69 / 144
幽霊屋敷を調査しよう⑦
しおりを挟む
聖ドラグル・ブラム・ジョージ
その名前にジェルは――――
(たしか、ここを支配していた貴族……ただし、150年以上前の英雄じゃないか)
ジェルは、頭の片隅に残っていた記憶を引っ張り出した。
(かつての貴族が神に反逆して不死者になった……なるほど、よくある話だ)
地位と名誉を武力で得た英雄が求める先――――強欲は寿命すら否定して、全盛期の強さに永遠を求める。
例え――――外法、邪法と使用したとしても……
(――――いや、だとしたら解せない。ならば、不死者の弱点である破邪系の魔法が効かない?)
確かに、聖ドラグル・ブラム・ジョージ――――聖ドラグルがシズクへと襲い掛かった時にカウンターでシズクが放った『聖なる十字架』
彼が名乗った通りに吸血鬼《ノーライフキング》ならば、致命傷《クリティカル》となるはず……
神の摂理に反逆した者は、神の象徴である十字架に自己崩壊を招く。
吸血鬼が十字架を見ただけで焼け死ぬ理屈である。
ジェルが聖ドラクルに考察するのは、ここまでだった。
「我が威光に恐れるとは、知恵深き少年か? だが、我に喝采を浴びせよ。さすれば――――汝も我の命に溶け込ませてくれよう」
瞬間移動? そう間違うほどの一瞬で聖ドラクルはジェルの背後を取った。
(影に変化して移動したのか? だから、予備動作どころか移動する姿を見失った!)
聖ドラクルの攻撃――――いや、それは攻撃というべきではない。
捕食だ。
彼はジェルを食物と認識して、食べようと――――大きく口を開いた。
吸血鬼の噛みつき。 ならば、それは一撃必殺。
生ある者を死者の従者に変える文字通りの一撃必殺だ。
ぎりぎり――――ジェルの頭部よりも上で空振りした牙と牙が交差する音が聞こえる。
その場で素早く身を屈めて回避したのだ。 加えて――――ジャンプ。
大きくしゃがみ込んだ体勢から、大きく体を伸ばして宙返り。
背後にいる聖ドラクルに向けて蹴りを放った。
所謂――――
オーバーヘッドキック。
曲芸を連想させる蹴り技に不意を突かれた吸血鬼は思わず、数歩だけ後退する。
その隙をジェルの相棒は見逃さない。 シズクは隙だらけになった聖ドラクルに向かって――――
「あの世に帰れ! 噛みつき魔が!」
大剣による袈裟斬り。 致命傷――――相手が、ただの魔物ならの話。
「無粋な小娘が! 貴様には優雅さが足りぬ!」
斬られた場所に白い煙が立ち昇り、回復が始める。
吸血鬼ならそうだろう。 不死身の回復能力を持っているに決まっている。
「我の領域まで達すれば、戦いはゆっくりと――――忙しなく動く事すらなくなるのだよ」
確かに、その凄きは洗礼された舞いのように優雅であり―――――だが、一撃必殺の威力を秘めていた。
吸血鬼の手刀。
それは重装備であるシズクの防具すら貫き得るのは、わかっている。
しかし――――
「――――なに? 何が起きた?」
驚きを漏らすのは、聖ドラクルだった。 彼は混乱していた。
確かに捉えたと思ったシズクの肉体。 しかし、その直後には彼女の大剣が、胴に叩き込まれていた。
彼の胴は宙にある。 切断され、離れ離れになった下半身は、既に地面に転がり――――
重力の存在を思い出したかのように、ゆっくりと彼の上半身は地面に落下していった。
その様子を見ながら、シズクは説明するように大剣を見せつけた。
「これは魔族ガチャの『因果律の大剣』 相手より遅れて振るっても、必ず先に攻撃が届くカウンター特化の魔剣さ」
その名前にジェルは――――
(たしか、ここを支配していた貴族……ただし、150年以上前の英雄じゃないか)
ジェルは、頭の片隅に残っていた記憶を引っ張り出した。
(かつての貴族が神に反逆して不死者になった……なるほど、よくある話だ)
地位と名誉を武力で得た英雄が求める先――――強欲は寿命すら否定して、全盛期の強さに永遠を求める。
例え――――外法、邪法と使用したとしても……
(――――いや、だとしたら解せない。ならば、不死者の弱点である破邪系の魔法が効かない?)
確かに、聖ドラグル・ブラム・ジョージ――――聖ドラグルがシズクへと襲い掛かった時にカウンターでシズクが放った『聖なる十字架』
彼が名乗った通りに吸血鬼《ノーライフキング》ならば、致命傷《クリティカル》となるはず……
神の摂理に反逆した者は、神の象徴である十字架に自己崩壊を招く。
吸血鬼が十字架を見ただけで焼け死ぬ理屈である。
ジェルが聖ドラクルに考察するのは、ここまでだった。
「我が威光に恐れるとは、知恵深き少年か? だが、我に喝采を浴びせよ。さすれば――――汝も我の命に溶け込ませてくれよう」
瞬間移動? そう間違うほどの一瞬で聖ドラクルはジェルの背後を取った。
(影に変化して移動したのか? だから、予備動作どころか移動する姿を見失った!)
