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名前 シズク

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(好戦的になっている)

 ジェルは自分の心に変化を感じる。

 まるで、そういう種類の呪いを受けたかのように――――

 かつての自分だったら、言葉を操り敵意を見せない相手に戦いを挑んでいただろうか?

 例え相手が魔物だったとしても、自ら挑むよりも逃げを優先してた。

 闘争よりも逃走を選ぶ。 

 自分は、そんな人間じゃなかったか? いや、魔物を斬り殺す経験は、数えきれないほどにあるのには間違いないにしても――――

それが短時間で変わったのは、強い力を得たからだろうか?

 だが――――

「――――」と刀の柄を握った瞬間、ジェルは無心になった。

 それは剣聖に相応しい立ち振る舞い。

 対して、赤目のゴブリンは――――

「いいねぇ」と嗤った。

「酷く好意的だよ。談話をしていた相手をすぐに殺そうとする姿勢は私の好みさ」

 赤目のゴブリンは――――彼女は嗤いならが武器を取り出した。

 どこに持っていたのだろうか? 構える黒い大剣は彼女の体よりも大きく見える。

「――――シズク」と彼女は呟く。

 これには無心になっていたジェルも反応する。

「何?」    

「名前さ。これから殺し合うだろ? じゃ、互いに殺そうとする相手の名前を知らないのは、死んだ方が不憫だろ? 私の名前はシズク……お前は?」

「ジェル……ジェル・クロウって名前だ」

「良い名前――――え?」

 赤の目のゴブリン、シズクは驚いた。 

 既にジェルは剣の間合いまで迫っていた。 初動作を消し去った動きがシズクの反応を乱れさせた。そして――――

 初弾から繰り出された技は大技 『天魔六乱舞』

 超高速の6剣撃。

 だが――――

「――――っ!(手ごたえがない。防がれた? でも、どうやって?)」

 危険を感じたジェルは後方へ下がる。

 剣から伝えられた感覚通り、シズクは無傷で立っている。

 彼女が持つ大剣で防御した気配もない。

「どうやった? 何をして防いだ?」

「ん? 手を内を敵に話すと思う?」

「――――」

「まぁ、話すんだけどね。 簡単な事さ……私に手には不可視の盾が握られている。軽装に見える私の体は重装甲の鎧フルプレートアーマーの鎧に包まれている」

「まさか……そんな武装をしてるようには見えない」

 ジェルが言うのは見た目の話ではない。 彼女、シズクが言う通り、盾を持ち、鎧を着こんでいるなら、体の立ち姿にも、動きにも影響が出る。

(剣聖となった俺が、それを見落とすはずがない。可能性があるとしたら……)

「ご名答ってやつさ。おそらく、君が考えている通り、『魔族ガチャ』で購入した防具――――

『不可視の鎧』

『不可視の盾』

 持ち主の魔力によって具現化する2つの装備に重さは存在していない」 

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