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シズクの目標
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それは純粋な疑問だった。
その言葉に悪意はない。あるはずもない。
「君は……巨大な力を得て何がしたいんだ?」
だが、そこ言葉を発した後、ジェルから湧き出たものは後悔だった。
空気がヒリつく。
シズクが纏った感情は怒気……いや、違う。
怒気を間違うほどに圧倒的な熱量――――より正確には熱意だった。
「私の目的は――――」と言いかけて彼女は視線を空に向ける。
「一言で説明するのは難しい。けど、強いていうならば私を増やすって事だな」
「シズクを増やす? それは種の繁栄って意味かい?」
ジェルは聞き返しながらも、納得していた。
種の繁栄。それは生物が持つ本能だ。
増して、シズクのような特別怪物《エクストラモンスター》……
(今となってみれば、とても怪物として認識できなくなっているシズクに、その言葉を当てはめる事に違和感があるのだけれども……)
そう思いながら……しかし、そのジェルの考えをシズクは否定した。
「違う、そうじゃないのさ」
「え?」
「種の繁栄じゃない。なんて言うか仲間かな? あの古代魔道具《アーティファクト》みたいな物が存在している以上。同胞……みたいな連中がたくさん隠れているに違いないだろ?」
「あぁ、そうだな。君みたいな連中がたくさんいるなら、人間と魔物も仲良くできるかもしれないな」
「――――」とシズクは目を大きく見開いて驚いていた。それから……
「私は、憧れていたのかもしれないな。人間の仲間ってやつに」
「仲間……」とジェルは悲しそうに微笑んだ。その言葉は、ジェルに取って重い。
「だからかもしれない。あの日、仲間から傷つけられて、置き去りにされたお前を見た瞬間。私は怒った。それから――――お前の仲間になりたいって思った」
「――――っ!?」と今度は、ジェルが驚かされる番だった。
(何か言わなければ)
ジェルの考えとは裏腹に出てくるのは「――――」と言葉にできない音だけだった。
そんなジェルをニヤニヤと笑いながらシズクは、
「さぁて、そろそろ目標が見えて来たぜ。殲滅戦だ、準備はOKか?」
彼女は空を指す。旋回するワイバーンの群れ。
周辺は薄暗い。
なぜなら、空を飛ぶワイバーンたちの影が太陽の光を覆い隠すからだ。
ワイバーンたちの羽に隠され、隙間から極僅かに空の青が見えている。
要するに――――
「滅茶苦茶だ」とジェル。
「見た事もない数のワイバーン……本当にやれるのか?」
「やれるさ」とシズクは笑って返す。
「私とお前……2人なら、このくらい余裕って感じだろ?」
「あぁ、分かったよ」とジェル。彼は肩にかけた雑嚢に手を入れる。
中から取り出したのは本だった。
一冊の本。当然、ただの本のはずもなく――――
『雷撃上昇の魔導書』
それは、ジェルが迷宮深くで古代魔道具《アーティファクト》から手にした魔導書。
(剣聖ガチャのハズレではあるけれど……使うなら今がベスト)
ジェルが本を開く。 黄色い光が中から飛びだして彼の体を覆い始めた。
その光は雷撃の魔力。 魔導書に書かれた文字は、魔法発動時の詠唱と同等の効果を発揮させる。
「行くぜジェル! その魔力を私に寄越せ!」
まず、最初にシズクが発動した魔法は『フライト』
ジェルも習得している飛翔魔法を使用して、天空を舞うワイバーンの位置まで飛翔していく。
その言葉に悪意はない。あるはずもない。
「君は……巨大な力を得て何がしたいんだ?」
だが、そこ言葉を発した後、ジェルから湧き出たものは後悔だった。
空気がヒリつく。
シズクが纏った感情は怒気……いや、違う。
怒気を間違うほどに圧倒的な熱量――――より正確には熱意だった。
「私の目的は――――」と言いかけて彼女は視線を空に向ける。
「一言で説明するのは難しい。けど、強いていうならば私を増やすって事だな」
「シズクを増やす? それは種の繁栄って意味かい?」
ジェルは聞き返しながらも、納得していた。
種の繁栄。それは生物が持つ本能だ。
増して、シズクのような特別怪物《エクストラモンスター》……
(今となってみれば、とても怪物として認識できなくなっているシズクに、その言葉を当てはめる事に違和感があるのだけれども……)
そう思いながら……しかし、そのジェルの考えをシズクは否定した。
「違う、そうじゃないのさ」
「え?」
「種の繁栄じゃない。なんて言うか仲間かな? あの古代魔道具《アーティファクト》みたいな物が存在している以上。同胞……みたいな連中がたくさん隠れているに違いないだろ?」
「あぁ、そうだな。君みたいな連中がたくさんいるなら、人間と魔物も仲良くできるかもしれないな」
「――――」とシズクは目を大きく見開いて驚いていた。それから……
「私は、憧れていたのかもしれないな。人間の仲間ってやつに」
「仲間……」とジェルは悲しそうに微笑んだ。その言葉は、ジェルに取って重い。
「だからかもしれない。あの日、仲間から傷つけられて、置き去りにされたお前を見た瞬間。私は怒った。それから――――お前の仲間になりたいって思った」
「――――っ!?」と今度は、ジェルが驚かされる番だった。
(何か言わなければ)
ジェルの考えとは裏腹に出てくるのは「――――」と言葉にできない音だけだった。
そんなジェルをニヤニヤと笑いながらシズクは、
「さぁて、そろそろ目標が見えて来たぜ。殲滅戦だ、準備はOKか?」
彼女は空を指す。旋回するワイバーンの群れ。
周辺は薄暗い。
なぜなら、空を飛ぶワイバーンたちの影が太陽の光を覆い隠すからだ。
ワイバーンたちの羽に隠され、隙間から極僅かに空の青が見えている。
要するに――――
「滅茶苦茶だ」とジェル。
「見た事もない数のワイバーン……本当にやれるのか?」
「やれるさ」とシズクは笑って返す。
「私とお前……2人なら、このくらい余裕って感じだろ?」
「あぁ、分かったよ」とジェル。彼は肩にかけた雑嚢に手を入れる。
中から取り出したのは本だった。
一冊の本。当然、ただの本のはずもなく――――
『雷撃上昇の魔導書』
それは、ジェルが迷宮深くで古代魔道具《アーティファクト》から手にした魔導書。
(剣聖ガチャのハズレではあるけれど……使うなら今がベスト)
ジェルが本を開く。 黄色い光が中から飛びだして彼の体を覆い始めた。
その光は雷撃の魔力。 魔導書に書かれた文字は、魔法発動時の詠唱と同等の効果を発揮させる。
「行くぜジェル! その魔力を私に寄越せ!」
まず、最初にシズクが発動した魔法は『フライト』
ジェルも習得している飛翔魔法を使用して、天空を舞うワイバーンの位置まで飛翔していく。
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