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第25話 ダンジョン探索をしよう! ③
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「これ、どういう状態なのですか?」とアリッサ。
負傷者である獅子のゼインさんは、俺と一緒にやってきた救出隊と共に外に運び出されていった。
あらためて、アリッサとサトルは、その場に残ったメンバーに驚いている様子だった。
俺とリリティ、それに受付嬢さん……いや、このメンバーだけなら、
「いや、なんで受付嬢さんが!」って驚きで済んだだろう。
問題は最後の1人にあった。
「ん? どうしましたか、お嬢さん?」と白衣の男が口を開いた。
「どうしてって……? それは私のセリフです。どうして、あなたがここにいるのでしょうか? ハンニバルさん」
ハンニバルと呼ばれた白衣の男。彼はマッドサイエンスだった。
特別な力であるはずの『スキル』
それを人が望む種類を自由に手に入れれる。そんな夢のような方法のため、人類のために人体実験を行っていた男だ。
「そんなに不思議かい? 私がここにいるという事は、この遭難騒ぎは『スキル』に関しての事件だという事だ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
ドヤ顔を見せたハンニバルであったが、それ以上の事は――――
「まだ結論を語るには早い段階だ。事体をこの目で観測するまでは想像に過ぎぬ」
そう言って、黙りこくった。
「結局、どういうことなのですか? あの人、戦力になるのですか?」
そう質問の矛先がハンニバルから俺に向けられる事になったが――――
「お、俺にだって分からないことくらいある……」
初めて彼と会った時、彼はモンスターに『スキル』を与える実験を行っていた。
そして、脱走したモンスターを捕獲しようとして、あっさりと返り討ちにあっていた。
その事実から察するに……
「普通に戦闘技術は皆無なんじゃないか?」と俺は結論つけた。
そうなると、このダンジョン遭難騒動の流れが見えてきた。
大方、『スキル』の実験対処であるモンスターが、また脱走。 この北のダンジョンに逃げ込んだ。
不幸にも、獅子のゼインさんたちを襲った。 そんな感じのストーリーなのだろう。
「うむ……ユウキくん、どうやら君は私への評価を考えているようだが、少々、風評被害ってのが過ぎるのではないだろうか?」
ハンニバルは構えた。 しかし、およそ格闘技のような戦闘のための構えとは思えない。
「なんだそれは? 通じるかわからないが、ヨガとか太極拳とか……とにかく、そういう健康目的の体操って感じだぞ?」
「やはり、研究者にとって体は資本だと気づいてね。あれから数ヵ月間、いろいろ習ってみたんだよ。どうかな、戦闘のプロとして私の動きは?」
「すごく……弱そうです」
「なるほど、良いアドバイスだ。是非、参考にしよう」
そんな不毛な会話をしていると、
「あの……ここはダンジョンですよ。何があるかわからないので、もう少し緊張感を持って挑んでください」
前方にいる受付嬢さんから注意を受けてしまった。
うん、おかしいよね? なんでギルドの受付嬢さんが、前衛にいるんだろうね?
ハンニバルの登場に持っていかれた感があってスルーされていたが……そもそも、どうしてこの場に受付嬢さんがついて来ているのか?
彼女の姿はいつもの女性用スーツではない。 言うならば、武装をしている状態だ。
動きやすさを重視した軽装の防具。それに加えて、重厚な手甲を腕につけている。
明らかに攻防の起点とするための武器。防具としてよりは武器としての使用が前提のように見える手甲だ。
つまり受付嬢さんは、モンスターを拳でぶん殴る事が目的なのだ。
「受付嬢さんって戦えるのか?」と声のボリュームを落として、サトルに訊ねた。
サトルは彼女の弟だ。 受付嬢さんの戦闘遍歴について詳しいはず。
しかし、サトルは「……」と無言。それどころか、膝からガクガクブルブルと震え始めてる。
「おい、しっかりしろ。何かトラウマでもあるのか?」
「うぅ……あれは5年前、暑い時期の夜でした…… 俺はぴちゃ、ぴちゃと妙な音で目を覚ました。何の音だろう? 怖いなぁ…… 嫌だなぁ……と音の正体を探してみたら、それは――――」
「――――何を言おうとしているのかな? サトル?」
「ひぃ! ごめんなさい、お姉ちゃん!!!」
どうやら、何か触れてはいけない部分の話しをしようとしていたようだ。
しかし、困った。
ハンニバルと受付嬢さん。 この2人を戦力としてどう考えるか?
情報共有ですら拒まれている感じがするのだが……
チラッとリリティの方を見る。 ハンニバルの実力は分からないにしても、リリティなら受付嬢さんの腕前を知っているだろう。
むしろ、知らずに連れてきているなら、ヤバい上司じゃん?
