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特別怪物のワイバーン
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特別怪物《ワイバーン》は退屈していた。
────否。
それは、もはや絶望と言えた。
大きく頑丈な体。
鋭い爪と顎。
遠く、速く飛べる羽。
高い知能は、魔力の錬成すら可能だった。
だから、特別。 だから、特別怪物《エクストラモンスター》。
強すぎる固体ゆえに退屈していた。
(昔は良かった。自分よりも強い者がいた。自分よりも速い者がいた。何よりそれが悔しかった)
自分よりも強き者たち。それらと戦い、勝利を得る。
それがワイバーンは好きだった。
(誰より、誰よりも速く。誰よりも、誰よりも強く――――しかし、気づいた時には前に誰もいなかった。自分が先頭に立って、誰もが自分の後ろに下がっていた)
絶対的な王者となった彼に、仲間のワイバーンたちはひれ伏した。
彼は群れの主となった。
(ならば、より強者を―――― ならば、より速き者を――――)
戦いへの渇望。主となった彼は、他の群れを襲うようになった。
彼、個人の闘争ではなく、群れと群れの戦争。
葬り去った群れの生き残りを吸収していく。
それを繰り返した末、彼は巨大なワイバーンの群れの主――――もはや、ワイバーンたちで形成される国。その王と呼ばれるに相応しい位置にいた。
絶対的な王者……だからこそ孤独。
望まぬとも築き上げてきた自身の王国。
それが僅か1人――――いや2人か? 2人の人間によって壊滅された。
その時、彼に湧き出た感情は――――怒り。
シンプルな怒りに彼は驚いた。
戦いを渇望してきた彼にとって、自身の国は足枷。
大きくなり過ぎた群れは維持する事に力と取られ、久しく戦いから離れさせられた。
足枷――――それは、苦痛。しかし、巨大だからこそ捨てれぬ彼の王国。
それが崩壊した今、彼は戦いの喜びよりも怒り――――
つまり群れへの執着―――― つまり群れへの愛――――
そんな物が自身にあったのかと驚き、そして怒りを高めた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
シズクは嗤う。
「ドラゴンと見間違うほどの圧力。コイツ、強いなぁ」
まるでゴブリンとしての純度を取り戻したかのように獰猛で強烈な笑み。
「来い!」と異空間に収納されている愛剣を、大剣を召喚させた。
狙いは、もちろんワイバーン。
高き上空。 重力と重量を利用して加速。
一直線にシズクに襲おうと加速に加速を重ねていく。
2つの影か交差した。
「なっ――――コイツ。この速度で動きを変化させた……だと!」
ワイバーンはシズクの大剣を避けると同時に、シズクへと巨大な爪を叩き込んでいた。
「私の『不可視の鎧』を一撃で、穴を開けやがったかッ!」
シズクの命を救ったのは、彼女が身に纏っている見えざる鎧。だが、それも一撃で破壊された。
再び、シズクの頭上を位置取ったワイバーン。彼は旋回しながら魔力を高めていく。
「このプレッシャーは……。コイツ、ワイバーンのクセに魔法まで使いやがるのか。クソが! 面白過ぎるだろ」
シズクの言葉通り、ワイバーンは顎は開くと体内で錬成した魔力を魔法攻撃に変えた。
『ファイアボール』
顎から放射された巨大な火球。 それがシズクを狙い、高速で―――――
「けど、させないよ」
その声の主は?
地上から飛翔魔法で接近していたジェルの声だった。
────否。
それは、もはや絶望と言えた。
大きく頑丈な体。
鋭い爪と顎。
遠く、速く飛べる羽。
高い知能は、魔力の錬成すら可能だった。
だから、特別。 だから、特別怪物《エクストラモンスター》。
強すぎる固体ゆえに退屈していた。
(昔は良かった。自分よりも強い者がいた。自分よりも速い者がいた。何よりそれが悔しかった)
自分よりも強き者たち。それらと戦い、勝利を得る。
それがワイバーンは好きだった。
(誰より、誰よりも速く。誰よりも、誰よりも強く――――しかし、気づいた時には前に誰もいなかった。自分が先頭に立って、誰もが自分の後ろに下がっていた)
絶対的な王者となった彼に、仲間のワイバーンたちはひれ伏した。
彼は群れの主となった。
(ならば、より強者を―――― ならば、より速き者を――――)
戦いへの渇望。主となった彼は、他の群れを襲うようになった。
彼、個人の闘争ではなく、群れと群れの戦争。
葬り去った群れの生き残りを吸収していく。
それを繰り返した末、彼は巨大なワイバーンの群れの主――――もはや、ワイバーンたちで形成される国。その王と呼ばれるに相応しい位置にいた。
絶対的な王者……だからこそ孤独。
望まぬとも築き上げてきた自身の王国。
それが僅か1人――――いや2人か? 2人の人間によって壊滅された。
その時、彼に湧き出た感情は――――怒り。
シンプルな怒りに彼は驚いた。
戦いを渇望してきた彼にとって、自身の国は足枷。
大きくなり過ぎた群れは維持する事に力と取られ、久しく戦いから離れさせられた。
足枷――――それは、苦痛。しかし、巨大だからこそ捨てれぬ彼の王国。
それが崩壊した今、彼は戦いの喜びよりも怒り――――
つまり群れへの執着―――― つまり群れへの愛――――
そんな物が自身にあったのかと驚き、そして怒りを高めた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
シズクは嗤う。
「ドラゴンと見間違うほどの圧力。コイツ、強いなぁ」
まるでゴブリンとしての純度を取り戻したかのように獰猛で強烈な笑み。
「来い!」と異空間に収納されている愛剣を、大剣を召喚させた。
狙いは、もちろんワイバーン。
高き上空。 重力と重量を利用して加速。
一直線にシズクに襲おうと加速に加速を重ねていく。
2つの影か交差した。
「なっ――――コイツ。この速度で動きを変化させた……だと!」
ワイバーンはシズクの大剣を避けると同時に、シズクへと巨大な爪を叩き込んでいた。
「私の『不可視の鎧』を一撃で、穴を開けやがったかッ!」
シズクの命を救ったのは、彼女が身に纏っている見えざる鎧。だが、それも一撃で破壊された。
再び、シズクの頭上を位置取ったワイバーン。彼は旋回しながら魔力を高めていく。
「このプレッシャーは……。コイツ、ワイバーンのクセに魔法まで使いやがるのか。クソが! 面白過ぎるだろ」
シズクの言葉通り、ワイバーンは顎は開くと体内で錬成した魔力を魔法攻撃に変えた。
『ファイアボール』
顎から放射された巨大な火球。 それがシズクを狙い、高速で―――――
「けど、させないよ」
その声の主は?
地上から飛翔魔法で接近していたジェルの声だった。
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