちも喜んでくれてますよ。それでは写真ですね。彼氏さんも一緒に入りますか」

「そうだなぁ。あかりはどうしたらいいと思う?」

「そんなの決まっているじゃありませんか。ほら、一緒に!」

「うわぁ! 急に強く手を引っ張るなよ、ば、バランスが!」

「あっ! せ、先輩! 私の胸に顔を押し付けてくるなんて、すっごくエッチですね!」

「わ、わざとじゃないからな! こんな場所で人聞きの悪い!」

「おや? こんな場所じゃなければエッチな事を望まれますか?」

「なんで、若干嬉しそうなんだよ!」

「え? わかりません? 年上の彼氏が、まだ幼さが残る私の事を女性として見てくれているか……彼女の不安がわかりませんか?」

「真顔で言うな! 冗談って分かり難い……いや、冗談ですよね? あかりさん?」

「まぁ、冗談ですが……おぉ! こちら、フクロウに水を飲ませて上げるサービスがあるのですね! 私、ヘドウィグさんに水をあげたいです!」

「わかった、わかったから、少しは落ち着けって」

「は~い! そう言えば、フクロウって何を食べるんですかね? やっぱり虫とかですか? そう言えば、私の視線を掻い潜っている虫がいるみたいですが……」

「――――っ!(あかりがドアの外を睨みつけている! もしかして、賀茂先生がいるのか?)」

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「は、話が違うわよ! どうして、狐の人妖がフクロウと遊べるの!」

(くっ――――天敵を前にしたら、戦闘力の低下もあると思っていたら見込みがはずれたわ。封印されている学校から離れた今がチャンスなのに……うわぁ! 人妖、隠れてる私を睨みつけているわ。 見つかっている……どうする?)

「――――やる! いくら目立っても、今が殺すチャンスには違いが――――」

「止めときなさい」

「――――っ! 貴方は?」

 凛とした音。どこかで夏の風鈴が鳴ったのか?

 そんな幻聴ですら聞こえてくる。 

 それほどまで、彼女の立ち振る舞いは美しかった。 

「天王家からの使いの者よ。貴方が呼んだのでしょ?」

「そうですが、信じれないわ。 まさか、若き次期党首と言われた天王 けあき……貴方を寄こすなんてね」

「そんなの……どうでも良い事よ」とけあきはため息をつく。

 家柄。そして、若い次期党首と言われるのに、何か思う所があるのだろう。

「それで、中にいるのがターゲットね?」

「えぇ、その通りよ」

「なるほど……貴方が苦戦するのもよくわかるわ」

「……? 私の事を知っているの?」

「貴方ね……はぁ、自己評価が低すぎよ」

「低い? 自己評価って何のことかしら?」

「どこにも所属せず、自由に人妖と戦う闇払い最強の喧嘩家 『賀茂あすか』 この業界で知らなきゃ、モグリ扱いよ」

「え? 待って!? 私、そんな風に言われているの!?」
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