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一方、レオたちは――――②

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 レオ・ライオンハート。

 近隣最強の冒険者だったはず……しかし、その肉体は変わり果てていた。

 かつての彼は前衛に立ち、巨大な盾で仲間を守っていた。

 自身の何倍もの魔物を相手に力勝負。

 今はどうだろうか? 

 巨大な盾も手放し、強固な鎧すら脱ぎ捨てている。

 必要最低限の軽装。 剣は、護身用と見間違うほど、小ぶりな物を装備していた。

 それでも、真っすぐ歩けていない。 油断をすれば、バランスを崩し倒れかねない。

 そんな彼の様子に、

「大丈夫?」とドロシーは声をかける。

「大丈夫……あぁ、俺の事か? 大丈夫だ、問題ない」

「問題があるようにしか見えないから言ってるのよ。無理そうなら休憩しても良いのよ? ほら、戦闘はシオンに任せなさい。どうせ、魔物はゴブリンしかでないのだから……」

「ゴブリン?」とレオは驚いた顔をした。 

 彼は動揺を誤魔化すように視線をドロシーから外す。

 必死に湧き出る恐怖。止まらない体を振えを無理やり抑える。

 ドロシーも自分の失言に気づく。

(こんなにゴブリンに反応して、怖がるなんて……ジェルは、彼に何をしたの?)

 そして、それはもう1人の仲間にも言えた。

 シオンはジェルと戦ったらしい。詳しくは彼女の口から聞いていない。

 とても聞き出せない。 ジェルとの戦いで精神に深いダメージを受けた彼女は別人のように変わってしまった。 

 凛とした東洋の剣士。その面影は残っていない。

 酷く攻撃的な性格に変わた。時折、叫び声を上げては、彼女にしか見えない敵と戦い始める。

 侍《サムライ》と言われた彼女。今は狂戦士《バーサーカー》のような存在に……

「一体、何をどうやったら、ここまで人間の心を壊せるの?」

 ドロシーは震える。自分だけが正常だ。

 レオもシオンもジェルによって心を壊された。

(自分が無事なのは? たまたま……たまたま、見過ごされただけじゃないの?
 もしかしたら、2人と同様に心を壊されていたかもしれない……)

 そんな事を考え、心が圧し潰されそうになった。しかし――――

「大丈夫だ」

「え?」

 見れば、レオが震えながらも微笑んでいた。

「心配しなくても大丈夫だ。俺もシオンも取り戻せる。新しい心の支えさえあれば……きっと」

「……」とドロシーは彼の言葉を譜面通りに受け取れなかった。

(確かに……確かに、この迷宮でジェルの身に何かあった。それは間違いないと思う……でも……)

 ここは初心者向けの迷宮。すでに多くの人間が出入りしている。

 今さら、彼が言うようにジェルが強者になった理由――――レオは古代魔道具だと言っているが――――それが発見できると、ドロシーには思えなかったのだ。

  
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