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ドロシーとシオンの現在

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「……なるほど。その魔剣は古代魔道具ではなく、自分の魂を封じて作った魔剣か。なんて愚かな事を――――」

「黙れ!」

 その声は、ドロシーの肉体から聞こえてこなかった。 彼女の杖――――魔剣から聞こえて来た。

「私の体は死んだ。それはお前の――――貴様のせいだ!」

 彼女の体――――魔剣は地面に突き刺さる。 そこを中心に地面に魔法陣が出現した。

「召喚魔法? ここで何を出すつもりだ?」

 そこから現れた黒い影。 それは女性の姿をしていた。

 その女性はジェルも知っている者だった。

「シオン? 生きていたのか?」

「――――」と彼女は答えない。 

 かつての仲間、剣聖を目指していた東洋の女性、シオン。しかし、その目には精気が宿っていない。

 まるで死体のように見える。 だが、死体ではない。

 ドロシーの肉体――――魔剣を手に取った。

「シオンも死んでいるのか?」

「生きているさ。ただ、あの死から蘇らせても、今も意識を取り戻さない――――でも、彼女の技は生きている」

 シオンが魔剣を握る。 圧力が増して行く。

『虚空斬撃飛翔』

 斬撃がジェルを襲う。その技はシオンが振るう事で、ジェルのソレよりも威力が高い。

「――――ッ!」とジェルも焦りを見せた。 

『虚空斬撃飛翔』

 相殺――――は無理でも威力を削る事を狙ってジェルも同じ技を繰り出した。

 威力は低下できたものの斬撃はジェルに通る。 

 袈裟斬り

 彼の肩から逆側の腰にまで赤い線が通り、それから血が零れ落ちた。

「――――ッ!」と顔を顰める。 

 ダメージは、致命傷にはならない。しかし――――文字通りに――――体に痛みを刻んだ。
 
「技はシオンのまま……いや、鋭さを増している。 その姿になっても成長を続けているのか?」

「黙れ、貴様がシオンを語るな!」

『土龍激と――――』

 ドロシー&シオンは感情のまま、突撃系の技を繰り出そうとした。

 しかし、それはジェルの誘い。――――罠だ。

『ファイアボール』

 突撃技の構えから繰り出すよりも早くジェルは魔法を放った。

 離れた位置。 発動も早い。

「――――くっ! 『天魔六乱舞』で」

 魔法切断。 ドロシーの剣は火炎魔法を切り払う。

 だが、火炎魔法と同時にジェルは前に飛び出ていた。

 技を終え、動きを止めたドロシー。それが隙になる。

「見せてやる。これが俺の『天魔六乱舞』だ!」

 シオンの肉体にジェルは六連撃を打ち込む。 

 手加減はした。 しかし、戦闘は続行できないダメージを植え付けた。

「それでも、まだ動けるのか? ドロシー、シオンの体に何かした――――いや、聞くまでもないか」

 手加減はしたが、確かにシオンの体を斬った。 致命傷にならないように、僅かに肉を斬るつもりだったが……

(刃が通らなかった。この魔剣が……だぞ?)

「さて……」とジェルは動揺を誤魔化すように呟く。

 剣技が通じない相手に勝つ方法。 今から考えなければならなくなったからだ。     
  

 
 
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