それとなく危機だろうとするも――――
「大丈夫、大丈夫、荒くれ者の冒険者と対等に……なんなら上の立場で接しないといけない受付嬢たちは、本格的な戦闘訓練を定期開催しています。 彼女は優秀な成績ですよ」
「いや、どのくらい戦えるのかの詳細を知りたいのだが?」
このまま戦闘が始まると連携が取れない可能性がある。
普通に死活問題のはずだが、それを知らないギルド長ではないはずなんだが……
そんな事を言っているとモンスターが出現した。
「みんな、話の途中だがワイバーンだ!」
ドラゴンに似た緑色のモンスター、ワイバーンたちが群れを形成して襲って来た。
負傷者である獅子のゼインさんは、俺と一緒にやってきた救出隊と共に外に運び出されていった。
あらためて、アリッサとサトルは、その場に残ったメンバーに驚いている様子だった。
俺とリリティ、それに受付嬢さん……いや、このメンバーだけなら、
「いや、なんで受付嬢さんが!」って驚きで済んだだろう。
問題は最後の1人にあった。
「ん? どうしましたか、お嬢さん?」と白衣の男が口を開いた。
「どうしてって……? それは私のセリフです。どうして、あなたがここにいるのでしょうか? ハンニバルさん」
ハンニバルと呼ばれた白衣の男。彼はマッドサイエンスだった。
特別な力であるはずの『スキル』
それを人が望む種類を自由に手に入れれる。そんな夢のような方法のため、人類のために人体実験を行っていた男だ。
「そんなに不思議かい? 私がここにいるという事は、この遭難騒ぎは『スキル』に関しての事件だという事だ」
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ドヤ顔を見せたハンニバルであったが、それ以上の事は――――
「まだ結論を語るには早い段階だ。事体をこの目で観測するまでは想像に過ぎぬ」
そう言って、黙りこくった。
「結局、どういうことなのですか? あの人、戦力になるのですか?」
そう質問の矛先がハンニバルから俺に向けられる事になったが――――
「お、俺にだって分からないことくらいある……」
初めて彼と会った時、彼はモンスターに『スキル』を与える実験を行っていた。
そして、脱走したモンスターを捕獲しようとして、あっさりと返り討ちにあっていた。
その事実から察するに……
「普通に戦闘技術は皆無なんじゃないか?」と俺は結論つけた。
そうなると、このダンジョン遭難騒動の流れが見えてきた。
大方、『スキル』の実験対処であるモンスターが、また脱走。 この北のダンジョンに逃げ込んだ。
不幸にも、獅子のゼインさんたちを襲った。 そんな感じのストーリーなのだろう。
「うむ……ユウキくん、どうやら君は私への評価を考えているようだが、少々、風評被害ってのが過ぎるのではないだろうか?」
ハンニバルは構えた。 しかし、およそ格闘技のような戦闘のための構えとは思えない。
「なんだそれは? 通じるかわからないが、ヨガとか太極拳とか……とにかく、そういう健康目的の体操って感じだぞ?」
「やはり、研究者にとって体は資本だと気づいてね。あれから数ヵ月間、いろいろ習ってみたんだよ。どうかな、戦闘のプロとして私の動きは?」
「すごく……弱そうです」
「なるほど、良いアドバイスだ。是非、参考にしよう」
そんな不毛な会話をしていると、
「あの……ここはダンジョンですよ。何があるかわからないので、もう少し緊張感を持って挑んでください」
前方にいる受付嬢さんから注意を受けてしまった。
うん、おかしいよね? なんでギルドの受付嬢さんが、前衛にいるんだろうね?
ハンニバルの登場に持っていかれた感があってスルーされていたが……そもそも、どうしてこの場に受付嬢さんがついて来ているのか?
彼女の姿はいつもの女性用スーツではない。 言うならば、武装をしている状態だ。
動きやすさを重視した軽装の防具。それに加えて、重厚な手甲を腕につけている。
明らかに攻防の起点とするための武器。防具としてよりは武器としての使用が前提のように見える手甲だ。
つまり受付嬢さんは、モンスターを拳でぶん殴る事が目的なのだ。
「受付嬢さんって戦えるのか?」と声のボリュームを落として、サトルに訊ねた。
サトルは彼女の弟だ。 受付嬢さんの戦闘遍歴について詳しいはず。
しかし、サトルは「……」と無言。それどころか、膝からガクガクブルブルと震え始めてる。
「おい、しっかりしろ。何かトラウマでもあるのか?」
「うぅ……あれは5年前、暑い時期の夜でした…… 俺はぴちゃ、ぴちゃと妙な音で目を覚ました。何の音だろう? 怖いなぁ…… 嫌だなぁ……と音の正体を探してみたら、それは――――」
「――――何を言おうとしているのかな? サトル?」
「ひぃ! ごめんなさい、お姉ちゃん!!!」
どうやら、何か触れてはいけない部分の話しをしようとしていたようだ。
しかし、困った。
ハンニバルと受付嬢さん。 この2人を戦力としてどう考えるか?
情報共有ですら拒まれている感じがするのだが……
チラッとリリティの方を見る。 ハンニバルの実力は分からないにしても、リリティなら受付嬢さんの腕前を知っているだろう。
むしろ、知らずに連れてきているなら、ヤバい上司じゃん?
それとなく危機だろうとするも――――
「大丈夫、大丈夫、荒くれ者の冒険者と対等に……なんなら上の立場で接しないといけない受付嬢たちは、本格的な戦闘訓練を定期開催しています。 彼女は優秀な成績ですよ」
「いや、どのくらい戦えるのかの詳細を知りたいのだが?」
このまま戦闘が始まると連携が取れない可能性がある。
普通に死活問題のはずだが、それを知らないギルド長ではないはずなんだが……
そんな事を言っているとモンスターが出現した。
「みんな、話の途中だがワイバーンだ!」
ドラゴンに似た緑色のモンスター、ワイバーンたちが群れを形成して襲って来た。
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