67 / 144
幽霊屋敷を調査しよう⑤
しおりを挟む
ソイツは何の脈略もなく出現した。
音の正体は空気の振動。ならば、水中という空気のない世界では、どれだけ激しく動いても無音となる。
だからだろうか?
――――ソイツは何の脈略もなく出現した。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「シズク、何にかヤバイ! 右の壁が壊れる!」
「――――ッ!」と盾を備えるシズク。 何か――――魔物の敵襲。
その攻撃よりも速く、破壊された壁から強烈な水圧を浴びるシズク。
遅れて水と共に飛び出してきたのは巨大な顎。
その魔物は――――巨大鰐《アリゲーター》
水面に近づくミノタウロスやオークすら噛みつき、水中に引きづり込み仕留める凶悪性。
それでも重装備であるシズクの防具は砕け散らない。
「ジェル! フォローを頼む!」
「応!」と手にした武器は『名刀コテツ』
シズクを頭から齧り付こうとする巨大鰐。
その特徴は牙や尻尾など、過剰的な攻撃力だけではない。
注目すべきは防御力。まさに体は頑強と言える。
分厚い鱗に覆われた……だけではなく、さらにその下には鱗板骨。
要するにとんでもなく頑丈をいうわけだ。
(だから、狙うソコ。攻撃のために体が浮き上がったために無防備になっている腹!)
ジェルが繰り出したのは、速度と体重を乗せた一撃必殺の刺突。
果して、その手ごたえは?
「――――ッ!(た、確かに背中よりは防御力は薄いとは言え――――)」
名刀コテツの刺突を持ってすら致命傷まで達せない。
ターゲットをシズクに向けたまま、尻尾による攻撃をジェルに開始した。
(まるで丸太の一撃。 受けても――――防御は通じない)
その場で飛び上がり回避。
そして回避と同時に反撃。体重と重力を味方に、尻尾へ突き刺す。
(ダメだ。剣の技術じゃ倒し切れる気がしない。魔法の超火力――――でも、こんな狭さじゃ)
「やれ、ジェル!」とシズクの声。 2人は視線が交差する。
「うおぉぉぉぉぉぉ!」とシズクは裂帛の気合を入れる。
巨大鰐が飛び出してきた亀裂へ、押し戻していく。
単純な腕力勝負。体格差に打ち勝ち、巨大鰐の体を浮かして――――
「投げさせてもらうぜ! やれ、ジェル!」
有言実行。 浮かび上がった巨大鰐。 それに対してジェルが――――
『ホワイトエッジ』
魔法の白刃。 氷の弾丸となり、巨大鰐に打ち込まれる。
その衝撃は、巨大鰐を出現地点――――壁の大穴まで押し戻した。
加えて『ホワイトエッジ』は氷属性の魔法。
破壊され、大量の水で他の箇所も決壊間近だった壁を氷で補修していった。
「や、ヤバかった」とジェル。 彼は、氷魔法によって補修した壁をペタペタと触る。
「よく確認すると周辺の壁がぶち壊れる直前だった。もしそ、ここで『ファイアボール』を選択してたら、一気に水が溢れて溺れ死もあり得たわ」
「うん、これは町に戻った方が良いかもしれないな」とシズク。
「これが本当に正規の依頼だったのかの確認も必要だ。なにより、氷魔法で直したって言っても永続的な効果じゃない。どのくらい持つ?」
「そうだな。2~3日……あの巨大鰐が同じ場所を攻撃しなければの条件付きでね」
それを聞いたシズクは深く頷くと
「やっぱ、ここらが引き上げ時ってやつか」
しかし――――
「させぬよ」
そう怒気を含む声が2人を止めた。
音の正体は空気の振動。ならば、水中という空気のない世界では、どれだけ激しく動いても無音となる。
だからだろうか?
――――ソイツは何の脈略もなく出現した。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「シズク、何にかヤバイ! 右の壁が壊れる!」
「――――ッ!」と盾を備えるシズク。 何か――――魔物の敵襲。
その攻撃よりも速く、破壊された壁から強烈な水圧を浴びるシズク。
遅れて水と共に飛び出してきたのは巨大な顎。
その魔物は――――巨大鰐《アリゲーター》
水面に近づくミノタウロスやオークすら噛みつき、水中に引きづり込み仕留める凶悪性。
それでも重装備であるシズクの防具は砕け散らない。
「ジェル! フォローを頼む!」
「応!」と手にした武器は『名刀コテツ』
シズクを頭から齧り付こうとする巨大鰐。
その特徴は牙や尻尾など、過剰的な攻撃力だけではない。
注目すべきは防御力。まさに体は頑強と言える。
分厚い鱗に覆われた……だけではなく、さらにその下には鱗板骨。
要するにとんでもなく頑丈をいうわけだ。
(だから、狙うソコ。攻撃のために体が浮き上がったために無防備になっている腹!)
