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取り残されたダンジョン

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 ここはダンジョンの中。

 モンスターに囲まれる冒険者たちがいた。

「もうこれ以上は危険だ。撤退をしよう」

 俺――――ジェル・クロウは撤退を進言する。

「うるせぇぞ、ジェル! こんなゴブリンなんかに、俺たちB級冒険者だぞ!」

 リーダーであるレオ・ライオンハートは俺の意見を一蹴する。

 確かに俺たちを取り囲んでいるモンスターは最弱と言われるゴブリンたち。

 肉体労働の男なら素手で戦っても勝てる。その程度の脅威のはずだった。

 しかし―――― 

「認められるか! 頭の悪いゴブリン共が罠を仕掛けるなんて」

 レオが吐き捨てるように俺たち冒険者パーティは罠にはめられていた。

 巧妙に隠された沼地。 

 そこに誘導された俺たちは、機動力を失った。
 
 沼地から脱出しようにも、ゴブリンたちは弓矢や投石と言った遠距離攻撃でコチラの動きを牽制してくる。

「やっぱり、撤退に専念するべきだよ。アイツ等の目的は俺たちの足止めだ。巨体のホブゴブリン。魔法を使うゴブリンメイジがいる本隊が来れば俺たちだって!」

「チッ!」と舌打ちをしたレオ。それから――――

「わかった、撤退だよ」

「よかった。わかってくれ――――え?」

 俺は驚いた。レオが何かを投げて渡してきた。

 ずっしりと重い袋。

「見ろ。中身を確認しろ」とレオの強い言葉。

 急かされて、中を開く。俺はさらに驚かされた。

 中身は金貨。それも通常の冒険者なら年収に匹敵する金額になる。

「これは、何を?」と困惑する俺に対してレオは――――

「あん? こいつはお前の正当な賃金だ。危険手当とか――――まぁ冥土の土産だ」

「な、なにを?」

 蹴りを入れるレオ。不意を突かれた俺は尻餅をつく。

「お前が撤退を言い出したんだ。責任もって殿《しんがり》として残れよ」

 さらにレオは剣を振るった。 足に激痛が走る。

「――――痛っ!? ふざけるな!」

「別にふざけちゃいないさ。俺たちはB級冒険者だぞ?なんのためにお前みたいな底辺冒険者を入れてると思う?」 

「お前――――っ!」

「気をつけろよ。ゴブリンたちの攻撃は続いてる。ほらっ! 必死になって俺たちを守れよ! それだけの対価はくれてやった」
 
 レオたちが離れていく。 俺は1人だけ残された。

 怪我をした人間にモンスターは手加減なんかしない。

 むしろ、好機だと思ったのだろう。集中的に攻撃が俺に向けられていく。

「この――――くそっ!」


 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・

 記憶が混濁している。

 あれからどうなったのか? わかっているのは、まだ生きている事。

 それから――――

「ははっ無くなっちまった。大切にしていたつもりなんだけどな」

 俺は右腕を見た。そこにあるはずの腕は肘から先が切断されて消失していた。

 いや、腕だけじゃない。全身、無事と言える箇所を探すのが困難なほどの傷。

 生きているのが奇跡だと言えるくらいに……

「どうしてこうなったんだろうか?」

 自分の言葉に苦笑する。 原因があるとしたら最初からだ。

 冒険者として才能がない俺が、意地になって冒険者を続けていた事こそが間違いだったのだろう。

 『底辺冒険者』

 最後にレオが放った言葉だ。 

「そう……俺は、どこまでも弱者だった」

 そう言って瞳を閉じた。 それでも、まだ死ねない。

 ゆっくりと今回の依頼内容を思い出しながら眠りについた。


※本作は一部 MidjourneyによりAIが制作したイラストを挿絵として使用しています。
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