上 下
25 / 34

第25話 ダンジョン探索をしよう! ③

しおりを挟む
「これ、どういう状態なのですか?」とアリッサ。

 負傷者である獅子のゼインさんは、俺と一緒にやってきた救出隊と共に外に運び出されていった。

 あらためて、アリッサとサトルは、その場に残ったメンバーに驚いている様子だった。

 俺とリリティ、それに受付嬢さん……いや、このメンバーだけなら、

「いや、なんで受付嬢さんが!」って驚きで済んだだろう。

 問題は最後の1人にあった。

「ん? どうしましたか、お嬢さん?」と白衣の男が口を開いた。

「どうしてって……? それは私のセリフです。どうして、あなたがここにいるのでしょうか? ハンニバルさん」 

 ハンニバルと呼ばれた白衣の男。彼はマッドサイエンスだった。

 特別な力であるはずの『スキル』

 それを人が望む種類を自由に手に入れれる。そんな夢のような方法のため、人類のために人体実験を行っていた男だ。

「そんなに不思議かい? 私がここにいるという事は、この遭難騒ぎは『スキル』に関しての事件だという事だ」

・・・

・・・・・・
  
・・・・・・・・・

ドヤ顔を見せたハンニバルであったが、それ以上の事は――――

「まだ結論を語るには早い段階だ。事体をこの目で観測するまでは想像に過ぎぬ」

 そう言って、黙りこくった。

「結局、どういうことなのですか? あの人、戦力になるのですか?」

 そう質問の矛先がハンニバルから俺に向けられる事になったが――――

「お、俺にだって分からないことくらいある……」

 初めて彼と会った時、彼はモンスターに『スキル』を与える実験を行っていた。

 そして、脱走したモンスターを捕獲しようとして、あっさりと返り討ちにあっていた。

 その事実から察するに……

「普通に戦闘技術は皆無なんじゃないか?」と俺は結論つけた。

 そうなると、このダンジョン遭難騒動の流れが見えてきた。

 大方、『スキル』の実験対処であるモンスターが、また脱走。 この北のダンジョンに逃げ込んだ。

 不幸にも、獅子のゼインさんたちを襲った。 そんな感じのストーリーなのだろう。

「うむ……ユウキくん、どうやら君は私への評価を考えているようだが、少々、風評被害ってのが過ぎるのではないだろうか?」

 ハンニバルは構えた。 しかし、およそ格闘技のような戦闘のための構えとは思えない。

「なんだそれは? 通じるかわからないが、ヨガとか太極拳とか……とにかく、そういう健康目的の体操って感じだぞ?」

「やはり、研究者にとって体は資本だと気づいてね。あれから数ヵ月間、いろいろ習ってみたんだよ。どうかな、戦闘のプロとして私の動きは?」

「すごく……弱そうです」

「なるほど、良いアドバイスだ。是非、参考にしよう」

 そんな不毛な会話をしていると、

「あの……ここはダンジョンですよ。何があるかわからないので、もう少し緊張感を持って挑んでください」

 前方にいる受付嬢さんから注意を受けてしまった。

 うん、おかしいよね? なんでギルドの受付嬢さんが、前衛にいるんだろうね?

 ハンニバルの登場に持っていかれた感があってスルーされていたが……そもそも、どうしてこの場に受付嬢さんがついて来ているのか?

 彼女の姿はいつもの女性用スーツではない。  言うならば、武装をしている状態だ。

 動きやすさを重視した軽装の防具。それに加えて、重厚な手甲を腕につけている。

 明らかに攻防の起点とするための武器。防具としてよりは武器としての使用が前提のように見える手甲だ。

 つまり受付嬢さんは、モンスターを拳でぶん殴る事が目的なのだ。

「受付嬢さんって戦えるのか?」と声のボリュームを落として、サトルに訊ねた。

 サトルは彼女の弟だ。 受付嬢さんの戦闘遍歴について詳しいはず。

 しかし、サトルは「……」と無言。それどころか、膝からガクガクブルブルと震え始めてる。

「おい、しっかりしろ。何かトラウマでもあるのか?」 

「うぅ……あれは5年前、暑い時期の夜でした…… 俺はぴちゃ、ぴちゃと妙な音で目を覚ました。何の音だろう? 怖いなぁ…… 嫌だなぁ……と音の正体を探してみたら、それは――――」

「――――何を言おうとしているのかな? サトル?」

 「ひぃ! ごめんなさい、お姉ちゃん!!!」

 どうやら、何か触れてはいけない部分の話しをしようとしていたようだ。

 しかし、困った。 

 ハンニバルと受付嬢さん。 この2人を戦力としてどう考えるか?

 情報共有ですら拒まれている感じがするのだが……

 チラッとリリティの方を見る。 ハンニバルの実力は分からないにしても、リリティなら受付嬢さんの腕前を知っているだろう。

 むしろ、知らずに連れてきているなら、ヤバい上司じゃん?

 それとなく危機だろうとするも――――

「大丈夫、大丈夫、荒くれ者の冒険者と対等に……なんなら上の立場で接しないといけない受付嬢たちは、本格的な戦闘訓練を定期開催しています。 彼女は優秀な成績ですよ」

「いや、どのくらい戦えるのかの詳細を知りたいのだが?」

 このまま戦闘が始まると連携が取れない可能性がある。

 普通に死活問題のはずだが、それを知らないギルド長ではないはずなんだが……

 そんな事を言っているとモンスターが出現した。

「みんな、話の途中だがワイバーンだ!」

 ドラゴンに似た緑色のモンスター、ワイバーンたちが群れを形成して襲って来た。  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あの理不尽王子をやっつけたい!!!! 〜自分達に向けられる理不尽に仲間(美少女)達と立ち向かう!〜

妄想屋さん
ファンタジー
 なんで何もしてないのに檻に入れられなきゃいけないんだ!  あの理不尽王子をやっつけたい!!!    未不磨 宇井(主人公)とその仲間(美少女)たちは理不尽な世界で今日も生きていく。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

Gate of World―開拓地物語―

三浦常春
ファンタジー
積みゲーを消化しようと思い立った「俺」が開いたのは、MMO開拓シミュレーションゲームだった。 その名も『Gate of World』。 いずれ来たる魔王討伐に向けて、「勇者」が立ち寄ることのできる村を作る――それが、このゲームの目的らしい。 みんなでワイワイ村作りを行うかと思いきや、放り込まれたのは何もない平野!? しかも初めてやって来た村人はニート!? さらに初心者狩りの噂もあって、まあ大変! 果たして「俺」は、個性豊かな村人達を率いて村を発展させることが出来るのか……! ―――― ★前日譚―これは福音にあらず―公開しました。とある少年による、誰にも知られることのない独白です。   →https://www.alphapolis.co.jp/novel/937119347/869708739 ★カクヨム、ノベルアップ+でも同作品を公開しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

処理中です...