ジェルが繰り出したのは、速度と体重を乗せた一撃必殺の刺突。
果して、その手ごたえは?
「――――ッ!(た、確かに背中よりは防御力は薄いとは言え――――)」
名刀コテツの刺突を持ってすら致命傷まで達せない。
ターゲットをシズクに向けたまま、尻尾による攻撃をジェルに開始した。
(まるで丸太の一撃。 受けても――――防御は通じない)
その場で飛び上がり回避。
そして回避と同時に反撃。体重と重力を味方に、尻尾へ突き刺す。
(ダメだ。剣の技術じゃ倒し切れる気がしない。魔法の超火力――――でも、こんな狭さじゃ)
「やれ、ジェル!」とシズクの声。 2人は視線が交差する。
「うおぉぉぉぉぉぉ!」とシズクは裂帛の気合を入れる。
巨大鰐が飛び出してきた亀裂へ、押し戻していく。
単純な腕力勝負。体格差に打ち勝ち、巨大鰐の体を浮かして――――
「投げさせてもらうぜ! やれ、ジェル!」
有言実行。 浮かび上がった巨大鰐。 それに対してジェルが――――
『ホワイトエッジ』
魔法の白刃。 氷の弾丸となり、巨大鰐に打ち込まれる。
その衝撃は、巨大鰐を出現地点――――壁の大穴まで押し戻した。
加えて『ホワイトエッジ』は氷属性の魔法。
破壊され、大量の水で他の箇所も決壊間近だった壁を氷で補修していった。
「や、ヤバかった」とジェル。 彼は、氷魔法によって補修した壁をペタペタと触る。
「よく確認すると周辺の壁がぶち壊れる直前だった。もしそ、ここで『ファイアボール』を選択してたら、一気に水が溢れて溺れ死もあり得たわ」
「うん、これは町に戻った方が良いかもしれないな」とシズク。
「これが本当に正規の依頼だったのかの確認も必要だ。なにより、氷魔法で直したって言っても永続的な効果じゃない。どのくらい持つ?」
「そうだな。2~3日……あの巨大鰐が同じ場所を攻撃しなければの条件付きでね」
それを聞いたシズクは深く頷くと
「やっぱ、ここらが引き上げ時ってやつか」
しかし――――
「させぬよ」
そう怒気を含む声が2人を止めた。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜
仁徳
ファンタジー
テオ・ローゼは、捨て子だった。しかし、イルムガルト率いる貴族パーティーが彼を拾い、大事に育ててくれた。
テオが十七歳になったその日、彼は鑑定士からユニークスキルが【前世の記憶】と言われ、それがどんな効果を齎すのかが分からなかったイルムガルトは、テオをパーティーから追放すると宣言する。
イルムガルトが捨て子のテオをここまで育てた理由、それは占い師の予言でテオは優秀な人間となるからと言われたからだ。
イルムガルトはテオのユニークスキルを無能だと烙印を押した。しかし、これまでの彼のユニークスキルは、助言と言う形で常に発動していたのだ。
それに気付かないイルムガルトは、テオの身包みを剥いで素っ裸で外に放り出す。
何も身に付けていないテオは町にいられないと思い、町を出て暗闇の中を彷徨う。そんな時、モンスターに襲われてテオは見知らぬ女性に助けられた。
捨てる神あれば拾う神あり。テオは助けてくれた女性、ルナとパーティーを組み、新たな人生を歩む。
一方、貴族パーティーはこれまであったテオの助言を失ったことで、効率良く動くことができずに失敗を繰り返し、没落の道を辿って行く。
これは、ユニークスキルが無能だと判断されたテオが新たな人生を歩み、前世の記憶を生かして幸せになって行く物語。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
外れスキル「トレース」が、修行をしたら壊れ性能になった~あれもこれもコピーで成り上がる~
うみ
ファンタジー
港で荷物の上げ下ろしをしてささやかに暮らしていたウィレムは、大商会のぼんくら息子に絡まれていた少女を救ったことで仕事を干され、街から出るしか道が無くなる。
魔の森で一人サバイバル生活をしながら、レベルとスキル熟練度を上げたウィレムだったが、外れスキル「トレース」がとんでもないスキルに変貌したのだった。
どんな動作でも記憶し、実行できるように進化したトレーススキルは、他のスキルの必殺技でさえ記憶し実行することができてしまうのだ。
三年の月日が経ち、修行を終えたウィレムのレベルは熟練冒険者を凌ぐほどになっていた。
街に戻り冒険者として名声を稼ぎながら、彼は仕事を首にされてから決意していたことを実行に移す。
それは、自分を追い出した奴らを見返し、街一番まで成り上がる――ということだった。
※なろうにも投稿してます。
※間違えた話を投稿してしまいました!
現在修正中です。
突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます
ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。
何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。
何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。
それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。
そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。
見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。
「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」
にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。
「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。
「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる