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3人目、抗議の声

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「どうやら、逃げきれたみたいだな」



 言いながら、ジェルは馬車から顔を出して後方を警戒する。



 逃げ切った。そう警戒心が希薄になった瞬間こそ危険だと言う事を経験で知っている。



「しかし、俺たちは、何だってケンタウロスの群れに襲われたんだ? ケンタウロスだけじゃなくて、武装した人間たちも攻撃してきた」



「ケンタウロスと共に特殊な戦闘訓練を受けてないと、ああはならないぜ」



 頷いていたシズクだったが、なにか思い出したかのように――――



「そう言えば、この馬車を借りた商人たちから聞いた話だが……」



「なんだ? なにか心当たりでもあったのか?」



「いや、近道だから突っ走ってきたけど、商人は迂回しろって言ってたぜ。すっかり、忘れてたけどな」



「じ、事前に注意されていたのかよ……」



「あぁ、なんでも亜人系デミ・ヒューマンでもエルフとか、ドワーフとかじゃなくて……ケンタウロスやミノタウロスみたいな半人半獣の連中は、神さまが原始の力を蘇らせた特別な存在って崇めてる連中が住んでるとか」



「俺たちを襲って来た連中だな。やっぱり、宗教的な聖域なのか?」



「そうかもな……いや、もしかしたらコイツが原因なのかもしれない」



「ん?」とジェルは手綱を握るシズクに近づく。



 彼女の手には見慣れぬ物体。



「金属みたいにも見えるけど……何かの鉱山か? どう見ても天然じゃなくて人の手で加工されてるみたいだけど?」



 ジェルは、傷つけないように軽く叩いて素材を確かめるも、その正体はわからなかった。



 しかし、何か曰く付きの物質。 呪詛とか、神秘系の効果がないか疑う。



「この林道を走ってから、休憩したのを覚えているか?」



「確か……馬を休ませるって言いながら……」



「あぁ、私が馬車から少し離れた時に見つけたんだ。なんでも森の神殿で連中の宝があるらしいって噂も聞いていたからな」



「いや、待て。俺に何も言わずに、宝を? 1人で?」



「そうだな。お前を驚かしてみたかった」



「あっ」とジェルは天を仰いだ。



「短時間で、もめ事を起こしやがったな」



「そうさ。まさにらしいだろ?」



「……まったくだ。 それについてはお前が正しいさ」



 それから、ジェルは、こう続けた。



「全く持って冒険者らしい行動だ」 



 2人は笑い合った。 3人目は違った。



「貴様らの行動、度し難い。まったくもって理解できぬわ」 



 しかし、馬車にはジェルとシズクのみ。3人目はどこにも姿を見せたない。



「やれやれ、そう言うなよ。お前にだって、俺たちの行動理念に慣れて貰わないとな」



 言葉通りに、やれやれと首を振るジェル。 それが声の主の気に障ったらしい。



「ほう……行動理念? 理念だと? むしろ、我に取ってみれば、その理念こそ正してもらいたいわ」



 突如として3人目は姿を現した。 そこは、ジェルたちが馬車に置いてる道具の1つ。



 洞窟探索などで、内部を照らすランタン。 突然、轟々に火がついたかと思うと、火は、まるで意識を持つ生物のように――――否。



 その火は、意識を持つ生物そのものだった。



 火は鳥の姿に代わり、本来の姿である不死鳥に戻ったのだ。



 
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