聖ドラクルの攻撃――――いや、それは攻撃というべきではない。
捕食だ。
彼はジェルを食物と認識して、食べようと――――大きく口を開いた。
吸血鬼の噛みつき。 ならば、それは一撃必殺。
生ある者を死者の従者に変える文字通りの一撃必殺だ。
ぎりぎり――――ジェルの頭部よりも上で空振りした牙と牙が交差する音が聞こえる。
その場で素早く身を屈めて回避したのだ。 加えて――――ジャンプ。
大きくしゃがみ込んだ体勢から、大きく体を伸ばして宙返り。
背後にいる聖ドラクルに向けて蹴りを放った。
所謂――――
オーバーヘッドキック。
曲芸を連想させる蹴り技に不意を突かれた吸血鬼は思わず、数歩だけ後退する。
その隙をジェルの相棒は見逃さない。 シズクは隙だらけになった聖ドラクルに向かって――――
「あの世に帰れ! 噛みつき魔が!」
大剣による袈裟斬り。 致命傷――――相手が、ただの魔物ならの話。
「無粋な小娘が! 貴様には優雅さが足りぬ!」
斬られた場所に白い煙が立ち昇り、回復が始める。
吸血鬼ならそうだろう。 不死身の回復能力を持っているに決まっている。
「我の領域まで達すれば、戦いはゆっくりと――――忙しなく動く事すらなくなるのだよ」
確かに、その凄きは洗礼された舞いのように優雅であり―――――だが、一撃必殺の威力を秘めていた。
吸血鬼の手刀。
それは重装備であるシズクの防具すら貫き得るのは、わかっている。
しかし――――
「――――なに? 何が起きた?」
驚きを漏らすのは、聖ドラクルだった。 彼は混乱していた。
確かに捉えたと思ったシズクの肉体。 しかし、その直後には彼女の大剣が、胴に叩き込まれていた。
彼の胴は宙にある。 切断され、離れ離れになった下半身は、既に地面に転がり――――
重力の存在を思い出したかのように、ゆっくりと彼の上半身は地面に落下していった。
その様子を見ながら、シズクは説明するように大剣を見せつけた。
「これは魔族ガチャの『因果律の大剣』 相手より遅れて振るっても、必ず先に攻撃が届くカウンター特化の魔剣さ」
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます
ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。
何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。
何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。
それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。
そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。
見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。
「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」
にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。
「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。
「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
辺境村人の俺、異能スキル【クエストスキップ】で超レベルアップ! ~レアアイテムも受け取り放題~
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村人・スライは、毎日散々な目に遭わされていた。
レベルも全く上がらない最弱ゆえに、人生が終わっていた。ある日、知り合いのすすめで冒険者ギルドへ向かったスライ。せめてクエストでレベルを上げようと考えたのだ。しかし、受付嬢に話しかけた途端にレベルアップ。突然のことにスライは驚いた。
試しにもう一度話しかけるとクエストがスキップされ、なぜか経験値、レアアイテムを受け取れてしまった。
謎の能力を持っていると知ったスライは、どんどん強くなっていく――!
全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜
仁徳
ファンタジー
テオ・ローゼは、捨て子だった。しかし、イルムガルト率いる貴族パーティーが彼を拾い、大事に育ててくれた。
テオが十七歳になったその日、彼は鑑定士からユニークスキルが【前世の記憶】と言われ、それがどんな効果を齎すのかが分からなかったイルムガルトは、テオをパーティーから追放すると宣言する。
イルムガルトが捨て子のテオをここまで育てた理由、それは占い師の予言でテオは優秀な人間となるからと言われたからだ。
イルムガルトはテオのユニークスキルを無能だと烙印を押した。しかし、これまでの彼のユニークスキルは、助言と言う形で常に発動していたのだ。
それに気付かないイルムガルトは、テオの身包みを剥いで素っ裸で外に放り出す。
何も身に付けていないテオは町にいられないと思い、町を出て暗闇の中を彷徨う。そんな時、モンスターに襲われてテオは見知らぬ女性に助けられた。
捨てる神あれば拾う神あり。テオは助けてくれた女性、ルナとパーティーを組み、新たな人生を歩む。
一方、貴族パーティーはこれまであったテオの助言を失ったことで、効率良く動くことができずに失敗を繰り返し、没落の道を辿って行く。
これは、ユニークスキルが無能だと判断されたテオが新たな人生を歩み、前世の記憶を生かして幸せになって行く物語。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる