転生勇者のマイルド冒険者ライフ〜趣味ときどき異能バトル!?~

チョーカ-

文字の大きさ
上 下
20 / 34

第20話 牛肉を食べに行こう! ①

しおりを挟む
「よし! 牛を食べにいこうぜ」

「え!? 良いんですか!」

 俺はアリッサを誘って牛を食べに行く事にした。

 前回の謝罪、酒に飲まれて彼女にウザく絡んでしまった事を謝るためだ。

 そして、新鮮な牛を食べるために俺たちは牧場に向かった。

 途中、アリッサが「――――牧場?」と不思議そうだった。

 まぁ、牧場は牛とか家畜を育てる所であって、牛を食事する所ではない。

 しかし、新鮮な――――活きが良い牛を食べるためには、牧場を確認する事は必要不可欠。 少なくとも、俺はそう思う。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・・

「――――って、私が思っていた牧場とイメージが違う過ぎるのですが!」

 アリッサは、彼女にしては珍しく大声を出した。 

 彼女の名誉のために付け加えておくが、彼女が大声でツッコミを入れているのではない。大きな声を出さないと、の声援によって声がかき消されてしまうからだ。

「これって、何か大会が開かれているように見えるのですが……牛を食べると言う話は、もしかして――――」

「あぁ、これはブルライディングっていう大会だ」

 ブルライディング、直訳するならば猛牛乗りって感じになる。 

 暴れ狂う牛に乗る様子を採点する競技だ。 カウボーイが乗るロデオの種類って言うと分かりやすいかな? 

 もちろん、ただの牛ではない。

 猛牛《ブル》の定義。 去勢されていない牡牛。

 通常680キログラム(約1500ポンド)から900キログラム(約2000ポンド)。

 人間の10倍の重量。 10倍の筋量。 パワーが違う。

 それに乗って、どれほど制御できるか? 
 そんなシンプルでパワフルな競技だ。

「いえ、ブルライディングはわかりましたが、食事の約束は……?」

「ほら、あそこ」と俺は指した。

「優勝賞品 高級牛肉? まさか、これを最初から」

「え? 言ってなかったけ? たまに参加して焼肉パーティしてるのけど」

「ちゃっかり参加して、優勝を! ユウキさんが出場するのは、失礼ながら反則なのでは?」

 それは俺の存在が、すでに反則だと!? そんな言葉が脳裏に過ぎった。

「いや、普通のクラスに参加するわけじゃないよ。ほら、あそこに書いてあるクラスだよ」

「ミノタウロスライディング……正気ですか?」

「ハッハッハ……滅多な事を言うものじゃない。ここじゃ、新競技としてファンも多いだぜ?」

 ミノタウロスライディング

 その名前の通り――――

 ミノタウロスと素手で対峙して、背中を覆いかぶさる競技だ。

 まさに異世界ならではの新スポーツと言って良いだろう。

 もちろん、挑むのは命知らずの冒険者たちが多い。

 通常のブルライディングと違って、この競技の特徴は――――なんでもあり。

 魔法を使っても良い。 スキルを使っても良い。

「あえて、禁止事項を言うとすれば、ミノタウロスに直接的な攻撃を加えるくらいかな?」  

「古くからの伝統的文化保護の観点から危険な競技を行っているのではなく、新スポーツとして新しく作られた事に驚きを隠せません。 本当に近代国家ですか、ここは?」

 思った事を素直に言うアリッサ嬢。

 周囲の観客たちにも聞こえているので、剣呑な雰囲気になっている。

 それでも彼女がチンピラたちに絡ませないのは、その凛とした立ち振る舞いにあるのかもしれない。

「私、何も間違ったことは言ってません」

 ――――という自信。 それに加え死線を掻い潜って来た冒険者としての強さが知らないうちに周囲にも伝わっているのかもしれない。

「そろそろ、俺の出番だから行って来るよ」

「え? ちょっと待ってください。この競技って――――ユウキさんしか参加者いないじゃないですか!」

「そうだよ、だから優勝は確実!」

「ユウキさんが参加しなければ、成立しない競技……そんなの競技じゃないですよ!」  

 ――――と言うわけで俺はミノタウロスと対峙した。

 俺は専用の装備を身に付けている。

 兜と鎧だけだが、競技用に軽量化されている。

 また、動きを阻害しないように関節付近の接触面が少なくなってる。

「軽装の鎧に良いなぁ、これ。ドワーフの親方と相談して量産化できないか?」

 そんな事を考えていると競技の開始が伝えられた。

 普通のブルライディングなら、猛牛に乗った状態でスタートするのだが、このミノタウロスライディングは、ミノタウロスに飛び乗ることから始める。

「観客の声援で興奮してるな。 少し、挑発してみるか?」

 俺は、両手を上げる。ミノタウロスに見せつけるようにユラユラとゆっくり下げていく。

 闘牛士が牛を挑発するのと同じだ。 

 牛は赤色に興奮するなんて話もあるが、あれは嘘。 牛の目には、色を判別する能力はない。

 動き続ける物に反応して、闘牛士を襲っているだけだ。

 だから―――― ミノタウロスの視線と敵意は俺に向けられた。

「ヘイト管理はOK! 問題は、攻撃を受けずに避けられるかだよな」

 勢いよく、ミノタウロスは接近と同時に拳を繰り出して来た。

 それを俺は避ける――――だけではダメだ。 避けながら前に出る。

 そのまま腕に全身を絡ませて――――腕ひしぎ十字固め。

 正確には飛びつき式腕ひしぎ十字固め……となる。

 ミノタウロスの体は巨体。 腕も太く長い。人間の腕とは大きく違う。

 だが、それでも関節技は極まる。  

 モンスターでも関節はある(もちろん、関節のないモンスターもいるが)。

 ミキっ ミキっ  靭帯にダメージ与えて、破壊することも――――いや、それはルール違反だ。

 俺は技を解いた。 関節技でミノタウロスに怪我を負わせると、流石に反則になってしまう。

 技を解いて地面に着地した。 ミノタウロスにも、そのタイミングを狙う知識があるのだろう。

 蹴りを放ってきた。  サッカーボールキックという奴だが、流石の俺もボールになるわけにはいかない。

 蹴りを避けると背後から叫び声が聞こえた。

 どうやら、ミノタウロスの蹴りは地面を抉って、観客に土を蹴り飛ばしたようだ。

「まぁ、相撲で言う砂被り席ってわけで許してくれよな」

 俺は軽く謝罪をすると、ミノタウロスに向き直した。

 ミノタウロスというモンスター。 猛牛の中の猛牛だ。

 それが原始の記憶を取り戻すように四つん這いになっている。

 その姿は雄弁だ。 

『トップスピードでお前に突っ込む』

 言葉を話さない代わりに、そう姿で訴えかけてくる。

「やれやれ。 俺の住んでた場所じゃ、牛殺しって言われた空手王がいたが――――実際は動物愛護団体の介入から打撃禁止で戦ったらしいな。それじゃ……」

 俺は呟いていた。 

「それじゃ、俺も逃げるわけにはいかないわな」

 


  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...